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BLの丘
誘われたその先に 6
2013-03-21-Thu  CATEGORY: 誘われたその先に
合コンから一週間が過ぎた。
その間、知り合った人たちともメールを交わしたりして、新しい人間関係が築かれていく。
時間に余裕ができてきたこともあって東成と会う時間も増えた。
とはいえ、バイト先で、だったのだが。

日曜日の開店後、休日は午前中も客の入りは良い。
家族連れやカップル、購入が目的なのか、単なる暇つぶしなのか。とにかく商品を知ってもらえること、また人の出入りがあることで、他の客の気もひいてくれる。
賑やかな声が響き渡る中、しゃがみこんで商品整理をしていたところに人が近づいてくる気配を感じて、顔を上げた。
「いら・・・、っ?!」
"いらっしゃいませ"と言いたかった言葉は咄嗟に飲みこまれてしまった。
そこに立っていたのは高槻だ。腕にはこの前の少女を抱き上げていた。
ピンストライプのシャツにベージュのジャケットを合わせた格好は、以前見かけた時よりも硬質な印象が薄れている。
腕に子供を抱いていることも穏やかさを増させるものになっているのかもしれない。
高槻はニコリと笑って和泉と視線を合わせた。
「こんにちは」
「あ、こ、こんにちは・・・」
目をパチパチとさせて立ちあがる。
背が高い人だとは思っていたけれど、改めて並べば東成よりも視線が上を向いた。
「羽衣、"こんにちは"は?」
促されたことで少女は小さな声をあげる。和泉はこちらにも挨拶を返した。

「今日はお母さんは一緒ではないんですか?」
「今週は買い付けで出かけているからね」
そういえば『社長』って言ってたっけ・・・とふと思い出した。
人の家庭を詮索するのも悪いが、旦那さんも一緒に出かけてしまったのだろうか、そして子供を預けられたのだろうかと脳を巡らせた。
もちろん聞けるようなことではないけれど。
「仕事中に悪いんだけれど、今の男の子が好むものを教えてもらえないかな?」
「へっ?!」
「羽衣が幼稚園の友達の誕生日会に呼ばれていてね。プレゼントを渡したいんだけれど、何か人気なものがあれば、と思って」
男の子と女の子では、当然ながら好むものが違ってくる。
売れ筋商品は、店員のほうが詳しいと思われているのだろうが、相手の子を知らないだけに選択の幅は広すぎる。
「えーと、・・・おもちゃ屋さんのほうがいいのでは?」
「いや、なんというか、こう・・・、勉強したくなるようなグッズ、というのかな」
「したくなる・・・」
なかなか難しい注文をつけてくれる客だと思った。

先日のことがあったから、というわけではないが、手を貸せることがあるのであれば協力してあげたいとも思う。
「どういうのが欲しい、とかありますか?」
「どういうの・・・。そこがまた困っちゃったところなんだよね」
苦笑いを浮かべた高槻は、本当に分からない様子だった。
和泉は脳を回転させる。
万が一気に入らなかったとしても、無難なものが相手にとって負担にはならないだろうけれど。

黙ってしまった和泉に、高槻が思い出したように口を開いた。
「あ、そうだ。機動戦隊ものが好きだとは聞いたけど」
「あぁ、『セブンレンジャー』ですね。あれも年々人数増えたり、名前が変わったりで入れ替わりが激しくて」
同じものかと思えば、微妙にマークが変わっていたり、似たような名前を付けられていて、どの順序で登場したのか把握もしていなかった。
しかし、さすがに現在のものくらいは分かる。
そんな会話をしながら特設コーナーになっている場所に移動した。
隣には女の子に人気のキャラクターコーナーがある。
少女は早速そちらに興味を示したが、高槻は腕から下ろそうとはしなかった。
過去の教訓とも言うべきか。

「このあたりから選んでみてはいかがですか?」
「へぇ、いろいろあるんだ」
「今、男の子には一番人気ですよ。戦隊物が好きならプレゼントされても分かると思いますけど」
「そう。ありがとう」
高槻はノートをめくってみたり、鉛筆や鉛筆削りを手にして何か考えているようだった。
その姿を追いながら、コーナーの別の場所で乱れたものを整えたりと手を動かした。
しばらくして、「和泉くん」と呼ばれて驚いた。
どうみても高槻が発したものだ。
「は、はい・・・?」
名前なんか教えたっけ?という疑問だけが残る。
ネームプレートは付けているが、ひらがなで『いばらき』と入っているだけだし。
和泉の驚きなど気にした様子もなく、高槻は「これってセットにしてラッピングしてもらえるのかな?」と問うてくる。
『これ』とは高槻が選んだ品々のことで、それくらいのサービスは当然している。
「え、ええ、もちろん。袋でも箱でも。有料になっちゃいますけれど」
「それは構わない。それでは・・・」
あれこれと手を伸ばし始めた高槻に、その量の多さに和泉はカゴを取りに走った。
絵柄の違うノート三冊に、キャラクターの描かれた七本の鉛筆セット。手で握れる大きさの鉛筆削りに、下敷きに、ペンケース等々と、それは幼稚園生の誕生日プレゼントとして与えていい量なのかと目を疑うくらいに・・・。
和泉が持ったカゴの中に次々と放りこんでくる。

