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BLの丘
乱反射 27
2012-11-02-Fri  CATEGORY: 乱反射
その夜、真室とは抱き合って眠った。
抱き合って…というか、狭いベッドの中では、横向きになっての睡眠が精一杯だ。
くっついてきてくれる存在は愛おしく、また新たな欲望の熱が湧いてしまいそうなのに…。
酔いにまかせてスヤスヤと眠りに落ちてくれていてはあつみもこれ以上、何もできない。
眠れたのかどうかと怪しいくらいの一夜になってしまった。
真室は疲れたこともあったのだろう、ぐっすりと瞼を閉じていた。

翌日、遅い朝食と昼食を合わせたような、食パンにマーガリンを塗って、それとスクランブルエッグだけの食事を提供する。
いつもはもっときちんとしたものを食べているのだと思えば申し訳なさも募ってくる。
「こんなのでゴメンな…」
簡単すぎるメニューにも真室は喜んでくれた。
「うち、和食が多いのでパンのごはんって嬉しいです」
ニコニコと笑った顔に、普段の食生活の風景が見えてくる。
若美は洋食も作るとは聞いていたが、確かに弁当の中身も和食がほとんどだった。そこは仕事柄も関わっているのだろうが…。
あつみは懐かしいような、家庭のその味を、喜んで食べていた。
でもそれは真室には違っていたのだろう。
“残り物”の意味も、なんとなくつかめてくる気がする。
加工されたとしても、真室にとっては、変わらない和食の”残り物”だったのだろう。
一緒に住んだなら…。いいとこどりができるだろうか…。

自分で作るものはこんな質素なものだけれど…。
真室が喜んでくれるのであれば、それだけでいい。
抵抗感はあるけれど、兄との違いを思わせてくれるもの。
そんな些細なところで違いを見つけてしまう。

もう陽が暮れようかというころになって、真室を家へと送った。
初めてのことに無理をさせたこともあって、あまり早々に動かしたくなかった思いもある。
狭い家のなかでも、動くことに苦労をするような真室の行動があって、初めてのものを受け止めた結果だろうと理解できる。
あえてそれを口にはしなかったが…。
一緒に乗りこんだ電車の中で、ドア側に寄せては、寄り添って全ての視界を奪った。
もうこれは”痴漢”という話を聞いてからずっと続けられていることでもある。
一時は瀬見に譲ってしまった存在かもしれないが、今は自分の位置だ。

真室が住むマンションに辿り着くと、暗闇が広がっていた。
若美の帰宅は遅いのだと言われた。
自分が住んでいるのと同じ、暗闇が迎えてくれる空間ではあっても、ずっと家族に囲まれていた真室にとって、淋しかったものがあったことなのだろう。
「入って…」
促されるまま、あつみはリビングまで足を踏み入れた。
一応、お茶は出されたけれど…。
「僕の部屋…」と初めて家の中を案内されることに素直に従う。
LDKはすでに見ていた場所。
綺麗に片付けられて、物の一つも散らかっていないのは、若美の性格なのだろうか。
洗練された新しい感覚があったが、連れられた真室の個室は、どこか昔の感性を残していた。
そのギャップは、これまで見ていた場所が改装したことを伺わせてくれる。
壁紙もどこか薄汚れ、たぶん6畳にも満たない小さな空間に、シングルベッドとパソコンデスク、小さなテレビが置かれていた。
他に生活空間があることを思えば当然でもある部屋の作りだと思えた。
ただ違和感を覚えたのは、最初に見たリビングたちだった。
「お姉ちゃんの部屋が向かいでね…」
「いや、それはいいけど…」
引っ越し先の空き部屋のことを告げられる。
兄がいる場所で何かをしかける根性があるかどうかはまた別問題。
ここに越してきて、この狭い部屋に、早々同居などさせてくれないだろう…とは分かるものでもあった。
「あのさ…。家賃、どれくらい払えばいいのかな…」
なんだか見当違いな質問をしているような気がしたが、個室と共同部分の有り様の違いに動揺したこともあった。
真室は引っ越してきてくれることに安堵しているのか、その本質に気付いていない。
「あ…。もう、この家の権利…お兄ちゃんが持ってるから…。僕、わかんなくて…」
両親が投げ出した結果か。任せられた真室の今後か…。
分かってはいたけれど、権利を譲られたとなればここにある全てが若美のものなのだろう。
末っ子を手にするには壁が高すぎるような気がした。
とはいえ、今更どんな難題を突き付けられても逃げ出す気はない。
真室の何もかもを守る…とはすでに若美にも伝えられたことであるはずだ。

