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BLの丘
誘われたその先に 8
2013-03-22-Fri  CATEGORY: 誘われたその先に
高槻に連絡をとれないままで一週間以上が過ぎた。
夜の八時に閉店する店内は、時間を前にして一日の終わりの作業に追われている。
閉店後も仕事が残っているので、実際に帰れるのは30分ほど後になる。
平日のせいか、店内は仕事帰りのOLが多かった。

客を見送る「ありがとうございました~」の挨拶が多い中、時々「いらっしゃいませ~」が響く。
すでに入店している客に関しては、閉店時間を過ぎたからといって、早々追い出すわけにもいかないけれど。

ギリギリの時間に飛び込んできた客に、和泉は内心で舌打ちをした。
姿は確認していないが、掛けられる声で新客だと分かる。
何か緊急の必要なものでもあったのだろうか。それなら滞在時間は短いだろうからすぐに帰ってくれると期待する。
だけど入店してきた客は、商品を探すのではなくて、和泉を真っ先に見つけた。
「和泉くん」
特設コーナーのポップを直していた和泉は、声を聞いて振り返る。
「え?高槻さんっ!?」
久し振りに見た顔に、ひっくり返った声が上がってしまった。
連絡をしていなかった後ろめたさもあって、焦りが生まれる。
高槻は緊張していた面持ちから安堵したような吐息をはいた。
「良かった。いてくれた」
高槻にしてみたら一方通行でしかない。
自分の連絡先は教えたが、和泉につながるものはこの店舗しかないのだから。

「あ、あの・・・」
どう返そうかと困惑も混ざらせる和泉に、高槻はなおも話しかけてくる。
「なかなか連絡をもらえなかったから、やっぱり嫌だったのかと思って・・・。重荷に感じているようだったらと思って謝りに来たんだ」
「そ、そんな・・・」
これまでの期間、ヤキモキさせていたのだと知る。
高槻は高槻なりに悩むところがあったのだろう。
頑なに拒み続けた和泉の意見を聞いていたからこそ。
しかし、高槻が"謝る"必要はどこにもないはずだ。
そのためにわざわざここまで足を運んだというのか・・・。
いつもにはない、落ち着きのなさのようなものまで醸し出している感じが見てとれた。
すべての態度に高槻の誠実さと人柄が表れる。
こういう人だからこそ、人を惹きつけるのだろう。
彼自身が持つ魅力そのものだ。

「和泉くんは店員として当然、と思ってかもしれないけれど、俺の中ではそれだけでは済ませられないものがあったんだ。だから個人的になにかしてあげたかったんだけれど・・・。迷惑がられているのならこれ以上待つのもどうかと・・・」
善悪をきっちりつけ、何事にも真剣に向かう人なのだな、とはこれまでも感じることはできていたけれど。
ひたむきな思いの打ち明けられ方に瞠目したのは和泉のほうだった。
友人である学生同士のやりとりなど、とても希薄な部分が多い。
曖昧に濁して、あやふやにして、事なきを得る。
それらとは明らかに違う態度の連続に、あこがれもしたし、不安も抱いた。
いつか、こうなりたい・・・。だけどなれなかったときの脱落感を将来見たくないと思うもの。
きっと高槻が身にまとわせる立ち振る舞いも思考も、和泉の理想の域を越えているのだろう。
それらを知っていくことの恐怖。

とりあえず、高槻を嫌っていないことだけは知っていてほしかった。
「すみません、迷惑とか思っていないです。・・・ただ、そんな大したこと、していないって思ってたから、俺なんかがいいのかな・・・って」
「和泉くんだからこそ、だろ」
きっぱり言われてしまっては返す言葉もない。
大げさ・・・とずっと思っていたけれど、やはり高槻の中では考え方が違っているのだ。
応えてあげるのも筋ってものだろう。

「分かりました。あの、足、運ばせてしまってすみません。今度ちゃんと予定確認して・・・」
「今日は?」
改めて連絡を・・・と言いかけた言葉は高槻の質問によって遮られた。
「え?」
「そろそろ、仕事上がりじゃないかな。夕食がまだであれば待っているけれど?」
問われて和泉の体が固まる。
確かに閉店時間まで働いた日は、近くのコンビニで何かを買って家で食べるのが常だった。
しかしこんな急展開はアリなのだろうか・・・?