「これくらいでいいかな。じゃあ、お会計、お願いするよ」
にっこりと微笑まれて、カゴを手にしていた和泉は、自分で誘導するしかないことに気付く。
子供を抱いて手がふさがっていることを考慮しても、運んでやるべきだろう。
レジに行くと、そこにいた店長は高槻の顔をしっかり覚えていたようだ。
深々と頭を下げて「先日はありがとうございました」と大得意様であるかのように対応した。
和泉が「贈り物にしたいそうです」と伝えると、「かしこまりました」とまた恭しく振る舞う。
会計を終えたあとは、作業台のほうに移されて、パートの女性が見事な腕前で箱詰めをした。
店長が「ペーパーパッキンやクリアパック、ふんだんに使っていいからね」という影ながらの指示もあって、とても豪華なギフトボックスに仕上がっている。

作業の間中、高槻の話し相手にさせられていた和泉は、仕事に戻ることができなかったが、こんな時間があってもいいか、と開き直った。
「和泉くんは学生?」
「ええ。四年です」
「じゃあ、もう卒業かな」
「はい。なんとか無事に・・・って感じですかね」
「ここにはどれくらいの時間、勤務しているの?」
「うーん、その時によってマチマチですね。学校のこともあるし」
「確かにそうだね」
話してみると、高槻の口調は柔らかく、問われることにも嫌悪感なく答えることができた。
最初はどうしたって警戒心をもつものなのに、今の高槻にはそういったものを持たせない雰囲気がある。
たった二度しか会ったことのない人なのに、これまで見てきた毅然とした態度などが、憧憬となって和泉の中に宿っているからだろうか。
学生の分際で、このような"大人"と話せることの優越感のようなものもわいていた。

「和泉くんはこの前、どこかの帰りだったの?あんな遅くに」
交差点での出会いを振り返られて、合コンというのも憚られて、「飲み会だったんです」と言葉を濁した。
納得したように高槻が頷く。
「そういえば友達も一緒だったね」
「えぇ。彼とは乗る電車が同じなんで。・・・高槻さんもあんな時間まで仕事だったんですか?」
「打ち合わせが長引いてね。とはいっても相手は友人だから、その後一緒に食事して、それであの時間」
「そうだったんですか」
訪ねることにも嫌な顔ひとつせず、また詳細まで語ってくれることにますます人の良さを見た気がした。
おかげで最初のころ抱いていた緊張感がはがれていった。

『セブンレンジャー』の包装紙で綺麗にラッピングされ、リボンも付けてもらったものを見ては、高槻は満足そうに微笑んだ。
「和泉くんのおかげでとてもいい買い物ができたよ。ありがとう」
「いえいえいえっ、俺、何もしていませんからっ」
こんなことまで感謝されるとは思っていなかった和泉は慌ててしまった。
笑顔がまた見惚れるくらいのもので、ドギマギしてしまったのもある。
思わず顔が火照りそうになる。
人を魅了する凄さを間近で見せつけられた感じだった。

思わず顔を伏せそうになったとき、高槻が問いかけてきた。
「ところで、『お礼』の件は考えてくれたかな?」

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ぼちってしてくれるとうれしいです。
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コメント

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みなさん、本当に 体調に気を付けて下さい。
コメントけいったん | URL | 2013-03-21-Thu 13:23 [編集]
ちーさん、喘息になる所だったの!ヾ(´д`;)ノぁゎゎ
原因は 風邪からですか?
3月と 4月は 決算や 年度の切り替えで 忙しくて体調を崩し易いですもの
ゆっくり 休んで 元気になったら コメ欄で 遊ぼうねてね♪(*^-')b

今度は、羽衣ちゃんをダシに ショップに来たか、高槻氏!(*≧3≦)σyou
まぁ 嘘じゃないから 良いけど(笑)

羽衣ちゃんの声が聞こえないのは 高槻氏の空気が いつもと違ってるから?
幼子にも感じる 獲物を狙って舌なめずりする狩人の気配でしょうか!
和泉には ちっとも伝わってないのが残念だね(笑)

『うー(=羽衣)の にっき』
きょうは 〇〇くんの おたんじょうびのプレゼントを かいに いきました。
いっくん(=生野)と また あの おみせに いきました。
いっくんは ずっと おみせの おにいたんとばかり おはなしをしてました。
うーは つまらなかったです。( ´-ェ-` )シュン
きょうの いっくんは えほんでみた オオカミさんに にて こわかったです。
どうしてか ママが かえったら きこうっと!


きえちんも 毎日の更新 無理しないでね♪
でも 本音は 毎日 読めて 嬉しい~~☆⌒ヾ(*゚∀゚)ノヒャッホォ-ゥ♪
けいったんさま
コメントきえ | URL | 2013-03-21-Thu 15:04 [編集]
こんにちは

しっかり探りをいれている高槻ですね。
正直に答えちゃっている和泉、危機感、全くなしです。
そして口実を作る、作る(笑)
羽衣、うまく利用されてます。

うーちゃんにっき 面白かったです(^_^)
子供心に、口をはさんではいけないのを感じとったんでしょうね。
知らされたママは、この後弟に何を告げるのでしょうかね。
コメントありがとうございました
お誕生日会裏話
コメントきえ | URL | 2013-03-21-Thu 17:20 [編集]
高槻生野「誕生日プレゼントどうしようかな」
藤井寺門真「あんまり遊び道具持ってくるなよ」(←そこは友人)
生野「勉強道具とか?」
門真「ノートの一冊でいいよ。羽衣ちゃんも持ってくるの大変だろ」
生野「どうせ送り迎えするから、大きさには困らないけど」
門真「おまえも来るってことか。・・・まぁ、嬉しくもあるけれどね」
生野「変な期待するなよ」
門真「息子の前で? さすがにそこまでは・・・」
生野「あぁ、分かっている」

同級生同士の会話は、どこか奥深い。


Σ (゚Д゚;)
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