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BLの丘
乱反射 19
2012-10-25-Thu  CATEGORY: 乱反射
翌日の昼食の席は、いつもと変わらなかった。
真室から弁当を受け取った萩生は、二人だけの世界に流れ込んでいくので、当然こちらも、真室とのふたりきりになる。
ここで四人になっても何の文句もなかったのだが、そこは萩生の配慮なのか、単なる我が儘か…。
萩生のほうから離れてくれることはあつみにとってもありがたいことであった。
先日の夕食から、気付くことがあるのか、改めて間を置かれる。
真室の兄に対しての感謝の気持ちはすでに聞いたことであって、繰り返されては真室も委縮するだろう。
共にすれば自然と出てしまう話題と分かるのか、避けてくれたような気もする。

そんなふたりきりの食風景は、あつみにとっても新鮮な気がしてしまった。
ずっと瀬見がいた。それか萩生と由良がいて賑やかだった。
改めて感じられる真室との関係。
兄から得られた許可というのか…。真室の全てが自分のものなのだと言える自信が流れ込んでくる。
昨夜出された食材が変化して弁当箱に収められていることに、ふと気付いてしまう。
今まででは全く気付かなかったことに、一緒に食したことで、もとの形が思い浮かんでしまった。
「これってさぁ」
単なる話題として真室に語りかければ、「あ、やっぱり湯田川さんも飽きますよね~ぇ」と意外な答えに見舞われる。
…そうじゃなくて…。どうしてここまで変化させられるのかの感心のほうだ…。
これは”残り物”の範疇ではない。
何を食べても飽きない、満足できるものにした変わりようである。
そう…、数日と食べさせられても、気付かなければ気付かないものになっている…。

そっと真室を嗜める視線を向けてしまえば、兄を褒めたとは全く別の、戸惑ったような、薄紅を浮かべた表情を見せてくれた。
それこそ、何事かとあつみのほうが動揺してしまう。
「何?言いたいことがあるなら言えよ…」
自分が発言したものとは違うものが真室の中にある。
不安も混じりながら、問えば、一層照れた表情を見せた。
あまりにも人を誘う(失礼な言い方だが)雰囲気は、ここで皆に見せたいものではなかった。
「真室?」
言い淀む真室を、どれだけ脈略がなくてもいいから言ってくれと訴えた。

「お、お兄ちゃんが…」
一度は認められた関係でも、一夜明けてみれば、反対されることになったというのだろうか。
焦りが生まれる中で聞かされたことは、あつみの絶句を誘った。
それこそ、箸は止まり、口は開かれ…。
「お兄ちゃんが、行き来して無駄足踏むくらいなら引っ越しして来いって…」
「……」

どういう意味があるのかなど、何も理解できなかった。
真室の説明が悪い…と責めるのも酷いことなのだが…。
ふたりの関係を認めてほしいと願い出たその直後、なぜ、いきなり同居の話になったのか、まさに思考が追いつかない現状だった。
「真室?」
あのあと、兄弟でどんな話が進められたのだろう。
問うあつみの内容も真室は理解できているのだと思う。

少し俯きながら、流れを語ってくれた。
この数日、送ってくれたあつみの存在。家に帰っては、帰宅の遅い兄を待つ時間。少しでも紛れる相手がそばに居てくれるのであれば…と…許した兄。
あつみをすんなりと受け入れてくれた証拠ではあったとしても…。
真室にとって、家族が次々といなくなったことが、より一層の淋しさを誘ったのだと、なんとなしに感じてしまう。
若美の休みの日であればともかく、普段は、真室は真っ暗闇の家に帰り、話し相手もなく、就寝時間を迎えていたのだろう。
簡単に…というわけではないが、赦してくれた若美の思いもなんだか分かることができた。
少しでもその淋しさを感じる時間を、縮めてしまいたかったこと…。
真室が信頼を寄せたからこそ若美まで…。

