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BLの丘
春が来てくれるなら 24
2013-05-12-Sun  CATEGORY: 春が来てくれるなら
家事を全くしない大月と、韮崎と共に暮らす明野の振る舞いは全く違う。
明野が手にしていた一つのプレートには、こんもりとスクランブルエッグとカットされたミックスサラダが乗っていた。
やはりそれも、ありあわせのもの、ではあったけれど、朝食としては充分な量がある。
韮崎と明野と・・・おエライ様が揃ったような朝は、勝沼の心臓に悪いだけだった。
ただ、本人たちは、ここまで会社関係の立場を持ち込んでは来ない。

明野はダイニングテーブルに皿を置き、もたつく大月の脇にさっさと立つ。
長居をする気はない韮崎は一度リビングのソファに腰を下ろし、どうしようかと悩む勝沼をダイニングテーブルに促していた。
「勝沼くんって言ったっけ?」
キッチンから話しかけられることに、すぐにも直立不動で「はいっ、営業部の勝沼双葉ですっ」と、場所が場所なら名刺でも出しかねない様子でいる。
大月と明野が並べば、やはり"兄弟だな"などと思っていた韮崎と勝沼だったのだが、声には出さず。
会社にいるときのような堅苦しさがない分、親しみ感も浮かんでもいた。
明野に関しては、ガラリと印象を変えたというのが正しい。
軽く梳いただけの髪に、ゆったりとした服装。
いつも見ていたキッチリ感がここにはなかった。

「営業部の子かぁ。・・・あぁ、いいから座ってて。もうご飯の用意できるし。そしたら僕たち帰るから」
「いえっ、あの、そんなの俺、しますけどっ」
「できる?もぅ、大月、全然ダメな子でさぁ」
「ダメ出ししてんなよっ」
「少しはいいとこ、見せたいか」
明野はクスクス笑うし、大月は不貞腐れるし、勝沼はやらせていることに焦るし。
それぞれを観察しながら頬を持ち上げていたのは韮崎だった。
明野との関係性を打ち明けたことで、身の内に入れた感覚があるようだった。
それはある意味、大月を安定させるためもあったのかもしれない。
まだ付き合い始めで、今後何を思うかは大月次第なのだが、最初懸念していたほど、"遊び感覚"ではないことをどこかで悟るのだろう。
人を見る目とはやはり韮崎の方が優れている。
その能力が分かるだけに、明野が引き入れた背景もあった。

サーモンとクリームチーズの挟まれたベーグルと、コーヒーを運び込んでは、明野は他にやることはないかと確認してから、韮崎を立たせた。
つまりは洗濯物のことらしい。
ここの家にも洗濯機はある。
大月が使ったことがあるかどうかはともかく、ボタンを押せば動いてくれる存在に、これ以上"上司"の手を煩わせるわけにはいかなかった。
確認するまでもなく、大月の休日にハウスキーパーは来ない。
「じゃあ、ごゆっくり。不便があったらいつでも言って。今日は家ににいるから」
出かける気がないと伝えてくれるのはいいが、この家の造りに、また世間情報からしても、どこに"不便"が生じるのか分からない勝沼だった。
逆にとらえれば、こちらも監視されていることになるのだろうか。
むしろ、出かけてくれ、というものだ。

ふたりきりになっては、大月もホッと息を吐く。
今更過去をバラすわけでもないし、すでに知られたと分かれば隠すこともない。
家に呼び込んだ人間がいないとはいえ、勝沼にとっては過去の人物も同じようにもてなされたのかと思うと気分も良くはならないだろう。
向き合って、食事を取るというのも、自宅ではありえないことだったから、そこも大月は動揺するところであった。
受け止め方はそれぞれ違っていたけれど。

