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BLの丘
あの日の夢 8
2012-11-23-Fri  CATEGORY: あの日の夢
スッとした身のこなしで立ち上がろうとした五泉に、燕は焦って「ここって…、他に住んでいる人が…?」と先程の台詞を振り返った。
五泉は不思議そうな顔で燕を見てくる。
「いや、俺一人だが…」
「でも、今、作ってもらった…って…」
燕の発言にどこか納得したように苦笑を浮かべた。
「あぁ、ハウスキーパーを雇っているからな。ついでに食事作りを頼む時もある」
燕は、それは『家政婦さん』と呼ばれるものだろうか…と頭を巡らせた。
その時になってぐるりと部屋を見回した。
入ってきた時から少々の違和感があったことが、瞬時に納得がいった。
ここは、”綺麗過ぎ”るのだ。まるでモデルルームであるかのように…。
広々とした部屋に圧倒されていたこともあったけれど、その広さは、生活感を漂わせていない。

あまり気にした様子もなく、立ち上がった五泉はキッチンへと向かっていく。
「燕くらいの子が何を好むのかが分からなかったが…。カレーらしいぞ」
どんな意味で家政婦に燕の存在を伝えたのかは分からないが、明らかに五泉のリクエストではないのが伝わってくる。
全て用意されていることは、五泉が組んだ日程(?)であって、やっぱり燕に拒絶権はないのだと教えられたようだった。
燕は五泉のあとを黙ってついていく存在になってしまうような…。
だけど、今までの暮らしと違って、嫌な感じがしないのも確かだった。
ここに座ったままでいいのかと五泉の姿を追うのだが、彼は全く燕を振り返ることはない。
やがて鍋を温めたのか、カレーの香ばしい匂いが漂い始めた。

どれくらいの量を食べるのかと聞かれて、結局燕もキッチンの中へと誘われたが、そこもやはり生活感があるような汚れ具合は見当たらなかった。
業者(人)に頼むと、こんなに綺麗に保てるものだろうか…と半ば感心して、また自分との違いを突き付けられた。
不安だけが広がる。
…本当に…、本当に、うまくなんていくのだろうか…。
将来見限られることだけが脳裏を過る。

カウンターテーブルの上に、カレーライスだけでなくマカロニサラダや和え物が出される。
隣同士に並んで食べるのもなんだか不思議な感覚だった。
たったこれだけのことなのに、慣れないことが、高級感を味わった気分にさせてくれた。
いつもここで食べるのかと聞いたら、家で食べることは滅多にないと言われて、その影に仕事の忙しさが垣間見えた。
だけどその理由を、「スケジュールは変わるし、一人前だけ作らせるほうが手間になる」と、単に外食が多いと教えてくる。
使われることのないキッチンが綺麗なまま保たれているのも納得だ。
「でも燕が来るならダイニングテーブルでも買うか。俺だけならここでもいいけどな…」
五泉はなんてこともないように呟いた。
その性急な行動力には瞠目する。
「え…?…、そんな、まだ今後のことなんて分かんないのに…」
「『分かんない』?……本当におまえは…」
呟きの答えはやっぱり呆れたという盛大な溜め息だった。
五泉は半分ほど食べたカレー皿にスプーンを一度置いた。
しっかりと燕を見つめてくる。

「そのマイナス思考はどうにかしろ。新しい生活に踏み出す意欲というものは持てないのか?おまえは後ろ向きにばかり物事を考える」
諭されているのは分かる…。でも恐怖心があるのも確かなのだった。
久し振りに浴びた温かな愛情(なのか)に翻弄されている自分を良く知るからこそ、構えてしまうのだ。
その後にどんな辛辣な態度をとられるのかと…。

「もし、どうにかなった時はどうにかなった時だ。せめて一緒にいられる期間を、燕と過ごしやすいようにと整えていくのも反対されなきゃならないのか?」
言葉の奥に隠されたものは、あくまでも『五泉が燕のために』すること…。
言い聞かせるように、五泉はその意味を繰り返した。
燕が動くのではなく、自分が勝手にやることなのだと…。

