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BLの丘
あの日の夢 17
2012-11-28-Wed  CATEGORY: あの日の夢
切れた電話に、燕も大きな溜め息を吐いた。
また男を連れ込んだことを察しては、さすがに五泉も見限っただろう。
『誰にでもケツを振る存在』…。どれだけ罵られても文句も言えない。
「燕?」
「あ、…うん…。浴びてくる…」
味わった世界は、所詮、『見た夢』なのである。

のそりと起き上がって、久し振りのことに随分と時間がかかってしまって、バスルームを出た。
ずっと五泉がしてくれていたこともあって、燕は自分自身の解し方を忘れてしまっていたのだろうか。
部屋に戻ると、待ち切れなかったのか、間を埋めるためなのか、勝手に取り出した缶ビールを名立は煽っていた。
やはりパスタオルだけの格好で、燕は何もする気になれず、そのままベッドへと入った。
名立は飲み残した全てを平らげるように、束の間の時間を置く。
セックスをする気分になど到底なれなかったけれど、今更、臨戦状態の名立を鎮められるものもない。
抱かれていなかった肌は、人の温もりだけを求めているのかもしれない。

名立が動きだそうという時、外に急ブレーキを踏む車の音が聞こえた。
一瞬事故でもあったのかと耳をそばだててしまうほど。
ふたりともそちらに気を反らされたが、すぐにもこちらの世界に意識を持ってくる。
名立が燕の潜る布団に手をかけた時、チャイムの呼び出し音と、ドンドンと扉を叩く音、「燕っ!!」という怒鳴り声、更には外から鍵を開けられる音がほぼ同時に響いた。
「燕っ?!」
土足のままで踏み込んできた五泉は、般若のような表情…、いや、それ以上かもしれない。どかどかと近付いては、ベッドに入ろうとした名立を勢いよく蹴飛ばした。
「何しているっ!!出ていけっ!!!」
凄まじい怒鳴り声は、燕も聞いたことがなかった。
「っつぅ…っ。な…っ?!」
「出て行けと言っているんだっ!!」
燕と名立の間に立ちはだかるように立った五泉は、転がった名立を見下ろしていた。
あまりのことに、丸めてあった衣類を咄嗟に身につけて、あとは外で…といった勢いで名立が部屋を出ていく。
残された燕は、呆然と成り行きを見守ってしまった。

ドアが閉まる音を聞いては振り返った五泉の冷たい表情が降ってきた。
何をされるのだろう…。叩かれるのだろうか…。
丸まった燕の体を布団ごと抱きしめられた。
「馬鹿が…」
心底安堵した、と言わんばかりのホッとした吐息が燕の鼓膜に響く。
こんなふうに包まれたのは、いつぶりだろうか…。

信じていいのだろうか…。
込み上げてくる嗚咽が抑えられなくなった。
駆けつけてくれた五泉に…。

「う…っ」
「しばらく放っておいたらこれだ…。おまえはどうして俺の言うことが信じられない?何を見聞きしてきたんだ?」
呆れた口調でありながら、包んでくれる優しさだけは薄れていかない。
「だ、だって…」
「また『だって』か…。何が不満なんだ?自分の意見を言えとあれほど言っただろう」
抱かれて安心してきた。手の平を返されたように、その存在が遠くなって、でも燕が抱える欲求は口にできなかった。
我が儘のひとつが、綻びになると思っていたからだ。
「燕。俺に何度も同じことを言わせるな。おまえが何を言ってきても俺はおまえを嫌わない」
「だって…、抱いてくれなくなったじゃない…」
涙ボロボロの中で本音がようやく零れていく。
それに五泉も真摯に向き合ってきてくれた。

「俺が誘ってどうするって言うんだ。燕から来なければ意味がないだろう。おまえの考えはもう分かっている。従わせるようなことはしたくなかったんだ。燕から求めて、俺という存在を必要だと言わせたかった。体だけではなくて、おまえのためにいると教えたかったんだ。それなのに…」
ほんの僅か、抱いてやらなかっただけで、他の男に目を向けられたのではたまったものではない…。
燕が自分の欲求を口にしない。そのことを告げてくるものでもあった。

