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BLの丘
淋しい夜に泣く声 53
2009-10-12-Mon  CATEGORY: 淋しい夜
野崎は溜め息だけを零し、これ以上言うことはないと首を振った。
「ご自分のお部屋で頭を冷やされてください」
榛名に向けて冷たいとも取れる言葉が漏れる。それは、榛名をこの部屋から出そうとしていた。
敏感に感じ取った榛名が野崎を鋭く睨み返した。
「何を言う気だ?」
野崎と榛名の間で分かったような会話が繰り返されていた。
英人は二人が何を言いたいのか分からなかったが、自分のことを対象にしているのは確かだった。
「ね…」
「おまえは口を挟むな」
英人が榛名に口を開けば閉ざされる。
一人にされるのは怖かったが、今は野崎の言うとおりにした方が良いのではないかと提案してみたかったのだが、それすらも見透かされたように榛名は受け入れなかった。
「暮田さんとお話をさせてください。社長がいては話が進みません」
あれほど厳しく見下ろす榛名の視線にも態度にも全く怯むことなく、野崎はピシャリと言い放った。
もうどちらが上の立場にいるのかも分からないほど、今の野崎には榛名を指示に従わせようとする威圧感があった。

「俺が話を聞く」
「社長ではお話にならないと申し上げているのです。暮田さんの人生は暮田さんが決めることであって社長とお話することではありません」
野崎はあまりにも冷やかで、榛名の言い分など聞こうとしなかった。

「お話をさせていただけますよね?」
野崎は榛名を無視し、確認をするように丁寧な口調で英人に向かい合った。首を横に振ることなど出来ない…。
英人が頷くと同時に野崎は榛名を見た。
「出てください」
一瞬の時を持たせずに、野崎が榛名を部屋から出るよう促した。
「断る」
「暮田さんが望まれているのですよ」

最初榛名は応じようとせず、暫くの間お互い黙って睨みあっていたが、やがて埒の明かない会話に重い腰を上げた。
「5分で戻る」
「お戻りにならなくて結構です」
心配することはないと榛名は英人の髪を撫でると、間髪入れずに野崎は刺々しい言葉をたたみ掛けた。榛名は全く聞く耳を持っていないようだった。
英人は一歩も動けなかった。何の言葉を発することも出来なかった。
榛名が出て行ってしまった空間には、ただ恐怖だけがあった。

野崎の冷やかな声が聞こえてきた。いつもは気遣うような温かみがあるのに、今は違った。
「社長ご自身がこれまでと異なる性格になってきたことは充分承知しておりましたし、貴方の影響があったからだということにも気付いていました。もともと人間味のない社長に感情を持たせてくれたことには感謝をしたいくらいです。ですが、社長の発言を許可することは絶対に致しません。
当初、貴方の絵を利用したいと社長に頼まれて全てを仕組みました。貴方の名前を売り何の支障もないようにした上でデザイン部の方へと回しました。才能が見出されれば当グループの利益にも繋がります。計画はこれだけです。今回のようなことは想像の範疇を超えております。
貴方が社長に何を吹きこみどのように誘ったのかなど、特に詮索をする気はありません。貴方のご意見や、お二人でどのような約束事をされたのかも答えてくださらなくて結構です。どのようなご関係であったのか、今回限りのことと私も目を瞑らせていただきます。そう社長にもお伝えして、今後問うことも致しません。
…貴方ご自身にも立場というものを考えていただきたい。彼には迎えるべき人生があります。彼は榛名グループの中でもトップにあたる人物です。貴方には相応しくないことはご理解いただけると思っております。社長が何をおっしゃったとしても、一時的な遊びであったと私の方からお詫びさせていただきます。本気に捉えるようなことはなさらないでください。知ってしまった以上貴方を社長に近付けるわけにはいきません。相応の慰謝料くらいはご用意させていただきます。明日にでも貴方の意思でここを出てください」

あまりにも冷たくて、そして現実味のある言葉だった。
英人に選択肢はなかった。彼の迎える人生が見えるからこそ、自分の存在が疎ましいのだと思うことができる。
もともと生きている次元が違いすぎたのだ。想いを寄せることが間違いだった…。
苦しい想いをたくさん抱いて、ようやく榛名と繋がれたと思った途端に、引き離された。結ばれなかったほうが良かったのではないかと思うくらいだった。

泣き崩れる英人に一筋の優しさも野崎は残して行かなかった。スッと立ち上がり、部屋を後にしようとした。
入れ違いになるように榛名が戻ってきたが、野崎は英人に近付けようとはしなかった。激しい口論が英人の耳に流れ込んできた。
英人はもう何も言葉にすることができなかった。

『明日にでも自分の意思でこの部屋を出ていけ』
野崎の言葉が痛く胸に刺さっていた。英人なんかのためにここまでしてやったことだけでも感謝しろと言われているようだった。
夢の世界の終焉を迎えたのだ。
野崎は榛名に、英人が出て行くということは伝えなかった。たぶん自分から身を引いたと榛名に思わせろということなのだろう。
結局野崎は諦めたように、榛名にこの晩はここにいてもいいと残して去っていった。

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コメント

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コメントきえ | URL | 2009-10-12-Mon 12:54 [編集]
M様

こんにちは。いらっしゃいませ~。

>あー…、やっと榛名の気持ちもわかって両思いになれたのに最悪の展開ですねぇ。
どこまで辛い話なんだろう…これは…と私の方が傷心。
もうちょっとハッピーな時間を持たせてやろうかと思ったのですが、なにせ先が長いので無駄なことを書かずにサクッと野崎に登場をお願いました。
幸せな時間が多くなればその分辛くなるのではないかなと…(汗)

>野崎の急な変わりようが何か他にも理由があるような気がしますが、このままじゃ英人は身を引いちゃいそうだから今度は榛名に頑張ってほしいです!
野崎にも色々と事情があるので、こんな風に変わってしまわなければならなかった…というところでしょうか。
半分『心を鬼に』みたいなものですかね。こいつも板挟みなんですよ。

今後、何話後かに、榛名版を書こうかと思っています。
私の頭の中ではそれを挟んだ方が進みそうで…。読者様にはご迷惑をおかけしますが…。

コメントありがとうございました。
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