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BLの丘
陽いづる国 2
2012-09-03-Mon  CATEGORY: 陽いづる国
転校…という文字は常に付きまとってきた。
仲良くなってもすぐに離れていく。
明るかった性格は徐々に闇を帯び、打算的な付き合い方をするようになった。
恋心を持つ間もなく、…いや、兄美馬(みま)に言われたことで視野が変わったのだ。
美馬は海外の有名企業に就職し、もう一緒に住むことはない。年に数度顔を合わせるだけ。
しかし聞こえてくる美馬の活躍を知れば、自然とそこに目標をおいた。
幼いころから兄は美琴の自慢で、憧憬の的だったこともあり、あまりにも自然な流れだった。
長い間一緒に過ごした唯一の人間だったから、それも加味されているのだろうか…。

美琴は高校の進学を日本に決めて、帰国することにした。落ち着いた環境で勉学を究めたかったのだ。
幼いころとは違って、親が必要な年でもない。
運良く日本には祖父母がいてくれて、喜んで迎えてくれた。
美馬が言うように、恋愛ごとにうつつを抜かしている時ではないと、自分自身に言い聞かせもした。
“恋だ、愛だと戯言を言っている暇があったら、自分の身の置き場を考えろ…”
美馬の言い分は間違っていないだろう。
無情になることで伸し上っていける世界を、兄の背を通して世を見つめたのかもしれない。

日本に戻り、友人としての付き合いは多くの人間と持ったが、それ以上の感情を含むことはなかった。
美琴にとって恋愛は、進むべき道の妨げにしかならなかった。

大学のカフェテリアはさんさんと陽が差し込み明るくお洒落な雰囲気だ。
テーブルは全て円形で、学生は好きに椅子を移動させたりして人数調整を図っている。
ただ、新しく作られたこともあってか、価格も少々割高で、どちらかといえば昔からあるもう一か所のほうが学生には人気だった。
その分、静かで過ごしやすさはある。
そのため美琴はこちらのカフェを利用することが多かった。
二年も在籍すれば、好みもはっきりと表れてくる。
一人、英語で書かれた哲学書の本を読みながら、綺麗な三角形に切られたサンドイッチを頬張っていると、突然目の前に人が座った。
何だ?と思って顔を上げれば、高校も一緒だった大久保紳平(おおくぼ しんぺい)が、棒状のパンに具材を挟みこんだサンドイッチを三つもトレイに乗せてやってきたところだった。
小柄な美琴とは対照的に、180センチを越えた長身と服の上からでも筋肉隆々なのが分かる逞しさを見せている。
緩くパーマのかけられた髪はほど良い長さに切りそろえられていて、焼けた肌からは、笑えば白い歯がのぞいた。
紳平も帰国子女である。アメリカの西海岸に長いこと、いたらしい。
美琴とは違って、転々とすることもなく、良い少年時代を送ったようだ。

「まったぁ、難しそうな本なんか読んじゃって~」
言いながら手を伸ばしてきて、ひょいっとめくってはタイトルを読んでくる。
サバサバとした性格は嫌いではなく、良い関係の友達づきあいができていた。
二人とも高校時代は常に学業成績のトップを争っていたが、お互いにライバル視するのではなく、刺激として受け止めていた。
励まし合った…とでもいうのか。
良く知った性格の一人である。
「いいじゃない。それより、相変わらず食べる量が違うね」
美琴にしてみれば、三回分の食事量ではないかと思ってしまう。
「これくらい普通でしょ。美琴は食が細いんだよ」
「僕のほうが普通だよ…」
短い会話の中でも早速手をつけ、豪快にかぶりついた。見ていて気持ちの良い食べ方をしてくれるものだ。
「それって中野教授用の?」
「そう」
「お勉強三昧なのは感心だけどさ。…美琴、今夜、空いてない?」
問われたことによって、紳平が何を言いたいのかすぐに悟れてしまった。
以前からの疎通というものもあるので会話は非常にテンポが良い。
「あいてない」
「美琴~。おまえ、たまには息抜きしろよ、遊べよ」
速攻での返答に紳平はがっくりと頭を落とす。
毎回同じ答えを出しているのだから、いい加減諦めてくれと思うのに、何故か紳平はしつこく美琴に声をかけてくる。
合コンになど行っている暇はないのだ。