燕はひたすら、「ごめんなさい…」とだけ繰り返した。
嫌われたくない、その思いはやはり強い。
「燕…。信じろ。俺を信じろ」
「うん…」
燕が手を伸ばして抱きついた時、五泉のスーツのポケットから電話の鳴る音が響いた。
それに応対した態度と、そばにいただけに相手の声も聞こえてくる。
「もしもし…」
『やーっと出たよ…。どこ行ってんのっ』
「悪い…。すぐ戻る」
『いきなり抜けだされるんだからさぁ。回す書類、溜まってるの、五泉が分かってんだろうが。俺まで残業させないでくれる?』
気さくに話しかける声は嫌味たっぷりだったが、五泉は苦笑でかわしていた。
会社の人間だとはすぐにも判断ができることだった。
電話を切っては、五泉は燕を促す。
「着替えろ。行くぞ」
「え?い、行くって?」
「おまえを放っておくとろくなことにならない。明日の講義の用意もしておけ」
つまりは、今夜、ここには戻ってこないことを表していた。
溜め息と強引さと…。
結局は五泉には逆らえない燕である。
バタバタと動く燕に、「シャワーを浴びさせる時間がないのがなんとも言えないが…」と呟いていた。
もう浴びてはいたけれど、それは名立に近付かれた過程があるからだろう。
ずっと呼ばれることはなかったけれど…。
仕事中なのに飛び出してきた行動を見ても…。
燕は五泉の言うことを信じるしかなかった。
もう二度と他の男に目は向けないと…。

そして、燕は五泉の働く会社に連れ去られたのである。

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短いけど、書きすぎた過去に甘えさせてください。

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コメント

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ほ、惚れたぜ・・・
コメントちー | URL | 2012-11-28-Wed 03:31 [編集]
乾杯!
(て、古いなぁ。マッチでーす)

格好良いよ、格好良いよ、格好良いよー!
仕事まで投げ捨ててやって来た五泉。
やだ、もう。
惚れてまうやろーっっ(こっちは、やや古いか)

なんか、きえさんがノリノリで書いたのがわかる気がする。で、出し惜しみしないであげてくれてありがとうございます。はあ、ドキドキした。
それで、楽しかったあ。
ちょっと語弊があるか?いや、本当にきえさんにやられたよー!
もう、お兄ちゃん出なくても良くない?
いや、出る気満々でスタンバってるか(笑)

「「「「「ギャー、イッツミー!」」」」」
「「「「「素敵ー!」」」」」
「「「「「イッチャン、格好良い!カッキーン♪」」」」」

皆様もお喜びのようです。
Re: ほ、惚れたぜ・・・
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-28-Wed 07:08 [編集]
ちー様
おはようございます。

> 乾杯!
> (て、古いなぁ。マッチでーす)
>
> 格好良いよ、格好良いよ、格好良いよー!
> 仕事まで投げ捨ててやって来た五泉。
> やだ、もう。
> 惚れてまうやろーっっ(こっちは、やや古いか)
>
> なんか、きえさんがノリノリで書いたのがわかる気がする。で、出し惜しみしないであげてくれてありがとうございます。はあ、ドキドキした。
> それで、楽しかったあ。
> ちょっと語弊があるか?いや、本当にきえさんにやられたよー!
> もう、お兄ちゃん出なくても良くない?
> いや、出る気満々でスタンバってるか(笑)

古いもの続き(笑)
五泉の行動に感動してくださいましてありがとうございます。
来ました、五泉。
やっぱり好きなんだよね~。
分かって良かったね、燕ちゃん。
ちょっと読者様を翻弄させたかしら。
楽しく書かせていただきました。
お兄ちゃんは出てきますよ~。スタンバっています(笑)

> 「「「「「ギャー、イッツミー!」」」」」
> 「「「「「素敵ー!」」」」」
> 「「「「「イッチャン、格好良い!カッキーン♪」」」」」
>
> 皆様もお喜びのようです。

