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BLの丘
春が来てくれるなら 37
2013-05-24-Fri  CATEGORY: 春が来てくれるなら
勝沼の苦言は減ったと思う。
いや、もともと少なかった…というべきだろうが。
明野がフラパンに円形の焼き台が二つ、ついたものを買ってくれた。
他のスペースでベーコンやら野菜やらも同時に焼ける便利物らしい。
円形の中にさえ卵が割り落とせれば、とりあえず『目玉焼き』は仕上がるとのことだ。
たとえ、黄身が割れてしまったとしても…。
卵の割り方から教えた勝沼は、その"成長記録"を会社で意気揚々と明野に報告して、苦笑されたらしいが。

朝の忙しい時間に、二人でキッチンに立つのも楽しいものだと気づかされた。
自分で作ることで、物の大事さも教えられた。
常に隣に勝沼がいてくれるために、食材そのものを無駄にすることも少ない。

週末にまとめて下ごしらえをしてしまう手際の良さにも感動させられる。
「大月さぁ。こんなデカイ冷蔵庫あって、中身がドリンクだけってありえないだろう…」
まだ勝沼がここに訪れたばかりのころには、今までどおり母親が親切心で料理を届けてくれていたが、『同棲』が決まった途端にストップとなってしまった。
ふたりの仲を邪魔してはいけないという親心も含まれていた。
影ながら明野が、「もういい大人なんだ」と口添えしたらしいが、それも元をたどれば、韮崎のセリフか…。
現在はその大きな冷蔵庫も有効活用してくれている勝沼だ。


それぞれの仕事は順調に進んでいく。
新事業を立ち上げた韮崎は、明野のバックアップもあったのだが、自分の力を遺憾なく発揮していたし、怒鳴られ貶され睨まれながらも大月はきちんとついていっていた。
その評価は誰よりも韮崎がしてくれている。
クラゲのように流れるままに過ごしてきた過去が思い出せないくらいに、今が充実している実感があった。

『新入社員』と呼ばれることもなくなった師走。
まぁ、大月の場合、他の人たちとは違う扱いではあったのだが。
月日の流れの速さを感じながら、日々の業務に追われてあっという間に年末を迎えた。

慌ただしい一年だったとしみじみ振り返る。
父や明野に挟まれて、嫌々ながらも就職が決定し、また韮崎に全ての男関係を断たれた。
どこかに…誰かに寄りそいたい気持ちを持っていた大月に、堂々と入りこんできた勝沼は、そのまま明野たちの懐にまで入り込んでいる。
大月を変えた人物と言って過言ではないだろう。
もちろん、基盤は韮崎だったとしても。

仕事納めの日、全ての社員を帰し、事務所内での片付けをしていた大月のもとに、韮崎が近づいてきた。
新事業を立ち上げたとはいっても、そう遠くないビルの2フロアを使用しているだけで広いわけでもない。
韮崎は個室を持っていたが、相変わらず大月は"目の上の瘤"状態で、事務所に放り出されている。
社員を見張る…というよりも、社員に近づけるための、韮崎なりの配慮でもあった。
事実、大月は以前のような居辛さは感じていない。
ここが、『別会社』という存在だからこそ。
『社長の息子』と散々言われ続けたが、ここでの社長はあくまでも『韮崎』だ。

「終わりそうか?」
「帰りたいなら帰っていいよ。守衛さんには俺、言っておくし」
戸締りのことを口にすれば薄く笑われる。
「そんなことをすれば明野に何を言われることやら…」
「べつに。黙っていればいいじゃん」
大月のデスクに乗った郵便物の一部に手を伸ばす韮崎を邪魔にするわけでもなく、好きにさせながら大月は自分の仕事を優先させていった。
韮崎の全てが明野のために存在することなど、とうの昔から知っていることだった。
明野が気にかけるから入社させたし、居心地が悪くなるのが分かっているから大月の逃げ場としてこの会社も確保した。
ふたりの仲に当てつけられていたのかと、冷静になった今なら遊び歩いていた理由がはっきりとしてくる気もする。
「"黙っている"…ねぇ。どこに目が付いているんだか、全部お見通しだよ、あいつは」
呆れたような、だけど感心したようなつぶやきに、ふと大月の手が止まった。
韮崎と寝たことは一度や二度の話ではない。
お互い、節操なしと呼ばれるくらい遊び歩いた過去を知られているだけに、マチガイが起こってもおかしくない、くらいの度量ではいたと思うが。

「兄貴、知ってた?」
何を?の内容は口にしなくても伝わる。
「さぁね」
軽く受け流してしまうのも韮崎のいつものことだ。
この返答だけで状況は知れてくる。
開き直れるお互いの性格があるから、今後も明野との付き合い方は変わらないだろうし、明野も分かっていたから変わらずに過ごして来られたのだろうか。
「で?終わるのか?」
韮崎が郵便物の内容を確認しながらも、再確認してくる。
それに大月も待たせていることが分かって、「あとちょっと」と答えた。それから加える。
「まさか、一緒に帰る気じゃないよね?」
帰る時間も同じなら、帰る場所もほとんど変わらない同じ場所。
これで一緒に帰らない理由があるなら聞きたいというところだろう。
クスッと肩をすくめて見せただけの韮崎に、『送り届ける義務』を負っていることをなんとなく悟ってしまった大月だ。

「ハイハイ」
「返事は一度でいい」
「ハーイ」
韮崎はコツンと軽く大月の頭上を叩いて、「終わったら声をかけろ」と言い置いて個室へと戻っていった。

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季節はいきなり飛んじゃうし、とりとめのない内容になってしまってすみません。
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コメント

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自然の流れ…?
コメントけいったん | URL | 2013-05-25-Sat 08:08 [編集]
大月と韮崎の今を見れば
あの当時の2人の関係も  
それを 明野が黙って見ない振りをしていたのも 
勝沼が大月と出合ったのも

時に抗う事もあるけど その流れに全てを任せてみれば
何もかもが 自然の流れだったと 思えますね。

大月も 勝沼も 明野も 韮崎も 
側に誰かが居てくれる幸せ、 寄り添い合える幸せを 今 ひしひしと感じている事でしょう
♪゚・*:.。.Happy☆ヽ(*´∀`*)ノ☆Happy.。.:*・゚♪


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