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BLの丘
筑穂10歳の時 1
2013-04-18-Thu  CATEGORY: 待っているよ
数日前から両親は家に帰らなくなった。
正確には母親が入院して、父親が付き添っているからで、父親は時々筑穂の様子を見に来ては、また病院へと戻っていく。
筑穂も連れられて、母親の顔を見ることはあるが、家へと帰されていた。
頭を撫でてくれる母親に、自然と「がんばってね」という言葉がこぼれて・・・。
それは誰から教えられたわけではないのだけれど。
なんとなく耳に残っている言葉だった。

両親の代わりに、母方の祖父母が家にやってきた。
「お義父さん、お義母さん、どうか筑穂のことをよろしくお願いします」
深々と頭を下げた父親に、ニコニコと祖父母は返し、「何かあったらすぐに連絡を・・・」と釘をさしていた。

母親のお腹が徐々に大きくなっていくのを、筑穂も間近で見ていた。
「赤ちゃんができたのよ」と母親は嬉しそうに笑った。
その笑顔につられて、筑穂も微笑んだ。
父親は筑穂と向き合った。
「お父さんとお母さんが筑穂を大事にしているように、今度は、新しく生まれてくる子を、筑穂も一緒に三人で大事にしような」
"ゆびきりげんまん~♪"と歌った父親の心は、少し痛かったのかもしれない。
もしかしたら、淋しがらせてしまうかもしれないと危惧していたのだ。

筑穂の周りにも、兄弟のいる人はたくさんいた。
だから、どんなふうになるのかくらいは理解できていたつもりだった。
しかし、いざ、両親とも離れてしまうと、淋しさだけが胸を襲う。
その気持ちが分かるのか、いつも以上に明るくて元気で優しい祖父母だった。

「筑穂くん、おいなりさん、作ったよ。野菜の天ぷらもあるよ。ブリ大根は筑穂くんの口にあうかしら」
祖母が作ってくれる料理は、母親の味と変わらない。
それが唯一、母親がすぐ近くにいてくれている気持ちにさせてくれた。
「もうすぐかしらね・・・」
そんな祖父母の会話を聞きながら、筑穂はいつもと同じように元気なフリをしてしまう。

10年ぶりの出産に、大事をとって入院させたのだということは、筑穂も聞かされてはいたけれど。
まだ、イマイチ実感がわいていなかった。

翌日も学校から帰るのを待っていたように、祖父母がおやつを食べさせてくれて、「宿題をやっちゃいなさい」と促される。
一時間したら、病院の御見舞いに行くそうだ。
二階に自分の部屋を与えられていた筑穂は階段を駆け上がり、少しの傷が出来始めた勉強机に座った。
「物は大切にしなさい」と教えられている筑穂の机は整理整頓がきちんとされていて、落書きなどは一切なかった。
机の上にランドセルを置く。
母親と短い面会時間を過ごし、また夜は家に戻ってくるのだろう、とゆっくり過ごしていた。
ずっとそんな毎日だったのだ。

それが30分も経たないうちに、階下から祖母の甲高い声が響いてきた。
「筑穂くんっ、支度してっ。出かけるわよっ」
「え?」
「筑穂っ、そのままでいいから降りてこいっ。じぃちゃん、車のエンジンかけてくるからっ」
慌ただしい雰囲気は、筑穂を緊張に落とし入れる。
慌てて階段を下りていけば、待っていた祖母が滅多に見せない落ち着きのなさで待ち構えていた。
「上着は? あぁ、居間に何かあったわね。あれでいいわっ」
再び階段を上る時間すら惜しいといった感じだ。

「どぅしたの?」
「お母さんに陣痛がはじまったのよ。今、お父さんから電話が来て、今日にも産まれそうだって」
イマイチ理解できない筑穂だったが、祖父母の慌てぶりに無駄口を挟んではいけないのだと悟る。
祖母が助手席に、筑穂は後部席に乗った。
「お父さん、運転、気を付けてよ」
「おまえこそ、落ちつけ」
前席のふたりの会話を黙って聞いていた。

病院に着くと、いつものベッドの上で、母親は苦しげに呼吸をしていて、その背中を父親が真剣にさすっていた。
どうしたのかと、筑穂は走り寄った。
「お母さんっ?!お母さんっ!!」
母親はうっすらと目を開けて、「大丈夫」というように、薄く笑った。
だけどその顔は、また歪んでしまう。

あんなふうに苦しむ母親の姿なんて見たことがなかった。

父親が祖父母を振り返った。
「まだもう少し時間がかかりそうなので・・・」
「えぇ、そうよね、そうよ」
分かったように祖母が頷いていた。
それから筑穂の手を取った。
「筑穂くん、待合室に行きましょう。ジュース、買ってあげるから」
「でも、お母さんがっ」
「大丈夫。筑穂くんとお父さんがずっと待っていた人をお母さんが連れてきてくれるの」
ニッコリと微笑まれて、筑穂はまた母親を見下ろす。
母親はまた笑って、「筑穂、待っててね・・・」と微かな声を発した。

―つづく―

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ぼちってしてくれるとうれしいです。
あれ、終わらなかった。
というか、こんなの読んでいても楽しくもなんともないですよね・・・
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コメント

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穂波誕生!
コメントちー | URL | 2013-04-18-Thu 04:33 [編集]
お母さん、頑張って~。ヒーヒーフーだよー(でしたかね?)

小さいときから、お兄ちゃんは良い子だったんだねー。
一人っ子の期間が長い長子ってちょっと違うけど、お兄ちゃんはお兄ちゃんなんだよね。
穂波が誕生して筑穂くん、いよいよお兄ちゃんだ。

次が楽しみだなあ。
筑穂くん、赤ちゃんを可愛がるの巻。
かしら?フフフ。
お子ちゃま筑穂くん♪
コメントけいったん | URL | 2013-04-18-Thu 11:01 [編集]
10歳違いの弟 穂波の誕生
一人っ子で育って来た筑穂には 弟の誕生は嬉しい様な そうじゃ無い様な ちょっと複雑?

今まで 両親や祖父母からの愛情を 一身に受けていたんだから
その愛情が 分散される事に 最初は戸惑い 淋しくなるかも…

でも それは 私が考え過ぎていて
10歳も離れているし 筑穂の性格を思うと 最初から「猫可愛がり」ぶりを発揮するかもね~♪ 

末っ子の私には 全てが 想像でしかないわぁ~
(@ ̄◇ ̄@)。。。oO○…?

 
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