「それとも誰かに会うとか、あるのかな。これからの時間に」
何かを確認されるような眼差しに、咄嗟に「いえ、別に・・・」と正直なところが漏れれば、またホッと安堵される。
「じゃあ、決まりでいいな」
満足したように魅惑的な笑みを見せられ、強引に押し切られて何も出なかった。

高槻は「ちょっと待っていて」と言いおいたまま、踵を返して店内に消えていった。
呆然としてしまったのはもちろん和泉のほうで・・・
直後には店長を連れだって戻ってきた。
「茨木くん、今日はもういいからあがりなさい。一日お疲れ様」
こちらも強引に終業時間を告げてくる。
鳩が豆鉄砲をくらった状態で訳が分からないでいるうちに、高槻から発された言葉は「さあ、帰ろう」の一言だった。
先程まであった"しおらしさ"は何処・・・?

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ぼちってしてくれるとうれしいです。


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コメント

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あかずきちゃん♪
コメントけいったん | URL | 2013-03-22-Fri 10:52 [編集]
今度は 閉店間際に 登場ですか、高槻氏!
和泉からの連絡が来ない事に もう待ってられなかったんだね。
ほんと どれだけ ご執心しちゃってるのかしら♪

『うーの にっき』
いっくんが さいきん へんです。
けいたいでんわをみて ためいきばっかりしてます。

みっくん(=藤井寺岬 =藤井寺の息子)のパパと すっごくすっごく なかよしさんだったのに まえみたいに あってないし ケンカしたのかな?

きょうの ねるまえの えほんは 「あかずきんちゃん」を よんでもらうの♪
おおかみさんが、あかずきちゃんを たべようと やさしいおばあさんのフリをするんだって!
あかずきちゃんは おいしいのかなぁ~?たべられちゃうのかなぁ~?

きえちん、藤井寺の息子くんに 名前を 勝手に付けて ごめんね~(o*。_。)oペコリ


けいったんさま
コメントきえ | URL | 2013-03-22-Fri 11:38 [編集]
こんにちは~
すっごく良いお天気のこちらです。

またまたご来店の高槻氏でした~。
近づきたいんだろうね。
興味津津ってところでしょうか。
『責任感があるとっても良い子だな~』っていうのが第一印象でしょう。
しかも話をしたら(前回)、懐いてきてくれたところがあったし、と。
普段お姉ちゃんに虐められて(?)いる弟だからね。

今日も、うーの日記、ありがとうです。
名付けられるのは構わないのですが・・・
実はこの話の中に、すでに『岬』って登場しちゃっているんです(^_^;)
東成の友達 『八尾岬』というのがいたりするんですね。
きっと知り合えば仲良くなれると思います。

コメントありがとうございました。
(。ノω<。)ァチャ- やっちまった!
コメントけいったん | URL | 2013-03-22-Fri 14:28 [編集]
とんでもないミスをしちゃいましたね、私
きえちん、ごめんなさい((( ○┓ペコッリ[謝罪]

八尾 岬
道理で すっと浮かんだ名前でした(苦笑)

では 桃谷(=ももや)君に!
JR環状線の駅名からの 名前です

春に浮かれたポンコツの脳に 気合を入れておきます。
喝━━(`・д・´)ノ━━!!

おーっっっ
コメントきえ | URL | 2013-03-22-Fri 16:23 [編集]
なんという可愛らしいお名前~っ♪
いただきますm(__)m ありがとうございます。

名前があるって、話を書くスピードが1.1倍くらい早くなります(←)
探さなくていいから、その分時間が浮くんですよね。
きゅんきゅんしちゃうような、愛くるしい坊やなんでしょうね。
藤井寺も最初に出しただけで・・・
まだこの後登場予定なのですが、どれだけ先の話かしら。
でも忘れないでいてくれて良かったです。
今は和泉と生野の流れを書くのが精一杯で・・・
きえちんも お名前プレゼントもらったから がんばります(`・ω・´)ノ
コメントありがとうございました。
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