若美が作り置いてくれたのだという食材を温め直して、夕食にした。
今はあつみがいるが、いつもはこの行動を、真室は一人で繰り返していたのだろう。
同居を進めてきた若美の心情がなんだか分かる気がした。

ダイニングテーブルに並べられた食品。
お弁当に慣れていたから、できたてでなくても充分味わえるものになる。
人の家のキッチンに入ることに躊躇いはあっても、後片付けくらいするものだろうと踏み込んだ先。
あまりにも整えられた空間に声が出なくなる。
…そう。ここは、若美の空間なのだ…。
決して弄ってはいけないような雰囲気が、そこに人がいなくても感じられた。
この家の主。この家の中での存在感。
真室は分かったように、食器を食洗器に突っ込むに留めていた。
それから個室に籠って、雑談に応じる。

兄の帰りとはこんなに遅いのだろうか…。

そう思ったのは、住み慣れた場所に安心したように、うとうととする真室の姿を見た時だった。
ベッドで隣に並んで眠りこみながら、人が扉を開ける物音を耳にした。
もちろん緊張は走ったけれど…。
すっかりと夢の世界にいる真室に少しの安心を覚えながら、あつみは体を起こす。
曖昧にするような、適当な存在にはなりたくない。
部屋を出ようと扉を開けると、分かっていたようにそこに若美がいた。
全身に走る緊張をほぐすよう、「寝た?」と静かに問いかけてくる。
「ええ…」
最初に問われることは弟の現状なのだろうか…。

「明日もおやすみでしょう。一杯やりませんか」
連休の現実は知られている。
この誘いを断ることもできない雰囲気すらあった。
…いや、自分から話したいことがあった…ということだろうか…。

「ありがたくいただきます」
クイと顎先だけでリビングへと誘ってくる態度は大人のものでもある。
カッコイイと思わせてくれる雰囲気は、真室が憧れているものでもあるのだろう。
分かるから自分も近付きたい思いにかられる。
真室にとって兄がどういう存在なのかと、競争心が滾るのは仕方がないのか…。
同じにはなれないけれど、同じくらい大きな存在になりたい。

「真室が、お邪魔しましたね…」
「いえ…」
ソファに向かい合って座って、カクテルの作り技まであるのかと思わされるロンググラスが届けられる。
あつみの家に泊まった事実をとがめてもこないが、その奥にも突っ込んでこない。
分かっているのであろうという雰囲気は何とも居心地の悪さを生んでくれた。
ここまでの流れをどう切り出そうか…。
悩む前に若美のほうが口火を開いてくれた。

「独立しようと思っています。そちらに住居を移そうかと…」
ここの場所から出ていくのだと言葉の裏に含まれていた。

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コメント

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やぁだぁ
コメントちー | URL | 2012-11-02-Fri 05:17 [編集]
ヒドイヒドイヒドイ。
お兄ちゃんの出番が増えると思ったら・・・
独立ですって?

同居したならの不便さとかあるのにー。
マムも泣くだろうけど、私も泣く。
えーん、きえさんのいけずー。

あれ?あっちゃん、あっちゃん。
お兄ちゃん、いなくなったらご飯誰が作るの?
マムちゃん、実は何でも出来るのかな?
お兄ちゃんに教わってたりして。


「師匠~、着きました!」
「あ、本当に来たね、お豆腐屋さん」
「はいっ。ここにはいないけど珍しくノンケさんがいるんですよー」
「ああ、菊間さん?」
「そうそう。あ、師匠、見てみて?みねちゃんと大翔がイチャイチャしてるー」
「厚揚げ買って、ダーリンと晩酌しようかなあ?」
「あ、隊長帰って来たの?」

Re: やぁだぁ
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-02-Fri 07:17 [編集]
ちー様
おはようございます。

> ヒドイヒドイヒドイ。
> お兄ちゃんの出番が増えると思ったら・・・
> 独立ですって?
>
> 同居したならの不便さとかあるのにー。
> マムも泣くだろうけど、私も泣く。
> えーん、きえさんのいけずー。

お兄ちゃんがいるもとでの生活も楽しいでしょうが…。
まぁ、ふたりきりで新婚生活送ってもらいましょう。
真室もお兄ちゃんの手を離れて、ね。
(あまりお兄ちゃんを登場させると怖いことになりそうで…。逃亡)

