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BLの丘
あの日の夢 9
2012-11-24-Sat  CATEGORY: あの日の夢
肌に触れるように近付いてくるわけでもなかった。
それだけ広いベッドだった…というわけなのだが。
役目を果たせていない、呆れられるのではないかという思いが駆け巡って、咄嗟に起き上がる。
「ご、ごめ…。すぐ、脱ぐから…」
隣に寝転がった五泉から吐き出されるのは、またもや深い溜め息。
横向きになってこちらを向く視線に射抜かれる。
「何度言えば分かるんだ。俺を何だと思っている?おまえが望まないことに無理強いすることはない。『泊まる』は『抱く』ことじゃないだろう。…あぁ、そりゃぁ、不満が生まれる時だってあるさ。だからといって”支配”する気はないからな。そこまで堕ち潰れているつもりはない」
「だ、だって…、そんな、かっこ…」
全裸で潜り込まれてきたら”そのつもり”だろうと判断してしまう。
準備万端で待っているのが常だったのだ。
「言うのを忘れたな。寝る時はいつも何も着ないんだ。締め付けられるのが好きじゃない」
あっさりと結果論を告げられて納得はできても…。
燕から望まないと手は出さないのか…。それほどまで求められないのか…。
この時になって燕は、相手から指示がないと動けない自分に気付く。
ずっと言われるがままに過ごしてきた過去。
抱かれていることでそばにいるのだと錯覚していたけれど…。
寄り添いたい時にはどうしたらいいのだろう…。

「ごめんなさ…」
それこそが浅ましい姿を見せたようだった。
再び横になって、虚しさを抱えながら五泉に背を向ける。
動いてくる気配が伝わって、直後には背中を抱きしめられていた。
腹の前に太い腕が回る。
項に吸い付くように這う唇が「燕…」と囁いてくる。
ゾクッと全身の血が騒ぎたてるようだった。

「俺からこれを告げるのは最後だと思って良く聞いておけ。俺はいつだって燕を抱きたいと思うようになるだろう。いや、今現在も思っているというべきか…。だけどな…。そんなふうにビクビクしながら向き合われたくはない。おまえは”道具”じゃない。自分の意思で、欲しいのなら『欲しい』と言え。会いたければいつだって連絡をしてくればいい。そこが『できるだけ燕に合わせる』っていうことなんだ。俺も俺だからな…。待てなければ、今日みたいに俺は呼ぶ。嫌なら拒絶すればいいし、それをされたからといって、俺が燕を嫌うことはない。”付き合い方”を知らないのなら一から教えてやる」
今までの生活とは変わるのだということを、染み込ませるように、また五泉は聞かせてきた。
五泉のご機嫌伺いなどしなくていい。それは五泉が燕に対してもとる態度であるのだと。
本当に…。燕の今までの生活を見てきたかのような話ぶりには言葉がない。

ヤりたい時にだけ呼ばれて、用なしとなれば『帰れ』と追い出された頃とは明らかに違うもの。
燕の予定なんて、全く無視で、講義があろうが、バイトがあろうが、『今から来い。無理なら別れる』の一言に翻弄され続けてきた。
学業なんてもちろん二の次に回されて…。
相手を受け入れるための準備も自分でして、終わったらそのまま放置されて、後処理も自分の役目で…。
相手が何を望むのかを観察したり、伺ったりしていた。
離れていかれないために、何でも受け入れて、燕だけを見てくれる人だと信じたかった。
背後にいる五泉は、全く違う人間だ。
強引かもしれないけれど、いつも真っ先に燕の予定を確認する。

この人に、本当の意味で愛されたいと思うのは、贅沢だろうか…。
そのためなら、何でもする、と思えるのに…。
そこが燕の良くも悪くもある性格だったのだが。

部屋2

クルリと体の向きを変えると、正面に五泉の引き締まった顔が見える。
ベッドに入れば必ず性行為が行われるものだと思っていた。
事実、前回会ったときだって、貪るように燕を抱いてくれた人だった。
あの時の情熱は、今もあると、…これからもありつづけると信じていいのだろうか…。
潤む瞳に五泉が苦笑を浮かべる。
「ヤバイ気分になる…」
額に、瞼に、頬に…、くちづけられて、正面から見つめられて…。

