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BLの丘
春がきてくれるなら 18
2013-05-07-Tue  CATEGORY: 春が来てくれるなら
勝沼に尋ねられたことに、次はどんな言い訳、というか、誤魔化しの文句を並べようかと逡巡してしまう。
すでに知られた情報なら、どれだけでも公開できるが、更に突っ込まれるとなると・・・。
それでも、本当に言葉に詰まってしまえば、勝沼の事だから、深く追求はしてこないだろう、と甘えがあったが。

明野と韮崎の出会いを聞かれては、とりあえず「そう・・・」と答えるしかない。
新入社員とはいえ、会社にまつわるあれこれを耳にしていない人間ではないのは確かだ。
「中学の時から付き合いのある・・・、これはなに?幼馴染っていうくくりになるの?」
「中学っ?! なっげぇなぁ・・・」
「だねぇ。俺、小学校低学年で知り合ったもん」
「そっちもなげぇなぁ・・・」

明野と韮崎の出会いは、中学の入学式だったか。
明野は小学校から私立だったが、韮崎は中学からの編入になる。
どんないきさつがあったのかは知らぬことだし、記憶もない。
ただ、そこから明野と韮崎は、つかず離れずといった環境で、長年を過ごしてきた。
家に訪れたことも多々あったし、大月も嫌いな存在ではなかった。
大月が高校生の時、改めて父の会社に就職することを決めた明野は、同時に韮崎も呼びこむことを交換条件としてつけていた。
良く知る人物だけに、父にも抵抗はなかったのだろう。
その頃には大月も遊び歩いていた時で、韮崎という人物が、同じように世を渡っていることも気づけた。
就職して一年もしたころだろうか。兄と韮崎が同居すると言われて訝しく思ったものだ。

社内でのことは、当時の大月には興味もなかったし、どうでも良いことであって、会社にまつわることで少しでも時間が必要だったのかと、その程度に捉えていた。
二人が『恋人同士』という考え方は、韮崎の性格を知るだけに、抜け落ちたと言ってもいい。

ふたりの在り方に疑問を抱き、気付いてしまったのは、韮崎の醸し出す明野に向けた雰囲気があったからだろう。
昔からの交流で大月は、韮崎がどんな性格で、明野がどんなふうに受け止めているのかも承知していた。おかげで、口出しをすることはなかった。
自分だっていちいち意見されたら気分が良くない、と。
明野との付き合いが始まっても、外に出る韮崎を知っていたが、そこも黙ってあげてしまった。
今となっては良かれとした対応だったのかは疑問でもある。
韮崎を図に乗らせることになったのではないか・・・。

「詳しくは知らないけれど、韮崎さんって、御坂さん・・・あ、お兄さんね、の片腕だって聞いてたけど、それって、長年の付き合いの信用があるから?」
妙に感心した様子で勝沼が語ってくれる。
培ってきたものがあるからそばにいる・・・。
今でこそ貫録をつけているが、入社当時はどうだったのだろうか。
「信用、ねぇ・・・」
大月は勝沼の言葉を反芻しながら、"二人の肉体関係"から離れられそうな続きを探す。
あとでバレたとしても、嘘にならない"真実"。

「あのさぁ、これ、ちょっと他の人には黙っててくれる?」
前置きをすると、勝沼は「もちろん」と自信たっぷりに答えてくれた。
大月を裏切らないだろうという自惚れがあったから、また、人間性を確かめたい賭けのようなものが脳裏を横切って行った。
「兄貴は絶対に信頼できる人間にそばにいてほしかったんだよ。今の俺じゃないけれど、社内で噂されることなんて山ほど出てくるじゃん。裏切らない存在っていうかさ。あとはそれらを抑え込む実力を将来身につけてくれる能力が見込める人。まぁ、どこでひっくり返るかは分からないけれど、とりあえず兄貴の将来って、今の親父じゃん」
「やがて社長秘書にでもなるの?」
「さぁ?そんなの、俺知らないよ。本人たちの問題だし。無能なら切り離すんじゃねぇ?」
「それも韮崎さん、かわいそうだなぁ・・・」
単純にクビにするかしないかの内容と捉えた勝沼に、大月は少しだけ安堵の息をはいた。
人の話を素直に聞き入れてしまう思考回路は、勝沼の性格の表れのようだった。
ただ、その単純さは時に心配になりそうだけれど・・・。
散々コキ使われて、裏切られて、追い出されてしまえ、と内心で思っていたことはもちろん言わない。
韮崎ほど、『かわいそう』という言葉が似合わない男もいないだろう。

話題が悪かったのか、精神的な苛立ちが協力してしまったのか、いつもよりもずっと早いペースでグラスが空いていった。
焼酎をボトルで頼もうと提案した大月に、勝沼は飲みきれるのか不安を抱きつつも、自分たちの都合の良い感じで飲めるので頷く。
これでまたしばらく、店員の姿を見かけることはなくなる。
軽く流す程度に話していたところに、神妙な顔つきで勝沼が視線を向けてきた。
「大月さぁ、・・・あんまり気にするなよ」
「何が?」
「あの、ほら、色々言われて・・・」
どことなくオブラートに包んだような物言いに、自分たちを取り巻く噂話のことかと気付く。
「もしかして三角関係のこと?」
自分から切り出してしまえば、多少の焦りが見えたが、勝沼自身も気にしていたと顔に出ていた。
上野原の登場が、ただの部室内のことにとどまっていない背景は隠しようもなかったか・・・。
分かっていながらあえて突っ込んでこない。
・・・敏い男だ・・・。

「アイツらに関わる気はないけど・・・。そういえばさ、双葉って俺とどんな付き合いでいたいの?抱きたいわけ?」
今よりもより一層親密な関係になりたいのか、軽く発してしまった言葉に、勝沼が固まる。
いきなり飛びすぎたか・・・?
抱く、抱かれる、があたりまえだった大月にとって、当然の質問だったのだが、受け止め方は人によって異なる。
欲求があるなら、今日にでも、と大月は思っていた。
どんな対象なのかで、今後の付き合い方も変わっていくだろうと淡々とした思いがよぎっていく。


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コメント

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そこまで喋って いいの?
コメントけいったん | URL | 2013-05-07-Tue 11:50 [編集]
あまりにも 大月が ペラペラ喋るもんだから 心配なっちゃうよ!
まぁ 確信的な事は 避けている様だけど…
でも 勝沼が 敏い男だったら ヤバくない!?

世間と人を ちょっとナメタ感がある大月
手酷い しっぺ返しを食らわないと いいけどねーケ―ッ((Θ∀Θメ))ケッケッケッ 
管理人のみ閲覧できます
コメント | | 2013-05-07-Tue 11:58 [編集]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
けいったんさまこんにちは
コメントたつみきえ | URL | 2013-05-07-Tue 14:36 [編集]
なんだかちょっと一息つけた午後の時間です

酔いもあるのか、苛立ちもあるのか、安心感もあるのか、すっかり軽くなった大月のお口ですね
それを聞いたところで、勝沼がどう出てくるのか・・・
一応、詳細までは語っていない(つもりでいる)大月です

> 世間と人を ちょっとナメタ感がある大月
ホントですね~。
私もこういった人物を書くのは久し振りか、初めてかなので、戸惑うところがたたあります
どんな仕打ち(お仕置き)が待っているのやら~Σ (゚Д゚;)

またね(^.^)/~~~
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