「興味がないっていつも言ってるじゃない」
「興味がなくても人生経験の一つとしてさ。実体験しておかないと、就職してから要領の悪さを指摘されるよ」
合コンがどうして就職に影響するのか、イマイチ理解に苦しむところはあるが、まぁ、紳平の言いたいことも分からないわけではない。
社会に出れば本意でない付き合いも当然出てくる。
特に飲みの席での作法など、聞いた話しかないのだから。
美琴は一つの溜め息を漏らした。
「とにかく行かない」
「俺の顔、立ててよ、頼むからぁ」
「何で紳平の…?」
心底参っている印象を見せられては、そちらのほうに疑問が湧く。
美琴が参加しないからといって、紳平が困る理由はないだろう。
「美琴を呼んでくれって、俺、再三言われてるの」
「誰に?」
「他のメンツ。なんつーか、かたっくるしいイメージがあるじゃん。取っつき難いみたいなとこっつーか。でもさぁ、みんな美琴と話してみたがっているんだよね。興味持たれているっていうことです」
深い付き合いをしてこなかったために、新しくできた友人たちの評価がどんなものかは噂で耳にしている。
それでも美琴は特に気にかけることはなかった。
学問という枠を越えた先に違う人間が存在するのではないかと思うのは誰もが同じだろう。
白羽の矢が立ったのが紳平だったというわけだ。

「つまらない奴だよ、とでも言っておいてよ」
「そんなこと言って…。人に言わせるより、自分で表現した方がいいんじゃないの?百聞は一見にしかず。みんな納得だよ」
うまく丸めこまれている気がする…。
一度参加すれば、二度と声もかからないだろうか、と算段してしまう。
他の友人にも似た誘いをかけられることはあったが、一向に首を縦に振らない美琴にやがて誰もが諦めていった。
興味の対象…とされているというのも納得できる部分がある。
美琴は二つ目の溜め息をついた。
将来を見据えても、人付き合いが疎遠になるのは得ではないだろう。
美琴が吐いた溜め息に、目の前の紳平が口角を上げた。
多くを語らずとも感じ取ってくれる疎通の良さが、紳平との関係で一番気持ちの良いものだった。

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コメント

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兄ちゃん
コメントちー | URL | 2012-09-03-Mon 04:16 [編集]
あー、お兄ちゃんろくでもないったら。
美琴さんがあんなに冷静でビジネスには容赦なくなったのって、お兄ちゃんのせいね。
あ、ひーくんの辛さが思い出される・・・

いやいや、それはさておき。
美琴さん、この友達と恋に堕ちるのか。
はたまた飲み会で痴漢に遭って←違う

Re: 兄ちゃん
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-03-Mon 07:04 [編集]
ちー様
おはようございます。

> あー、お兄ちゃんろくでもないったら。
> 美琴さんがあんなに冷静でビジネスには容赦なくなったのって、お兄ちゃんのせいね。
> あ、ひーくんの辛さが思い出される・・・

ハイ、大元の原因はお兄ちゃんでしたね。
厳しいことを言ってもみこっちゃんのためと思ったのか、あとはみこっちゃんが受け止め方を間違えたか…。
当時、お兄ちゃんの正直な意見だったんでしょう。
刷り込みって怖いです。

> いやいや、それはさておき。
> 美琴さん、この友達と恋に堕ちるのか。
> はたまた飲み会で痴漢に遭って←違う

私の頭が単純なのか、読者様が鋭いのか…(笑)
何も言わずに去ります。
コメントありがとうございました。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-09-03-Mon 09:04 [編集]
孤高の人って感じで 周りから見られていたのかな?
そんな人って 近寄り難いけど、興味を引かれるんだよね!

みこっちゃんの”近寄るなオーラ”も何のそのな大久保紳平
ちーさんの読み通りの存在となるのでしょうか!? 
次回 乞うご期待~♪
o(@^◇^@)oワクワク...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-03-Mon 14:50 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 孤高の人って感じで 周りから見られていたのかな?
> そんな人って 近寄り難いけど、興味を引かれるんだよね!

そんな感じだったんですかね。
表面的にはお付き合いするけれど、深くまでは突っ込まない。
不思議ちゃんだったんでしょうか。

> みこっちゃんの”近寄るなオーラ”も何のそのな大久保紳平
> ちーさんの読み通りの存在となるのでしょうか!? 
> 次回 乞うご期待~♪
> o(@^◇^@)oワクワク...byebye☆

色々なお付き合いがあった過去がある人なので、みこっちゃんのこともある程度分かっています。
まぁ、おいおい暴いていきましょう。
(最初5話くらいで…と言っていたけれど…。相変わらず大嘘つきの模様…汗)
なんかね、あれも書こうこれも書いちゃえってなると文字が増えて増えて…困った…。
コメントありがとうございました。
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