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BLの丘
あの日の夢 10
2012-11-24-Sat  CATEGORY: あの日の夢
『付き合う』という意味を初めて知ったような気がした。
ほとんど毎日、五泉からは電話かメールが入る。
会話の内容は至って日常的なもので、『近くにレストランがオープンした』とか『燕に似合いそうな服があった』とか、日程を確認するものだったり…。
『呼び出し』の連絡でしか電話をもらっていなかった燕には、用もないのに話をしようとする五泉が、意外な出来事でもあった。
仕事が忙しいと言いながら、講義の合間やバイトに行くまでの時間など、かなりマメに電話がかかってくる。
そのたびに仕事はいいのだろうか…と不安になってしまうのだが、それを口にすれば『燕は気にかけるな』と一蹴されて終わった。
五泉の決定事項(勝手にしていることになるのだが)に、「でも…」とか「だって…」と真っ先に声が漏れるたびに溜め息を吐き出される。
『燕のため』にされることが、燕にはケタ違いなのだ。
こんなふうに扱われたことはなくて戸惑いばかりが続く。
自分が何をしてあげられるのかと悩むたびに、「自分でやりたいようにしろ」と咎められた。
相手の機嫌を伺うような態度を、五泉は嫌っていた。
正直な態度であればいいのだが、燕の場合、どうしたって相手に従う、反応を伺うものが強い。
何かを直したい雰囲気は伝わってくるのだが、燕からは恐怖心が抜けていかない。
体だけを求めるものではないと、付き合い方の中で気付かされる。
バイトがない夜には食事に行って、次の日が朝から講義だと言えば家に帰される時もある。
五泉の家に泊まり込むこともあったし、ドライブに出掛けてそのままホテルに入ったこともあった。
顔を合わせて、『抱く、抱かれる』だけが”付き合う”のではないと、本当に一から教えたのだ。
そして囁かれる声も、日に日に甘さを増していった。
「逢うたびに好きになる…」と。
知れば知るほど…。
繋ぎとめたい思いは燕も強くなっていくばかりだ。

一週間ばかり五泉が出張に出掛けることになった。
「状況次第では延びるかも…」という行き先は海外だったのだが。
それ以前から仕事の準備だ何だと慌ただしくしていた五泉を知っていたから、燕は邪魔にならないようにと極力接触を避けていた。
マンションの暗証番号は教えられていたから、好きに出入りできたが、やっぱりまだ燕には『勝手に』ということができなくて…。
それも急がず、五泉は文句も言わなかった。
出発の前も、会うはずだったのが、土壇場の整理に追われたらしく、キャンセルの報告がなされて、一人でアパートで過ごしていた。
深夜になって『今から行く』という電話には心底驚いた。
このアパートには住人用の駐車スペースしかなく、また道幅もそれほどあるわけではないから、あの大きな車の出入りは厳しいのだ。
てっきり連れられて行くのだと思ったのだが、翌日の講義が朝一からあることを知る五泉は『顔を見るだけでいい』と燕に無茶はさせない。
間もなくやってきた五泉は、上がりもせず三和土で燕を抱きしめるにとどまった。
「しばらく放っておいたからな…。フラフラしているんじゃないぞ」
「しないよっ、もう…」
からかうように告げて、軽く唇を合わせて…。
これだけ?と思ってしまったのは燕の方だったのだが…。
分かったように苦笑された。
「帰ってきたらたっぷり可愛がってやる」
そう言ってもう一度くちづけて、名残惜しそうにドアを出ていった。

『これ以上居たら、俺の方が耐えられそうにない…』
そんな言葉を残して…。

本当の意味で求められていることを実感する。
嬉しさでしかなかった。幸せを噛みしめた。
たった一瞬の顔を見るためだけに、ここまで来てくれる。
燕を自宅に連れて行かなかったのは、やはり耐えている五泉自身が暴走しないための予防策だったのかもしれない。

五泉が帰って来る予定の日よりも早くの昼間、カフェテリアでコーヒーを飲んで雑談をしていると、五泉からの電話が鳴った。
『燕?今夜あいているか?』
もしもし…を言わないうちに向こうから要件が伝えられてくる。
「あれ?帰って来たの?」
『そう。今会社にいる。で?』
返事をさっさとしろ、とはいつもの態度だ。仕事中ということを考慮したら当然なのだが。
「あ…、ファミレスのバイトが…」
『何時に終わる?』
「5時の予定…」
『5時!?朝かっ!?』
「う…ん…。あの、頼まれちゃって…」
深夜まで働くことはあっても明け方までというのは、珍しいことでもあった。
それに五泉が『今夜』と聞くのは、あたりまえだが”家で会う”ということを意味している。
待った期間はお互いさまだった。
「あ、あの…、病欠…って言って休んでも…」
以前であれば、無茶な注文(?)をつけられて、そう言い訳したことは多々ある。
だから自然と漏れてしまったのだが、呆れた溜め息と尖った声が吐き出されてきた。
『馬鹿言っているな。不都合になる嘘をつくんじゃない。明日は?講義は何時から?』
「午後から…」
『…………分かった、5時に店に迎えに行ってやるから』
しばらくの沈黙があった後に発された言葉には燕の方が目を剥いた。
「へっ?!」
『店に行くって言ったんだ』
「で、でも上がり時間の変更とかあったりするし…」
『その時は連絡しろ』
「連絡…ってだって、そんな時間…。俺がそっちに行くから…」
『時間の無駄だ。分かったな?』
そこでプツリと電話は切れていた。

