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BLの丘
淋しい夜に泣く声 52
2009-10-11-Sun  CATEGORY: 淋しい夜
「泣かなくていい。おまえを大事にしたい。おまえが欲しいというものは何でもやるし、そばにいてほしいと言えば離さずにいてやる。おまえの笑顔を守ってやりたいんだ。どうしてほしい?全部声にしろ。何でも言うんだ」
榛名は全てを知っていた。英人が榛名に対してどんな感情を抱いていたのか、何を思っていたのかまで…。
分かっていながら英人から言わせたかったのだ。
人の感情など簡単に読み取ってしまう榛名が、確かめようと英人の声を求めていた。

鋭くて熱い榛名の感情が唇の上を滑っていく。
英人はもう堪えられなかった。
「好き…」
榛名は驚きもしなかった。
全て自分の思っていた通りだと確認するかのように、英人を見つめ返して、「あぁ」と頷いた。
「そういう感情のようなものだな。俺は恋愛に関しては良くは分からない。これまでやることが多すぎて興味もなかった。だが、おまえを見ているとほだされるものがある。他の人間に近付けたくないと思うし大切にしてやりたい。なんだろうとずっと疑問だった」

英人は目を見開いた。
もらえるとは思わなかった言葉が榛名の口から零れた。
榛名が自分に対してそんな感情をもっていたなど、想像もしていなかった。
どれほどの意味とどんな将来が待っているのかも、頭を回す余裕もなくて、溜めこんでいた想いが口をついた。
「好き」
英人は榛名の首に纏わりつきながら繰り返した。
榛名は拒むこともなく、英人を抱き返し、愛しいものを守るように英人の唇を塞いだ。

…愛してる…愛してる…

英人の心の中で繰り返される言葉。
榛名も同じように思ってくれているのだと信じた。
抱き寄せられる腕の温かさに、英人は涙を止めることができなかった。

次の日、休日のほとんどをベッドの中で過ごした。
榛名が望んでいるから…という口実はあったが、実際には自分が離れたくなかっただけだ。
榛名は自分の欲求を英人から言わせた。それが恥ずかしいことなのに、求めてもらえる嬉しさがあった。
英人は何度も「抱いて」と榛名に強請った。
これほど幸せだと思える時が訪れるとは思ってもいなかった。


次の晩に野崎が書類を持って部屋に来た。
榛名がラフを何枚か眺めながら、すでに完成した油絵を神戸に持たせると連絡をしていた時だった。

「暮田さんの今後を考えさせていただきました。まだギャラリーだけでは生活面で不安もあるでしょうから、デザイン部への就職をお勧めいたします」
野崎は雇用契約書を携えていた。
プロジェクトが正式に動き始め、自分の存在はここから必要なくなった。
榛名と並んでソファに座った英人に書類が届けられる。就職をするかしないかはあくまでも英人自身に任せると伝えられた。
今現在の自分は収入が得られるような状態ではない。
絵を描くという状況の厳しさを野崎も知っている。
その時、いつまでも榛名に甘えてはいけないと漠然と思った。

「生活費は俺が出す。英人には好きなだけ描かせればいい」
思いがけず榛名から就職を拒否する言葉が漏れて、英人も野崎も驚かされた。
榛名のたった一言で、野崎に自分たちの全てを明かしたようなものだった。

「認められません。お立場をお考えください」
野崎は冷静に状況を判断していた。普段の野崎からは聞いたことのないような冷たい声が響いた。榛名の鋭い眼光が降り注いでも、野崎は全く気にしていなかった。
それどころかより一層鋭い視線で榛名を見返した。
榛名が英人を囲うという意味でとったのだろうか。もともと英人がどんな生活をしていたのか、野崎だって知っているはずだ。そのような者に汚されると、たぶん野崎は思ったのだろう。
「男妾でもお取りになるおつもりですか?そのようなことを会長に知られるわけにはいきません。私には貴方をお護りする義務があります」
「野崎っ!」
刺すような榛名の口調にも、野崎は怯まなかった。
英人を『男妾』と落とした言葉に、英人はただ泣き崩れるしかなかった。たとえどこまで昇っても過去を消すことは無理で、人からの評価は下まで落とされる。
庇ってくれる榛名の言葉が嬉しいだけで、だけどもそこに縋ることのできない現実を感じた。
もともと無理な『夢』だったのだ…。

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風邪をひいたのか、お出掛けが無理になって…、でもこんなものを書いている私。
皆様もお体にはお気を付けください。
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コメント

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こんにちわ☆
コメントメグミ | URL | 2009-10-11-Sun 13:01 [編集]
お身体大丈夫でしょうか?

野崎の言わんとしてることも分からないでもないですが…

本人を前に『男妾』というのも、英人にとってはだいぶ堪えますよね…(ToT)

さぁ、英人がこれからどのように過去の自分を乗り越えるか!

続きも楽しみにしております♪

お身体お大事に(^_^)v
Re: こんにちわ☆
コメントきえ | URL | 2009-10-11-Sun 14:46 [編集]
メグミ様

こんにちは。お越しいただきありがとうございます。
> お身体大丈夫でしょうか?
はい。ご心配おかけしております。
今日、我が家の方はとても風が強くて、余計に寒さが身にしみております。
ぶるぶるしてます…

> 野崎の言わんとしてることも分からないでもないですが…
> 本人を前に『男妾』というのも、英人にとってはだいぶ堪えますよね…(ToT)
一気に野崎が嫌われキャラになってしまったような気がしております…。
自分で書きながら、この人ってこんなにキツイ人間だったのか~って思っておりました。
榛名を守るためなら、現実を突きつけてやるっていう厳しさでいますね。
もちろん英人にも分からせるためと思ってなのでしょうが…

> さぁ、英人がこれからどのように過去の自分を乗り越えるか!
乗り越えられるんだろうか…
今の英人はこのままメソメソと崩れ落ちていくのではないかと心配してます(>_<)

> 続きも楽しみにしております♪
> お身体お大事に(^_^)v
はーい。ありがとうございまーす♪
コメントきえ | URL | 2009-10-11-Sun 19:43 [編集]
MO様
こんばんは。レス遅くなりました。

>ようやく千城の英人に対する気持ちに触れることができたのに、英人 辛いですね。でも避けて通れない現実でもありますから、これから どうするのか、ますます続きが気になります。無理をなさらずに、おだいじにして下さいね。

こんな状態に自分でしておきながら、今後をどうしようか私が考えてしまいました(/_;)
最初のストーリーを改めようかな…と…
あまりにも暗く沈んで行っちゃったので書きながら私の心臓が痛くなってます。ひ~ん。
辛い現実がどこまで英人を追い詰めちゃうのかしら。

コメントありがとうございました。
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