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BLの丘
七色の虹 22
2012-10-03-Wed  CATEGORY: 七色の虹
由良が由利を心配する気持ちは高畠にも充分なほど知れているのだろうが…。
今にでも飛び出して行きたいのに、疲労感満載の体は自分の思い通りにならない。
慌てる由良を宥めるように、伸ばした手ではなく、頭上をポンポンと撫でられて、高畠は由良の部屋へと戻っていった。
「ちょっとっ、萩生っ?!」
「あのなぁ、パンツ一枚で出ていけるわけないだろ…」
半分呆れた溜め息には、現実が見えていない由良の状況を指摘される。
そこでやっと由良はまだ高畠が身支度を整えていないことに気付いた。
「あ…」
由良自身は高畠が全ての処理を終えてくれていて、そのことにもようやく気付けたくらい動揺が走っていた。
さっと衣類を羽織ってきた高畠がシュンとした由良の前に戻ってくる。

「で?ユーリが行きそうなとこってどこよ?」
慌てる由良の心境も判断ができているから動きはスムーズだった。
由良に背中を向けて「ほら」と、由良ご希望の『おんぶ』してくれる姿勢をとってくれる。
高畠にとっても大事な部下だ。
背中に飛びつきながら、由良は「急いで」と元気な声を上げた。
「エントランスっ」
「エントランス?」
高畠は、急ぐ必要のないすぐそこか?と訝しそうに由良を振り返った。
「この時間、ユーリが行けるとこなんてないよっ。ユーリは待ってるのっ。あのバカに見つけられる前に、うちに連れて来なくちゃっ」
だったら高畠だけが一人で迎えに行った方が早いのではないか…と過るものがあるのも由良は感じ取れたけれど、由良が行くことに意味があるのだと譲らなかった。
「あー、まぁ…、ハイハイ…」
高畠は内心で、一気に降格して『バカ』扱いかよ…と、羽後のことを気の毒に思っていたりする。
馬に乗った騎手状態で、由良は罵詈雑言を吐きながら、高畠の尻を叩いていた。
背中に負った傷の痛みは…、今の由良に気付けるものでもなかった。

ふたりがエレベーターを降りていけば、明りが灯るそこには人影はなかった。
「由良?」
次をどうしようかと心配する声に由良の声が被さる。
「外だっ、外っ。隣の公園っ」
すぐに判断がつくところは感心できることでもあるのか…。
マンションの前の、暗い道を進むと、オレンジ色の街灯に照らされた幾つかの遊具が見えてくる。
昼間であれば子供の声が響き渡るここも、今はひっそりとしていた。
「ユーリっ!!」
静けさの中に由良の声が響き渡る。
誰もいない…と思っていたのに、由良の声に反応したかのように、タコの形をしたすべり台の下から、ニョキっと動くものが見えて、高畠は心底驚いていた。
だけど姿を表した由利は、由良と高畠が一緒にいることに気付いたせいか、また逃げようとしていた。
「ユーリっ!!」
引き止めようとする由良の声があっても、この状況では身軽に動くことができない高畠であって、「萩生っ、降ろしてっ。追ってっ」と次の命令を下す。
もうこの際、土の上で待たされてもいいと、由良は開き直っていた。
ペタンとその場で下ろされた由良の視界に、小さな姿を追いかけていく高畠の雄姿が映り、すぐにもその体は捕まえられていた。
気を許した高畠が相手…ということもあるのだろう。
堪えていたものを吐き出すかのように、由利の顔が歪み、ぶわっと泣き出していた。
そんな由利を強引に抱き上げては、待つ由良のもとに連れてきてくれる。
ふたりして地面に座りこんでは、何も言わずにただ抱き合った。

「ユーリ…」
「由良ぁぁぁ…」
流れてくる涙が、由良の纏った衣類を濡らしていく。
…ずっとそばにいる…、何があっても由利のそばにいる…。
その思いは由利に通じているのだろうか…。

