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BLの丘
陽いづる国 10(最終話)
2012-09-10-Mon  CATEGORY: 陽いづる国
大学院を卒業したあと、准教授などの学問の道かと思う人間もいたようだが、美琴は社会に出ることにした。
それはきっと、目指した兄がいたからだろう。
そうして、世界を征服する…、並ぶ場に立ちたかったのだ。
一つの組織の中に収まることはなく、どこまでも力を発揮できる場所。

就職した先、『榛名』という場所は美琴にとって魅力的…どころか、視野が広がった。
あまりにも広い分野を持つ。
その場に収まれることが、兄を抜けるもののような気がした。
強引に組み敷かれていたわけではないが、兄に束縛されていたとは美琴の中でも漠然と感じているところがあったのだろう。
闘争心なのだろうか。
その就職を機に、ふたりはより一層離れていく。
たぶん、これで良かった…と思ったのは二人とも…なのかもしれない。
近寄る場所がなければ、甘える場所もなくなる。
研ぎ澄まされたような冷静な美琴の判断は、全ての人間に二の句を注がせなかった。
なにもかもを買われて美琴は栄進する。

時々紳平の姿を思い出した。
あやしてくれた兄の存在も甦った。
だが、強くなるために身を切り捨てた立場を、今更振り返れない。
冷たく振舞うことで位置を確認する。
どこまでも昇り詰めるために必要なのだと自身に言い聞かせて…。

同じように榛名千城が冷めた態度で物事を切り分けるから、そのことにも従えた。
ビジネスの上で、私情を挟まない冷酷さが、進む道を表してくれているようだった。
その全てが美琴の人生を変えていく。
最初に勤めた部署、次に引き渡された秘書の位置。
榛名家へとずっと深く踏み込んでいく存在。
嬉しくてありがたくて、その存在だけで兄を乗り越えられたような錯覚に陥っていたが…。
経営のトップに立つものと、脇に添える立場では違うのだろう。
こうして美琴は時に、打ちひしがれていく。

それを知るのか、榛名家から告げられた言葉に、胸を打った。
「野崎がいなければ…」
信頼を寄せてくれる態度、証拠。
激しく鼓動を刻み、ここで生きるのだと教えられたのかもしれない。
兄とは違っても、自分の生きていく道を自分の力で切り開いたのだ。
零す涙の意味を誰も問わなかった。
燻った過去があることを知り、それを表沙汰にすることもない。
自分の生きるべき道を行く。
後ろ指を指されることがあったとしても、全ては自己の責任で、その責任を負えるのであれば好きにしろと、最後に兄は助言して消えた。
紳平と付き合った時点で、美琴は世間の厳しさを学んでいたのかもしれない。
別れてから、意思をもって美琴が男を相手に欲情を灯すことはなくなった。愛が分からなかったから体だけの付き合いになった。
社会的な立場はもちろんあったけれど…。そして兄がいたからこそ…。
必要に応じては、高額な金額を払い、絶対的な秘密を守ってくれる場所にしか出入りしなくなる。
淋しい人生の入り口だったのかもしれない。
でもその侘しさが美琴には心地良かったのだ。
“一時的”…。
いつか離れていくものだと思えば、一瞬の通りすがりで良いのだと。

紳平も美琴も、太陽が昇る時、何を願ったのか…。
陽が昇るたびに、離れたくないと心を寄せたのだろうか。
互いに言い出せなかった時期があった。付き合ったその時に、ふたりはすでに別の道を歩み出していたのかもしれない。
眩い光の中でささやかな夢を抱いた…。叶わぬ夢を…。
誰も彼もが新しい日差しを浴びる。
進む道は違えても、迎える陽の光は同じだろう。

いつか、新鮮な気持ちで出会えたらいいと、またささやかな夢が胸を過った。
でももう、出会わない方が良いと思ったことも確か。

美琴は二度と自分のファーストネームを他人に呼ばせることはなかった。
紳平に向けたものなのか、兄に限らせたことなのか、真意は自分でも分からなかった。

―完―

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美琴ちゃん青春物語、無事完結です。
短すぎて、前話に組み込んでも良かったんですけれど、まぁキリよく10話ということで…。
今後みこっちゃん、『榛名』の中で躍進していきます。
その模様はどこかの作品でお楽しみください(←)
そういえば、『大人の時間5』で"気高い貴婦人"は『息抜きはさせていただいていますよ』って言っていたけれど、それってこういうこと(←どんなだ?)だったのかしら。
お楽しみいただけましたか?
お付き合いありがとうございました。



