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BLの丘
乱反射 14
2012-10-20-Sat  CATEGORY: 乱反射
非常階段の踊り場で、改めて真室と向かいあう。
どこか悟っていると思われるあつみの態度に、軽率な行動を起こした印象を与えていると思うのか、真室は俯き加減になった。
別に咎めているわけではない…。
払拭するように真室の髪を撫でた。
「何か理由があったんだろう?」
もう一度問えば、躊躇いがちになりながらも口を開いた。
「この前、電車で…」
「電車?」
言葉が途切れれば更なる質問が続く。
瀬見と真室が同じ路線だと知ったのは、ついこの前の話だった。
ふたりはその前からお互いの存在を知っていたのだろう。
コクリと頷いた真室が「僕、痴漢にあっちゃったんです…」と真相を告げてくる。
その発言にはあつみも眉間を寄せた。
「痴漢?」
どのような内容だったのかは想像するしかないが、気分の悪くなる話なのは確かだった。
また頷いた真室は、その時に初めて、瀬見と一緒の方向だと知ったのだと言う。
「帰りの混んでいる時で…。誰かも分からないし、僕、何も言えなくて…。次の駅で降りちゃおうか、って思っていたら、人をかき分けて近付いて来てくれたのが新庄さんだったんです。…『真室』って僕の名前呼んで、身体、引き寄せてくれて…。そしたらすぐ、おしり触られてた手がなくなって…」
親しい人間が隣にいるのに、触れてくるバカもいない。
瀬見が名前で呼んだのも、体を抱き寄せたのも故意的だろう。
その出来事を真室はヒーローの登場と思ってしまったのか…。
あつみの中に悔しさはあったが、真室の不快感が長引かなかったことは救われたことでもあった。
「瀬見、良く分かったな」
「僕は気付かなかったけれど、新庄さん、乗り込んだ時から僕、分かっていたみたいです。ただ、僕、人の波に押されて流されていっちゃったから…。新庄さんも人ごみの中で無理に動こうともしなかったようで…。でも気にかけてくれていたところがあったのか、だから僕の様子がおかしくなったことで、変だな…って…」
「そっか…」
瀬見の性格を思えば、真室の存在に気付いた時点から、様子を伺っていたのだとは想像がつく。
どこまで乗るのかは、一度自宅に行っているだけに分かっているから、距離も知れている。それだけに心配もあったのだろうか。
今となっては真室の性格も知れているところがあったし…。

「それっていつの話?」
「飲みに行った日の、前の日です」
「そんな最近かよ…」
だから余計に次の日、帰りを共にすることを瀬見は自ら言い出したのだ。
酔った真室など、格好の獲物になることだろうと、あつみの脳裏を過る。
翌日、急接近した理由も納得できた。
「で?昨日は真室が誘ったら簡単に引き受けてくれたってこと?」
どうしていきなりキスまでいったのかは、やはり疑問点である。
「あ…」
明らかな動揺は、指摘されたことが事実であることを肯定しているようなものだった。
軽すぎる瀬見の態度も問題だと思うが…。
「し、新庄さんに、聞いたんですか…?」
「聞くも何も、今日、瀬見に会ってねーし。メールとか電話とか、顔が見えないところで話題にしたくなかったから、今日問う気ではいたけれど…」
食堂で顔を合わせる気の重さはあったが、真室に直接聞けない勇気のなさがあった。
同室内で問題にする気になれなかったという気持ちも存在した。
瀬見の心情を確認した上で、今後を考えようとも思っていた。
ただ今までに知った性格からして、また見てきた関係からしても、瀬見が本気ではないだろうと想像できた。
だから話をする気でいたのだ。真室のためを思っても…。

「じゃあ、なんで湯田川さん、知って…」
「単なる妄想だったけど。あとはおまえたちの性格を考えれば…ってとこかな」
「あ…」
色恋のかけひきが少ないのか、自分の行動を指摘された真室は、口元に手を当てて俯いてしまった。
更に肯定される仕草で悔しさは募り、また貶しているわけではないと宥める。
「なんでそんな性急になったのかってことが知りたいだけ。たぶん瀬見は『一回くらいなら』くらいの事を言ったんだろ?それでいいって答えた真室はどんな気持ちだったの?」
「そ、そんなことまで分かるんですか…?」
「まぁ、瀬見とは色々付き合いもあるからな…」
表向き、そんな答え方をしてみるが、実際自分も、相手から望まれたら、『付き合わないことを前提』に一度や二度のキスはできるものだと思う。
お互い承諾済みで、一夜で別れた相手がいたことは、この場では伏せておくが…。

