FC2ブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
春が来てくれるなら 33
2013-05-18-Sat  CATEGORY: 春が来てくれるなら
大月という存在がなかったら、いつでも首をきられておかしくないのではないかと、たまに勝沼は思った。
もともと『厳しい』と評価されていた韮崎だが、その存在がなくなれば、明野が手腕を振るうようになる。
分かっていたことだが、社員に対する印象は全く違っていた。
韮崎は逃げ場がないくらいに追い詰めて結果だけを求めていた。
明野はひとつの逃げ道というものを用意している。
"追い込ませない"
心理としては"兄"の性格が出ているのだと分かった。
社員を家族と捉えるなら、かばってやりたい気持ちがあるのだろう。
その中で一番甘やかされたのは大月だったし、また勝沼だ。
『手ぬるい』と韮崎は叱咤したが、飴と鞭の使い分け方は、また韮崎とは違っている。

この兄がいてくれて良かった…と思ったのはいつだったか。

入社してまだ半年もたたない。
新人というくくりの中、それでも勝沼が実績を伸ばせて行けたのは明野と韮崎の配慮があったからだった。
もちろん、批判を受けることはあったけれど、「言いたいやつには言わせておけばいい」と"上司"からの援助の言葉に励まされてきた。
「仕事ができないヤツほど、文句を言う」
とは、韮崎の見識だった。
総務部の中でも、同じ仕事をやらせたとして、丸一日かかる人もいれば、数時間で終わらせる人もいる。
大月は明らかな後者だった。
そのことは勝沼のやる気を掘り出したものでもあったのだろう。
"負けたくはない"。同等の存在でいたいと。
もちろん、韮崎にも明野にも、"この程度"と言われたくなかったから。

その実績は徐々に表れているのだと思う。
会社を離れても、過去の会社の面倒まで見られる韮崎の知識には舌を巻く。
系列会社だから情報が伝わりやすい、としてもだ。
ふと、頭をよぎるものがある。
大月は、いつか、『社長』という存在になるのだろうか。

明野のそばに韮崎がいる。
韮崎が今の事業をある程度組み立てて、明野の将来を気遣った時、残されるのは会社と大月だ。
今はまだ本社預かりのような勝沼だけれど、いずれ、韮崎のような存在まで上り詰めて欲しいと暗に含まれているのだろうか。
そんな自信はもちろんなかった。
いきなり言われて「はい、わかりました」と言えるほど心の準備なんてない。

大月を"抱く"ことが、どれほどの大きな意味を抱えるのか、過ごす日々の中でもっと詳しく考えるようになる。
遊び歩いた大月の心理も分かる気がした。
たぶん、"相手"に負担をかけたくなかったのだろう。
大月なりの気遣いが、一夜という軽くもある、簡単に済ませることに繋がった。
一人に絞ることもできなかった。
相手に負担を負わせると分かっていたから。
だけどもう、勝沼は他人に渡す気にはなれなかった。
必要な努力ならなんだってしよう。
『大月を守る』
それは、明野に誓った言葉だった。

大月の将来を考えた時、今からそばにいた方がいいのではないかと勝沼は思った。
しかしそれは韮崎に否定された。
完全な力不足だ。
移籍を真っ先に断られる。
大月のそばにいることを悪いと言いはしないが。
「営業という一つの仕事ができるようになってから言え。今、基礎が大きいのはあちら(明野)のほうだ。新規で参入する会社などの難しさはある。明野の会社の名前で仕事を取れとは言わないが。その名を持っても成果をあげられないとなれば"それまで"だろう。現在勤めている会社の権力すら感じられないなら、うちでは必要ない」
実力性があるかないかのふるいのようだ。
長く続いた会社にとどまらせることは、韮崎の親切心だったのだろうか。
新しく立ち上げたばかりの会社と、昔からある会社の信用度は違ってくる。

新しい事務所にはやはり新しい匂いがする。
韮崎の席は『社長室』らしく一番奥だった。
前もって連絡はいれていたけれど、大月には勝沼の訪問は伏せられたようだ。

相談ごと…になるのだろうか。
「俺…、大月のこと、心配なんです」
「それはまた俺が"抱く"とかいうこと?」
恋人ではなくても、こうまで堂々と発言されてはなんと答えたらいいのだろう。
ふたりとも…、いや、明野を含めたら三人が、どこにも"悪気"を持っていない。
「韮崎さんが手をださなくったって、大月、バーとか行くじゃんっ」
ほとんどムキになった勝沼を、韮崎は落ちついた態度で嘲笑った。
「それはないな」
一言を添えて。
返されたことは双葉には意外だった。
何の自信か。

「俺がこれを言っていいかは分からないけれど。大月は自分を想ってくれる人に対して裏切ることはしない。こればかりは俺も明野もすごいと思った。自分のために存在する人、兄弟であれ、親であれ、分かっているんだ。ただ俺の見知った限りは身内だけどな。父のため、兄のため、背負ったものは、明野の比ではないだろう。明野は父の存在しかなかったけれど、大月は兄と父と、まぁいうなれば俺まで含められたんだ。逃げ道は常に探していたと思う。あの会社の中で潰れていくその苦労を見たくなかったから、今回の事業を組んでいた。これはもう、大月が入社する前からのことだ。双葉君が、大月を信じられないというのも分かる。それだけのことをあいつはやってきた。だけどやっぱり繰り返す。信じてやってほしい。その信頼が今の大月を生かせるものになる」

悔しいけれど、大月のことを知った人なのだろう。
また、改めて自分に委ねてくれることに安心もあった。
『信じる』
その気持ちだけは揺るがない。

「大月のことは見ていてやるよ。酔い潰れても帰るところは同じだし」
半ば冗談ではあったけれど。
どこにも寄りみちはさせないと、"上司"は言ってくれた。
ついでに、明野は"出張"もほとんどない『総務部』に辞令を出した。
韮崎と明野との間でどんな話し合いがもたれたのか。
「いや、そこまでも・・・」と内心でつぶやくほどに。
『総務部』
会社を管理する中枢になるところ。
今から韮崎も明野も、勝沼を鍛えだしたのだ。
大月の隣に並べる人間になるように。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ 
ポチってしていただけると嬉しいです(〃▽〃)

関連記事
トラックバック0 コメント0
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
TB*URL
<< 2020/08 >>
S M T W T F S
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -


Copyright © 2020 BLの丘. all rights reserved.