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BLの丘
乱反射 34
2012-11-09-Fri  CATEGORY: 乱反射
若美の開店準備は順調に進んでいったようだ。
あまり大きくない、小料理屋としてオープンするそうで、すでに連携をとっていた共同経営者がいるらしい。
そして選んだ従業員も、信頼をおいた、また実力を認めた人たちで、方向性などの考え方は一致しているのだろう。
だからこそ、話の進め方も早かったのだろうか。

そんなことで若美の引っ越しもあっという間だった。
開店前の日にはまた家族で集まり、店の中で若美の手料理…この場合、商品になるのだろうが…を味わった。
もともとあった店舗を改装したとのことだが、和の雰囲気がふんだんに取り入れられている。
厨房を中心に、カウンター席とこあがりが対面になった側、三面をテーブル席が囲む、変わった形だと思われたが、客の顔が見たいという若美の思いが込められているものでもあるようだった。
この時、もう一人の調理人と接客係の男性ふたりも、本番さながらに動いていたのだが…。
家族しかいないのにね…とのぼやきは心の中にしまっておく。
通い慣れた居酒屋も居心地が良いものだと思っていたが、ここも過ごしやすい雰囲気があった。
萩生たちと来るのもいいのではないかと今後のことを思ってしまう。

若美が家を出てから、家事はもちろん自分たちの負担になったのだが…。
料理に関しては、さすがというか、真室は”基礎”を叩きこまれていたようで、また、普段の兄の動きも見ていたせいか、スムーズに色々なものを作りだしていた。
もちろん若美ほど凝ったものではないが、舌は充分なほどの満足を味わう。
「なぁ、真室。これ、弁当で持っていけるんじゃねぇ?」
ダイニングテーブルで夕食を頬張りながら、少し余分に作って…と提案すると、恥ずかしそうに頬を染める。
ここ最近は、また社食に戻っていたあつみたちだった。
「でも…。こんなの高畠さんたちに出すのは…」
お弁当=全員分のイメージが真室にはあったらしい。
あつみは咄嗟に手を振る。
「そうじゃなくて、俺と真室の分だけでいいんだって。なんで真室の手料理を萩生なんかに食わせなきゃなんないんだよ」
若美の時と違って品数が少なくなったり見栄えが悪かったとしても、やはり”家庭の味”はあつみにとって喜びだった。
二食、三食…と同じものが続いてしまったとしても…だ。
それはまた、若美に『お料理教室』でも開いてもらおう…ということに直結していく。
家を出た…とはいっても、心配なところがあるのか、調理済みのものを持ってたまに顔を見せる若美だったから。
たぶん、栄養面を気遣ってのことでもあるのだと思う。
弟が作りだす、偏りがちになるものを、兄としては知っているのだろう。少しずつ加えてくれるスパイスのようなもの。

どうにか言いくるめ、仕舞われてしまったはずの弁当箱を再び出してくることになった。
忙しい朝、キッチンに二人並んで思い思いに詰め込んでいくのは、意外と楽しい作業だ。
過去、提供されていたような”幕の内弁当”は程遠いが、真室の手料理を見せびらかして食べられるというのは、あつみにとって優越感なのかもしれない。
事実、萩生は一度も弁当を手にしてはいない。(←そんなところで張り合ってどうするんだよ…あつみ…)
自分で作る、という喜びは、仕事柄もあるのかもしれないが。

やってみれば色々と知っていくこともある。気付くこともある。
開発…ってこういう小さなところから生まれるんだなぁ…と、しみじみ思っていたりもした。
この世に、様々なものを生みだした過去の人間たちを本当の意味で凄いと思うし、また自分も生かせるものがあるかもしれないと頭を巡らせる。
若美が次々と新しい料理を作るのも、その冒険心故。
生きていく糧となるもの。
なんだか教えられた気分でもあった。

