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BLの丘
仕事始まりの前の日
2013-01-05-Sat  CATEGORY: あやつるものよ
一宮瑞穂(いちのみやみずほ)は年末年始の休暇を、たった一泊だったが、地方へ転勤した上司の元で過ごした。
さすがに除夜の鐘を聞く、その日に押しかけるほど図々しくもない。
元上司、部長であった岡崎吉良(おかざききら)には劣るかもしれないが、充分に鍛えられた体格がある。
濃い眉が余計に男臭さを見せるのか。

「おじゃましまーす」
辿り着いた駅から岡崎に迎えに来てもらって・・・
初めて訪れるプライベート空間。
安城とは過去、一緒に働いていた人だが、岡崎の同居人(現在は恋人)が、少々しでかしてしまった事件があって、部下だった安城千種(あんじょうちぐさ)はすぐに退職してしまったし、まるで追いかけるように、岡崎も移動願いを出していた。
影にある真相を知ったのは後のことだったが、ふたりが幸せにくらしてくれていることには安堵が漏れる。
そして、偶然出会ってしまったことから、付き合いは途切れることがなかった。
それでなくても、岡崎とは仕事上、切れることはないのだが。

「おかえり~。吉良、迎えに行かせちゃってごめんね。一宮、久し振り」
「千種に全部作らせているんだから、これくらいお安い御用」
「・・・(ボソ)イチャイチャぶりを早々見せつけられるとは・・・」
玄関扉と、もうひとつの扉をくぐると、温かい空気と匂いに出迎えられた。
さらに優しい声音。
安城の声を聞くのも久し振りだ。

酷い扱いで、逃げるように退社してしまった姿を気遣うところがありながら、更なるみじめさを味あわせるようで、社の誰一人として千種に声をかけることがなかった。
後ろめたさを感じていたのは、誰もが同じだったのに・・・だ。
再会した時、過去の過ちを許してほしかったと願ったのは瑞穂のほうなのかもしれない。
それら全てを払拭して、今では温かく迎えてくれる。
「一宮、お正月過ぎて、おせち っていう気分でもないだろうし。豪華なの、すきやきくらいしかないけどゆっくりしていってよ」
すきやきだけでも充分なお出迎えだ・・・と内心で思いはするのだが。
ダイニングテーブルに次々と食器やら酒やらを用意している千種に、岡崎の声が響く。
「千種、今日はリビングでもいいだろう」
その意味をすぐに汲み取れるのは阿吽の呼吸とでも言えるのか。
しかし、嫌がった素振りも見せない。
昔よりもずっと明るくなったと瑞穂は思う。
全ては岡崎の成せる技のような気がして、やっぱり邪魔なのではないかと、当てつけられることにひとりごちた。
「もう・・・。吉良、動きたくないからって・・・」

普段の生活習慣が垣間見えるようだ。
「あ・・・と。なんか手伝うし・・・」
早々、岡崎と並んで案内されたリビングで寛ぐわけにもいかない。
岡崎は日本酒の入った一升瓶とグラスをリビングテーブルに運んでいるし、千種は、用意してあったすき焼きなべをやっぱり移動している。
客・・・とはいえ、そこはかつて慣れ親しんだ同僚であり、岡崎の部下であった存在。
すでに用意されていた料理(それは つまみ というにふさわしい)を両手に持って、リビングテーブルはあっというまにいっぱいになった。
「安城、これ全部、手作り?」
広げられた品数にも感心しながら素朴な疑問が漏れると、何故か岡崎がニヤリと笑いながら答えてくる。
「千種の手料理は高価だからな。年明け、がっつり働けよ」
「吉良~、もう、おどしていないのっ」

以前、会社の話を安城の前ですることを、酷く嫌った岡崎だったが、いまでは吹っ切れたことが分かるのか、だからこそこうして呼んでもらえているのだが、差し障りのない程度に話をふってくる。
安城は知らないようだが、年明け早々の三日間、こちらへの出向を命じられていた。
もちろん、策して呼んだのは岡崎自身だ。
そのついでとばかりに、この日の夜、こうして招かれているのだ。
影ながら、安城を支えてくれたという感謝の念があることを感じ取っていたが、それをあえて安城の前で晒す気はない。
今が幸せであってくれるのなら、それでいい・・・

次々と注がれる日本酒と、もてなされる温かな手料理に、また目の前で繰り広げられる熱い抱擁(たんなるやりとり)にあてられて、瑞穂の気分も舞い上がっていった。
上下関係を持たせない酒席をつくるのは、岡崎の性格とも言える。
そこに慣れた落ち着きもあった。