燕は思う。…いつもの誘うための台詞じゃない。
心の底からずっと夢見てき憧れてきた日。本心から吐き出される思いが喉を震わせた。
「五泉さん…」
「"さん”はいらないって言っただろう…」
苦言を吐きながらも、並んでいた体は上下に重なる。
燕の意思は、言葉にしなくても汲み取ってくれていた。
たぶん、五泉自身、堪えていたものがあったのだろうけれど。
耳朶を甘噛みされながら「燕…」と低音が鼓膜に投げかけられた。
鼓膜から脳へ…。脳から足のつま先まで…。血液と混じって電流のごとく駆け巡っていく。
「あ…っ、…い、つみ…っ」
声だけでも充分な刺激…。
噛まれた首筋に、恐怖と安堵が交錯した。
今からこの人のものなれるのかと…。
顔を上げた五泉の唇が燕のを啄ばむ。頭の両脇に肘をついて、時々視線を絡ませながら、またくちづけて…。
こんな優しい扱いをされるのも久し振り…というか、初めてかもしれない。
両手で頭を固定された燕は逃げることもできず、深まっていくだけのくちづけを受け入れた。
長い…、たっぷりと愛情を注がれるようなくちづけの愛撫も、初めてのことだった。

きっと、この家に誘った時点でも、ベッドに潜り込んでも、燕の気持ちを落ち着かせるために、安易な行動は起こさない気でいたのだろう。
だけど、一度同じベッドに入ってしまえば…。
どんな理由があれ、誘ったのは燕の方だったのだが…。
嫌だとは思わない。
抱かれる、肌の熱さが甦って来る。

あの日、夜と朝と…、重ねた体があったとしても、決して酷くは扱われなかった。
最後は、全身を抱きしめて鼓膜に残して行った『ツバメ』…という声が全身を震わせてくれた。
思い出しては戸惑っていた燕だったが、今は応えて良かった気がする。

今日の聞いた話の全てを信じて、身を委ねたい。
いつもこうして、一人だけを見てくれる人を求めていたことを強く感じる。
抱かれてもいい…。…いや、そうじゃない。
抱かれたい…。

この時から、燕は五泉の『籠の中の鳥』になったのだろう。
それも、出口のない…。
幸せという、籠の中。
至福の時が流れた。


『Rêve de ce jour-あの日の夢-』

笑顔零れた あの夢は
すぐに 崩れ消え去る 砂山の城
分かっているのに…
何度も抱いてしまう 儚い 幻想 

頬濡らした あの夢は
いつまでも 拭い切れない 湖沼の澱
逃れられないのに…
何度も突き付けられる 確かな 現実 

あの日の夢に 惑わされる 囚われる


またまたけいったん様が素敵な詩を書いてくださいました。
私の頭の中、覗かれているのかなぁっていうくらい良く詠まれてくれます。
ありがとうございました。

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コメント

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幸せに
コメントちー | URL | 2012-11-24-Sat 05:28 [編集]
なんつー、奴等と付き合ってたのかしらね?
(お話だってば~)
何もかも自分でやってたなんてさあ。
あまりにも不憫だ。不憫すぎ~。

五泉は、ちゃんと受け止めてくれる人で良かったね。
・・・で、済むのか?お?
ひーくん、みたいに二転三転するのかしら?
ヤバイ、私まで後ろ向き~(笑)


「師匠、師匠!私、師匠と似たようなとこで感動するみたいです~」
「ほう?そうなのかい?」
「うん!とあるとこでねー、発見したよ」
「じゃ、詩でも書いてみな?(素敵なのをねっ)」
「甲斐さんとさえさんは、何フェチなのかなあ?」
「もしもし?」
「にっかたんも教えてくれてないしー」
「詩を書けと言うてるに・・・」
「聞こえなぁぁぁいっ」


