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BLの丘
春が来てくれたなら 31
2013-05-17-Fri  CATEGORY: 春が来てくれるなら
週末、勝沼が大月の家に訪れるようになったのは誰もが認めている。
しかし、韮崎と共に辞めるとなったら別問題だ。
そこまでのつながりがあるのかと。
大月は、明野のそばから離れられる安堵感があった。
押しつけられたような就職先ではなく…。
勤めていた会社に対して、居辛さがあったことを誰よりも感じていた。
明野も韮崎も、そのことを分かっていたのだろう。
一刻も早く、"逃して"やりたかったこと。

大月の家に、半ば押しかける状態だった勝沼は、一も二もなく、流れの疑問をぶつけた。
「韮崎さんとのこと…、過去のことは水に流してやるくらいの気持ちでいたけれどっ、なんだよ、これっ。辞めるって?」
「双葉…。でもそれ、入社時から決まっていたことなんだ」
「はぁ?!なんだっ、それっ。訳分かんねぇよっ」
息巻く勝沼に、韮崎とのことを伏せても、どうしてあの会社に入社したのかの事実は告げられた。
韮崎が新しく築く事業のためもあって、大月を"育てた"こと。
思いのほか、大月の成長は早かったようだ。
その能力を知るのだろうか。
会社内で異としての存在になる前に、韮崎は引き抜いた。
ソファに座ってぐったりと頭を抱えたのは勝沼だ。
「次元、違ってるってこと?俺は韮崎さんみたいにはなれない。もちろん御坂さんともレベル、違う。大月の"力"っていうのも分かる。…もう、なにもかも、俺、及ばないのかよ…」
比べられる…と誰よりも感じたのは勝沼だったのか。
大月にはそのつもりはなくても、比較対象として存在するものがある。
長い間、共に過ごしてきて、知った部分があるからこそ不安も宿る。
ただ、『愛』だけは、負けないと勝沼は思っていたし、遊びではないものを大月も感じていた。

黙って韮崎に寄ったのは、確かにいただけない話だろう。
相談しても良いはずのもの。
それができなかったのは、付き合いの日が浅かったせいか、一人で生きてきた過程があったからか。

「ごめん…」
一言しか言えなかった。
大月の言葉に勝沼が抱きしめ返してくれる。

「なんか、辛かったのか…?いいよ。なんでもいいよ。言えよ。お兄さんのことでも韮崎さんのことでもいい。大月、挟まれっぱなしだったんじゃないの?今の会社が居心地悪いなら、それって"逃げる"ことじゃないだろ」
辞める意味を、勝沼なりにかんがえたのだろう。
一度は否定された退社も、勝沼は分かったようだ。
その物分かりのよさにも感動してしまう。
付き合うことではない、韮崎との関係を、勝沼は知っていた。
明野とのことが分かったから尚更。

潤む瞳が止められない。
「双葉…」
かける声が霞む。
こんなふうに誰かに大事にされただろうか。

「バカ。いいって。泣きたいなら泣け。抱いて欲しいならそういえ。逆に無理されて、どっかのヤツに逃げられるの、ホント、嫌だし」
大月を抱いた韮崎のことも思うのだろう。
どこまでも大事にしてくれた人たちばかりだった。
良いか悪いかは分からないが、韮崎がいたおかげで、"自分"が保てた。
「双葉…」
もう一度声にしたら、やっぱり「ばか」と言われた。

「俺、引っ越すわ…」
勝沼はぽつっとつぶやいた。この先離れて暮らすことになる。
もともと生活は一緒でなかったけれど、見守りたいところがあるのだろうか。
明野は以前から賛成していたし、反対がないのだから勝沼も移動しやすいというものだろう。
むしろ、そばにいてくれることに安堵するというものか。

韮崎が新事業を立ち上げて、そこに大月を呼び込んだことで、またいらぬ噂が飛び交った。
ただ、それら全てを、韮崎と明野で踏みつぶしていたが。

「言いたいやつには言わせておけばいい」
韮崎は言う。
それはいつか、大月が吐いたセリフか。
韮崎も明野も気に留めなかった。
その潔さが、勝沼にはどことなく、気持ち良かった。

無駄なほど広い部屋に勝沼の荷物を入れるのは一瞬のことだったといっていい。
「入りきらないならうちに置いてもいいよ。なんなら、実家、使う?」
という、明野の誘いは見事にお断りした。
整理整頓されているのは明野の家だ。
三世帯、どこかしらになにかのものがつまっている…らしいが。
それこそがおかしい、と勝沼は思う。

「大月ってどんな生活してたの…?」
そのセリフは言いたくても黙った。
まぁ、なんとなくは知っていたけれど。

ごはんはつくったことない、掃除はキーパーに任せる。時々母親がおかずを作ってきてくれていざとなればデリバリーとかコンビニがメインディッシュ。
一人暮らしの男とはこんなものか・・・
逆に同居で喜ばれてどうしようかと思ったが。

「たまにはバーベキューでもしようね」

明野の誘いは、少し怖かった双葉だ。

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