食事を終えた後、また少しの雑談をして、五泉は家の中を案内してくれる。
廊下を進めばゲストルームとワークルームが並び、一番奥に寝室、またバスルームやトイレ、物置などがあった。
「ひろっ」
感心するのは、当然自分の生活空間とは似ても似つかないからだろう。
バスルームに関しては透明なガラス張りで、対面に洗面台がある。真ん中のスペースが脱衣所の役割を担っている。
その作りにも当然驚かされて…。つまり脱衣所に入れば入浴シーンは簡単に覗かれるというか…。
どこのラブホだ?!と脳裏を過ってしまえば、苦笑した五泉がガラスのどこかに触れた。
その途端、見えていた世界は曇りガラスに閉ざされた。
マジックでも見ているかのように絶句する燕に、近付くわけでもなく、それこそ世間話のように声がかけられる。
「泊まっていけるか?無理ならタクシーを呼んでやる」
思えば二人ともすでにアルコールを含んでいた体だった。
欲情を表しているような雰囲気はなく、その態度は燕を安心させるための演技なのか…。
逆に不安を覚えるだけだというのに…。
誤解はされたくない。だけど、今のこの状況で離れたくない甘えが走る。

「大丈夫…」
燕の答えに、ホッとしたような困惑したような、これまででは感じられない何かが流れた気がした。
五泉は湯を張ってくれて、何も持って来なかった(正確には連れ去った)燕のために、寝室のクローゼットから着替えを用意してくれた。
絶対にサイズの大きい新品の下着は五泉のものなのだろうし、外出着として着るのではないだろうかというようなワイシャツ(のようなもの)は尻どころか膝近くまで隠してくれる。
「ゆっくり温まれ…」
そう言い残して五泉はバスルームに向かうよう、燕の背を押した。


部屋

不思議な感じだった。
ヤるためだと思ってきたこの場所に、燻るものばかりがあったのに、今は安堵の方が強い。
これから何が行われても、覚悟を決めた気持ちがあるからだろうか。
広い浴槽は当たり前だがアパートのものとは違っている。
『ゆっくり…』…。でもそれは相手を待たせているようで、心苦しいものがあるのも正直なところ。
急いてしまうのは気持ちの問題なのか、過去からの焦りなのか…。
最低限の洗浄を済ませて出ていけば、リビングに五泉の姿が見えなかった。
バタバタと動いた物音に気付いたのだろう、ワークルームから顔を出してくる。
「もう出たのか?…ちょっとやることができたんだ。何か飲んでいてもいいし、先に寝室で寝ているか?」
泊まることを認めた燕に、好きなように過ごしていいと促してくる。
それでも勝手に動くことは躊躇われて、大人しくベッドの中で待っていようと思った。
寝室には広々としたベッドと、一人掛けのソファ、オットマン、壁にはAV機器があるだけだった。
そこで裸になって待っているべきなのか、脱がしてもらった方が良いのかと悩んだ。
結局は浅ましさを晒してしまうようで、着たままで潜ったのだが…。
今か今かと緊張する中、しばらくしてからバスローブを纏ってやってきた五泉は、徐にバスローブを脱ぎソファに投げると、全裸になってベッドへと入ってきた。
やはり脱いでおくべきだったか…と後悔して焦った燕だった。

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トラックバック0 コメント8
コメント

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きゃっ!けいったんさんに褒められちゃったですよ(#^.^#)
コメント甲斐 | URL | 2012-11-23-Fri 00:48 [編集]
なんか恥ずかしいですー
けいったんさんたら…
同好の士として仲良くしてくださいませ
素敵な詩も読ませていただきました
まだまだじれったい二人ですから
本当にちゃんと話して分かり合えたらいいなって思いました

燕ったらまるで迷子の子みたいにきょろきょろウロウロ
なんだか呆然としているうちに流されてますね

バスローブを投げてベッドへ入ってきた五泉が
リングに上がるレスラーのようで思わず”カン”とベルを鳴らしてあげたくなりました
着衣でぷるぷる震えているツバメちゃん
さあ勝負はいかに。。。。
子羊ちゃん
コメントさえ | URL | 2012-11-23-Fri 01:20 [編集]
燕ちゃんは脱がないで正解だよ~(*^^*)
脱がせる楽しみもね~(^∇^)
そんなこと書いてる私は入浴中♪
アヒルちゃんと一緒です♪

甲斐様が書いたように五泉“カン”って鳴らされてますね(☆▽☆ )
やっぱり
コメントちー | URL | 2012-11-23-Fri 02:41 [編集]
気になる燕くんの男遍歴。
どんなのと付き合ってたの?君は・・・
最初の男(若しくは女か?)からして、ダメだったんじゃないのかなあ?

