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BLの丘
淋しい夜に泣く声 46
2009-10-06-Tue  CATEGORY: 淋しい夜
『午後』と榛名は言っていたが、実際に野崎が『ボディーガード』と称する人間を連れてきたのはお昼前の時間だった。
しかも予想を反して、自分と1つしか年の違わない年上の上品な女性だった。
細身の体に合った淡いクリーム色のワンピースを着こなし、肩に触れない位置まで伸ばした髪にゆるくパーマをかけた髪はほっそりと引き締まった顔形にしっくりといっている。全体的には柔らかな雰囲気の女性のようだが、男の英人より凛々しさのある洗練された人だった。
ボディーガードというからてっきり頑丈な男性がやってくるのだと思っていた英人は呆然としてしまった。

「武道に関しては空手道、剣道と段位を取得されていますからご安心なさってください。暮田さんのエスコート役としても一役買ってくださると思います」
ちょっと立場が逆じゃないだろうか…と英人は思いながら、野崎の言葉をすんなりと受けるしかなく、野崎は僅かな時間で彼女の説明だけを終えて消え去っていった。
榛名は気に入らなければ交替させると簡単に言い放ったが、せっかく来てくれた人物を性別や見た目で見下すのは失礼だと思った。それに事件など何もないと思っていたから、大人しく榛名の言うとおりにしていればいいと彼女を受け入れることにした。

藤原早菜香(ふじわら さなか)と教えられた名前の人物は、ニコニコと人の良い笑みを浮かべて、「ご昼食はどうなさいますか?」と英人に尋ねた。
英人は野崎が来る前まで、油絵を描く画材の前に座り込んでいたのだが、この女性の登場と共に描く気力を失ってしまった。
「ルームサービスか…。外のレストランとかに出てもいいし…。でも俺が行く外食ってファーストフードとかですよ」
なんとなく、この女性と共にする食事風景を思い浮かべられずに、そしてみっともないマナーを晒す気にもなれず、恥ずかしながらも普段の自分のスタイルを正直に話せば、藤原は喜んだように声を高鳴らせた。
「ファーストフードってマックロランドとかケンタ○キーブランドナントカとかですか!?すごいっ、行けるんですか!?テレビでCMをしているところですよねっ?!行きたいっ!!」
無邪気に喜ぶ声がまるで自分よりも年下の女の子のようで、英人は面食らいつつも少しだけ嬉しさを覚えた。
このホテルに入ってから、高級感が漂う雰囲気ばかりに触れていたから、失礼に当たると思っていたのに、彼女の喜びようはかなり意外だった。全世界国民のほとんどが知る外食産業だというのに、彼女の中では未知の世界だったようだ。
早々に藤原に手を引かれ、場所はどこ?とタクシー乗り場に連れて行かれる。
…いや、歩いて行けるから…と戸惑えば、「お散歩が先ですか?」とまた頓珍漢な答えが返ってきた。

この女性は、英人が外見から想像していた人物よりかなり異なるようだった…。

藤原の記憶しているMの文字が掲げられた看板がある『マックロランド』(正式にはマ○ドナルドだが)のカウンターで様々なメニューを見せられ、長時間に渡り悩む彼女に、後方に並ぶ客になんとなく気の引けた英人はメニューを借りてレジ前を離れた。
それから一つ一つ説明を加えていくと、やはり『女の子』の表情のまま藤原は、「あーぁ、じゃあこれ」と一つのセットメニューを指差した。そしてゴールドカードを差し出した。

当然戸惑ったのは英人のほうで、このようなところでこんな派手なカードは…と藤原にカードをしまうよう伝える。
「でもお支払いは私のほうでするよう言われておりますので…」
と引かない藤原に、英人は榛名の名前を出すしかなかった。
「それはたぶん、千城さんたちと行くようなレストランで食事をしたら…ということだと思います。こういう場所では現金で支払ってこいって千城さんに言われてお金ももらっているからカードはしまってください」
あたかも榛名からの指示だと言うように告げれば、納得したかのようにオーダーと支払を英人に任せてくれた。

二階建ての広い店内で、傍で子供連れの親子が騒ぐのを気にしつつも、英人と向かい合った藤原はトレーに乗せられたハンバーガーとフライドポテトを興味深そうに眺めた。
「テレビなどでは見たことがあるんですよ。でも誰も連れて行ってくれないし一人で入る勇気もなくて…。我が家の外食はいつもシェフのお任せばかりでしたから…」
照れたように俯く彼女の仕草がどうにも新鮮で不思議だった。
顔を赤らめたいのはこちらの方だった。
自分とたいして年も変わらないのに、どんな育ちをしたのか、彼女はファーストフードという存在を知らなかった。
ナイフもフォークも用意されていない状況に、どうやって食すのか英人の行動を伺っている。
英人はこんな食生活を教えてしまって良かったのかと半ば不安に晒された。
「て、手づかみで食べんだけどさ…。こうやって…」
紙包みに挟まれたハンバーガーを大口を開けてかぶりついてみせれば、目を大きく開いた藤原が宇宙人でも見るかのように英人の行動を見逃さぬようにとじっと見つめていた。
「すごいっ。かっこいいっ!映画の中みたいですねっ。よく男優さんが道路で食べていたりするじゃないですかっ!そんなかんじっ!!本当にこうやって食べるんだぁぁ」
どうやら彼女にとっては丸ごとかぶりつくことは異次元の世界のことだったようだ…。
褒められている気分にもなるのだが、よくよく考えてみれば馬鹿にされているようでもある。
一度キョロキョロと周りに座る客を見回し、全員が素手にしたものを食べているという状況を確認した上で、藤原は英人と同じように両手でハンバーガーを持ち、恥ずかしげに口を小さく開けて端っこに噛みついた。

無邪気に明るく振舞っている彼女のせいなのか、藤原と共に過ごした時間のおかげで、いつの間にか英人は心を癒されていた。
もちろん、女性に恋心を抱く性質ではなかったから、気の良い姉か友達か…という存在にしかならなかったが…。
ボディーガードというよりも、榛名が言っていた『話し相手』という感じで、榛名が来るまでの間、英人は彼女と共に過ごすことに慣れていった。


「もう帰っていいぞ」
「なぁに、その言い方。ちーちゃんが誘ってきたのに」
部屋のドアが開き入ってきた榛名が、ソファで英人と向かい合わせで座っていた藤原に声をかけた。
リビングでくつろいでいた英人は、藤原が榛名を親しげに呼ぶ仲の良さに驚かされた。

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すみません、あまりにも暗い話で、反動でこんなものが出来上がってしまいました…。
うちは勝手にキャラが動き出すので、本当に困ったものです…。
完結が更に遅くなる…(うへっ(>_<)


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