上目遣いに「いや?」と問われて、断る理由がどこにあるのだろう。
それよりも、また若美と真正面から話合う必要があるのだろうが。
そこは再び緊張感が漂うところではあるが、若美に認められたような嬉しさも浮かんでいた。
小さく首が横に振られる。

「そんなわけ…。真室はいいのか?」
知らぬ人間が住処に飛び込むことをどう感じるのだろう。
一人また一人と減っていった家族の中に入り込む他人。
そこまで受け入れてくれることは、確かに嬉しいことでもある。
あつみの問いかけに、何を思うのか恥ずかしげに俯きながら、でも確かに頷いた仕草を見せる。
「僕は…」
今更である、酷なことを問い詰めてしまったのだろうか…。
また誤解を与えているのかと、咄嗟に言い訳…というか、本音が漏れる。
「真室…。お兄さんにも認めてもらえたって思って、ものすごく嬉しいんだ。でも”家族”の中に入り込んでいくっていうのは、本当にいいのかなって戸惑っているところもある。真室と一緒に住めることは俺にとってまだ想像できていなかっただけに…。いや、本当に感激しているんだよ。嫌なところなんて一つもない」
ただ、心の準備ができていなかっただけで…。
まだ慣れてもいないのに、突然の提案には戸惑うこともある。
許してもらえたという喜びはもちろんあるが、いきなりの同居という誘いはどう答えたらいいのだろうか…。
あつみの返事を聞いては、真室が積極的に動き過ぎていると思ったのか、恥ずかしさが浮かんだらしい。
初心さを見せながら、どことなく大人の階段を駆け上がろうとする姿がいじらしくも見えてくる。
だからこそ、心配にもなるのか…。
「す、すみません…。僕…」
恥じらいまで見せた表情は、他人に見せたいものではなかった。
庇護欲を誘う…とはまさにこのことだろう。
すぐにもあつみは否定し、いつもの、人前で見せられるものを導き出そうとした。
その無邪気さも危なっかしいものがあったが…。

「昨日の今日ではなくて…。もう少しお兄さんと話をさせてもらえるかな。俺も真室と一緒になれるのはこの上ない喜びなんだけど…」
あまりにも急な展開だとは真室も分かるのか、コクリと頷くにとどまった。
もとい…、ここで話を進めることでもない内容だった。
絶対に嫌なことなのではないのだと、誤解だけは与えないようにしておく。

「あ、あの…。今度、湯田川さんのおうち、伺ってもいいですか?」
会社内では話せない何かがあるのか…。
それとももっと確実な確認が欲しいのか…。
後者を求めてしまった自分があまりにも即物的なのか…。
既成事実を作った後の言い逃れなど絶対にできないだろうとはあつみのほうが痛く知る。
無邪気さもここまでくれば犯罪だろう…と内心でぼやいてしまった…。

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終わらない…(@_@;)冷汗


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コメント

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マムー!
コメントちー | URL | 2012-10-25-Thu 05:25 [編集]
おうちに行く?真室?
おうち・・・言い方が可愛いなあ、真室。
あ、じゃなくてー。

あっちゃん、真面目だけど真面目じゃないから食べられちゃうよ?
優しくて格好良くて男前なお兄ちゃんに、会うのが恥ずかしいって思うような事されちゃうよ?←確定事項
それかあ、先走ったあっちゃんに真室が抵抗するとか。
で、お兄ちゃん登場。あっちゃん、叱られる。
うふふ。楽しいなあ。

「し、師匠!」
「え?今、カップリング考えてるから話かけないでよ」
「でも、師匠・・・」
「ちー、できたよ!この二人良いわあ」
「え?やだ、師匠、マジ良いじゃないですか?」
「ねっ。じゃコイツらで書いてもらうか」
「うん!きえさんに電話~♪(このゲーム、カップル作るんじゃなくて揃えるのが本当なんだけどなあ。楽しいから良いけど)」

Re: マムー!
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-25-Thu 06:55 [編集]
ちー様
おはようございます。