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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-09-10-Mon 08:00 [編集]
英人と知り合った最初の頃の みこっちゃんって怖かったな~
(T▽T)。o ○
過去の経緯を知れば… 
全身全霊で 千城を愛し委ねる英人が、自分と重なって見えたのかもしれませんね。

ナンヤカンヤ~はあったけど、今は 幸せなんだから OKでしょ♪
まぁ 最近のみこっちゃんは、園児や保護者に振り回されて ちょっと不憫ですが(笑)

完結お疲れ様です( *・ω・)*_ _))ペコリン...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-10-Mon 12:01 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 英人と知り合った最初の頃の みこっちゃんって怖かったな~
> (T▽T)。o ○
> 過去の経緯を知れば… 
> 全身全霊で 千城を愛し委ねる英人が、自分と重なって見えたのかもしれませんね。

えぇ、千城と英人の関係を知った途端に冷たい人間になりましたね。
愛情なんて信じていなかったから、千城を守る意味でも必要な行動だったのでしょうか。
そこはやっぱり自身の過去を思い浮かべたのでしょう。

> ナンヤカンヤ~はあったけど、今は 幸せなんだから OKでしょ♪
> まぁ 最近のみこっちゃんは、園児や保護者に振り回されて ちょっと不憫ですが(笑)
>
> 完結お疲れ様です( *・ω・)*_ _))ペコリン...byebye☆

今は信じられるものに出会えたのですからね。
幸せいっぱいでいるはず…。
う、うん、振り回されておりますが…。
でも瑛佑と一緒に楽しんでいるところもあるでしょう。
無事完結できました。
お付き合い感謝です。
コメントありがとうございました。
お疲れさま
コメントちー | URL | 2012-09-10-Mon 13:50 [編集]
はー、何だかんだと美琴さんにのめり込んでしまった。
私の安住さんが負けたのが悔しかったのに。
(安住さんにたくさん入れた人)

今の美琴さんは、人間らしくなったから良し?ですか。
瑛佑さんと楽しそうだし。
久しぶりに、この~って思う人も出てきて楽しかったです。

お疲れさまでした。
そのうち、兄ちゃんの失恋話を書いて送りまぁす。
(止めなさい)
Re: お疲れさま
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-10-Mon 15:30 [編集]
ちー様
こんにちは。

> はー、何だかんだと美琴さんにのめり込んでしまった。
> 私の安住さんが負けたのが悔しかったのに。
> (安住さんにたくさん入れた人)

おー、安住だったのですか~。
なんだかすごいみこっちゃんの人気でしたね。
でも期待していなかった人にでも読んでもらえたとは嬉しいです。

> 今の美琴さんは、人間らしくなったから良し?ですか。
> 瑛佑さんと楽しそうだし。
> 久しぶりに、この~って思う人も出てきて楽しかったです。
>
> お疲れさまでした。
> そのうち、兄ちゃんの失恋話を書いて送りまぁす。
> (止めなさい)

まぁ、15年~20年近く前の出来事…になるんですかね。
色々とありました。
波乱万丈な人生を歩んでいますね。

お兄ちゃんの失恋話、是非お待ちしております♪
(人のを読むのは好き♡)
コラボも受けますよ~(←コラ)
コメントありがとうございました。

No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-11-Tue 08:15 [編集]
拍手コメk様
おはようございます。
レス遅くなり申し訳ございませんでした。

>ありがとう!美琴っちゃん、面白かったです。呼ばせることのないファーストネームを今はバリバリ呼ばせまくってますね!?美琴ちゃん、今度こそ幸せにな~れ。

過去は辛い終わり方になっちゃいましたけれどね。
今は幸せの真っ最中にいると思います。
年を重ねて見えてきたものもあるのかしら。
限られた人だけに呼ばせる名前も重みがあって、その気持ちも相手に伝わることでしょう。
コメントありがとうございました。
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