燕の働くファミレスまで、その時間帯なら五泉の家から車で10分もかからない。
多少のスピードオーバーであれば誰かと話をしているうちに…といったところだろう。
自転車で移動する燕とではスピードが違う。
それは分かるのだが…。

ただ、一刻も早く会いたいと言われているような強引さは嬉しいものでしかない。
顔を見たいし、話もしたいし、体も重ねたい。
そうやって拘束されることを喜びとする燕の性格はすでに知れているし、常に、ではないが適度な具合でこうして強制的に誘ってくる。
ふふふっと笑った燕を見て、話をしていたふわふわと浮いちゃいそうな童顔の友人がニコリとした。
「三条さん、変わったね。前は電話のあと、”溜め息”だったのに」
「え?」
「憂鬱そうだった雰囲気があったよ。それにさっきみたいに”会話”もしていなかった」
過去を振り返ることを言われて、無理していた自分がいたことに気付く。
人とは良く見ているものだ…とも思わされた。
これもひとえに五泉という人物がそばにいてくれおかげだろう。
「うん…。今は…」
今度は彼のほうがふふふと笑って、この話題は終了となった。

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三連休特別企画(←)一日二話編。
きっと皆様、お忙しいだろうに…。
読む手間を取らせてすみません。

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トラックバック0 コメント6
コメント

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あら?
コメントさえ | URL | 2012-11-24-Sat 13:04 [編集]
きえちゃん、こんにちは♪
特別企画ですね~♪
わ~い(^∇^)
燕ちゃんはだんだん素直になってきていい感じですね~(*^^*)
あ~愛されたいな~ヽ(≧▽≦)/
Re: あら?
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-24-Sat 13:29 [編集]
さえ様
こんにちは~。

> きえちゃん、こんにちは♪
> 特別企画ですね~♪
> わ~い(^∇^)
> 燕ちゃんはだんだん素直になってきていい感じですね~(*^^*)
> あ~愛されたいな~ヽ(≧▽≦)/

特別企画。勝手に名付けました(^^ゞ
今月いっぱいで終わりにしたかったところ、相変わらずの前置きが長すぎて無理ですね~。
ってことで、読者様にも長々と楽しんでいただきましょう。

燕、変わっていきますね。
そこも愛の力!!
さえちゃんもラブビーム浴びてくださいね。
コメントありがとうございました。
No title
コメント甲斐 | URL | 2012-11-24-Sat 16:33 [編集]
哀れなこれまでの燕の恋愛事情を考えると
五泉との付き合いが本当の意味での『お付き合い』なんでしょうね
呼びつけられて都合よく使われて用が済めばポイが当たり前の付き合いからしたら
デートしたり電話でのイチャイチャも
新鮮すぎて戸惑うでしょうね
でもそんな悲しい過去の思い出も
早く五泉に塗り替えてほしいって思います
うふふ
コメントちー | URL | 2012-11-25-Sun 05:03 [編集]
わ、今日は二つもある~。何か良い日だなあ。
燕くんも、少しずつ今の幸せに慣れてくれたら良いなあ。イッツミー、頼むよー。
(お兄ちゃんでも良いよ?←しつこい)

お友達には、恵まれているようで良かった。
でも、この子に幸せを奪われたりして~。
で、お兄ちゃんが・・・やっぱりしつこい(笑)


「師匠?師匠?」

「師匠いない・・・淋しい。ちー、うさぎだから死んじゃう(死にません!)」

「さえさんは、手フェチだって。ちーは、指フェチでもありますよ。指の綺麗な人が好きですぅ。だから、さえさんの仰有る事、よくわかります」



Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-25-Sun 07:09 [編集]
甲斐様
おはようございます。

> 哀れなこれまでの燕の恋愛事情を考えると
> 五泉との付き合いが本当の意味での『お付き合い』なんでしょうね
> 呼びつけられて都合よく使われて用が済めばポイが当たり前の付き合いからしたら
> デートしたり電話でのイチャイチャも
> 新鮮すぎて戸惑うでしょうね
> でもそんな悲しい過去の思い出も
> 早く五泉に塗り替えてほしいって思います

燕にとっては戸惑うものが多いのでしょう。
そこをうまく五泉が引っ張っていってくれていると思います。
新しいこといっぱい覚えていきましょう。
コメントありがとうございました。
Re: うふふ
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-25-Sun 07:14 [編集]
ちー様
おはようございます。

> わ、今日は二つもある~。何か良い日だなあ。
> 燕くんも、少しずつ今の幸せに慣れてくれたら良いなあ。イッツミー、頼むよー。
> (お兄ちゃんでも良いよ?←しつこい)

お兄ちゃんはまだ出てこないからなぁ…。
(煽られている…)
五泉におまかせしましょうね。
きっと良い方向に引っ張っていってくれるかと…。

> お友達には、恵まれているようで良かった。
> でも、この子に幸せを奪われたりして~。
> で、お兄ちゃんが・・・やっぱりしつこい(笑)

まわりがどんどんと暮らしやすい環境になっていきますね。
ここでもお兄ちゃん(笑)

> 「師匠?師匠?」
>
> 「師匠いない・・・淋しい。ちー、うさぎだから死んじゃう(死にません!)」
>
> 「さえさんは、手フェチだって。ちーは、指フェチでもありますよ。指の綺麗な人が好きですぅ。だから、さえさんの仰有る事、よくわかります」

世間様は三連休ですからね。
忙しいか暇かどっちかかなぁ。
うさぎさん、がんばれ。
コメントありがとうございました。
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