> あれ?あっちゃん、あっちゃん。
> お兄ちゃん、いなくなったらご飯誰が作るの?
> マムちゃん、実は何でも出来るのかな?
> お兄ちゃんに教わってたりして。

ご飯、どうするんですかねぇ。
お弁当もどうなるんでしょうねぇ。
そこまで考えていなかったよ…(←勢いだけの作者…。どうしようかな…)

> 「師匠~、着きました!」
> 「あ、本当に来たね、お豆腐屋さん」
> 「はいっ。ここにはいないけど珍しくノンケさんがいるんですよー」
> 「ああ、菊間さん?」
> 「そうそう。あ、師匠、見てみて?みねちゃんと大翔がイチャイチャしてるー」
> 「厚揚げ買って、ダーリンと晩酌しようかなあ?」
> 「あ、隊長帰って来たの?」

そう、ノンケいたねぇ。
やがてどうなるのかは知りませんが。
目の前に可愛い子がいたからね。
売り場に出ることはないからお会いすることはないでしょう。ちー様、お気の毒に。
是非いっぱい買ってあげてください。
みんなで大豆パーティーしてくれてもいいですよ~。
コメントありがとうございました。
No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-02-Fri 07:23 [編集]
s様
おはようございます。

>思わぬ展開になりそう…。目が離せません。近頃、夜が弱くなり、朝の楽しみです。年かな…(^。^;)

食いついてもらって嬉しいです。
どんな展開になるのやら…。
読んでくれる人がいるというのが私の喜びです。
お体に無理のないように、適当に覗いてくださいね。
季節の変わり目、体調にお気を付けください。
コメントありがとうございました。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-11-02-Fri 09:30 [編集]
ヱ━━Σ(゚ω゚)━━ッ!!!独立!家を出る!?って、若美お兄様~~!
前々から そう考えてたのかな
マムの事があって 先延ばしにしてたとか
でも 今は、マムを守ってくれる人が出来たからとか

大好きな兄と離れるなんて マム、大丈夫かな
あつみ、マムを しっかり支えてね♪

いつもなら 此処で ちーさんとの楽しい会話を♪
はずなんですが…
「豆腐屋」…(@∇@;)へ?で、ほんと どの作品か 思い出せないの~~
誰か 作品タイトルを教えて下さい┏○))ペコ
もしかして 私が読んでない作品でしょうか
まだ 読破してない作品があったのーー!?
ぁゎゎヾ( ̄ω ̄;)ノ ハラヒレホロヒレハレーー...byebye☆ 
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-02-Fri 10:05 [編集]
けいったん様
こんにちは~。

> ヱ━━Σ(゚ω゚)━━ッ!!!独立!家を出る!?って、若美お兄様~~!
> 前々から そう考えてたのかな
> マムの事があって 先延ばしにしてたとか
> でも 今は、マムを守ってくれる人が出来たからとか

いろいろ考えていたところはあったのでしょうね。
本気度、表してくれたあつみに、お兄様も安心されたのでしょうか。
食材も相手も見極める若美です。

> 大好きな兄と離れるなんて マム、大丈夫かな
> あつみ、マムを しっかり支えてね♪

お兄ちゃんから離れることは、真室はまだ聞かされていないでしょうね。
それを聞くのはあつみからなのか、お兄ちゃんからなのか…。
そのときのショックがないように、この日を待ったお兄ちゃんなのでしょう。
そばにいてくれる人…。
あつみ、責任重大です。

> いつもなら 此処で ちーさんとの楽しい会話を♪
> はずなんですが…
> 「豆腐屋」…(@∇@;)へ?で、ほんと どの作品か 思い出せないの~~
> 誰か 作品タイトルを教えて下さい┏○))ペコ
> もしかして 私が読んでない作品でしょうか
> まだ 読破してない作品があったのーー!?
> ぁゎゎヾ( ̄ω ̄;)ノ ハラヒレホロヒレハレーー...byebye☆ 

豆腐とは「白い」…ということで…。
まだ読まれていないものがあったのでしょうか。
なんだか、全制覇しているような気がしていましたが…。
いえ、別にいいんですよ、好みのものを読んでくだされば。
美味しいものはあちこちに転がっています。
何が美味しいかは人それぞれですが…。
コメントありがとうございました。
もしもし?
コメントちー | URL | 2012-11-02-Fri 23:09 [編集]
リリリーン!リリリーン!

「師匠?ちーでーすっ」
「今、ダーリンと晩酌してーの、まったりしてからの~」
「・・・ちーに対する嫌みですか?」
「あ?あは、あは!」
「師匠、思い出しまして?『白い色』」
「え?当たり前でしょ?師匠だよ?」
「良かったぁ♪」
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