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BLの丘
乱反射 15
2012-10-21-Sun  CATEGORY: 乱反射
真室が感じていたもの全てが、一時的なものなのだと、すぐにでも感じることができた。
その隙間に入ってしまったことは確かに卑怯かもしれないけれど、早くに是正できたことは悪いことではないだろう。
何よりもこれ以上真室を『夢』の中で泳がせたくはなかったのだから。
瀬見に無駄な憧れを抱かなくていい。
自分がそばにいて、いつだって守ってやるというもの。
抱きすくめた小さな体を、もっと強く引き寄せては、額とこめかみに唇を寄せた。
唇へは…。望むものはあったけれど、真室の意思を待ちたいと思う。
瀬見からどんな刺激を与えられたのか、比べられたくない対抗意識みたいなものもあったからなのか…。
自分はいつまでも待っている、と伝えるような、真室から強請られたいもの…。

カフェでの一連のことは、萩生も気付いていたらしい。
だが、事務室で朗らかに雑談を繰り広げるあつみと真室を視界に入れては、逃げた真室に、特に何もいってくることはなかった。
そのあたりの配慮に長けたことは、感謝すら浮かぶ。
しかし、自分たちの人間関係とは別のところで事態が動きだしていた。
ふたりに寄ってきた萩生が、「さっき新庄と話したんだけど…」と、由良と切り離せない存在との会話を告げてくる。

「しばらく外で会う人がいるから、弁当はいいって」
真室から切り離す、決定打のような気がした。
やはり、今日の行動も意識的だったのではないか…。
ふと真室の横顔を見たら、全てが納得済みのようだった。
いつか、受け入れざるを得ない状況を、すぐさま与えてしまったのは、瀬見だからこその優しさなのだろうか…。
直接言ってこない…、人任せのところは、ズルイ気もする。問い詰められたくなかった結果か…。
あつみはホッとするところもありながら、俺がいる、と視線で訴える。
そのことを兄に対して、どう伝えるのだろうと気にかかった。
喜々として兄に伝えたのは真室で、喜んでいたのは瀬見で…。
突然の打ち切りは兄に対しても、良い印象を与えないのではないだろうか。
色々な言い訳を思い浮かべながら、自分から兄の若美に説明してもいいと思った。
それくらいの物分かりの良さがあるとは、一度会っただけでも感じられる人格がある。

しかし…。

萩生が肩を竦めてくる。
「新庄の分が浮いたってなったら、由良が、『じゃあ、俺』って言い出したんだよね。さすがに何人前も作らせるのは抵抗があったみたいなんだけど、真室んちの弁当、マジで気に入ってて…。今までと変わらないんだったらいいじゃん、とか、図々しいこと、言い出してさぁ」

そこはやっぱり、社食に飽きていた結果か…。
だが、ここで言い出すとは、可愛い恋人の希望を汲んでやりたいが故だろう。
真室の兄のことまで気遣っているとはとても思えなかった。
作ってもらう分量は今までと変わらず。でも食している人間は変わっている。
瀬見の量だ。由良が食べきれなければ萩生もおこぼれ(?)をもらえるということで…。
つまり、自分たちと一緒に食したことが、新たな流れを作っていた。

真室の前で、瀬見の事情を詳しく聞く気にはなれなかった。
どうする?と真室に視線を送れば、「僕は全然、構わないです」と明るい声が響いた。
それは、特に兄に、言い訳をしなくていい安堵感なのだろうか…。
でもあらかたの事情だけは伝えた方がいいと思ったのは、あつみだ。
今までと食していた人間が変われば、好みも変わってくる。
そんな細かいことまで要求するわけではないが、誰が食しているのかくらいは教えておくべきだろう。
実際、若美は、団体よりも『個人』を大事にした性格をしていた。
職人としてのこだわりを、あつみも尊重してやりたいものがある。
何の苦もなく、日々、新しいものを作ってくれる人への感謝もこめて…。

「まぁ、真室が良いっていうなら、いいんだろうけど…。でも一応、個人的に食べさせてもらっている以上、挨拶の一つもしとくもんだと思うよ」
あつみの提案に萩生は納得していたようだが、真室は大きく手を振っていた。
「い、いいですっ、そんなっ。お兄ちゃん、勝手に作っているだけだしっ」
そこはさすがに”弁当工場”の在り方を思うものなのか…。
単純に、瀬見宛の弁当が、他の人間に渡るだけで、捨てられているわけではないと言いたいのか…。

…もしくは、まだ瀬見とのつながりを取っておきたいのか…。

そんなことは思いたくなくて、完全に切り離してやろうと、萩生を誘っているようなものだった。
食事の時間が一緒にならない限り、瀬見と真室の接触はない。
通勤帰宅の心配はあったとしても…。そこは自分がついて回ればいい。
そしてたぶん、瀬見はもう、自分たちと一緒の席で食事は取らないだろう。
他の人間の輪の中に潜り込んでしまうことも、彼の性格からは充分に考えられることだった。
直接何も言っては来ないけれど、人を通じて状況を訴えてくるとは、卑怯な手段のようでもあり、決定打を与えない優しさでもあったのか…。
きっと、瀬見は、萩生と由良に委ねることで、身を引いたのだ。
それはたぶん、真室にこれ以上近付かない手段の一つとして…。

迂闊に手を出しては、その初心さに気付いたのか。
想像以上の恐怖心に見舞われたか。
一度なら過ちで済むが、二度は嫉妬の対象になってくる。
かけひきを充分知った男の対応だろう。