雄叫び嬉しいです。
コメントありがとうございました。
☆⌒ヾ(*゚∀゚)ノヒャッホォ-ゥ♪
コメントけいったん | URL | 2012-11-28-Wed 09:02 [編集]
電話から知れた男の存在で すぐに ぶっ飛んで来るなんて~♪
五泉って もっと 冷静沈着な男かと思ってたけど ヤルじゃん!( *^皿^)ウシシシシ

関係が無い→厭きた→捨てられる、
と、この短絡思考の持ち主の燕には ギュウギュウと締め付ける程の愛が丁度いいんだよね~

きえ様、昨日の横レスまでも お返事を下さってありがとう♪
本当に 心が広くて優しい女性で 
「惚れてまうやろ!(←ちーさんの真似っこ)」(*・ω・*)ポッ
時々 おっさん化する私、同じ女性として 見習いたいです。
ポッーー (*^。^*)~~~~ (゜_゜ )湯気が!?...byebye☆

男前だ!
コメントnichika | URL | 2012-11-28-Wed 09:12 [編集]
五泉さん、やっと素直な態度にウンウン。
きえ様の練ってた効力にハッピーーー小心者なんてごめんなさい。名立君は本気の人に次頑張って。
なんで鍵もってたんだ???読み戻さないと…

nichika勝手な解釈講座 S=痛みや辛さを分かっている方。
だからMに求めていても自分も痛みのも1/3か半分位はしょってる気がする。
M=何事も心広い方、自虐ではないやさしい方
なんか支離滅裂ですみません、・・・
だからきえ様はドSです(ごめんなさい)
Re: ☆⌒ヾ(*゚∀゚)ノヒャッホォ-ゥ♪
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-28-Wed 12:02 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 電話から知れた男の存在で すぐに ぶっ飛んで来るなんて~♪
> 五泉って もっと 冷静沈着な男かと思ってたけど ヤルじゃん!( *^皿^)ウシシシシ
>
> 関係が無い→厭きた→捨てられる、
> と、この短絡思考の持ち主の燕には ギュウギュウと締め付ける程の愛が丁度いいんだよね~

沈着冷静な態度はあっという間に崩れましたね。
言っても聞かない、わからないおバカさんに激突していく五泉でした。
もう首輪つけてずっとそばに置いておくのがいいですよ。

> きえ様、昨日の横レスまでも お返事を下さってありがとう♪
> 本当に 心が広くて優しい女性で 
> 「惚れてまうやろ!(←ちーさんの真似っこ)」(*・ω・*)ポッ
> 時々 おっさん化する私、同じ女性として 見習いたいです。
> ポッーー (*^。^*)~~~~ (゜_゜ )湯気が!?...byebye☆

惚れられたわ(〃▽〃)
私も普段はおっさんです。
『可愛い』などという言葉は無縁だなぁ。
湯気っ?!
そんな沸き立つものはありません…。
コメントありがとうございました。
Re: 男前だ!
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-28-Wed 12:06 [編集]
nichika様
こんにちは。

> 五泉さん、やっと素直な態度にウンウン。
> きえ様の練ってた効力にハッピーーー小心者なんてごめんなさい。名立君は本気の人に次頑張って。
> なんで鍵もってたんだ???読み戻さないと…

五泉のほうがすなおだねぇ。
鍵はきっと、五泉のマンションの暗証番号を教える代わりに奪い取ったと思います。
そこのところは書いていないので、適当に想像してください(←いい加減な作者)
名立、いい相手に会えるといいねぇ。

> nichika勝手な解釈講座 S=痛みや辛さを分かっている方。
> だからMに求めていても自分も痛みのも1/3か半分位はしょってる気がする。
> M=何事も心広い方、自虐ではないやさしい方
> なんか支離滅裂ですみません、・・・
> だからきえ様はドSです(ごめんなさい)

えーとねぇ、きえちんはSじゃないですよ~。
でもその解釈講座、すごいですね。
今後の参考にさせていただきます。
コメントありがとうございました。
No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-28-Wed 12:16 [編集]
拍手コメkさま
こんにちは。

>五泉さん、がんばって!燕をはなさないでねっ。

五泉、自分の持てる力を振り絞ることでしょう。
いつも応援嬉しいです。
五泉にも言い聞かせます。
コメントありがとうございました。
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