「し…、してみたかった…んです…。…そーゆー…、なんか…大人の…みたいなの…。…それに、優しくされたし…」
真室の返答には、あつみは声を失ってしまった。
そんな理由があっていいものだろうか…。
憧れ、はヒーローに委ねられたことになる。
キスをすることで、もしかしたら…という期待があったことも垣間見えた。
「真室…、そんな簡単に人を信じたり預けたりするな…」
溜め息と共に吐き出せば、知られた後ろめたさと居たたまれなさに襲われたらしい。
シュンと項垂れる真室の頭にまた手を伸ばしては、くしゃくしゃとかきまわした。
「いくらだってしてやるよ。大事にしてやるから、俺にしろ」
真室の言う『優しくされた』には、あつみ同様、”淋しさ”のようなものが存在していたのだろう。
それが錯覚を生んだのか…。
あつみの改めての告白に、悩んだ様子も見られたが、小さく頷く姿が見えて、正直ホッとしてしまった。
はっきりしない状態で毎日顔を合わせるのも辛いものがあるし、真室もやりづらいだろう。
人目がない場所で、抱き寄せたら気分の切り替えができたのか、真室は大人しくしていた。
それにしても瀬見の奴…と、また内心で溜め息が漏れる。
余計なことをしてくれたものだ。

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トラックバック0 コメント6
コメント

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あはっ。マム~♪
コメントちー | URL | 2012-10-20-Sat 01:50 [編集]
してみたかったんだ、キス。
まあ、そんな事だろうとは思ってたけど。
それにしても・・・

中学生か!真室!
何だ?その可愛い理由は。
頭、撫でてやるっ!ヨチヨチ。

痴漢にあって、助けられて。
優しくされたらウッカリ惚れちゃうよね?
せみちゃん、王子さまみたいだよね?
でも、せみちゃんはすでに人の王子さまだっと。

そんなんまだ憧れだから、あっちゃんにしときなさい。
あっちゃんも、ああ見えて(どう?)なかなか素敵です。
きっと、付き合ってみれば大事にしてもらえるよ。
ね、あっちゃん!
あっちゃんの推察力には脱帽です。


「あーん。」
「あー。・・・ちょっと焼きすぎだな」
「美味しくない?」
「不味くはないけどな。今度、一緒に作ろうな」
「うん!あ、由良に電話」
「由利。由良に内緒で練習して持っていったら?喜ぶぞ~、由良。」
「あ、そっか。サプライズだね♪」
「そ、サプライズ(料理なんかさせてんのバレたら由良が飛んでくるよ)」

由利は、素直で可愛いと思う元痴漢←今は、ナイト。
Re: あはっ。マム~♪
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-20-Sat 06:56 [編集]
ちー様
おはようございます。

> してみたかったんだ、キス。
> まあ、そんな事だろうとは思ってたけど。
> それにしても・・・
>
> 中学生か!真室!
> 何だ?その可愛い理由は。
> 頭、撫でてやるっ!ヨチヨチ。

あつみもそう思いながら頭ナデナデ。
発想というか思考というかがすごいよね。
この子も思い立ったら…っていうところがあるので。
甘やかされて育った証拠ですね。

> 痴漢にあって、助けられて。
> 優しくされたらウッカリ惚れちゃうよね?
> せみちゃん、王子さまみたいだよね?
> でも、せみちゃんはすでに人の王子さまだっと。
>
> そんなんまだ憧れだから、あっちゃんにしときなさい。
> あっちゃんも、ああ見えて(どう?)なかなか素敵です。
> きっと、付き合ってみれば大事にしてもらえるよ。
> ね、あっちゃん!
> あっちゃんの推察力には脱帽です。

ふとした行動にコロコロと転がっちゃう弱いものを持っていたのでしょうか。
親切心で助けただけの瀬見なのでしょうが、その違いまで気付けなかったのかな。
瀬見はやっぱりいい人なんですけど、そこ止まり?!
あつみとの違い、分かってほしいよね。
あつみはデキる先輩です。
それくらい読み取れないとねぇ。

> 「あーん。」
> 「あー。・・・ちょっと焼きすぎだな」
> 「美味しくない?」
> 「不味くはないけどな。今度、一緒に作ろうな」
> 「うん!あ、由良に電話」
> 「由利。由良に内緒で練習して持っていったら?喜ぶぞ~、由良。」
> 「あ、そっか。サプライズだね♪」
> 「そ、サプライズ(料理なんかさせてんのバレたら由良が飛んでくるよ)」
>
> 由利は、素直で可愛いと思う元痴漢←今は、ナイト。