何となくだけど、イッツミーは何にもせずに抱き締めて眠るだけな気もする。
過去の男達とは違うって事、わかってもらうために。
未だに登場してこない兄ちゃんが、燕くんの過去の男だったら面白いな。

「師匠、コメント欄賑やかになってきましたねー♪」
「うん、楽しいよね♪」
「にっかたんに、さえさんに、甲斐さん。コメ常連さんの復活だしー」
「アンタ、ここに入れる気じゃ・・・」


にっかたん、師匠、きえさん。
ちー、珍しくお医者に行ってお薬もらってだいぶ良くなりましたよ。ご心配おかけしました。
鼻づまりや鼻水で、ご飯が味気なかったけど、治れば美味しい(食べ過ぎじゃね?って位食べた)
皆様もお身体大切に(^-^)/
Re: きゃっ!けいったんさんに褒められちゃったですよ(#^.^#)
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-23-Fri 07:05 [編集]
甲斐様
おはようございます。

> なんか恥ずかしいですー
> けいったんさんたら…
> 同好の士として仲良くしてくださいませ
> 素敵な詩も読ませていただきました
> まだまだじれったい二人ですから
> 本当にちゃんと話して分かり合えたらいいなって思いました

皆さん、仲良くしていただければ私は嬉しいです。
恥ずかしがらずにじゃんじゃん参加してくださいね~。

> 燕ったらまるで迷子の子みたいにきょろきょろウロウロ
> なんだか呆然としているうちに流されてますね
>
> バスローブを投げてベッドへ入ってきた五泉が
> リングに上がるレスラーのようで思わず”カン”とベルを鳴らしてあげたくなりました
> 着衣でぷるぷる震えているツバメちゃん
> さあ勝負はいかに。。。。

流されるままやってきたような燕なので、慣れないのでしょう。
いつも命令されてばっかりだったしね。
自分で考えることができない、ある意味、可哀想な子です。
リングに上がるレスラー(爆)
かたやツバメちゃん。
勝負は見えたような感じがしなくもない…?!
コメントありがとうございました。
Re: 子羊ちゃん
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-23-Fri 07:10 [編集]
さえ様
おはようございます。
子羊、そんな感じですね。

> 燕ちゃんは脱がないで正解だよ~(*^^*)
> 脱がせる楽しみもね~(^∇^)
> そんなこと書いてる私は入浴中♪
> アヒルちゃんと一緒です♪
>
> 甲斐様が書いたように五泉“カン”って鳴らされてますね(☆▽☆ )

さえちゃんはアヒルと一緒にお風呂なのか…。
オロオロしまくりの燕です。
脱ぐ脱がないだけで悩んじゃって…怯えちゃって…。
ゴングは鳴らされた~~~。
コメントありがとうございました。
Re: やっぱり
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-23-Fri 07:16 [編集]
ちー様
おはようございます。

> 気になる燕くんの男遍歴。
> どんなのと付き合ってたの?君は・・・
> 最初の男(若しくは女か?)からして、ダメだったんじゃないのかなあ?

