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BLの丘
淋しい夜に泣く声 63
2009-10-22-Thu  CATEGORY: 淋しい夜
英人は車の中で隣に並んだ榛名から、最初に謝罪の言葉を聞いた。それから全ては野崎が根回しをして実行したことで、榛名自身何も知らなかったのだと告げられた。
「え、じゃ、あのお金は…」
「野崎が勝手にやったことだ。それに俺はたかが500万くらいのはした金でおまえを手放す気はない」
「ご、ごひゃく~ぅ?」
榛名が淡々と語れば、聞き耳を立てていたらしい日野からすっとんきょんな声が上がった。
一般人から見れば、正式な書類が交わされたわけでもない男同士の別れ話に出てくる金額ではないはずで、日野の驚きぶりは納得できた。しかも榛名は『たかが』とか『はした金』と言った。
先程無理矢理手渡された万札を見ても、榛名の身分や立場は一般人と違っていることを思わせていたが、さらりとこぼれた榛名の台詞は日野に新たなショックを与えたようだった。
一応、その前に英人との会話の中で『身分違いの恋』と語られたところで、ある程度想像はしていたようだが、実際に見聞きするのとでは違ったようだ。

日野は特に言葉にしなくても、榛名の行動や考えを汲み取っているところがあって、それは榛名の気に入る『人種』のようだった。榛名を前にして物怖じしない日野の性格は、榛名に嫌われることはなかったようだが、榛名の知らない世界の英人を囲ったという意味ではあまり良い印象を与えていそうにない。それでも日野の反応に嫌悪を示すこともなく、むしろ笑顔を浮かべたくらいで、英人の方が驚かされた。
榛名が人を近づけることはまずなかった。特に英人に絡む人間はたとえ友人でも牽制したくらいだ。

榛名から改めて「手放す気はない」と告げられて、英人は胸の中に沸き立つ熱さにまた涙を零してしまった。
やっぱり榛名を信じるべきだったのだろうか。
全てを悟ったように榛名から溜め息まじりの声が漏れる。
「あれほど自己解決するなと言っておいただろう。おまえが下す判断は必ず間違った方向に行く。どうして野崎に言われたことを素直に俺に言わなかったんだ」
「だって…」
昨夜問われても黙って過ごしてしまった英人を咎めたが、激しく怒られることもなかった。それどころか、気付かなかった自分自身をまたもや責めているようだった。
あの状況下で榛名の将来を第一に考えてしまったことを、榛名も理解しているらしく、それ以上口に出すことはなかった。遠まわしに、余計な心配はしなくていいと言われているような気がした。
榛名の大きな手が頬を包んで、親指の先で涙を拭ってくれる。
さすがに日野の手前、それ以上の行動は避けたが、再び寄り添えた嬉しさは言葉にできないほど英人を幸福感でいっぱいにしていた。

日野と英人の繋がりがどんなものであるのかも問い詰められた。これについてのほとんどは日野が答えたようなものだった。アヤシイことはないと繰り返しながら、日野がバーテンダーをしていること、以前店で英人を見かけたことがあったことなど、自己紹介を交えて榛名に説明をしていく。
「どうりで見たことがあると思った」
初めて英人に声を掛けた夜のことを振り返りながら、榛名が呟けば、たった一度しか会ったことのない顔を記憶していた能力に英人も日野も感心するしかなかった。
ついでに、野崎が日野の勤めるバーに顔を出したことやマンションまで付けてきたことを伝えると、「良く野崎を巻けたな」と榛名に感心された。店に行くことまでは想定内だったらしい。
日野がなんてことないように「裏から出ちゃったから」と報告すれば、珍しく榛名がクスクスと人前で笑った。
「野崎も動揺していたんだろう。手を上げられてショックだったのか」
「手をあげた…って…」
「あまりにも勝手なことをするから引っ叩いてやった」
榛名に問うてはみたものの、あっけらかんと返された言葉に、過去に一度、榛名に叩かれたことのある英人はその時の恐ろしさを思い返して目を見開き身震いしてしまった。

きっと野崎なら小心者の英人とは違って怯えるということはなかったとは思うが、榛名が手を上げるとは相当なことだったはずだ。しかも長年仕えてきた秘書である。
その場に居合わせなくて良かったという気持ちになった。
今現在の穏やかな雰囲気を纏った榛名からはとても想像できない。
日野はもちろんそんなことは知らないから、話を聞いていただけだったが、カンの良い彼は英人の反応と榛名の楽しそうな声にきっと状況くらい読めているのだろう。

榛名が住むというタワーマンションの前まで日野に送ってもらった。英人もここに来るのは初めてで、あまりの立派な造りに日野共々口を開いてしまったくらいだった。
英人は車から降りると榛名を待たせて運転席側の窓に寄った。
「本当に、ありがとう。すごい感謝してる」
「どういたしまして。本当に生きて行く世界が違っちまったんだな…良かったって思うよ。幸せになれよ」
これまでおぼろげに英人から伝え聞いたことを反芻しながら、それでも日野は英人のこれからを喜んでくれているようだった。
暗い夜道の中で自分を見つけて拾ってくれたこと。見放すことなく、最後まで手を掛けてくれたこと。心の底から英人の幸せを願っていてくれること…。
これまで生きてきた世界がいかに危険と隣り合わせで多くの人間に心配を掛けたのかと瞼が熱くなる英人に、日野は最後まで笑顔で、英人に激励の言葉を残すとあっさりと去っていってしまった。最後、日野は榛名に何かしらの目配せまでしたようだった。
彼とは良い友達になれそうだと、英人は心の底から思った。

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コメント

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よかった!よかった!
コメント甲斐 | URL | 2009-10-22-Thu 12:44 [編集]
榛名さんにとって、日野さんは二人の愛と命を救ってくれた人といってもいい人なんですから、いい友達になるどころか恩人ですよね。

英人が日野さんに会わなかったら、今頃どこでどんな酷い目にあっているかと想像するだけで恐ろしい~~

でも、よかった、二人の仲を引き裂いたのが野崎氏の勝手な思い込みだけで榛名さんが英人を思う気持ちに嘘がなかったことが分って。
いるんですよねこういう独りよがりなおせっかいがどこにでも。
だから英人にはそんな外野の騒音に負けず強くなって榛名さんの愛を信じて欲しいです。
Re: よかった!よかった!
コメントきえ | URL | 2009-10-22-Thu 14:46 [編集]
甲斐様

こんにちは。ご来店(?)ありがとうございます。

> 榛名さんにとって、日野さんは二人の愛と命を救ってくれた人といってもいい人なんですから、いい友達になるどころか恩人ですよね。
日野は良いお仕事をしてくれたと私も心より感謝しております。
今後もいろいろな意味で英人を助け力強い味方になってくれると信じています。
命の恩人…。しみじみと千城と英人はかみしめていると思います。

> 英人が日野さんに会わなかったら、今頃どこでどんな酷い目にあっているかと想像するだけで恐ろしい~~
どうなっていたのでしょうかね…
英人に声をかける輩はたくさんいたでしょうから、まぁ無事ではなかったでしょうね。次に千城とご対面は死体か?!みたいな…(書きながら怖いと思った…)

> でも、よかった、二人の仲を引き裂いたのが野崎氏の勝手な思い込みだけで榛名さんが英人を思う気持ちに嘘がなかったことが分って。
はい。良かったです。
全ては野崎によって振り回されていたと英人も知ることができました。
千城の気持ちも改めて感じることができて、とても嬉しい時だと思います。

コメントありがとうございました。
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