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BLの丘
あの日の夢 23
2012-12-01-Sat  CATEGORY: あの日の夢
今度は同じ敷地内にあるホテルだけに、移動するのはあっという間だった。
もう会場に戻ることもなく、五泉は燕を引きずるようにエレベーターに乗っては部屋へと入っていく。
「燕、おまえ、兄貴に会ったのか?」
「へっ?!」
今回も広々としたリビングルームとベッドルームに分かれる部屋だった。入るなり、そこが密室になったことで核心をついてくる。
外では躊躇われる話の内容もここでは隠すこともない。
タイを外し、襟元を緩めてソファに座った五泉は、隣に座れと促してくる。
逆らいようもなく、またこれ以上の苛立ちを増させることは避けたかった燕は大人しく従った。
「魚沼さんに近付いたことだ。他に話しかけてきた人間はいたはずなのに、何故あの人にだけついていった?うちの会社の事情など知らないはずなのに、その重要性を分かっているようじゃないか。誰かからの入れ知恵があったからだろう?刈羽が言うはずはないしな。他に考えられるのは兄貴だけだ」
「あ…」
「こんなパーティーに燕から『行きたい』と言い出すことがそもそもおかしな話だったんだ。何を言われた?以前にも言っただろう。俺は燕を踏み台にする気はない、と」
手を伸ばしてきた五泉は大きな手で燕の頬を包む。
誰かの意見に従うばかりは燕のためにならないと諭された。
五泉が能生の指示に流されていくのとは話が違う。
こちらには『損得』があったが、あくまでも燕はまだ『蚊帳の外』なのだ。
兄と五泉と、どちらの不機嫌も買いたくはなくてたじろいでしまう。
瞼を伏せてしまう燕に届くのは、いつもの溜め息だった。

「ったく、兄貴の野郎…。何いいつけたんだか…。いいか?何か言われたなら必ず俺に報告しろ。兄貴でも刈羽でもだ。世間知らずな燕は簡単にエサにされるんだから」
『エサ』とはまた酷い言い方ではないだろうか…と思ったが、五泉に逆らえるものもない。
「うん、うん…」と頷いた。
やっぱり嫌われたくないのだ。
「だいたい、『俺のため』とまた言われたんだろう。兄貴も、魚沼さんにも…っ。クソッ。家の暗証番号は変えておくから。どうせ兄貴のやつ、勝手に入り込んだんだろうからな。今度来たらあげるな」
相変わらず、全てを見てきたような発言である。
隔離させようとする行動に、本当にいいのだろうかと不安もあるが…。
とにかく五泉についてくしかない燕だった。

くちづけられて、魚沼に触れられた体を嫌がられるように、バスルームへと誘われた。
その時、鳴る五泉の電話に気が削がれる。
『まさか、もう帰ってんの~っ?』
不満げな声は燕にまで届いてきた。置いてきぼりをくらっている柏崎のものだ。
「あとはおまえがどうにかしろ」
『はぁっ?!さっき、魚沼さんとも話したのに、その結果報告とかさぁ…。話も聞かないのかよ…』
「そんなもの、あとで聞いてやる。それより兄貴に話してやれ。今頃、首を長くして待っているだろうからな。何もしない役立たず」
『社長をそこまで言えるって…。あー、まぁ、そこは誤魔化して御報告しておいてやるよ』
「あぁ、おまえの腕に掛ける。今夜はもう連絡してくるな」
『はーい、はいはい。ツバメちゃんがご機嫌よくしてくれるといいね』
「こっちが機嫌とるほうだ…」
最後は溜め息とつぶやきと、この場に燕を連れてきてしまったことの後悔も混じったのか…。
『付き合わせてしまった』感じが柏崎の中にはあったのだろう。
その裏には、魚沼との話が、無駄になっていないことも窺わせてくれていた。

自分の存在は、『損』にはならなかったようだ。
ちょっと意味合いは違っているけれど…。

『機嫌をとる』とは、五泉にとって、教え込むことらしい。
勝手な行動ばかりをとる燕に、いささか…どころかかなり機嫌が悪くなっているのは五泉のほうだろう。
それを『燕のご機嫌をとる』ことで、分からせようとしている。
無体な事を五泉はしてこない。
五泉の都合の良い…とは違うのだが、人の意見を聞かなければ動けない燕にとって、その意見は重要だった。

シャワーを浴びてベッドへと潜り込む。
今日はツインルームではなくてダブルベッドだった。
二人して一緒に浴びてしまったので、湿った体が重なる。
「目を離すたびに不安になる。どこで何をしているんだか…」
「そんな…」
「分かっている。信じている。だからおまえも俺を信じるんだ。踏み代にもしないし道具にもしない。俺が愛して癒されて、そばに置きたい人なんだから。同じように感じてほしい…」
啄ばむくちづけから絡まる舌が深みを増す。
『同じように』…。
同等の立場に押し上げようとしてくれる力強さに、どこまでもついていきたかった。
五泉のために…。そう思ってしまうことも、もう五泉は反論してこない。
従順な態度だと、逆によろこんでくれているのだろうか。
素直な嬉しさに変わっていく。
「五泉…」
「愛している…」
「うん…俺も…」
触れてくる肌に縋りついた。
出会ったその時から…、その前から、夢を抱いた生活だった。
もう間違わない…。
あの頃見ていた夢の日は現実になる。
くちづけて、くちづけられて…。
肌の温かさは、単なる欲求を晴らす為だけのものではなかった。
燕の生活を根本的に変えてしまった人を、何があっても失えないだろう。
いつもと同じだ。ゆっくりと満たされていく胎内に、歓喜の想いがこぼれていった。
決して酷くは扱われないこと。
「愛している…」
燕が囁いた声に、口角を上げた五泉が、「二度と離れるな」と釘を刺した。
目を離したら問題が発生するだけなのだから…と。

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やっと最終話になるらしい…。
延び延びにならなくて良かったよ~。

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コメント

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最終回?
コメントちー | URL | 2012-12-01-Sat 00:32 [編集]
ええ、マジっすか?
スマホの電池終わりそうなのに。

こっちも終わるのかあ。
でも、終わりそうだなとは思ったんだけど。
折角、面白いサブキャラとか出てきたのに残念。

まあ、小鳥ちゃんは素晴らしく居心地の良い籠を見つけて、マスターも優しいから良しかな?
お兄ちゃん、あれで終わりなの?
淋しい。

最終回、少し延びるのを期待しつつ。
ちーは、まだお家に帰れません。
あはは~。
Re: 最終回?
コメントたつみきえ | URL | 2012-12-01-Sat 06:52 [編集]
ちー様
おはようございます。

> ええ、マジっすか?
> スマホの電池終わりそうなのに。
>
> こっちも終わるのかあ。
> でも、終わりそうだなとは思ったんだけど。
> 折角、面白いサブキャラとか出てきたのに残念。

サブキャラねぇ。ようやく出たのにね(笑)
11月いっぱいで終わらせるつもりがちょっとだけ延びてしまいました。
今日中に最終回がupされますのでお楽しみにしてください。
(スマホって電池終わるの早くない?)

> まあ、小鳥ちゃんは素晴らしく居心地の良い籠を見つけて、マスターも優しいから良しかな?
> お兄ちゃん、あれで終わりなの?
> 淋しい。
>
> 最終回、少し延びるのを期待しつつ。
> ちーは、まだお家に帰れません。
> あはは~。

ちー様も外をウロウロ?
鳥かごにちゃんと戻ってねぇ。
やっと出たお兄ちゃんなのにごめんなさいね~。
まぁ、逞しい社長だった…ということで(笑)
コメントありがとうございました。
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