> おうちに行く?真室?
> おうち・・・言い方が可愛いなあ、真室。
> あ、じゃなくてー。
>
> あっちゃん、真面目だけど真面目じゃないから食べられちゃうよ?
> 優しくて格好良くて男前なお兄ちゃんに、会うのが恥ずかしいって思うような事されちゃうよ?←確定事項
> それかあ、先走ったあっちゃんに真室が抵抗するとか。
> で、お兄ちゃん登場。あっちゃん、叱られる。
> うふふ。楽しいなあ。

そーゆー子なんです、マムちゃんは…。
新入社員さんはまだまだお子ちゃまなもので。
あっちゃんに襲われちゃうんですかねぇ。
襲うっていうか…この場合、誘っているのは真室でしょうけど。
どんだけ早く"大人"になりたいんだかなぁ。

> 「し、師匠!」
> 「え?今、カップリング考えてるから話かけないでよ」
> 「でも、師匠・・・」
> 「ちー、できたよ!この二人良いわあ」
> 「え?やだ、師匠、マジ良いじゃないですか?」
> 「ねっ。じゃコイツらで書いてもらうか」
> 「うん!きえさんに電話~♪(このゲーム、カップル作るんじゃなくて揃えるのが本当なんだけどなあ。楽しいから良いけど)」

あ、そっか。
カップルを当てるゲームなのね。
勝手にルールを作ってしまったわ。
でもどんな組み合わせを考えたんだろう。(そっちのほうが気になる)
コメントありがとうございました
No title
コメントけいったん | URL | 2012-10-25-Thu 10:27 [編集]
トントン拍子に話しが進むのは、願ったり叶ったり!?
でも あつみは慎重になるのは分かるし、段階を経てからと考えたのもエライ!

今の段階で同居したら
「こんな人とは思ってなかった…」と、互いに感じ 上手く行かない事もあるしね。
もっと お互いを知るべきでしょ。
マムちゃんは、あつみのおうち訪問で 深く知る事が出来たらいいね~(▼∀▼)ニヤリッ

「あっ ちょっと待って これも良いかも♪」
「えっ 決めたんじゃないの?」
「だってぇ~ あれもこれも 捨てがたいんだもん!」
「優柔不断なのね…」
「うっ…ぅ…」
瀬見の割り切りの良さと あつみの一途さが欲しい
\( ̄∇\)アッチイッタリ・・・(ノ∇ ̄)ノコッチイッタリ アッチ、コッチ♪...byebye☆
 
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-25-Thu 11:58 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> トントン拍子に話しが進むのは、願ったり叶ったり!?
> でも あつみは慎重になるのは分かるし、段階を経てからと考えたのもエライ!
>
> 今の段階で同居したら
> 「こんな人とは思ってなかった…」と、互いに感じ 上手く行かない事もあるしね。
> もっと お互いを知るべきでしょ。
> マムちゃんは、あつみのおうち訪問で 深く知る事が出来たらいいね~(▼∀▼)ニヤリッ

そうですね。
急展開を迎えているだけに、色々と考えることもあるでしょう。
きちんとお互いを知ってからね。踏みこんでいこうと。
これまでも会社内では性格も知ったところがあったとしても、生活はまた別物。
知っていくことは悪いことではないです。
さて、おうち訪問…。
押しかけるマム、受け入れるあつみ…。

> 「あっ ちょっと待って これも良いかも♪」
> 「えっ 決めたんじゃないの?」
> 「だってぇ~ あれもこれも 捨てがたいんだもん!」
> 「優柔不断なのね…」
> 「うっ…ぅ…」
> 瀬見の割り切りの良さと あつみの一途さが欲しい
> \( ̄∇\)アッチイッタリ・・・(ノ∇ ̄)ノコッチイッタリ アッチ、コッチ♪...byebye☆

瀬見みたいに割り切ってスパッと決めましょう♪
捨てがたいナニカはあるのかもしれませんが。
(いやぁ、そんな魅力的なキャラを書いた覚えはないんだけどなぁ(〃 ̄ω ̄〃ゞ エヘヘ ←)
皆様に支えられている毎日です。
コメントありがとうございました。
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