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BLの丘
あの日の夢 14
2012-11-26-Mon  CATEGORY: あの日の夢
やっぱり我慢できなかった…。
【新記事】・⌒ヾ( ゚⊿゚)ポイッ



ホテルの部屋は、リビングルームとでも呼ぶのか、ツインのベッドルームとははっきりと分かれた作りの部屋だった。
リビングの部分には革張りのソファとテーブルがあり、隣り合ってダイニングテーブルも用意されている。
ここが『スイート』もしくはそれに準ずる部屋だとは、見た目だけで判断出来るものだった。
狭い部屋にベッドがふたつあるだけ…。燕の記憶の中にある、当たり前の宿泊施設とは大きく異なる。
そこで箱の中に収められたタキシードを目の当たりにした。
一泊分の着替えだけを用意すればいいと言われた燕は、それこそ、世間を歩きまわる都合の良い品しか詰め込んできていない。
朝、出発して、寄り道だと言いながらいろいろな景勝地などを回った。
地元産のものもたくさん食して『デート』というものを満喫した。
そして辿り着いた瀟洒なホテル。
パーティー会場は離れた別のホテルだから移動しなければならない、という、申し訳なさそうな五泉の詫びに、仕事柄の苦労が伝わってくるようだった。
この箱は、事前にこの部屋に届けられていたらしい。
「着替えろ」と言われたその衣装すら、燕はどうしてよいのか分からなかった。
スーツすら着たことのないような燕に、タキシードなどは、未知…銀河系の世界である。

薄ら笑い…、でもこの場合は、手をかけさせてくれる子供を褒めるくらいの機嫌の良さが五泉にはあった。
全てを脱がせては順に着せ替え人形のように着飾っていく。
仕上がった様には燕の方が瞠目していた。
腕を動かしても肩から余るものはない。
細い腰にもだぶつくことがなくて、どう動いても身に吸い付いてくるようだった。
これが、既製品ではなく、オーダーメイドだと分かるまでに、時間など要していなかった。
それも、ただの服ではない…。
どんな高級品だと恐れ多く思ってしまう。
「いつ、み…?」
呆然と瞼を上げる燕に、目を細めた五泉は「良く似合う」とだけ呟いた。
どう答えたらいいのだろうか…。
迂闊なことを言っては機嫌を損ねるような気がして、燕は恥ずかしさも混じりながら口を閉じた。
湧き上がる興奮が言葉にならなかったというべきか…。

「俺…、こんなすごいの…」
「今日の招待の代役を引き受ける代償として兄貴に作らせたんだ。俺の金じゃないから安心しろ」
燕が気にしていることも五泉は感じ取ってしまうのか。
本当のことかどうかは、兄弟間の、また会社としてのやりとりがあってのことで、そこまで燕は踏み込めないけれど、心に宿った重さは取り除いてくれるものとなった。
まだ会ったこともないお兄様の負担になってしまっていないだろうか…。そんなことも過っていった。

五泉も着替えて、タクシーでパーティー会場となるホテルに向かう。
ホテルの高層階に設けられた会場は花や電飾で華々しさに溢れていた。
年配の人間が多いのは、呼ばれている人間の地位なのか。夫妻と思われるドレスや着物で着飾った夫人方も結構な人数だ。
そこに堂々と入っていける五泉に感心もしていたのだが…。
こんなところには来たことがない燕は、怖さもあって五泉から離れなかった。
五泉は見慣れた顔なのか、あちこちに挨拶を繰り返している。
嫌でも燕に目を留められて、そのたびに五泉は「社会科見学ですよ」とふざけて言葉を濁していた。
新しく見る人物もいるのか、時々名刺交換などをしていたりするのを見かければ、一種の”開拓場”でもあるらしい。
どこでも聞かれるのは『会社の状況』だった。

ボーイを呼び止めてはドリンクを手にしたり、立食形式の食事を取ってくれたりと、五泉のエスコートにも目を見張った。
招待客の娘だろうか…。
若い女性の視線を集めているのも気になるところだったが…。

ポツリポツリと人が減り始めた頃、「俺たちも帰ろう」と五泉に促される。
「え?最後までいなくていいの?」
「そんなに付き合っていられるか」
本当のところの状況など知りはしないが、ある程度役目を果たせばそれでいいらしい。
若い分、年輩者を差し置いて先に行動するのは憚られることでも、流れに沿っていくのは問題ないようだ。
出口に向かおうとしたところ、スッと一人の男が視界に入ってきた。
「おや、頸城さん、もうお帰りですか?」
五泉より幾つか年上だろう。
端正な顔つきの男も、衣装をきっちりと着こなしているせいか見栄えがいい。
「魚沼(うおぬま)さん、ご無沙汰しております」
「今日はまた、随分と可愛い子をお連れですね。もう少し楽しんでいかれてもいいのに」
「慣れない場所に彼も疲れたようです。魚沼さんがいらっしゃっているのなら、もう少し早くお声掛けしてお話できれば良かったのですが…」
話している内容はいたって世間話の部類なのだろうが、妙な緊張感が漂っていた。
燕は咄嗟に「あ、俺なら…」と五泉の袖口をつまむ。
それに魚沼と呼ばれた男は口端を上げて笑みを浮かべてから、「そうですか。以前棚上げになった件、もう一度検討しましょうかね」と意味を含んだ声を発した。
また仕事の話になるのなら邪魔をしたくない。
そう思うのに、五泉は「ありがとうございます」とだけ返事をして、燕の背中を押した。
魚沼も「また」と見送ってくれる。
「いいの?」
不安げに聞いたのに、五泉は「あぁ、いい」と何故か上機嫌の雰囲気を撒いていた。

