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BLの丘
乱反射 12
2012-10-18-Thu  CATEGORY: 乱反射
精神を落ち着けることに必死だった。
深呼吸を何度も繰り返して、事務所に戻っていく。
あつみの姿を見ては、脅えた感じの真室が視界に入って、激しい後悔にも襲われていた。
傷付けてしまったことは確かだ。
いつもと変わらないようにあつみは真室に近付いて、ウェーブのかかった髪を撫でた。
「ごめん…。ちょっと…。八つ当たりして悪かった…」
何かあったのだろう…とは真室も理解できるのだろうか。
人の感情は一定ではないけれど、正直に謝罪してきたあつみに対して少しばかり気を緩めてくれたようなのが、唯一の救いでもあった。

あつみはそれ以上、この日真室に関わろうとはしなかった。
避けられていることは真室も感じているのだろう。
空間を埋めてくれたのは、萩生だったのだが…。何かを言う気などおきなくて、大人しくあつみは席についていた。
なにがどうして、突然の溝が生まれたのか、真室はもちろん、萩生も理解できていない。
氷が置かれたような冷えた空気が、午後の空間を覆ってしまった。

まるで、あつみの心情を知ったかのように、次の日、瀬見は食堂に姿を現さなかった。
ただの偶然なのだろうが。

あつみの態度に真室は戸惑いがあったのだろうが、いつもと変わらずに、お弁当を持ってきてくれていた。
兄に伝えることのできなかった社内の空気のこともあったのだろう。
そんな気遣いをさせてしまったことを、改めて申し訳なく思ってしまう。
今日も「ありがとう」と、兄に伝えてほしい意味と、持ってきてくれる存在に感謝した。
食堂で寄ってきた由良が、「新庄さん、今日は出掛けるからって」と、今日の流れを語ってくれる。
そして4人で座った席だった。あつみは由良と萩生が隣どうしに並べるように席を移動する。
勝手な、真室の隣になりたかった下心は隠して…。
萩生が一人で定食を買いにいっている。
瀬見の分の弁当は、由良と萩生が分けて食べるということなのだろう。
突然のことは、当然真室を気遣っていることでもあった。
無駄にしない配慮は瀬見が頼んだことなのだろうか…。

並べた弁当箱に、由良が目を見開いていた。
「すげぇ。どこの高級弁当なの?」
「残り物なんですけれど…」
遠慮した真室が由良に説明するが、誰も信じない見栄えの良さは、あつみも初めて感じた時と同じ衝撃だ。
“残り物”とは、兄の自慢ではないという控え目さなのだろう。
わざとらしさを思い浮かばせない、家族を大事にしたもの…。
真室は兄に対して、過ぎるくらいの評価を持っている。

褒め称えては食した時間の後、いつものように席を立ち、向かう先が見える萩生と由良に続いて、あつみも真室を促していた。
「昨日のお詫びに、おごってやるよ…」
照れ隠しも含まれていたのかもしれない。
真室は「いえ…」と一度は拒否したけれど、強引とも思えるあつみの誘いには断れないものがあった。
先輩面を出したのは、申し訳ないことなのかもしれないけれど…。
結局、なぜ、瀬見と真室が一線を越えるような関係になったのかまでは聞けなかった。
今日の、この場に瀬見が姿を現さなかったことは、真室の中で痛いものになっているのが分かる。
分かっても、萩生たちの前で口にすることはなかったし、真室自身、ふっ切りたいところがあるように思えた。
それこそが、一時的な気の迷い…のようにしか捉えられなかった。
瀬見の素行は、真室も気付いているのか…。
瀬見は、真室に対して、どんなふうに声をかけたのだろう…。

店内にはイートインコーナーももちろんある。
この時間ということもあって混雑していて、だからあつみや萩生たちも、ここでゆっくりすることはなかった。
萩生たちに遅れて、店内に入ったけれど、その奥の席に、こちらに背を向けた体格の良い男がいた。
二人掛けの丸いテーブルの正面には、相手に微笑みかける黒髪の男がいた。
真室と変わらないくらいの年齢か、もっと若くも見える。真室も幼さを残している実年齢に見えないところがあるが、それを考慮しても年下だろう。
それは、見慣れた瀬見の後ろ姿だ。
何を語っているのかは喧騒で耳に届くことはないが、瀬見の伸ばした手が優しげに頬を撫でていた。
その光景に気付いては、ピクリと固まった真室は、それ以上足を踏み出しはしなかった。
「…僕…、いらないです…」
蚊が泣くかのような細い声。
「あれ?新庄さんじゃん」
響いた由良の声よりも早くに、踵を返した真室は駆けだして、社屋に向かっている。
振り返った瀬見は真室の姿に気付いたことだろう。あつみはそれを確認して、真室の背中を追った。
セキュリティの厳しい場所は、部外者は入ってこられないことを知るのか…。
「真室っ」
すぐに手をかけたあつみの脇を、真室はするりと抜けていた。

瀬見には悪びれたふうもなければ、自慢をしているわけでもない。
それこそが、”日常”だとでもいうようかのように…。

瀬見の知らない世界が垣間見えた気がした。
“好きになった人”だけが、瀬見の中で全てなのだと、過去の発言から探れてくる。

…真室は、なんだったのだろう…。
涙を零す小さな体の後を、無我夢中であつみは追っていた。

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目指すは20~25話。つまり今月中に終わりにしたいと…。
そんなにサクサクと進むのかなぁ。