師匠、言葉の選び方がステキング←こらっ
いや、本当に今の燕くんの心情にピッタリ。
終わる頃には、きちんとした地盤の上に耐震免震構造のお城が造れていますように・・・
Re: 幸せに
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-24-Sat 07:09 [編集]
ちー様
おはようございます。

> なんつー、奴等と付き合ってたのかしらね?
> (お話だってば~)
> 何もかも自分でやってたなんてさあ。
> あまりにも不憫だ。不憫すぎ~。

そーゆー人生の子でした。
翻弄されてばかりでしたね。
そこまでして、『誰か』に必要とされたかったのでしょう。

> 五泉は、ちゃんと受け止めてくれる人で良かったね。
> ・・・で、済むのか?お?
> ひーくん、みたいに二転三転するのかしら?
> ヤバイ、私まで後ろ向き~(笑)

いい人に出会えたね♪
幸せになってね♪
チャンチャン♪
……なんですかねぇ???(←)

> 「師匠、師匠!私、師匠と似たようなとこで感動するみたいです~」
> 「ほう?そうなのかい?」
> 「うん!とあるとこでねー、発見したよ」
> 「じゃ、詩でも書いてみな?(素敵なのをねっ)」
> 「甲斐さんとさえさんは、何フェチなのかなあ?」
> 「もしもし?」
> 「にっかたんも教えてくれてないしー」
> 「詩を書けと言うてるに・・・」
> 「聞こえなぁぁぁいっ」
>
>
> 師匠、言葉の選び方がステキング←こらっ
> いや、本当に今の燕くんの心情にピッタリ。
> 終わる頃には、きちんとした地盤の上に耐震免震構造のお城が造れていますように・・・

あの詩を頂いた時、頭の中をのぞかれているのかなと思いましたよ。
さすが師匠です。
終わるころには…ですねぇ。
いつ終わるんだか…(←)
コメントありがとうございました。
素敵♪
コメントさえ | URL | 2012-11-24-Sat 13:33 [編集]
こっちにコメしようと思って訪ねたの~♪
そうしたらお話し発見(~▽~@)♪♪♪

けいったん様はホントに素敵な詩をお書きになりますね~(*^^*)
私は文才も何もないので羨ましいです♪


そして、フェチですか~。
何でしょう?
何フェチかしら???
わかった~
コメントさえ | URL | 2012-11-24-Sat 13:44 [編集]
たびたび失礼します♪

私は手フェチです♪
血管の浮いた甲が好き(*^^*)
あとスッとした指先~ε=ヾ(*~▽~)ノ

指って色んな妄想を掻き立てませんか?
No title
コメント甲斐 | URL | 2012-11-24-Sat 16:38 [編集]
けいったん様の素敵な詩と共に読ませていただきました
過去の悲しい夢なんか忘れちゃって
今の幸せに浸れますように
二人の恋の行方に幸あれ
Re: 素敵♪
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-25-Sun 07:04 [編集]
さえ様
おはようございます。

> こっちにコメしようと思って訪ねたの~♪
> そうしたらお話し発見(~▽~@)♪♪♪
>
> けいったん様はホントに素敵な詩をお書きになりますね~(*^^*)
> 私は文才も何もないので羨ましいです♪

二話upさせていただきました~。
今回は結構サクサクと進んでいる方です。
さえちゃんはお料理上手だからいいのです。

> そして、フェチですか~。
> 何でしょう?
> 何フェチかしら???

手フェチですか。
色々妄想かきたてられますね。
私も綺麗な手は好きですよ。
コメントありがとうございました。

Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-25-Sun 07:11 [編集]
甲斐様
おはようございます。

> けいったん様の素敵な詩と共に読ませていただきました
> 過去の悲しい夢なんか忘れちゃって
> 今の幸せに浸れますように
> 二人の恋の行方に幸あれ

けいったん様にはいつもお世話になっております。
心情を上手に綴ってくれていますね。
二人の恋の行方…。いい響きです。
コメントありがとうございました。
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