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BLの丘
乱反射 16
2012-10-22-Mon  CATEGORY: 乱反射
瀬見の弁当がいらなくなった…とは、真室が先に兄に伝えたらしい。
だけど、欲しがっている人がいることも。
そんなわけで、改めて挨拶に伺いたい…というあつみと萩生の意思は汲み取られて、数日後の若美の休日の夜に、またお邪魔することになった。
真室と付き合う…となった現在としては、以前とは全く異なった心構えのあつみだった。
果たして、兄の了承を得ることができるのだろうか…。
すでに真室が愛しまれて育ったことは理解できていた。
由利と由良とは違うかもしれないが、似たようなことは想像がつく。
由利と雄和が出会った時の、由良の猛反発ぶりを思い返すと、すんなりいく話ではないような気がしてならない。
あとは真室から言ってもらうに限るのだろうが、そんな他人任せもなぁ…と内心で溜め息をついているのだった。

真室に連れて行かれた先。
相変わらず凛々しい…というか、威厳を保った長兄に、萩生も一瞬怯んだようだった。
一度でも顔を合わせたことのあるあつみのほうが、いささか余裕があった。
「こんばんは。また、なんだか、ご迷惑をおかけしてすみません…」
前回と同じスタイル、キッチンの向こうで調理をしながら出迎えてくれた若美は、「いらっしゃいませ」となんだか店にでも来たかのような雰囲気を醸し出してくれる。
「迷惑だなんて…。こちらこそ、真室がどれだけお世話になっているのかと思えば、せめてこれくらいのことでお礼をしたいところです。…あぁ、どうぞ、お掛けください。…っと、今日はダイニングの方でもよろしいでしょうか?」
LDKに入ったところで突っ立っていたあつみたちを、若美は促しつつ、思い立ったように視界に入ってくるキッチン前のダイニングテーブルを指し示した。
以前はリビングに案内したこともあってか、すぐに腰巻のエプロンは外されてしまったが、今回は何か目的があるらしく、調理をしていたままの恰好であつみたちの前に現れてくる。
ここまで来て、案内される場所に文句などあるわけがない。
大人しく頷いて、六人掛けの白いテーブルに黒い椅子が並んだ、モダンな空間へと足を踏み入れた。

真室は食べ終わった後の弁当箱を兄に押し付けて、着替えるためか、リビングを出ていってしまう。
繋いでくれる人間がいなくなるとは、なんとも心許ないが、そこをうまくカバーしてくれたのが若美だった。
萩生と並んで座り、テーブルの端に持ってきた菓子折りを置く。
「上着など脱いで、寛いでくださって結構ですよ。…えーと…、アルコールは大丈夫ですか?」
運転するかしないかの有無を問われれば、二人ともその心配はないと返答する。
すでに真室から聞いていたのだろう。たぶんこれは、本人たちからの最終確認だ。
寛げ…といわれても、緊張が抜けるわけがなかった。
ニコリと微笑まれてはキッチンの奥で、カチャカチャと手際よく動く様を無言で眺めている時に、真室がカットソーにジーパンという私服に着替えて戻ってきた。
あつみの前にストンと座ってしまえば、「真室、手伝いなさい」と静かに声がかけられて、ぷぅと膨れた顔が見えた。
咄嗟にあつみが「あの、お構いなく…」と定番の言葉が漏れる。
「えぇ、大したものは作っていませんから。…以前いただいた梅を漬けて、梅酒を作ってあるんです。食前酒としてどうぞ」
ダイニングテーブルに呼ばれたのは、『夕食』への案内だった。
そのために来たのではない、と焦るあつみと萩生の前に、立ち上がった真室が、淡いピンク色の液体が注がれた、小さなグラスを運んできた。
「飲んでみてください。僕、お酒は良く分からないから、お兄ちゃんにとって不満なんです」
「誰も不満だなんて言ったことはないだろう。価値が分からない奴に飲ませても無駄だと言っただけじゃないか」
…あまり意味は変わらない気がするが…。
ここまで来ては引きさがることもできない。
あつみは別に困りもしなかったが、萩生は由良にどう説明するのだろう。
他人事ながら心配になれば、挨拶に向かって、立ち話で帰ってこられるはずがないと、了解しているらしい。
真室も座ってしまい、クイッと煽られては、あつみたちも口につけた。
梅酒…ウォッカも少し混じるのだろうか。微炭酸ののど越しはすっきりとしている。
家で作られたものとは思えない美味しさに二人して目を見開けば、ニコリとした若美の笑みが見えた。