すでに事情は知った…と分かるのか、由良がトントンと背中を叩いていると、クシャクシャな顔をして、由利が顔を上げた。
「由良ぁ」
葛藤する心を持っているのだろう。
由良の気持ちを伝えるように、由良は由利の唇に自分のを重ねた。
…いつでも、どこでも、一番近い所に自分はいる…。
言い聞かせるかのように…。
「ユーリのためなら、いつだって高畠さんとは別れるからね」
「おーい、コラコラコラ」
少し離れたところで見守っていた高畠が、由良の発言を聞いて苦笑を浮かべた。半分冗談だとは分かっているのだろう。
でもそれは、『付き合う』ということを由利に教えているものでもあった。
由利がグスっと鼻水をすする。
「…ついてきてほしい…って言われた…。…会社、辞めて…。僕の面倒は全部見るから…って…」
由利からの発言は、由良も高畠も想像していなかったことと言っていい。
「え?」
「辞める?」
同じ職場で働く同僚としても、素直に頷ける内容ではないだろう。
由良と高畠が同時に固まってしまったことにも、由利が何をどう悩んでいるのかが伝わってくる。
たぶん、由利の中では、答えなど出ていたのだろう。それをどう伝えたらいいのか…と。

「ユーリ…」
その決断を、由良が意見する資格などない。
もう一度ぎゅっと抱きしめては、くちづけを贈る。
幸せへの階段を、それぞれに昇り始めた。

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コメント

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ふうん
コメントちー | URL | 2012-10-03-Wed 05:25 [編集]
流石に双子。第一候補がダメでもすぐ次が。
そして、高畠さん。乙です。
背中、痛いってのにおんぶして。由利抱っこして、双子ちゃんはいつものパターンに入り。
半ば本気の別れても良い発言(本当になったらまあ、なんて短い恋人期間)
でも、優しく見守ってるのね。

雄和さんが由利を連れて行きたいのはわかるけど。
この感じだと由利は仕事辞めそうな雰囲気だけどさあ。
それもどうかと思うなあ。
どこに行くのかわからないけど、転勤て事はまたあるんでしょ?由利は、その度に仕事変えるわけ?
由利だって、社会人として立派にやってるんだし。
男だし(女だって悩むだろうけど)。
て、私が言っても仕方ない。由良と同じく受け入れるだけだもん。雄和が仕事辞めて残れば?←本音(笑)


「せみちゃん、せみちゃん!」
「何?また、飲み行くの?」
「旨い焼鳥出す店、見つけたんだよー。行かね?」
「マジ?行くか?」
「さっすが、せみちゃん。ついでに」
「紹介はしないけど、受付の子がお前に・・・って、おい、最後まで話を聞けっ!」

行動派のあっちゃん。そして、連れられた先には!


Re: ふうん
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-03-Wed 07:10 [編集]
ちー様
おはようございます。

> 流石に双子。第一候補がダメでもすぐ次が。
> そして、高畠さん。乙です。
> 背中、痛いってのにおんぶして。由利抱っこして、双子ちゃんはいつものパターンに入り。
> 半ば本気の別れても良い発言(本当になったらまあ、なんて短い恋人期間)
> でも、優しく見守ってるのね。

双子ちゃんの絆はさすがです。
行きそうなところなんて、一緒に住んでいるだけに思いつくんでしょうね。
高畠は由良だけでなく双子の下僕ですね…。
振り回されて、本当にお疲れ様です。
恋人期間…というか、恋人時間とも言えそうな短さ(笑)

> 雄和さんが由利を連れて行きたいのはわかるけど。
> この感じだと由利は仕事辞めそうな雰囲気だけどさあ。
> それもどうかと思うなあ。
> どこに行くのかわからないけど、転勤て事はまたあるんでしょ?由利は、その度に仕事変えるわけ?
> 由利だって、社会人として立派にやってるんだし。
> 男だし(女だって悩むだろうけど)。
> て、私が言っても仕方ない。由良と同じく受け入れるだけだもん。雄和が仕事辞めて残れば?←本音(笑)

生活に色々と影響が出てくるところですが。
それでも離れたくない雄和なんでしょうね。
由良のように手際が良くない由利ですから、マイペースに主夫業をやっていればいいんではないでしょうか。
双子のお兄ちゃんに邪魔をされない、スィートホームゲット!!

> 「せみちゃん、せみちゃん!」
> 「何?また、飲み行くの?」
> 「旨い焼鳥出す店、見つけたんだよー。行かね?」
> 「マジ?行くか?」
> 「さっすが、せみちゃん。ついでに」
> 「紹介はしないけど、受付の子がお前に・・・って、おい、最後まで話を聞けっ!」
>
> 行動派のあっちゃん。そして、連れられた先には!

すっかり仲良くなっちゃって~。
『受付の子がお前に…』ってお前に…って?!
先には…って?!
私も最後まで話を聞きたいです!!
続き、プリーズ(笑)
コメントありがとうございました。
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