お弁当が離れてしまえば、萩生たちとも食事を一緒にすることはなくなっていた昨今。
また珍しく、萩生だけに同席を求められて、なんとなしに由利が来ているのだな…と悟れた。
定食のトレーを置いた萩生の目の前で、あつみと真室が並んで座り、それぞれの弁当を取りだす。
「あれ?復活したの?」
「真室が作ってくれるの。へへっ、羨ましいだろー」
子供じみた返答に、隣で真室がポッと顔を赤らめた。
目の前では思いっきり呆れた萩生の顔がある。
「あっそ…」
この場での居心地の悪さを感じるのか、だが、同僚という気心知れた間で、変な気遣いを感じさせることもない。
たまにはこんな空間もいいものだと思わせてくれるくらいだ。
「萩生は羽後さんたちと4人で一緒にご飯…とかしないの?」
素朴な疑問でもあった。
由利と揃ってやってきている人間がいるであろうに。
自然と集まってもよさそうな気がするのだが、そこはあの双子の違うところなのか…。
案の定、萩生からは溜め息とも苦笑ともとれる、混じったものが吐き出された。
「そんなこと言ったら殺される。ふたりきりになりたいんだろう。どうせ夜は4人一緒だし、夜無視されるくらいだったらランチくらい譲るさ」
その考えもなんとなく理解できるもので、あつみも笑ってしまった。
夜の時間、萩生と羽後だけで残されても、どうしたらいいものやらと悩んでしまうだろう。
それだったら、昼間のうちにふたりきりの時間を設けてやる方が得策である。
まぁ、これは、自分たちにも言えることなのかもしれないけれど…。
真室もまた、兄とふたりの時間を持ちたいと思う時がくるのだろうか。
そこは『兄弟』という分かっているものがあっても、複雑な心境にかられるものだ。
とはいえ、由利の由良への依存度は真室とはケタ違いである。知りつつ、容認している萩生の精神も素晴らしいと、ある意味感心してしまった。
相手を信頼している、また理解できているからこそ、取れる対応なのだろうか。

「おまえも苦労人だねぇ」
ぽつりと呟いた言葉に苦笑で返される。
「幸せな時が来たようで良かったな」
こちらも嫌味で返される。
家族の目を気にせず、奔放に過ごせることになった現在への…安堵でもあったが。

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次回最終回になります。
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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-11-09-Fri 09:57 [編集]
若美兄も家を出ての2人きりの生活は、上手く行っているようで♪
それに まだ新婚さんだし 一緒に2人でする事 何もかもが新鮮で楽しいんでしょ(○ゝз・)b⌒☆

私にも そんな時期があったような...
(; = =) トオイメ...byebye☆

私信です。すみません┏○))ペコ
最近、コメ欄で会えないちーさんへ、
お仕事が忙しいのかな?風邪でも引かれたのかな?
私も 家族の事で 軽いドタバタで 落ち着かないな日々を送っているんだけど。
明日は最終話、コメ欄で会えたら嬉しいです。





Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-09-Fri 13:51 [編集]
けいったん様
こんにちは~。

> 若美兄も家を出ての2人きりの生活は、上手く行っているようで♪
> それに まだ新婚さんだし 一緒に2人でする事 何もかもが新鮮で楽しいんでしょ(○ゝз・)b⌒☆
>
> 私にも そんな時期があったような...
> (; = =) トオイメ...byebye☆

いえいえ、今でもそんな時があると…。
遠くないですよ~ぉ。
新婚さん生活は永遠に続くのです。きっと…(ボソ きっと…そう、きっと…←シツコイ)
若美兄ちゃん誰と一緒に住んでいるんだろう(←Σ (゚Д゚;)?!)

> 私信です。すみません┏○))ペコ
> 最近、コメ欄で会えないちーさんへ、
> お仕事が忙しいのかな?風邪でも引かれたのかな?
> 私も 家族の事で 軽いドタバタで 落ち着かないな日々を送っているんだけど。
> 明日は最終話、コメ欄で会えたら嬉しいです。

ちー様、別宅にはいらしてくれているのです。
いろいろと書いてくれたことを気にされているのですかね。
自粛とかしなくていいんですよ~って私からも拡声器を使って放送したいところなんです。
でもコメントは読者様の意思に任せておりますので。
ずっと楽しい会話、繰り広げてくださったけいったん様には、淋しい出来事ですよね。
忙しくなる年末です。
どうか皆様、無理をされませんように。
コメントありがとうございました。
届くかな
コメントnichika | URL | 2012-11-09-Fri 22:51 [編集]
ちー様、初めましてですが、けいったん様との掛け合い漫才みたいなコメのやりとりが本文共々楽しかったです。これも作品を好きだからつぶやく和めて読めた感じがします。
急に寒くなって風邪など引かれないようにまたホッコリ温かいコメントを読みたいです。 
きえ様の新たな小説も楽しみにしてます。!(^^)!
Re: 届くかな
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-10-Sat 07:11 [編集]
nichika様
こちらにもありがとうございます。

> ちー様、初めましてですが、けいったん様との掛け合い漫才みたいなコメのやりとりが本文共々楽しかったです。これも作品を好きだからつぶやく和めて読めた感じがします。
> 急に寒くなって風邪など引かれないようにまたホッコリ温かいコメントを読みたいです。 
> きえ様の新たな小説も楽しみにしてます。!(^^)!