ホテルに帰りついて、シャワーを浴びて…。
リビングで美味しそうにアルコールのグラスを傾けながら、最後の仕事とパソコンを開いた五泉にしばらく付き合っていたのだが、やはり邪魔をするようで、燕は先にベッドルームに向かった。
ツインルームだったが、一つのベッドは大きいので二人並んでも眠れるだろう。
五泉のスペースをとって横になっては、やはり緊張からの疲れがあったのか、うつらうつらと眠りだした。

ふと、話声で目が覚めた。
テレビでも見ているのか…。まだ戻ってこない五泉を気にかけてはドアに近付くと、それが五泉の声であることに気付く。
電話で話でもしているらしい。
「……だろう?向こうから声をかけてきたよ。近々話を通しに来るんじゃないか?初心なところが人目を惹くからな。今度相手でもさせれば鞍替えしてくるかも。……。あぁ、連れてきて良かった」
何の話をされているのかなど想像もできないが、少なくとも燕が絡んでいることだけは理解できた。
滅多にないくらいの上機嫌な声音だった。
「こんなに上手くいくとはな…」
今にも笑い出しそうな五泉の声に、燕は目の前が真っ暗になる気がした。
うまく飼い馴らされて、五泉に逆らえない燕は、いつしか『都合の良い道具』にされる未来が見える。
今までは自分で相手を選べていたが、今後は五泉に押し付けられるのだろうか。
五泉に「頼む」とでも縋られたら、燕は反論できないだろう。

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コメント

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いつかの夢は 砂の城?
コメントけいったん | URL | 2012-11-26-Mon 11:38 [編集]
えっ!何? その話しの内容…

それって…
ぎゃぁーー!酷いわーー!
(/□≦、)ウワァーン!!...byebye☆
Re: いつかの夢は 砂の城?
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-26-Mon 11:58 [編集]
けいったん様
こんにちは。
予測してくださいました(←)詩に心が動揺していましたが。

> えっ!何? その話しの内容…
>
> それっでもて…
> ぎゃぁーー!酷いわーー!
> (/□≦、)ウワァーン!!...byebye☆

えーと、まぁこんな感じで。

きえちんはSでも鬼畜でもありません。
燕はハッピーな世界にいるよねー。
「(;_;)う、うん…。」
ほらね。本人も認めているよ。
美味しいもの食べて知らない世界発見して。
楽しいパテーティー会場でした。

じゃあダメかな…。
ここから動きます♪
コメントありがとうございました。
鬼畜~
コメントさえ | URL | 2012-11-26-Mon 12:20 [編集]
きえちゃんがそんな鬼畜だったとは・・・
な~んてことはないと信じてる~。
燕ちゃん傷つけたらダメ~!!
お久しぶりです。
コメントnichika | URL | 2012-11-26-Mon 13:44 [編集]
「初心なところが…今度相手でもさせれば…」
「こんなに上手くいくとはな…」 疑心暗鬼にもなりますヨ。
學友もなんか足引っ張りそうだし、ど~なるんだ!!?

(友A)(nichika)(友B)
nichika「ねぇねぇ、なんのフェチなの。私は声なんだけど」
(友A)「声はある、バリトンとかいいね」
(B)「高いのはちょっとわかれるね」
(友AB)「でもありがちかも、他にもっと深いのがあるんじゃない。却下、宿題っす。」
nichi「ぇえ、宿題!? 自分達は何フェチなんだよ!」「エヘヘ笑}
あなどれない、友人つわものでした。

すっかりちー様の問いかけをし忘れました。

皆様年末に向けて体調にお気をつけて下さい。
今週にはインフェルエンザを打つ予定なのだ。

何なの?
コメントちー | URL | 2012-11-26-Mon 13:55 [編集]
えー、また、私達を撹乱してる?
五泉は、悪い人?
それとも、話は燕くんの話じゃないのかな?

うーん。
楽しいだけの出張のお供じゃないのはわかった。
燕くん、依存しちゃダメだから。
でも、しちゃうんでしょね。

「にっかたんは、声フェチですか?」
「そーですっ。」
「しくしく」
「ど、どうしたの?」
「き、きえさんが燕くんにー。えーん」
Re: 鬼畜~
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-26-Mon 14:03 [編集]
さえ様
こんにちは~。

> きえちゃんがそんな鬼畜だったとは・・・
> な~んてことはないと信じてる~。
> 燕ちゃん傷つけたらダメ~!!