安城の新しい仕事の話を聞いたり、現在の本社の状況を、岡崎に咎められながらちらちらと晒したり。
会話は途切れることがない。
酔いも回り、夜も更けて。
安城が船をこぎ出した頃、岡崎が瑞穂に向かい合った。
「すぐ隣の部屋にベッドがあるから。今夜はそこで寝ろ」
リビングから抜ける廊下に幾つかの部屋があることは、トイレを借りるときにすでに知った。
・・・わざわざ ベッド?・・・
その疑問も、酔いがある頭では判別がつかない。
ここから追い出されるような雰囲気も感じ取って、瑞穂はリビングを後にする。
「ごちそうさまでした。おやすみなさい。また今年も宜しくおねがいします」

瑞穂が入った部屋は、普段は使われることがないのかと思うくらい、整然としていた。
何かを見渡す余裕もなく、目的地のベッドを探し当てては、体を滑らせて潜り込んでいく。
ふわっと、何かの香りがした気がしたが、それももうあいまいになるほど、酔いが回っていた。
岡崎という酒豪につきあったせいだ。

廊下をとんとんと歩く足音さえ、今は心地良い子守唄。


翌朝 というか昼。
「吉良~っ」
激しい声に叩き起こされた気分だった。
何事かと飛び起きてドアを開ける。
リビングに向かおうかと思いきや、反対方向から安城の苦情とも言える声が響いてきた。
「い、いち、一宮がいるのに・・・、いるのにっ」
「千種、しぃ。一宮が起きるだろう」
・・えーと、もう、きこえていますけれど・・・

ふたりがどんな状況にあるのか、嫌でも想像がつく。
きっと瑞穂が寝ていた場所はどちらかの寝室であって、現在『連れ込まれた』状態の安城なのだろう。
ここは大人しく帰ってしまうべきだろうか。
しかし、きちんとお礼を言うべきだろう・・・とか、悩める瑞穂は再び部屋へと戻った。
新年のあいさつ、と誘われて、安易に引き受けてしまったが、二度と家庭にはお邪魔しないと誓った、年明けのある日だった。

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コメント

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仕事初めの前に♪
コメントけいったん | URL | 2013-01-05-Sat 15:42 [編集]
お正月を 楽しく過ごした恋人?夫婦?が、ここにも居ましたね♪
安城を よく知る瑞穂を呼んだのは、ダンナが嫁への配慮ってことなのね!

仕事初めの前に 明日への活力をつけるのは 良い事だけど、
だけど… 
友達を泊めて 「ヒメ初め」をするなんて~(笑)

∑(*゚ェ゚)エッ!? 
今年 もうすでに XX回目の「ヒメ初め」ですって!!
それって…
キャ♪(o・ω・o*)ゝ゚.+:。 お疲れ様です♪
いいよね!
コメントnichika | URL | 2013-01-05-Sat 23:56 [編集]
エ? 何にってでしょうか  それは色々と・・・・膨らませて下さいませ
けいったんさん、P4お待ちしてます。 ちーさんとの絡みも期待!!! (←どんなの?

きえたん、病院萌え☆ わっかる~昔入院中教授回診があったのですが
触診するの若いDrなのよ=(私もズイブン乙女でした)びみょうおなところで
笑ってしまい顔を引きつらさせってしまった事があります。
青田買いありですよ (もう古いか)
相変わらず
コメントちー | URL | 2013-01-06-Sun 07:12 [編集]
千種は、吉良を尻に敷いてるのね。
(と、思ってるだけとも言うな)

一宮くん。お正月早々あてられに行ったのか。
もしかして、吉良の策略に嵌められたんじゃ?
たまには、誰かがいるところでこっそりするのも良いなあ?みたいな(笑)

「やっ、吉良、やめてよぅ」
「千種、声が大きいよ?静かにしなきゃ」
「うぅぅっ。だって、吉良が変な事するんでしょ?」
「変な事?じゃ、止めようか?」
「・・・やだっ。いじわるっ。吉良、嫌い」

結局、吉良に流されてしちゃうのは千種なのに、朝になると正気に戻って「吉良のバカぁぁ」になるわけね。
前もあったね、千種ちゃん(笑)

ここんちは、何があっても大丈夫って漠然と思っちゃう。ふふふ。

一宮くん。二人のマンネリ解消?のためにも、また遊びに行ってあげてね。
よろしく~(^-^)/
ちー様
コメントnichika | URL | 2013-01-06-Sun 07:39 [編集]
あけましておめでとうございます、この場を借りますが。
新作・妄想、今年もおまちしております。
めっきり寒くすぎて一時長野っ子の私でも辛いでう
みんなでほっこり妄想して温まりましょう!
ちー様の表現を借りて(勝手にです)師匠ファイアーをください(Loveでだす)
おはよ~
コメントたつみきえ | URL | 2013-01-06-Sun 10:51 [編集]
幸せな夫婦はこちらにもおりました。

