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BLの丘
誘われたその先に 10
2013-03-23-Sat  CATEGORY: 誘われたその先に
和泉はホテル内にあるレストランに案内された。
入口からでも分かる高級感にひるんでしまう。
「ちょ・・・っ、えっ?!」
「ステーキなんだけれど、嫌だったかな?」
そっちの心配ではなくて・・・と思わず内心で突っ込みが入ってしまう。
こんなところの敷居を跨いだことのない和泉だ。
ファミレスで食べるくらいのステーキならいくらだって拝んだことはあったし好きだったが、それとは全く異なる世界が広がることくらい容易く想像できる。
「そ、そうじゃなくて・・・。俺、こんなところ、来たことないし・・・」
「ならば余計良かった。味わってもらえたら嬉しいな」
焦る和泉をものともせず、スッと背中に手を当てられて先へと促される。
店内はどちらかといえば和の趣で飾られていた。
10席ほどのカウンター席があり、他は広い空間にテーブル席が並べられている。窓ガラスの向こうは夜景が広がっていて、雰囲気だけでも高額な金額を請求されそうだと思った。
出迎えてくれた黒服の男は、高槻とはすでに面識があるようで、またこの場でも事前に話が通されていたようで、品の良い笑みを浮かべてはカウンター席に案内してくれた。
椅子を引かれて座った・・・なんていうのも初めてのことだ。
入り口側の右隣に高槻が腰を下ろして、それは出入りする人を見せない配慮のようでもあった。

ここまで来てはもう逃げようがない。
目の前には大きな鉄板があり、正面に料理長だろうか、恰幅の良い年配の男が「いらっしゃいませ」と歓迎してくれる。
「ご無沙汰しておりました。彼、若いから色々食べられると思うんですけれど・・・。和泉くん、好き嫌いあるかな?」
料理人に話しかけた高槻の視線が和泉を覗きこむ。
「い、いえ、何も・・・」
高槻は安心したようにまた料理人に向き直る。
「では今日のおすすめをお願いします。・・・ワインか何か飲む?」
再び問いかけられて、さすがにそこまでは・・・と首を振る。
「遠慮しなくていいんだよ。俺も付き合ってあげたいところだけれど、車で来ちゃったからな」
「ほ、本当にいいです。そんな、一人で飲むなんて、尚更できませんよ」
もし高槻が飲むので、その付き合いと言われれば、断ることもないが。
ほとんど初対面のような人間と初めての食事で、図々しい態度に出られる筈もなかった。
高槻はノンアルコールのカクテルを注文してくれた。

こういった場所に慣れない和泉を理解しているのだろうが、それを周りに感じさせない細やかさで、さりげなく手を回してくれて、はびこっていた緊張感が少しずつ薄れていく。
先に届けられたスープとサラダを口にしているときに、前の鉄板では野菜が焼かれだされた。

高槻は実に話題豊富だった。
また聞き上手でもあり、質問をタイミングよく挟んできたりして、和泉の私生活がどんどんと暴かれていった。
隠そうという気が和泉になかったのもあるのだろう。
それは、この一度、で終わりにしたくない、近付きたい思いがあったからかもしれない。
次々と届けられる料理に舌鼓をうち、止まらない会話に高揚していく。
魚介類からステーキまで、食べたことのないものばかりが届く。
ひとつずつ、品物を説明をされて、食べ方まで教えてもらって、普段では絶対に味わえないものばかりだ。
カットされたステーキは噛まずに消えたといっていいくらいで、目がまん丸に見開いてしまった。
「う、まっ」
「喜んでくれたようで嬉しいよ。追加で焼いてもらう?」
微笑まれたけれど、そう簡単に『おかわり』できる品ではないだろう。
それでなくてもこれまで出てきたものは、伊勢海老だ、アワビだ、土瓶蒸しだ、と目にしたことがないものばかりだったのだから。