ヤバい…。
なんか、地雷ふんだような…。
鬼畜ではないはずなんですけど…。
えーと、まぁ…。来るべき日は来た…というか…。
燕、大事にしていきたいです。
コメントありがとうございました。
Re: お久しぶりです。
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-26-Mon 14:11 [編集]
nichika様
こんにちは。

> 「初心なところが…今度相手でもさせれば…」
> 「こんなに上手くいくとはな…」 疑心暗鬼にもなりますヨ。
> 學友もなんか足引っ張りそうだし、ど~なるんだ!!?

どうなるんでしょーーーー。
五泉もいい具合にセリフ吐きましたね。
学友…。えぇ、こちらもそのうちになにかねぇ。
(やっぱ、読者さん、スルドイよ…冷汗)

> (友A)(nichika)(友B)
> nichika「ねぇねぇ、なんのフェチなの。私は声なんだけど」
> (友A)「声はある、バリトンとかいいね」
> (B)「高いのはちょっとわかれるね」
> (友AB)「でもありがちかも、他にもっと深いのがあるんじゃない。却下、宿題っす。」
> nichi「ぇえ、宿題!? 自分達は何フェチなんだよ!」「エヘヘ笑}
> あなどれない、友人つわものでした。
>
> すっかりちー様の問いかけをし忘れました。
>
> 皆様年末に向けて体調にお気をつけて下さい。
> 今週にはインフェルエンザを打つ予定なのだ。

nichika様までショートコント開いてくれているし(爆)
えぇ。楽しいです。
声っ、声、良いよ―――。
しびれる~っ。
コメントありがとうございました。
Re: 何なの?
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-26-Mon 14:20 [編集]
ちー様
こんにちは。

> えー、また、私達を撹乱してる?
> 五泉は、悪い人?
> それとも、話は燕くんの話じゃないのかな?

混乱させる気はないんですけれどねぇ。
どんな話をしているのでしょうか。
聞き間違いか、本心か…。

> うーん。
> 楽しいだけの出張のお供じゃないのはわかった。
> 燕くん、依存しちゃダメだから。
> でも、しちゃうんでしょね。

この出張、何があったのでしょうか。
燕は、何があっても五泉一筋なんでしょうね。
このあと、何があるのか…。

> 「にっかたんは、声フェチですか?」
> 「そーですっ。」
> 「しくしく」
> 「ど、どうしたの?」
> 「き、きえさんが燕くんにー。えーん」

♪♪「なかないで~なかないで~」(←相変わらず流れているらしい)
にっかたん、私と一緒の声フェチねぇ。
歌声はいいわよねぇ。
声は全身を流れてくれるわぁ。
コメントありがとうございました。
また 来たよ~♪
コメントけいったん | URL | 2012-11-26-Mon 14:42 [編集]
五泉、貴様も 今までの奴と一緒か~! インヤ、それより もっとヒデェ~!
うぅん これは何かの間違い~! 信じてるから~!

私も含め 皆さん テンヤワンヤの状況だぁーーー!
ォロ~ヾ(∀ ̄;(∀ ̄;(:0д0:); ̄∀); ̄∀)ノ"~ォロ

きえ様が 燕に 御無体な事をするはずがない!
『ね~、ね~、ね~、ね~、ね~』と、5人分の 「ね~」を頂きましたので
ソコントコ、夜露死苦音ッス♪~-y( ▼д▼) 、ペッ...byebye☆
Re: また 来たよ~♪
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-26-Mon 15:07 [編集]
けいったん様
こんにちは。
またいらっしゃーい。

> 五泉、貴様も 今までの奴と一緒か~! インヤ、それより もっとヒデェ~!
> うぅん これは何かの間違い~! 信じてるから~!
>
> 私も含め 皆さん テンヤワンヤの状況だぁーーー!
> ォロ~ヾ(∀ ̄;(∀ ̄;(:0д0:); ̄∀); ̄∀)ノ"~ォロ

やっぱりこんな反響でしたね…。
先延ばしにするのもなんなので急いでupしたのですが(←どうでもいい?)
さっきまでラブラブだったのに~~~。
過去の連中とどう違うでしょうか。

> きえ様が 燕に 御無体な事をするはずがない!
> 『ね~、ね~、ね~、ね~、ね~』と、5人分の 「ね~」を頂きましたので
> ソコントコ、夜露死苦音ッス♪~-y( ▼д▼) 、ペッ...byebye☆

けいったん様、"夜露死苦音"ってそこんとこにも昭和臭プンプンですよ。
息子様が白い目していませんか?
うちの妹は、近所を流していた【ピ~カラカンカンぶぅぅぅぅん】を『生きた化石』と言っていましたがね。
「ね~」は肝に銘じておきます。
ツバメちゃん、幸せになろうね(←私が言うことか)
コメントありがとうございました。
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