瑞穂、あてられたね。
そうだ、旦那は新しい刺激を求めて・・・
そんなことに使わないでくれと、内心でぼやいている瑞穂かも。

瑞穂もあとあと出そうと思いながら諦めた一人ですね。
さすがにこちらまでの転勤はありませんが、千種が去ったあとの本社でなにか秘密事があったのかなぁ・・・なんてね

ヒメ初め。もちろんすでにお済ませしているかと。


病院萌え欲しいです~。それだけで生活が変わるよ~。
微妙な位置・・・いろいろ診察されているのでもう恥じらいも捨てた???
そんなことはない、まだ乙女のつもりでいます。


このふたりは尻に敷かれているんだか敷いているんだか微妙ですね。
でも仲良くやってくれているんだからいいのでしょう。
そこがやっぱり、だいじょうぶ つておもわせてくれるところなのでしょう。

皆様、コメントありがとうございました。
にっかたん
コメントちー | URL | 2013-01-06-Sun 11:55 [編集]
こちらこそ、よろしくお願いします(^-^)

パタパタパタ

「「「「お母さん!」」」」
今日は、フォーレンジャーがお母さんのお見舞いに。

成「みんな、病室では静かにしよ?」
一「う、そうだった」
那「ヒサっ!静かにしてよ←今日は、いない」
英「みんな、あれ見てよ」

お母さんを診察してる先生の背の高いこと。

コソコソ

「ね、ね、あのセンセ、お母さん好みじゃん?」
「白衣着ててもわかる筋肉~」
「タチヒロシ並の渋い声~」
「お母さん、よそ行きの顔してない?」

診察が終わって出ていく先生と看護師。

「何かさ」
「格好良いお医者さんだね」
「それに、看護師さん。可愛い男の子だった」
「お母さん、一人でパラダイス堪能?」

「あ、それさあ、師匠とちーさんに言っちゃダメだよ?」
「うん、うん。言わない!」
「シーだよ?」
「内緒だね?」

フォーレンジャーは、知らない。
師匠とちーが既に会っていることを。
そして、腐腐腐な会話に花を咲かしていることも。

「師匠、あのお医者さん好みでしょ?」
「ちー、コレクションに入れる?」
「勿論ですよ♪」


きえさん、こんなセンセなら良い?かなぁ(笑)
せめて おねえさんって言えよ~~~っ
コメントたつみきえ | URL | 2013-01-06-Sun 12:11 [編集]
「お母さん」?!

無視

我が子が御見舞いに来てくれるのは嬉しいけれどね。
その呼び名はないでしょー。
千城~、ドンペリとかないの~?!(やけざけ)

ちしろ「医者のエキスでも吸っていろ」

・・・・・・・

白衣きたお医者さんが佳史だったら、超もえもえです。
まったく知識がなく、隣でうろちょろする望も大歓迎です。
きえは、ずっと入院してますよ~。

キック!! ヽ( ・∀・)ノ┌┛Σ(ノ `Д´)ノゲシッ
・・・退院させていただきます・・・

コメントありがとうございました。
お子達君たちー
コメントnichika | URL | 2013-01-06-Sun 12:31 [編集]
声が大きいすでに院内日本中にまる聞こえだぞ(一応ネットだから)
フン!k丘さまが休まれてますが、(あのー地主だからVIPしてまする)
あの方は見栄えではないのですよ、こえ・声・Voise~csiなんですよ
ほら、わかったら探してきてください (チャッカリ違うおねだりしてるよ)

本年も煩悩にたくましくはげぎます、きえたんを巻き添えに テヘ♪
コメントたつみきえ | URL | 2013-01-06-Sun 14:00 [編集]
にかちん、ちわーっ

びんぼーにんのきえは相部屋です。

うるさいお子様はネット上に氾濫させておく(←)


声、大好きですよ~。
csi? えーとどこら辺から騒げばいいのでしょうか。
ウォリックが死んじゃったとこ? デルコがいなくなっちゃったとこ?
グリッソムとサラがべっどいんしちゃっちたとこ?
きりないなぁ。
コメントありがとうございました。
怒られた
コメントちー | URL | 2013-01-06-Sun 16:03 [編集]
だって、息子って言うからあ。
(;_;)(;o;)

「泣かないで~。泣かないで~」


なんと保護者達がお見舞いに。

安住「きえさん、具合はどう?」
久志「お姉さん←勉強した はい、これ」
佐貫「思ったより顔色も良いですね」
千城「ご希望通り持ってきてやったぞ?ドンペリ」

野崎「くれぐれも、退院なさってからお飲みください」

同室の患者さん

(次から次へとイケメンが来るわねー。きえさんて、何者なのかしら?)

お嬢「みこっちゃん、つまみは?後、パソコン欲しい!萌えが足りない!足りないんだよ!」

きえお嬢。あんまり、野崎さんに無理を言わないようにねっ!
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