それからは真室は立つこともなかった。
すっかり料理人、給仕係となってしまった若美に、申し訳なさが募るのに、一品ずつ届けられる数々に箸のほうが伸びてしまう。
…えーと、…これは何て言うのだ…? 懐石料理?
「いかがですか?」と聞かれては、食べては「美味しい…」と嘆息しか漏れない自分たちの貧困なボキャブラリーに呆れるが、余計な発言をするほうが失礼な気がした。
中身が何だ?と不思議そうな顔をすれば、丁寧に品の説明をしてくれる。
たかが○○と思っても、作り手が変われば、こうまで見事なものになるのか…。
「家庭でも簡単に作れるものなんですよ」とは言われても、その手間をかける気がないのは、職人根性の違いか…。
あつみの気持ちが分かったように、真室が口を開いた。
「お客さんが来る時しか、こういうの、出てこないんですよ。いつもカレーライス、とか、肉じゃが、とか。次の日になると、それの残ったコロッケとかで誤魔化されてぇ」
…いやいやいや、家で食べられること自体がおかしいだろう…。
しかも同じものではなくて変化されているところが…。
自分だったら、作ったカレーは残ってもそのままライスにかけるだけで三日三晩食べているというのに…。

真室の話が本当かどうかは、若美が苦笑する姿で判断するしかない。
「湯田川さんが一人暮らしとお聞きしていたので…。いつもお弁当ではたとえ温めたとしても冷めたものでしょう」
若美の言葉を聞いて、ハッとした。
家庭の味に飢えていることはもう承知済みの東根家である。
だからこそ、来てくれたこの日は、できたての温かいもので迎えたかった思いやりが見えた。
どこまで気配りをしてくれていたのか…。
ますます頭が下がる。

そして怖気づいた。
この兄の元で育った真室を、自分は本当に見ていけるのだろうか…。

食後のお茶をもらっている時に、萩生の携帯が鳴る。
メールだったようで、すぐに途切れたが、状況を見た若美が、「遠慮なく」と促してきた。
「もしかして、由良さん?」
言わなくても良いことを口走った真室に、やはりすぐに頭を回転させる若美の思考は素晴らしい…(いや、褒めている時ではなくて…)。
あつみと、瀬見から変わった萩生のお弁当だったはずなのに、いかにも『恋人がいます』的発言は、違和感があり過ぎだった。
火種を生みそうな状況は、若美だって避けて通りたいところだろう。
「ご事情をお聞かせくださいませんか?」
問われるあつみに、あろうことか、萩生は、「由良が『超遅いっ』って不機嫌なんだ。あつみ、あとは任せるから。お兄さん、本当にごちそうさまでした。今後ともどうか宜しくお願いします」と頭を下げて出ていってしまったのだ。
一刻を争う状況は、恋人以外の何者でもないだろうと肯定しているようなもので…。
真室に関わるものとなれば、一言一句聞き逃さない態度の兄に、あつみは覚悟を決めていた。

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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-10-22-Mon 10:19 [編集]
兄の若美の対応は、
弟の真室が世話になっている先輩として 気を遣ってのもの
それが 恋人と変わったと知ったなら?

あつみが上手く話せるのかも 心配で。

生真面目で 穏やかで 気遣いの出来る人、若美
どんな 反応が返って来るのか!?
どんなだろう・・?(・・*)。。oO(想像図)...byebye☆


Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-22-Mon 12:35 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 兄の若美の対応は、
> 弟の真室が世話になっている先輩として 気を遣ってのもの
> それが 恋人と変わったと知ったなら?
>
> あつみが上手く話せるのかも 心配で。

今のところ、あくまでも弟の先輩として見られているあつみですね。
その先になにがおこるでしょうか。
恋人…って言えるのでしょうかね。
(言ってもらををないと困っちゃうんですけど)
心配してあげてください。あつみの行方を…。

> 生真面目で 穏やかで 気遣いの出来る人、若美
> どんな 反応が返って来るのか!?
> どんなだろう・・?(・・*)。。oO(想像図)...byebye☆

そこは私も不明~~~(A゚∇゚)ハテッ?ナノラ
可愛い弟のことを思えば、無体なことは言わないと思いますけれど…。
あつみ、なんて言うのかなぁ。
(-人-;)(;-人-)ゴメンネゴメンネ~
(殺されるな…)
コメントありがとうございました。
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