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BLの丘
乱反射 1
2012-10-07-Sun  CATEGORY: 乱反射
小洒落た和風の居酒屋は、数年前に改装された店だった。
先代から引き継いだ息子が、女性にも入りやすいようにと趣向を凝らしたらしい。
会社の人たちの行きつけでもあり、また、社員の顔を知っていることもあるのか、サービスはとにかく良かった。
そんなおかげで行く回数も増えるが、いかんせん、利用社員が多いために、秘密ごとにしたい時に利用したくない店にも変わる。
個室になっているから直接顔を合わせることはないとしても、全くそこから動かないで過ごせるわけでもなく、どこで鉢合わせしてもおかしくない状況。

その店で仕事帰りに待ち合わせをしていた湯田川あつみ(ゆだがわ あつみ)は、隠れている相手に連絡をして居場所を聞いた。
店の造りは知り過ぎるくらい知っているので、すぐに理解することができる。
襖を開けて入り、「お待たせ~」とすでに飲んでいる人に声をかけた。
掘り炬燵式の座敷に一人、ガタイの良い男がビールジョッキを傾けている。
とはいえ、あつみともあまり変わらないだろう。二人揃っただけでこの場がむさくるしくなるのはいただけないが…。
「お疲れ。企画室は忙しいの?」
新庄瀬見(しんじょう せみ)とは、会社が同じで同期だが、配属が異なるため、普段顔を合わせることはなかった。
それが一変して親しくなったのは、あつみの同僚であった本荘由利(ほんじょう ゆり)が関係したおかげだ。
由利の双子の兄弟である由良(ゆら)の同僚が、瀬見だったというわけで、いつの間にか昼食を共に摂るようになった。
向かいに腰を下ろし、「うーん、微妙なとこ」と曖昧な返事をする。
あつみの勤務する企画開発室には秘密事項がありすぎて、同じ社員でも漏らせる内容は少ない。
外部に漏れるのは絶対に避けたいことだったため、仕事の話は同僚の内に限られていた。
それを知る瀬見も、それ以上の追及はしなかった。

同じ時間に待ち合わせたのだが、残業をこうむっては、瀬見に「先に行っていて」と促してあった。
あまり遅くなるようであればキャンセルもしたのだが、多少のズレであれば待っていてほしい気持ちがある。
見慣れたメニューから数点をチョイスし、先に届けられたビールジョッキを合わせて乾杯の音頭を取る。
「ユーリがいなくなって、ようやく新入社員が入ったしなぁ…」
企画室にここ数年『新入社員』というものは存在しなかった。
それが由利が退社したことで新しい人材が入って、新鮮な空気が漂っていたりする。そんなところから少しずつ勤務時間が伸びているのかもしれない。
会社にとっての”残業”は喜べる出来事ではないが…。
「本荘君ね…。退社、最初聞いた時はびっくりしたけれど。由良がもっと淋しがるかな、と思ったけれど、高畠君のおかげで落ち着いているみたいで良かったよ」
「萩生なんて、万々歳なんじゃない?由良、とにかくユーリに構っていたから。『金魚のフン』がいなくなった~状態で」
「それ、由良が聞いたら激怒するよ」
「そこはオフレコで…」
クスクスと笑いあいながら穏やかな時間が過ぎていく。

恋人の転勤に合わせて、由利は退社してしまった。
うまく由良の恋人の位置にありつけた高畠萩生(たかはた はぎお)は、由利がいなくなると同時に引っ越しを終えて、現在新婚生活の真っ最中である。
双子の絆の強さに、なかなか踏み込めなかった人も幸せの切符を掴んだ、ということで、週末の夜、付き合いの悪くなった同僚を白い目で睨みながら、飲み相手を探すのが恒例となった昨今である。
「年下には甘い高畠君が、新人君…なんだっけ?」
「東根真室(ひがしね まむろ)」
「そうそう、東根君と距離を置いているのって、やっぱり由良のせい?」
「置いている…つーか、室内では良く面倒見てるよ。ただ、休憩時間ってプライベート時間みたいなもんじゃん。そこまでは…ってとこじゃねぇ」
真室はまだ学生っぽさを残した、幼い印象がある。着慣れないスーツに着られているといった感じで、ウェーブのかかった茶色の髪や片方の耳に三つあるピアスなどは学生そのままだった。
大きな目のせいか、また、丸顔のせいか、大人っぽくしたいのだろうが逆に働いているように感じるのは歳をとった証拠か…。
瀬見にしてみたら、由利が入社した時から、あれこれ、それこそ食事の時まで付き添っていたことを思い返せば、一人放っておいていることが不思議に思えても仕方ないのかもしれない。
あつみは別段、一緒に連れても良かったが、他の連中が誘っているのを見ては、親しんだ顔ぶれでの昼食時間に違和感を持たせるようなことを進んでしなくてもいいか、と流れに任せている。
もちろん、萩生から誘えば由良が良い顔をしないのも承知しているからだろうが。
いざとなれば助け舟くらい出してやる気持ちは、あつみの中にもある。