少しの気まずさを纏って、目の前の料理を口にする。
「おれ・・・、マジで来週からどうしたらいいの?」
ポツリと今後の心配をした勝沼を、今更・・・と大月は一蹴した。
「それは俺でもききたいとこ。もう、今更隠しはしないけどさ。たぶん兄貴たち、"落ちつく"ことを求めているんだよ。それが双葉であるかはどうか・・・」
「それ、ひどい、いいようじゃねぇ?」
「少なくとも"面接"は済ませたんだからいいんじゃないの?」
「それってさぁ、大月には"その気"があるってこと?その他同様に扱われるのは嫌だって、前から言ったよな」
どこまで勝沼が想いを寄せてくれているのか。
上辺だけの存在ではないことは、たった短い付き合いの中でも悟れたことだ。
今までの男だったら、間違いなく、同じベッドにもぐりこんできたことを思っても。
燻っているものは、当然勝沼にあって当然だった。

「俺さぁ、今更何も隠しも誤魔化しもしないけど。この家に誰かを入れたのは初めてだと思うよ。外での何らかはあったとしても。双葉に対して"その気"があるかどうかは、まだわからない」
正直な意見であって、また、今後の付き合い方に不安を覚えている。
踏みこまれて来たら、なだれ込むくらいの気安さはあるとも思う。
ゆだねたら転がってもいける、その類だろう。
一番心配したのは、別れる際のことだ。
どうしたって、明野にかかわってくるだろうから。
自分はすでに"辞める"身でいる。
一度雇った社員を個人的な意見でどうにもできない。
未確定ながら、韮崎との"今後"がある今、就職したばかりの勝沼に何かを求めるのは難しいことだった。
「先は見えなくても、踏み出してみるのは、悪いことじゃないんじゃないの?俺だって褒められた人生送ってきたわけじゃないし。そこはさ、お互い様、と開き直るくらいでいいと思うよ。俺は今の大月を気に入っている」
臆面もない堂々とした告白には大月の方がうろたえた。
こんな場面は過去に幾度もあったというのに。
勝沼を相手にしたら、どうしたものか。

「ばか・・・」
大月のつぶやきをさらりとかわして、食事を再開させてしまう。

勝沼が言った言葉より、この部屋に誰かがいるという"温かさ"が、大月には面映ゆかった。


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コメント

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お兄様の登場~♪
コメントけいったん | URL | 2013-05-12-Sun 10:44 [編集]
と、喜んだけれど この明野って人は…
鈍ちんの ただただ 良い奴なんだか、韮崎のオイタを知っていても 素知らぬ振りが出来る 韮崎を上回る策士なんだか、ちっとも 分からないやぁー(笑)

それにしても なんとな~く 一族に スンナリと認められた勝沼には これから先の活躍を期待しているからね♪
素直じゃない大月の事を ((*'∇'*)ヨロ((*・v・)シク( _ _)デス♪


私事ですが、
昨日の昼食に シーフードパスタを作って 美味しく食べたのは いいですが、
夕方から お腹が ピーピーとなり トイレと仲良く お友達させて頂いておりました!
原因は、ホタテか?エビか?アサリか?
食べてる時に 何にも異臭も異味も 感じない私って…苦笑_〆(´Д`ll)ハハッ

みなさんも お気をつけてね~:*:・'゜ (〃ゝ∇・)ゞえヘッ♪
けいったんさま こんにちは
コメントたつみきえ | URL | 2013-05-12-Sun 11:01 [編集]
ご一緒したようです。

次回 【明野号】を書こうかと思っていました。
いつものように、あっちこっち視点かわっているんですけれどね・・・

まぁそこで少しでも明野の性格とか、韮崎との関係とかが見えてくるかなぁと考えていたのですが。
(つか、読者様って、やっぱり先を読んでいるよね・・・汗汗)
いっぱい絡んでいる人物たちではありますが、いずれ、おちつくところに落ちつく、そんな話です。

けいったんさま、おなか大丈夫ですか?
火を通しすぎては硬くなり過ぎ、だからといって、未熟者はまたオイタをするってものでしてねぇ。
魚介類ってちょっと怖い存在ですね。
これから暑くなって、食中毒も多発しますよね。
本当に皆様お気をつけなされ。

とにかくうがいと手洗いを徹底して・・・(←って、何回言うんだ?!でもそれくら重要なのですよ)
またね(^.^)/~~~
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