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BLの丘
誘われたその先に 11
2013-03-24-Sun  CATEGORY: 誘われたその先に
連絡先を交換したこともあったのだが、何故か高槻からメールが届くようになった。
もちろん、それは嫌なことではなく、大人になったような、周りの友人たちより、一歩先をいけているような優越感でしかなかったのだけれど。
家庭事情を知ってしまっては、店に高槻が羽衣を連れてくることも納得ができたし、羽衣に対して、不用意な言葉をかけないようにと気も使った。
少なくとも『お父さん』という単語は絶対に発しなかったし、自分の育った過程もできるだけ控えた。
その反面で、高槻は周りの子と同じようにさせようとしているようだった。
高槻は頼れる兄のようで慕っていたし、歩み寄ってきてくれる態度に安心感が芽生えていく。

夕方、羽衣を連れて現れた高槻は、和泉を見つけては、新しく出たぬりえがあるか?と問い掛けてきた。
つい先日、女の子に人気のアニメ漫画のキャラクターが載ったぬりえが発売されたばかりで、それのことだと即座に理解できた。
売り場に行けばすぐに分かるものだと思うのだけれど、馴染みがなければ判別しにくいのかと、案内してあげる。
何人ものキャラクターが、色々なポーズをとったものが20ページほどある。
吹き出しにはひらがなの練習ができるように、薄文字も書かれていた。

「女の人って流行に敏感っていうか、本当に感心させられるよな」
高槻がぬりえをペラペラとめくる羽衣の背後に立って、ぽつりとつぶやく。
感心、というより、半ば呆れてもいるような態度だった。
最近、高槻の口調は、最初のころとだいぶ変わっている。
堅苦しさがまったくもって剥げ落ちていた。
年下の、ましてや店員に対してかしこまる必要はもちろんないわけで、当然といえば当然なのだが。
全体的な雰囲気の中に親近感を含ませてくれている。
店員と客、それを越えたものは、付き合いやすさを滲ませる。
それが和泉にはとても居心地の良いものとなっていた。

話しかけられ、ささやかでも会話が生まれることが嬉しいのだ。
「誰かに聞いたんですか?」
「幼稚園の友達が自慢していたらしい。それを姉貴が聞きつけて、御用達に使われてるわけ」
「へぇ。これ出てからまだ一週間もたっていないのに」
「だからあの情報アンテナが恐ろしいんだよ。どこからでも仕入れてくる」
「お姉さんは特にすごそうですよね・・・」
思わず口からこぼれてしまった言葉に苦笑が浮かべられる。
口を滑らせた・・・と後悔しても、こんなところをつついてくる高槻ではなかった。
逆に対等に付き合ってくれていると思われるようで、喜ばれるくらいだ。
「ホントホント。どんな情報網があるのかと不思議になるくらいだよ」

現在32歳の高槻の姉は、独身時代に今の会社を起業したそうだ。
その後結婚して姓は変わっているものの、ビジネス上旧姓のままで仕事を続けているらしい。
輸入小物を扱っているとのことで、海外出張はしょっちゅうだとか。
だからこそ、羽衣を甘やかす心理状態も納得できるものはあったが・・・。
自分の目で確かめる"根性"には羨望の眼差しが向けられていることを、和泉は感じとっていた。
二年の時を経て、彼女と同じ年になった時、自分は、姉と同じように采配をふれるだろうか、という弱音を一度だけ聞いたことがあった。
目標とする姿であり、またライバルであることをほのめかされた。
社会とは、そうやって切磋琢磨して生き延びていく場所なのだろう。

「いーちゃん、これ、ふたつ、かっていい?」
「ふたつはダメだよ。それにひとつだって、どうせ途中で飽きるだろ」
「小路(このみ)ちゃんといっしょにぬるの」
背後を振り仰いだ羽衣がいつものごとく、『おねだりモード』に入ると、事によっては強く出られない高槻だった。
友達付き合いのことまで言われたら尚更なのか。
"新商品"であるのは確かで、相手も手にしていない品だとは、その発言が物語っている。
小さなため息のあと、高槻は二冊を手にして、それを和泉に渡してきた。
「悪いけれど、別々の袋に入れてもらえるかな」
こちらとしては売り上げになるので万々歳だ。
「はい。かしこまりました」
わざとらしく畏まった口調をすると双方に笑みが浮かんだ。
先に進む和泉の後を、羽衣の手を引いた高槻がついてくる。
高槻が仕事で使うのだと思われる備品を購入する時も、羽衣を連れて来た時も、会計に至るまでの処理は必ず和泉に託されるのが常となりつつあった。
だからレジでもずっと会話が続いている。

