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BLの丘
春が来てくれるなら 8
2013-04-29-Mon  CATEGORY: 春が来てくれるなら
大月が微笑んだことで、勝沼は一瞬ドキリとしたような表情を見せた。
誰かと"取り引き"する時に、こんな手はいつも使うことで、すっかり慣れた大月だったのだ。
そのことは韮崎も知っていることだったから、最初の時点で、大月に釘をさしていたのだろう。
あとは、『他の男』に手を出すことで余計なトラブルを生みたくない予防線を張っていたか・・・

勝沼の反応を見て、大月は先に風呂から上がろうとする。
この場で、これ以上の気を持たせることは、こちらからすり寄っているようで、これもまた大月は好きな行為ではなかった。
「じゃ、また明日」
さりげない仕草で湯船から出た。
隠しもしない態度は、場数を踏んだ証拠でもあったけれど。
じっと見られている視線も感じたが、待たせるのも一つの手段だと思っている。

脱衣所でタオルを巻いていたところに、幸か不幸か、韮崎に出会ってしまった。
この時間になれば、さすがにスーツは脱いでいて、大月では見慣れた寛いだ格好だったが、相変わらず服のセンスの良さは人目を惹く。
「こんな夜中に何しているんだ?」
訝しげに見てくるが、そういう韮崎にも当てはまる行動ではないか。
大月の考えは態度に出ていたのだろう。
声を発する前に、韮崎のほうが状況を伝えてきた。
「おまえみたいに呑気に過ごしていられないんだよ。報告事項も準備もあるんだからな」
この時間まで仕事をしていたのだと言いたげな発言に、どこまでも嫌味なヤツ、と内心で毒づいた。
「あっそ。勝手にやっていれば?俺がどこで何をしていようが関係ないだろ」
「大月」
咎める声に、一瞬ビクッとなった。
こういう時の韮崎の声はとても低くなる。
どこまで大月の生活を監視したいのか、嫌気がさしてくる時でもあった。
自由奔放に過ごした過去があるだけに、韮崎の束縛は嬉しいものではない。
身体を繋げるだけのことなら、後腐れなく付き合えるのに、韮崎が完全に自分の"駒"として使おうとしていることが分かっているから、余計に反抗したくなる。

「問題を起こすようなことをするなと、再三言ってあるだろう。研修中なんていう、人が集まっている場所では、ただでさえ目立つんだから、良からぬ噂がたつような行動は慎め」
「何もしてねぇよっ。そんなこと言うなら、連れてくるなっ」
文句をつぶやきながら、大月は手早く衣類を身につけ始めようと手を伸ばす。
その手をフイに掴まれて、咄嗟に身構えていた。
「立場が分かっていないのか?大月が参加していないとなれば、それだけで他の社員から反論を買うだろう」
「そこをうまくやるのがあんたの仕事だろう」
「まったく・・・」
呆れたため息をつかれては、ますます機嫌が悪くなるというものだ。
会社内での雰囲気を掴むのは、どうしたって韮崎のほうが上手だし、周りへの配慮も、大月ではなかなかできるものではない。

浴室に置いてきた勝沼が、大月の後を追うように出てきて、こちらも不幸なことに現場を目撃された口だった。
勝沼の話しかけようとした雰囲気があり、動揺はすぐに顔に出ている。
明らかに先ほどまでの会話を振り返っている素振りも見受けられた。
妙な誤解を植え付けたのも間違いないだろう。
大月は舌打ちしたい気分になっていた。

「あ・・・、こ、こんばんは・・・」
韮崎の登場に、さすがに勝沼も怯んだようだ。
大月の好みまで把握している韮崎は、大月の明らかな態度の変化に状況を理解してしまった。
お互い裸でいる現在、誤魔化しもきかないとは、このことだろう。
意味ありげに見下ろされて、大月は握られていた腕を振り払った。
さすがに、それ以上、韮崎も大月に接触してこようとはしない。
「緊張でもして眠れなかったか?気分転換に利用してもらうのは全く構わないが」
新入社員だと知った上で韮崎は勝沼にも声をかけている。

チクチクと責めてくる言葉は、はっきりと下品な意味を含んでいる。
大月に対して、注意をうながしているのも端々から感じられる。
それ以上誰も何も発しない空間で、韮崎は着てきた衣類を脱ぎ始めていた。
見られることに慣れていた韮崎は、勝沼の感心したような視線も、気付かないふりで浴槽へと身を滑らせていく。
確かに嘆賞するに値する体躯だったが、同時に妬みを買うものでもある。

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