変なウィルスはありません。
でも戸惑う方は踏み込まないでください。
単に『泣かないで』っていう曲を聞いてほしいだけです。
あつみが泣いているらしいから…。
泣かないで
あとは別宅。←ただし時間制限つきです。いずれ消しますので。


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トラックバック0 コメント4
コメント

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泣かない~で~♪
コメントちー | URL | 2012-10-18-Thu 05:26 [編集]
せみちゃん、真室君は遊びって言うかつまみ食いなの?
真室君は、せみちゃんの恋人?出現にショックの模様。
うーん。
あれで、相当の遊び人だったりしてと思ってたけど、きえさんちの可愛い子らしく純情だったね。

あっちゃん、追いかけてったね!頑張れ、あっちゃん!
あっちゃん、カッコイイっ!カッキーン←おいっ

「師匠~」
「はいはい?」
「せみちゃんさあ、もしかしてさあ。」
「うん?」
「もしかして、あっちゃんの気持ち知っててさあ」
「ゴニョゴニョゴニョだって?」
「うん、でー、わざと~、アーデコーデナンダカンダでさあ」
「今日は何で擬音ばっかりなの?」

せみちゃん、悪い人には思えない~。
Re: 泣かない~で~♪
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-18-Thu 07:00 [編集]
ちー様
おはようございます。

> せみちゃん、真室君は遊びって言うかつまみ食いなの?
> 真室君は、せみちゃんの恋人?出現にショックの模様。
> うーん。
> あれで、相当の遊び人だったりしてと思ってたけど、きえさんちの可愛い子らしく純情だったね。
>
> あっちゃん、追いかけてったね!頑張れ、あっちゃん!
> あっちゃん、カッコイイっ!カッキーン←おいっ

瀬見にとって真室とは…?!
やっと動き出した話です。ここまで長かった~ぁ。
真室はお兄ちゃんの真面目な性格の影響を受けて育っているので…。
小狡いところはあるけれど、純情な子なんです。
あつみはそんなところを、働きながらなんとなく勘付いていたんでしょうが。

> 「師匠~」
> 「はいはい?」
> 「せみちゃんさあ、もしかしてさあ。」
> 「うん?」
> 「もしかして、あっちゃんの気持ち知っててさあ」
> 「ゴニョゴニョゴニョだって?」
> 「うん、でー、わざと~、アーデコーデナンダカンダでさあ」
> 「今日は何で擬音ばっかりなの?」
>
> せみちゃん、悪い人には思えない~。

素晴らしい発想力!!
そうかぁ(←)
瀬見はいい人だとあつみも言っていたしねぇ。
何かがあったんでしょうね。
コメントありがとうございました。
( ;_;)ヾ(・ω・ )男の子は泣かないの
コメントけいったん | URL | 2012-10-18-Thu 09:52 [編集]
瀬見と若い男のツーショットを見ての 真室の動揺ぶり
えっ!そんなに動揺するなんて 私の方が吃驚~!
あの”トイレの出来事”は、真室が納得済の 瀬見とのちょっとした戯れじゃなかったの?

あつみ、自分の気持ちに気づいた今
泣いてる真室を放ってはおけないよね。
さっさと掴まえて 優しく宥めてあげて~♪(o^-^o)b

「いいなぁ、私も 優しく頬を撫でて欲しい!」
「いやぁ~セミは若い子限定でしょ♪」
「ウグッ…そ・そうなんだ…」
「ダーリンにお願いしてみれば?」
「ダーリン!そう言えば 温泉に忘れてたわぁ~~!!」

『ハニーは、儂をいつ迎えに来てくれるんだろう?』
【~~~(//∇//)~~~】ノボセル...byebye☆
Re: ( ;_;)ヾ(・ω・ )男の子は泣かないの
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-18-Thu 11:54 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 瀬見と若い男のツーショットを見ての 真室の動揺ぶり
> えっ!そんなに動揺するなんて 私の方が吃驚~!
> あの”トイレの出来事”は、真室が納得済の 瀬見とのちょっとした戯れじゃなかったの?

えぇ、あぁ、まぁ…そうなんですけれどね。
そこはまだ幼い真室だったのです。
騙された…はないのですが。

> あつみ、自分の気持ちに気づいた今
> 泣いてる真室を放ってはおけないよね。
> さっさと掴まえて 優しく宥めてあげて~♪(o^-^o)b

追いかけますねぇ。
何があったのかも聞きたいでしょうね。
~~~~ダキ(/ ̄ー(・・。)/
ギューしてあげて。(参考は由良由利を見習って…)

> 「いいなぁ、私も 優しく頬を撫でて欲しい!」
> 「いやぁ~セミは若い子限定でしょ♪」
> 「ウグッ…そ・そうなんだ…」
> 「ダーリンにお願いしてみれば?」
> 「ダーリン!そう言えば 温泉に忘れてたわぁ~~!!」
>
> 『ハニーは、儂をいつ迎えに来てくれるんだろう?』
> 【~~~(//∇//)~~~】ノボセル...byebye☆

ここにもナデナデ、ギューしてほしい人が…。
温泉に取り残された人もだよね~。
のぼせたら(*゚ー゚)ヾ( ̄▽ ̄*)ナデナデしてもらうより、するほうになっちゃうね。
早くお迎えにいってあげてね。
コメントありがとうございました。
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