揚げ出し豆腐に箸を入れながら、「?」とあつみは首を傾げた。
「瀬見ちゃーん。もしかして真室狙いですか?」
「はぁ?大して顔を見たこともないのに、何言ってんの」
ジョッキを持った瀬見はキョトンとした表情を浮かべた。
「だってさ、なんか、真室、呼んでほしいみたいな言い方じゃない?」
あつみが思い浮かべたことが理解できたのか、瀬見は「あー」と一声あげてから、誤解だと明言した。
「いや、そうじゃなくてさ。由良と高畠君、ふたりにさせてやるのもいいかな、と思って。でもあぶれる俺とおまえだけっていうのも嫌じゃん」
長い月日の中で、ランチタイムの過ごし方というのもあらかた決まってきている。
男ふたり。そう、今の、この雰囲気同様、むさくるしい。
今は由良が紅一点役を成してくれているから救われているけれど。
嫌、とはっきり言われるのも問題だが、決して本音ではないのだろう。
現にここにこうしているのだから。
そしてあとは、由良たちに配慮した、逃げる口実か…。
気の使い方には感心させられることが多い。
あつみは、『今度声をかけてみようか…』と脳裏を巡らせた。

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またスピンオフになってしまうのですが…。新しい人物設定ができませんでした…。
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コメント

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スピンピン
コメントちー | URL | 2012-10-07-Sun 04:12 [編集]
あ、せみちゃんあっちゃんですね。
(もう、勝手は出来ないなあ)

今回は、あっちゃんが主役でしょうか?
それとも、せみちゃんと新人君を巡ってあれこれあるのかな?←好きねー、私(笑)

(゜ロ゜)まさか、セミアツ・・・アツセミ?
いや、この国ではないか。
どっちもタチみたいだもんね。
この先を楽しみにしてます。


Re: スピンピン
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-07-Sun 06:31 [編集]
ちー様
おはようございます。

> あ、せみちゃんあっちゃんですね。
> (もう、勝手は出来ないなあ)

いえ、基本、我が家は放任主義なので~。
また何か楽しい話題、振ってください。

> 今回は、あっちゃんが主役でしょうか?
> それとも、せみちゃんと新人君を巡ってあれこれあるのかな?←好きねー、私(笑)
>
> (゜ロ゜)まさか、セミアツ・・・アツセミ?
> いや、この国ではないか。
> どっちもタチみたいだもんね。
> この先を楽しみにしてます。

一応、あつみ視点です。
責め視点で書くのも久し振りのような気がするけれど…。
最近は間に相手の感情を潜り込ませたりしていたから、それほどではないのかな。
ふたりともタチですからね。
よほどの事がない限り(いつぞやの裏番組みたいな)ありえません。

~新婚生活~
「由良、あーんして」
「パクッ」
「次は何がいい?」(デレデレ)
「さんま。骨ちゃんと取り除いてよ」
「かしこまりました」

コメントありがとうございました。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-10-07-Sun 10:59 [編集]
「乱反射」…反射が乱れるのね~
何だか意味深で タイトルが素敵です(*・ω・*)ポッ

って事は、あつみの思いが 何処(誰か?)かに当たって 色々な方向へと反射するんだね♪

双子王国では 参謀として暗躍した新庄と湯田川
湯田川視点と言う事は、新庄は また参謀として活躍するのかな?
「新庄代官、お主も悪よの~(▼∀▼)ニヤリッ」
「いやいや 湯田川代官には 敵いませんって(▼皿▼)ニパッ」
「ならば 越後屋ちーさんんも 備前屋けいったんも 出来る事があれば させて頂きますゆえ~」

って いつの間にか 時代劇にーー!(笑)
(シ_ _)シ(シ_ _)シ ハハ~ッ ...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-07-Sun 13:07 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 「乱反射」…反射が乱れるのね~
> 何だか意味深で タイトルが素敵です(*・ω・*)ポッ
>
> って事は、あつみの思いが 何処(誰か?)かに当たって 色々な方向へと反射するんだね♪

タイトルは相変わらず、チョー適当に付けております。
あまり深読みされるとあとでガッカリされることに…?!
今度は何が起こるのかしら…。

> 双子王国では 参謀として暗躍した新庄と湯田川
> 湯田川視点と言う事は、新庄は また参謀として活躍するのかな?
> 「新庄代官、お主も悪よの~(▼∀▼)ニヤリッ」
> 「いやいや 湯田川代官には 敵いませんって(▼皿▼)ニパッ」
> 「ならば 越後屋ちーさんんも 備前屋けいったんも 出来る事があれば させて頂きますゆえ~」
>
> って いつの間にか 時代劇にーー!(笑)
> (シ_ _)シ(シ_ _)シ ハハ~ッ ...byebye☆

二人の代官、腹黒そうで…。
さらに加わるのか~っちー様とけいったん様~。(無敵部隊だ…)
今いる飲み屋が、ちょんまげして、お猪口持っているシーンに早変わりだわ~。
畳の上には小判の塊が…。
「「Ψ(`▽´)ΨΨ(`ー)ψケケケケ」」

コメントありがとうございました。
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