真室の性格を知った…とはいえ、たかが食事時。仕事を共にした由良とは違っている。
軽率な行動をとった瀬見が、後悔をしてくれたのであれば、それは良かった出来事とも言えそうだ。

「真室、お兄さんに嘘をついたまま弁当を作ってもらうのは良くないよ。俺からでも萩生からでもちゃんと言うから。真室は何も心配しなくていい」
あつみの言葉をどこまで信じたのか。
困ったように視線を彷徨わせた真室だったけれど、最終的には『わかりました…』と首を縦に頷いた。
先輩としてなのか…、特別な意味を持ってなのかは、まだ疑問だが。
信頼をしてくれたことだけは確かなのだろう。

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コメント

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No title
コメントちー | URL | 2012-10-21-Sun 00:33 [編集]
せみちゃん、悪い人じゃないから。
あっちゃんだって、知ってるじゃん。
真室との事はきっとお子ちゃまにチューする感覚でー。
他意は無いんだ、他意は。

ああ、昨日まであっちゃんのフォロ―してたのに。
せみちゃんにとって、真室は、ただの通りすがぁりー♪
ちょっと 振り向いて みただけの~せみちゃん♪
真室は、あっちゃんと仲良くなりなさいって。

しかし、由良。流石よ。抜け目無いわ。


「雄和、雄和っ。食べてみて?自信作~。」
「あ、うまいじゃん。よくできたなあ」
「うふ。あのねー、粉をまぶしてレンジでチンするだけなんだよー」
「・・・そっか、それなら危なくないな」
「由良に報告~。あれ?電池切れちゃった」
ギクッ。由利のスマホに仕掛けた雄和(元痴漢)
「由利、唐揚げだけじゃ栄養片寄るぞ?」
「そっか、じゃあ、もう少し勉強する」
「そうだ、そうだ、報告はそれからな?」
「はぁい」

二人は知らない。ハギユラがせみちゃんのおかげで素晴らしい(作ってる人も)お弁当を食べている事を・・・


Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-21-Sun 06:03 [編集]
ちー様
おはようございます。

> せみちゃん、悪い人じゃないから。
> あっちゃんだって、知ってるじゃん。
> 真室との事はきっとお子ちゃまにチューする感覚でー。
> 他意は無いんだ、他意は。

そう、お子様にチューする感じでね。
真室が「して」っておねだりしたようだし、据え膳食わぬは…の瀬見だったのでしょう。
(いや…、そこは諭してあげようよ、瀬見ちゃん…)
あつみだって同じ状況ならお口が動いているはずだし。
(人のこと言えない…と。)

> ああ、昨日まであっちゃんのフォロ―してたのに。
> せみちゃんにとって、真室は、ただの通りすがぁりー♪
> ちょっと 振り向いて みただけの~せみちゃん♪
> 真室は、あっちゃんと仲良くなりなさいって。

理解力のある瀬見ですね。
さっさと手を打つところが、潔いです。
それだけ、きっと、あつみのことも真室のことも大事に思っているんだと思います。
少し時間を置いてから、また今までみたいに、みんなで仲良くできるといいですね。

> しかし、由良。流石よ。抜け目無いわ。

ま、まさかΣ (゚Д゚;)
由良が瀬見に「譲って」と甘えたのでは?!
これ幸いと飛び付いた瀬見…(←そんなわけがない)

~省略~

> 二人は知らない。ハギユラがせみちゃんのおかげで素晴らしい(作ってる人も)お弁当を食べている事を・・・

作っている人も(爆)
ハギーは絶対に由良は連れて行かないでしょうね。
←(・_・┐)))チェック中(((┌・_・)→
目移りされたら困るもの。
そして雄和も。(関係ないけど)
弟子入りする、とか言われても困るし。
最近はチンでできるものが多いから便利ですよね~。
コメントありがとうございました。
(* ・_・)ジッ→→→→→(*。-_-。)ポッ
コメントけいったん | URL | 2012-10-21-Sun 17:41 [編集]
色々と考えてる あつみだけど あまり考えていると煮詰まっちゃうよ~!
瀬見の事は、引き摺らないで スパッとね♪

今は マムちゃんを ちゃ~んと見ないと!

所で 昨日のちーさんの真室兄は、タチひろしか ネコひろしは?の質問の答えは…
ガタイ大きくて短髪な見た目は タチだけど、繊細な味付けの和食料理と 真室に対する母性から推測すると 真性はネコだと 私は思っております!(笑)
d(=^‥^=)b ニャッ!...byebye☆
Re: (* ・_・)ジッ→→→→→(*。-_-。)ポッ
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-22-Mon 07:04 [編集]
けいったん様
おはようございます。

> 色々と考えてる あつみだけど あまり考えていると煮詰まっちゃうよ~!
> 瀬見の事は、引き摺らないで スパッとね♪
>
> 今は マムちゃんを ちゃ~んと見ないと!

あれこれと気をまわしちゃう性格なんですかね。
考えていることが多いです。
真室が自分に向かってくれたのだから、もう瀬見は…ね。
瀬見のことはもう割り切りましょう。

> 所で 昨日のちーさんの真室兄は、タチひろしか ネコひろしは?の質問の答えは…
> ガタイ大きくて短髪な見た目は タチだけど、繊細な味付けの和食料理と 真室に対する母性から推測すると 真性はネコだと 私は思っております!(笑)
> d(=^‥^=)b ニャッ!...byebye☆

うーん、確かにそうも言えますね。
器用にどちらもこなしてそうです(笑)
コメントありがとうございました。
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