『痴漢』連載か?!
そうそう。由利一人に作らせたなんて聞いたらお兄ちゃん、ブチギレするからね。
『一緒に』を強調しておかないと。
ところで何を作ったんだろう。
これが目玉焼きだったら大笑いだけど…。
持って行ける…って言うんだから、せめて厚焼き卵?!
殻、入ってたりして…。
コメントありがとうございました。
緊急メンテナンスって~・・・・ゞ(_△_ )ゞ ヒクッヒクッ
コメントけいったん | URL | 2012-10-20-Sat 10:20 [編集]
痴漢から救ってくれたセミ王子様~♡って事で
憧れ半分と 興味半分で おねだりキスですか!?

失恋とも言えない事で もう泣くのは止めて
遠くの王子様より 近くの騎士と向き合って欲しいな♪

俺って…悪者…なの?…(6 ̄  ̄;)ポリポリby瀬見

コメを いざ送信って時に 緊急メンテナンスとは 何たるタイミング!
(*・ε・*)ムー...byebye☆
Re: 緊急メンテナンスって~・・・・ゞ(_△_ )ゞ ヒクッヒクッ
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-20-Sat 11:02 [編集]
けいったん様
こんにちは~。
メンテにひっかかったんですね~。
実は私も…。

> 痴漢から救ってくれたセミ王子様~♡って事で
> 憧れ半分と 興味半分で おねだりキスですか!?
>
> 失恋とも言えない事で もう泣くのは止めて
> 遠くの王子様より 近くの騎士と向き合って欲しいな♪

そうですよ。
とおりすがりの隣国の王子は、やはり似たような状況で、
どこで隣国の姫に手を出しているか見えませんからねぇ。
すぐそばにいる護衛隊の中の優秀な騎士を選んでおくところでしょう。
(下僕にはならないと思うけど…)

> 俺って…悪者…なの?…(6 ̄  ̄;)ポリポリby瀬見

瀬見の存在はいまだ不明。
いえ、良い奴です。
瀬見にも色々あったんだよ~…と、とりあえず言っとく…。

(なんか、…すっごい危機感を感じるんですけど…。もう次のスピンオフはないよ…
ちー様が言うように、ここに登場する前から瀬見ちゃんには彼氏がいて、ラブラブで過ごしているのです)

> コメを いざ送信って時に 緊急メンテナンスとは 何たるタイミング!
> (*・ε・*)ムー...byebye☆

それなのにコメントいただき嬉しいです。
ありがとうございましたヽ(゚∀゚)ノ
うふ
コメントちー | URL | 2012-10-20-Sat 19:17 [編集]
きえさんにお許しもらったから♪←いつ?

「セミさん」
「うん?」
「セミさん、会社の若い可愛い男の子と何かしました?」
「え?いや、何も・・・」
「僕が忙しくて、なかなか逢えないからって。酷いですねね。」
「だから、何も無いって」
「僕には優秀な諜報員がついてます」

「・・・ごめんね」
「次は、お仕置きですよ、セミさん♪」

はい、もちろん、きえさんのお話とは関係ありません。
ちーの妄想でーすっ。

師匠、真室兄さんはどっち?
タチヒロシ?ネコヒロシ?

きえさん的には絶対・・・ね?
Re: うふ
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-20-Sat 20:39 [編集]
ちー様
こんばんは。
これは間違いなく、カフェでの会話ですよね。

> 「セミさん」
> 「うん?」
> 「セミさん、会社の若い可愛い男の子と何かしました?」←(首をかしげながらさりげなく)
> 「え?いや、何も・・・」←(堂々と否定)
> 「僕が忙しくて、なかなか逢えないからって。酷いですねね。」←(半分泣きかける)
> 「だから、何も無いって」←(やっぱりしらばっくれる)
> 「僕には優秀な諜報員がついてます」←(カマかけてみる)
>
> 「・・・ごめんね」←(どこまで本当だろう…とりあえず謝っておこうか…)
> 「次は、お仕置きですよ、セミさん♪」←(やっぱり…)
>
> はい、もちろん、きえさんのお話とは関係ありません。
> ちーの妄想でーすっ。

私の妄想を貼りつけました~。
違ってたらごめんなさい。

> 師匠、真室兄さんはどっち?
> タチヒロシ?ネコヒロシ?
>
> きえさん的には絶対・・・ね?

○者です(`・ω・´)ノ
もちろん30代ですけど。
年を取った時が楽しみだなぁ(〃´▽`〃)ポァン
コメントありがとうございました。
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