私もずっと楽しませていただきました。
賑やかなコメント欄、いいですよね~♪
それを書いていただくためにも、新作、がんばりますかねぇ。(でもちょっと充電…)
読みに来てくださる方がいるってとても励みになります。
じゃんじゃん書き込んでくださいね。
コメントありがとうございました。
るるるー
コメントちー | URL | 2012-11-10-Sat 09:59 [編集]
おはようございます。

師匠、nichikaさん、ちーは元気にやってますよー。
一人でいつものオアソビしてました(笑)
ちゃんと、ポチして拍手もしてるし。
アンケートもやってまぁす。

師匠とのお遊びが過ぎたかしらと自粛してみたんですけど、nichika さんみたいに思って下さる方もいらっしゃるんですね。うるうるです。
きえさんも遊ばせてくれてありがとうございます。
きっと、またやらかすと←しなくて良い

「師匠!師匠」
「あ、久しぶりね、ちー」
ジーっ。師匠、それは・・・
「師匠、コンプしたんですね。鎖骨シリーズっ」
「うん、ほらあ。雅臣カード」
「ぎゃぁ、レアっすね、レアっす!」
「うふー。良いでしょう?」
「あ、師匠。お仲間ができたんですよ♪」
「うん、nichika ちゃんでしょ?」
「何フェチですかねー?ちー、頼んであげるんだけど」
「じゃあさ、今度は腕捲りシリーズ・・・」

あれ?私、この回コメントしたはず。
あはは~。どこ行ったんだ?
Re: るるるー
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-10-Sat 11:24 [編集]
ちー様
こんにちは~。

> おはようございます。
>
> 師匠、nichikaさん、ちーは元気にやってますよー。
> 一人でいつものオアソビしてました(笑)
> ちゃんと、ポチして拍手もしてるし。
> アンケートもやってまぁす。

たびたびのお越し、感謝です~。
一人遊び…って、えーと…イヤン(/ー\*)(←)
ほんと、ポチパチありがとうございます。

> 師匠とのお遊びが過ぎたかしらと自粛してみたんですけど、nichika さんみたいに思って下さる方もいらっしゃるんですね。うるうるです。
> きえさんも遊ばせてくれてありがとうございます。
> きっと、またやらかすと←しなくて良い

いえ、全然。
むしろ、こっちを楽しみにしてくださっている読者様もいるくらいで。
一話読みに来ては二度美味しい状態なんですよ~。
だからがっつり書き込んでくださいね。

隊長「お、お、おじょ、お嬢さ―んッ」
隊員A「叫ばなくても聞こえる年の頃だと思いますけれど…」
隊長「ウルサイっ。万が一のことを考えて…ブツブツ」
隊員B「『お嬢さん』じゃ気づかないんじゃ…???」
隊長「呼び名が違うのか…???」

いえ、『お嬢さん』です。(`・ω・´)ノ

> 「師匠!師匠」
> 「あ、久しぶりね、ちー」
> ジーっ。師匠、それは・・・
> 「師匠、コンプしたんですね。鎖骨シリーズっ」
> 「うん、ほらあ。雅臣カード」
> 「ぎゃぁ、レアっすね、レアっす!」
> 「うふー。良いでしょう?」
> 「あ、師匠。お仲間ができたんですよ♪」
> 「うん、nichika ちゃんでしょ?」
> 「何フェチですかねー?ちー、頼んであげるんだけど」
> 「じゃあさ、今度は腕捲りシリーズ・・・」
>
> あれ?私、この回コメントしたはず。
> あはは~。どこ行ったんだ?

また消えられちゃったの~?
雅臣は…レアすぎて…。
来年のカレンダー描いてくれる人募集します(←コラコラ)
nichika様だけでなく、全読者様と楽しいコメ欄を期待します。(こっちも募集)
社交場としていっぱい語りあってください。
開放地区ですので~。
コメントありがとうございました。
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