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BLの丘
緑の中の吐息 6
2013-06-07-Fri  CATEGORY: 吐息
昼食を食べ終えて、のんびりと風景を楽しむ。
週末だから、もう少し人出があるかと思っていたが、こんな天気の下だからなのか、登ってくる人はいないようだ。
途中からは人の姿を確認できるので、来ればすぐに気付くだろう。
美琴が食べ終わった弁当箱を折りたたんでしまっている隣で、瑛佑が大きく腕を上げて伸びをした。
「あぁ~ぁ、天気はちょっと残念だけれど、これくらいの距離なら、すぐにでも来られそうだよね」
「今までこれといって観光案内などしてこなかったので、知名度も低いですから。それでも『無料』ということで、夏休みなどは家族連れも訪れたりするそうですよ」
「地元の人しか知らないって感じだね。まぁ、美琴さんたちがどんな展開を見せるのかは俺の口出すところじゃないけれどさ」
「ここまで登ってくる方は、先ほどのご夫婦のように情報を持っている方ばかりかもしれませんね」
登山やハイキングに詳しいわけでもなく、どこに何がある、などということは美琴だって関わり合いにならなければ知らぬままに過ぎてしまう。
出かけることを趣味とした人たちは、あちこちで交流も持つだろうし、きちんと脳内に記憶として残っているのだろう。
一度行ったことがあるからそれで終わり…ではなく、二度目、三度目とリピーターとして再訪する。
日本には『四季』があり、季節ごと表情を変える風景もまた、見どころとなるはずだ。

一通りの荷物を片付け終わったあと、レジャーシートの上で座りなおした美琴が珍しく口ごもった。
どうしたものかと瑛佑は隣に座る美琴の表情を覗きこむ。
「美琴さん?」
「あ、あの…、…、少し横になられますか…?」
何かを誤魔化すように、視線があらぬ方向を彷徨って、俯き加減になりながらも上目づかいで瑛佑を見てきた。
もちろん驚いたのは瑛佑のほうだった。
この場合の『横になる』は暗黙の了解で『膝枕』を意味している。
公の場で美琴から言い出したことは記憶の中にない。
「美琴さん?」
もう一度瑛佑が確認するように問い掛けると、現実に引き戻されたかのようにアタフタと慌てだし、言葉が早口になった。
「べ、別に…っ、ずっと荷物も持ってもらっていたし、お疲れかと思って。な、何でもないですっ。聞かなかったことに…っ」
「聞かなかったことにはできないなぁ」
瑛佑はニッと笑って、立ち上がらんばかりの美琴の腰を抑えつけた。
そのままズルズルと体をずらして、美琴の太腿に頭を乗せて寝転がった。
誰もいないこの空間に、美琴のタガもどこか外れてしまったのか。
解放的になってくれるのは気を許してもらっている証拠でもあり、瑛佑はますます機嫌が良くなっていくばかりだ。
美琴はそばにあった岩を背もたれ代わりにして背を預けて、力が入ってしまった体からふぅっと息を吐き出す。

生活時間のズレがあって、なかなかこんな時間を持てなかった現実も知らされていた。
つい出不精になってしまう美琴だったが、こうやって出かけることは刺激となり、まだ知らない何かを発見させてくれるのかもしれない。
陽が出ていないおかげで、暑過ぎることもなく、新緑の時期の爽やかな風が吹き抜けていった。

瑛佑は嬉しさで美琴の膝を占領したものの、目を閉じてしまうのが惜しいとすら思っていた。
滅多にあることではないから、満喫したいのは山々なのだが…。
目を開けて見えるものは、見つめてくれている美琴の穏やかな表情で、文句も言われずに視線を絡ませられる時間は貴重である。
また打って変わってどんよりとした灰色の空だ。
ここでのんびりとしたいところだったが、リスクも高かった。
駆け足で降りていって、車に飛び乗れる…という距離ではない。
美琴が見ておきたい場所のことを考えても、急いだ方がいいとは、未経験な人間だからこそ心配することでもあるのか。

ガバッと起きあがった瑛佑に瞠目したのは美琴だったけれど、天候を気にした意見を聞けば、美琴も大人しく従ってくれた。
『膝枕』は次回の機会に持ち越しだ。
今度は天気の心配のない日にして、思いっきり自然と美琴を堪能すればいい。
ただ、今日と同じように、誰の視線もない場所になってくれるかは、あまり期待できないかもしれなかったが。
そそくさとレジャーシートをたたんで、出発の準備を整える。
美琴が興味を持っていたのは、先ほど見たばかりの、誰かが通った跡のある小道だった。
もし危険個所があるようなら、早急に閉鎖し、観光客の視線を反らさなければならない。
『道』は一本しかないと思わせること。

そんなことはこれまで管轄していた人に聞けば澄むことなのだろうが、何事も自分で確認しなければ気のすまない美琴が、ここまできて引き下がるとは思えなかった。
だから瑛佑も好きにさせてくれる。
一人では躊躇することも、瑛佑がそばにいてくれる安心感も手伝った。
この、『早くに出発した』ことが、吉と出るか凶と出るか…。
瑛佑は一瞬天を見上げ、無事の帰還を願っていた。
「美琴さん、慌てなくても大丈夫だからね」
言い聞かせたのは、美琴にか、それとも冷静になれるよう、自分自身にだったのか…。

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コメント

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美琴ったら…( *´艸`)クスクス♪
コメントけいったん | URL | 2013-06-07-Fri 10:11 [編集]
「少し 横になられますか…?」=『膝枕』
なぁ~んて言っちゃって 自分の思いを素直に言えないんだね!
そんな所が 理佑も美琴ファンの心を鷲掴みするのでしょ?d(≧ω≦)ネッネッ

私も少し 美琴の魅力が分かって来ました!
だけど 「淋しい夜」の時の 英人にした言動が まだ 消えないの。。。
あの時の 美琴は ほんと憎らしかったものねー

悪い記憶は なるべく消して もっともっと 美琴の魅力を知りたいです。
木|・д・´)フムフム、ジィー 
あ!そうなんですね
コメントnichika | URL | 2013-06-07-Fri 19:35 [編集]
リアルタイムに読みふけてなく ぎゃーーそうでしたか

ni そもそもコメ欄を知らなく読んでいて、なにかに?? ふイット 下
たぶん ni ビック

  
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