「和泉くん、今日は何時まで?取引先の人から、一度店を見てもらえないか、と言われたレストランがあるんだけれど、良かったら一緒にどう?」
時にはこんな突然の誘いもあったりする。
大概は事前に連絡があるのだが、今日、ここまで来たのは、急なことに、その確認を取るためもあったのかと頭をよぎってしまうのは自惚れだろうか。
たぶん、高槻自身、急に空いた今夜の時間なのだろう。
姉同様多忙なのは、これまでを見ても承知していることだった。
そうやって声をかけてくれることが、また和泉を高揚させる。
しがない学生なのに、高槻の中で存在感を増しているような錯覚に陥らせてくれた。

ぬりえを紙袋に収めながら和泉は返事をする。
「大丈夫ですけれど・・・。羽衣ちゃんは?」
「あぁ、姉貴、帰ってくるし。さっさと仕事を片付けたいから俺がこんなこと、やっているんだよ」
こんなこと・・・とはこの買い出しのことか・・・。
家族を思う、姉と弟と子供の関係が垣間見えるようだった。
高槻が動くのは、羽衣のためでもあり、また姉のためでもあるのだろう。
口ではどう言おうが、溢れる愛情はそこかしこに見受けられる。

和泉は二つの紙袋を、ビニールの手提げ袋に入れてやった。
「でも閉店まで待っていると、遅くなっちゃいません?」
「今日はラストまでだったか・・・」
少し考えたげに口をつぐむ態度を見ては、聞き耳を立てていた(嫌でも聞こえていた会話)店長が、すかさず、ふたりに向き直ってきた。
「茨木くん、今日分の陳列、もうほとんど終わっているし、早上がりでいいよ」
「じゃあ、7時に迎えに来ようか」
間髪いれずに高槻が返事をしている。つまり和泉の退勤時間は7時に設定されたわけだ。
今になって、何故この話題をこの場所で高槻が持ち出したのか、理解できるものになった。
故意的に店長の耳に入れたかったのだ。
唖然とする和泉を置いて、「それじゃ」と羽衣の手を引いて店を出ていこうとした。
振り返った羽衣が「じゃあね」とオマセ感満載で和泉に手を振ってくる。
ひきつった笑みを浮かべて羽衣に手を振り返してやる。
こんなふうに押し進められても全然嫌ではないのだから、また困ったものだった。

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コメント

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高槻氏、頑張ってる!
コメントけいったん | URL | 2013-03-24-Sun 13:52 [編集]
和泉の前では 大人の余裕をカマシテいる様ですが、
何だか 高槻氏に 必死さを感じるよ~(笑)

女に(男も?) 不自由しなそうなのに もしかして 和泉に一目惚れした?
「ダシ」に使われている 羽衣も 大変だね~ダヨネェ(oゝД・)b

『うーの 日記』
アタチの すきなアニメの えほんが でたんだって!
おんなのこ として みすごせないわ~

ママに いったら いーちゃんが つれていって くれるって♪
ぜったい あの おにいたんの おみせに ちがいないわ!

それでね、ママがね、
そのときの いーちゃんと おにいたんのようすを おしえてって!
うーは、タンテイさんに なるんだよ♪

もぅーくんパパは まだ げんきないの?
いーちゃんは げんきに なったよ~

もぅーくん、たんていごっこで あそぼうね♪
( ̄ー ̄(^_^* )ゝ 。。。。。。チラッ(・`ω[壁]...
必死ですね(笑)
コメントきえ | URL | 2013-03-24-Sun 14:49 [編集]
大人でいながら、若い相手に焦りもあるかと。
だって、和泉、『女』狙いの子だしね。
高槻も不自由しないだろうに、思った人には振り向いてもらえないんだね。
「ダシ」もなかなか大変です。


『ももやのにっき』

うーちゃんから たんていごっこしないかって さそわれたんだー。
元気がなかったパパも、元気になるだろうとおもって あのお店に隠れて行ったら・・・

なかよくおはなしするてんいんさんと うーちゃんのおじさんのすがたに
パパは「きょうはかえろう」とお買い物もしなかった

パパはきょうもさみしそうだ
そういえば、うーちゃんのおじさん、ちかごろ、うちにこないなぁ
たぶん きっと うーちゃんのおじさんとおはなしできたら パパは元気になれるんだとおもうけど

うーちゃんに そうだん してみようかな
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