食事が終わって、デザートとコーヒーが出された。
そこでフッと高槻が笑ったので、どうしたのかと和泉は首を傾げた。
「あぁ、ごめん。羽衣を連れてくると、必ずデザートからねだられるから。それを思いだしちゃって」
食事の席でのこと、きちんとした順番を教える上ではいけないことなのだけれど・・・と、しかし、つい甘やかしてしまう事実を教えてくれる。
思い出したように疑問が浮かんだ。
これまで見てきたものはほんのわずかでしかないが、見聞きすることは、父親と何ら変わらないのではないかと。
親戚であるのだから親しくしていてなにも悪いことはないが、どこにも『父親』の影が見受けられなかった。
「あの・・・、羽衣ちゃんとは良く会うんですか?」
素朴な疑問として口をついてしまったのだが、微笑んでいた表情は苦笑いに変わった。
「会う・・・というか、姉貴に押し付けられているほうかな。アレも活発的な性格で落ち着いていないからな。仕事のことになると没頭するし。その分、一緒に居られるときは母親全開にしてくれるけれど」
ますます分からない答えになってしまった。
お姉さんが社長で、弟が副社長なら、旦那さんは違う職業で、都合が分かるのが弟だから、ということなのか?
知らずに眉をひそめてしまった表情を見られたのか、理解したように言葉を続けた。
「母子家庭なんだよ。羽衣が生まれてすぐに、事故で亡くなったんだ。だから羽衣は父親を写真の中でしか知らない」

聞いてはいけないことを聞いてしまったと、咄嗟に後悔した。
高槻が身近にいて、できることをしてやろうという心遣いも伝わってくる。
そこにも彼の思いやりがあふれているのだと。
人の家庭事情を聞いていいほどまだ親しくもなかったのに・・・。
和泉の心情をはかってくれた高槻はやんわりと宥めてくれる。
「気にしなくていいよ。隠しているわけではないし。まぁ、そんな背景があって甘やかしているのも事実なんだけれどな」
今の生活の状況を笑って話してくれるけれど、内心はいかがないものなのだろうか。
自分の世界を見せるようで、感情は隠されているようで、近づけたと思ったものも遠ざかったように感じられてしまった。
それが何故か悲しかったのだけれど、それ以上口にされることはない。

食事が終わった後、高槻は「送っていってあげるよ」と再び和泉を車に誘う。
遠慮しても、遅くまで付きあわせたから、と譲らなかった。

「お言葉に甘えて・・・」と、自宅まで案内したが、それは高槻に住処を教えたことになったとは気付かない和泉だった。

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コメント

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ヤバイ~ヾ(´д`;)ノぁゎゎ
コメントけいったん | URL | 2013-03-23-Sat 16:47 [編集]
急に ダンナの叔母が 家に来るって!
さっきまで 家の中を 超スピードで整理&掃除してました。
いっつも 急なんだから 参るよ~~
晩御飯は 何しよう~~は~ヽ(;´ω`ヽ)(ノ;´ω`)ノう~っ


高槻氏のペースに ドンドン乗せられ 巻き込まれてる和泉
楽しそうだから まぁ いいんだけど

何と言っても 相手は 和泉よりも大人で 全てにおいて長けてる人ですから これからの事を思うと ちょっと 心配だなぁ

それに 友人の藤井寺との関係も 気になるし…( ; ´Ω`)(´Ω` ;)ねぇ

『うーの にっき』
きのうのよるは いつもより はやく かえってきた ママに 「赤ずきんちゃん」を よんでもらいました。

オオカミさんが でてきたら ママは すこし だまって
そして ちいさいこえで 「おくり オオカミ…」って いいました。

「おくり オオカミって なに?」と きいても 
ママは 「うーちゃんは、まだ しらなくて いいことよ」って いいました。
ママの ケチ!
いいも~ん、 こんど いっくんに きくもん! 

U ▼w▼ U≪≪≪ガルルルゥ 食べちゃうぞ~♪ 
コメントきえ | URL | 2013-03-24-Sun 07:39 [編集]
ももやのにっき

さいきんパパはうわのそら
うーちゃんから『こうかんにっき』もらって
何書こうかってそうだんしたら、「きょうのできごとを書けば?」
といわれて、そこにはパパとのできごとも書いた方がいいのかな。

『こうかんにっき』、うーちゃんのお母さんやおじさんに読まれるのははずかしいけれど
それはパパに読んでもらっているんだから同じかな。

内緒のお手紙は折り紙にはさんであげた
『パパがさみしがってる』
返って来たおへんじも折り紙だった。
『いーちゃんもだよ。おとなっておかしいね』
おもいを表せないのは自分たちでもあるけれど。
パパたちはどこか辛そうだと思ってしまう。
その気持ちは『こうかんにっき』には書かれなかった。
だからパパたちはしらない。
あ、追記
コメントきえ | URL | 2013-03-24-Sun 07:44 [編集]
ももや とは、藤井寺の息子です。
けいったんさまが名付けてくれました。
桃谷くんです
羽衣のお友達です。
親もお友達だけれどね。
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