男遍歴…。
まぁ、出すことがあったら出そうかなぁって感じです。
そんな感じのヤツと付き合っていたんですよ(笑)

> 何となくだけど、イッツミーは何にもせずに抱き締めて眠るだけな気もする。
> 過去の男達とは違うって事、わかってもらうために。
> 未だに登場してこない兄ちゃんが、燕くんの過去の男だったら面白いな。

お兄ちゃん、どんな存在(爆)
五泉、何をするでしょうか。
二度目のベッドインですからね。
分かっているところもあるでしょうし。

> 「師匠、コメント欄賑やかになってきましたねー♪」
> 「うん、楽しいよね♪」
> 「にっかたんに、さえさんに、甲斐さん。コメ常連さんの復活だしー」
> 「アンタ、ここに入れる気じゃ・・・」

賑やか~ヽ(゚∀゚)ノ
読んでくれている人がいるんだ~、こんな思いなんだ~っていうのが分かって、ふむふむと思っています。

> にっかたん、師匠、きえさん。
> ちー、珍しくお医者に行ってお薬もらってだいぶ良くなりましたよ。ご心配おかけしました。
> 鼻づまりや鼻水で、ご飯が味気なかったけど、治れば美味しい(食べ過ぎじゃね?って位食べた)
> 皆様もお身体大切に(^-^)/

ちー様、ご無理だけはされないでね。
また週末寒そうだし。
美味しいものがたくさん食べられるというのはいいことです。
(うちの母は口癖のように『食っての頑丈』と言い続けてますよ~)
コメントありがとうございました。
おはようさんです|壁|〃_ 〃)ゞ チラッ
コメントけいったん | URL | 2012-11-23-Fri 09:42 [編集]
燕の意見も聞かずに 何から何まで 一人勝手に さっさと事を勧める五泉
燕の様な子には このくらい強引に導いてくれる人が いいのかな?
今は…( ̄ー ̄)ニヤリ

長年の色々あったであろう出来事で 燕の内に しっかり根付き成長した 「マイナス思考」の大きな木
チョットヤソットジャ 枯れないだろうなぁ~
しかも 今は 見事な花も咲いてる様ですしね! 

これからの 五泉のお手並みを 燕の保護者代理メンバーの一人として じっくり拝見させて貰いましょう。

きえ様、昨日は 大々的に私の詩を載せて頂き有り難うございます。
夜 気づいて PCの前でオロオロ~!
で、如何していいか分からず コメも書けずに固まってました(笑)
ちーさん、さえさん、甲斐さん、nichikaさん、コメまで書いて頂き恐縮です┏○))ペコ
そして 喜んで貰えたようで ヾ(@^▽^@)ノ ァリガトゥー♪...byebye☆
Re: おはようさんです|壁|〃_ 〃)ゞ チラッ
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-23-Fri 12:02 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 燕の意見も聞かずに 何から何まで 一人勝手に さっさと事を勧める五泉
> 燕の様な子には このくらい強引に導いてくれる人が いいのかな?
> 今は…( ̄ー ̄)ニヤリ
>
> 長年の色々あったであろう出来事で 燕の内に しっかり根付き成長した 「マイナス思考」の大きな木
> チョットヤソットジャ 枯れないだろうなぁ~
> しかも 今は 見事な花も咲いてる様ですしね! 
>
> これからの 五泉のお手並みを 燕の保護者代理メンバーの一人として じっくり拝見させて貰いましょう。

ハイ、これくらい強引なくらいがいいんでしょうね。
なんてったって"クラゲ"ですから。
是非、海から掬いあげていただきたいです。
そして死んでしまえ~(←いや…、過去を捨ててしまえとね…)
そこでマイナス思考は消えるでしょうか。
生まれ変われるかしら。
燕の保護者が多い(^_^;)

> きえ様、昨日は 大々的に私の詩を載せて頂き有り難うございます。
> 夜 気づいて PCの前でオロオロ~!
> で、如何していいか分からず コメも書けずに固まってました(笑)
> ちーさん、さえさん、甲斐さん、nichikaさん、コメまで書いて頂き恐縮です┏○))ペコ
> そして 喜んで貰えたようで ヾ(@^▽^@)ノ ァリガトゥー♪...byebye☆

こちらこそ~ヽ(゚∀゚)ノ
とっても嬉しかったです~。
さすがけいったんさまでした。
明日の記事で、また次が出ますので~。
もしかしたらイメージ変えちゃうかもしれないかもしれませんが…。
大喜びですヾ(@^▽^@)ノ
コメントありがとうございました。
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