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BLの丘
嘉穂と香春のGW
2013-04-22-Mon  CATEGORY: 待っているよ
連休中の水族館はとても混雑していた。
家族連れの賑やかな声や、係り員の放送がひきりなしに耳に飛び込んでくる。

香春のママから、「新聞屋からチケットをもらったから、行ってくれば?」と渡されたのはつい先日のことだった。
家族3人で行ってもいいのだろうが、『ペアチケット』では、3人は無理だし~と明るい声で譲ってくれる。
今更、親と一緒に動きたい年頃でもないだろう・・・とは、嘉穂に対する気遣いのようでもあった。
嘉穂に、『両親』はいなかったから。

ゲートを前にしてその混雑ぶりに、香春はそっと嘉穂の腕に手を伸ばしていた。
人ごみに押されて、迷子になりそうな不安が襲ってくる。
それが分かるのか、嘉穂の手がしっかりと香春の手を握ってくれた。
人前で照れくささはあるのに、嘉穂の態度は変わらなく凛々しい。
香春から伸ばした手なのに、きちんと受け止めてくれること。
「か、かほ、くん・・・」
「香春、迷子にしたら、香春のお母さんに怒られちゃうもん」
「それだけ?」(ちょっと拗ね気味)
「一緒に見たいの」
さりげなく繰り広げられる会話が、じんわりと香春の胸に染み込んできて、香春のほうから、もっと強く手を握った。
「僕、迷子にならないよ」
「迷子になんかさせないよ」
そんな会話を続けながら、人の流れに沿ってゲートをくぐった。

どっち見ても人の頭。
香春の視点からは人しか見えない館内に、背の高い嘉穂がそれとなく道を作ってくれる。
小学生の子供と一緒に促されることはちょっと納得いかないけれど、背後についた嘉穂が同じ光景を視界に入れていた。
隣に並ばないのは、やはり小さい子に配慮した結果だと思う。
少しでもスペースを広げてあげること。
嘉穂なりの優しさが感じられて、香春は何度も首を後ろに向けては感想を言いあった。
離れないようにと、お腹の前に回される逞しい腕も気持ちいい。
振り返りざま、微かに触れる唇があって、驚きもしながら、何もなかったように、また正面に向き合って誤魔化す。
心臓のドギマギで、何を見たのかも分からなくなる動揺があったのだけれど・・・。

半分くらい見終わったところで、広場に出た。
広い芝生の上には、家族連れなどがシートを敷いてくつろいでいる。
数か所あるベンチは、とっくの昔に埋まった、という感じだ。
ポカポカと陽があたるところは寝転がるのにも気持ちいいだろう。

「香春、早いけど、ご飯食べようよ」
この先の時間はまた混雑するのだろうと分かるのか、また、混雑に疲れた見学だからだったのか、
休憩を促されて嫌な気持ちはしない。

香春のママはいつもお弁当と一緒にレジャーシートも入れてくれている。
二人で座るのにちょうどいいサイズ、は、そろそろ物足りない大きさに変わってくるだろうか。
ずっと使い慣れたものを広げて、バスケットの中から、お弁当箱を取り出した。
そしてやっぱり入っている"たまごサンド"に、真っ先に嘉穂の手が伸びては、香春は万遍の笑みを浮かべた。
これだけは香春の手作りだと知っているからこそ。

ごはんを食べて、まだ続く混雑を傍目に、のんびりとしながら、嘉穂がそっと声に出した。
「今日、全部、見られなくてもいいよな。また今度、一緒に来よう」
人にもまれることをあまり良く思わないのか・・・。

ずっと香春を囲うように移動してくれた存在は分かっている。
それが"ちかん"をよせつけない対策だった、とまでは、香春は気付けなかった。
単純に、そばにいられることを喜んでいて、その笑顔を見ては嘉穂は嬉しそうに、また満足していた香春だったのだが。

GWの人ごみのなか、より近さを実感するのだろうか。
こんなに人が多いから、平気で手も繋げられたのかもしれないけれど。それは悪いことではない。

「また、何度でも何回でも来ようね」
香春が頷いて、嘉穂も安心した雰囲気を見せてくれた。

「かわら、ケチャップ、ついてる」
ソーセージの挟まったパンを頬張ったあと、見返してきた嘉穂が、ちょっと呆れたように、でも見守ってくれる眼差しで顔を近づけてきた。
一瞬の出来事。
ペロッと口端を舐めた。

まさか嘉穂から、それもこの、太陽の下で、けしかけられるとは思わなかった香春は、直後には飛びついていた。
「かほくーんっ」

「俺、どんなに人が多くても、香春だけは見失わない」

告げられたことに、香春は目頭が熱くなっていた。
初めて、たまごサンドを食べてもらったときよりもずっとずっと、ジンとくること。

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コメント

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かほー
コメントちー | URL | 2013-04-22-Mon 14:54 [編集]
まだまだ子供だと思ってるのに、外でチューとか。
誰に教わったの?
兄ちゃんじゃないのは確かね。
ほらくんもやらなそうだしー!

あ、双子ちゃんか!
旦那達が甘やかすから←違う

かわらちゃんもねー、拒みなさい。
(無理~とか言うね、絶対)

この子達が高校に入る頃には、立派な夫婦になっていそうで怖いわ(笑)
兄ちゃんは、あんなにウブだったのに。
いや、フクちゃんか・・・
ちーさま こんにちは
コメントたつみきえ | URL | 2013-04-22-Mon 15:50 [編集]
一家の中でいちばんのおませさん、嘉穂ですね。
香春の"憧れ"ている部分もあるのでしょうが。
お兄ちゃんたちは冷静に判断するところがあっても、そこは子供。
感情のままに動いているかも(笑)

  そうか・・・双子をみて憧れたのか・・・(目の毒だな)

今中学一年生(のはず)なので、高校に入るまでにはまだ時間はあるからね。
まぁ、香春んちはパパもママも協力的なので、『夫婦』になるのはあっというまでしょう。
年齢差はあっても同時に進んだ三兄弟でしたね(爆)

久し振りに読み返しちゃったよ。
コメントありがとうございました。
香春ちゃん~~
コメントnichika | URL | 2013-04-22-Mon 20:02 [編集]
すこしずつ 大人になっていくのよ  たまごサンド niも食べたい!!!

嘉穂せらず 保護者になってね  先は長いのだから

師匠 季節の変動が大きいから しっかり治してくださいね
でも食べ盛りのお子がいるから ゆっくりはできないでしょう お大事に
きえちんも 油断してはダメですよ
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