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BLの丘
原色の誘惑 13
2012-08-24-Fri  CATEGORY: 原色の誘惑
頭の中で、離れていくわけではない…と何度も言い聞かせる。
今まで由良に甘えていた内容が、雄和に変わるだけなのだと。
その違ってくる部分を、由利自身が感じ取れたことを雄和は受け止めてあやしてくれる。
心を落ち着かせるには少しの時間が必要だったけれど、そばにいてくれる人がいることで、早い回復に導いてくれる。
由利を決して一人にしなかったのは、やはり由良の配慮なのだろう。
濡れた頬を拭ってくれながら、雄和は笑みを浮かべた。
「本荘さんは由利のことが本当に好きなんだよ。でも俺も覚悟決めてるから」
「覚悟?」
「本荘さんに殺されてもいい覚悟。だから、もう由利を泣かせるようなことはしないよってこと」
由利を可愛がることには自信があるらしい。
由良と雄和では取り合う意味も違うだろうに、茶化してくれるのは、少しでも由利の気を和らげたいからだろうか。

涙を押さえた由利に、「いーこいーこ」と言うように頭を撫でてくれた。
お昼の休憩時間ももうなくなってくる。
メンテナンスという職業に、どれくらいの自由時間があるのかは疑問だったが、会社の前まで送ってくれる。
「点検は定期的に来るから。そしたらまたご飯、一緒にしよう。あ、あの連中は抜きで」
フフフと笑って見送ろうとしている。
どこまで本気なんだか…。
高畠と湯田川を邪魔もの扱いして、もちろん由良も含まれていなくて、『ふたりきり』ということを強調される。
きっと由利が安心している姿を由良に見せたい意味合いもあるのだろうが。
「うん…」
頷いて、また頭を撫でられる。
会社の前で、こんなスキンシップを図ることが、恥ずかしいと思えた。
由利の存在は、部署が違ってもそれなりに知られていたため、振り返る人間も多い。
まぁ、それを察して優越感に浸っている雄和の内情までは気付かなかったが。

「また後で連絡する」と言葉を残して、雄和は去っていった。
由利はそのまま由良に会いに向かう。
由良の隠された思いを悟れれば、やっぱり直接伝えたい気持ちが湧いてくる。
何より、ぎゅっと抱きあいたかった。
在庫管理室のデスクが並ぶ事務所におどおどとした由利が踏み込むと、まだ休憩中の雰囲気を漂わせていた社員たちが寝ぼけた表情で戸惑いを浮かべた。
「あの…由良…は…?」
一番近くにいた男に問いかけると、「へ?由良?…ってことは弟っ?!」とあからさまに驚かれた。
その態度だけで、由良がまだ戻っていないことを知る。
…ということは、あのまま高畠たちとどこかに出向いてしまったのだろうか…。
いつもであればカンだけで居場所がつかめたのに、こんなふうに迷子になったのは初めてのことだった。
たったそれだけのことに、引き離された感じがして、また涙が浮かびそうになる。
ただでさえ、潤んでいた瞳を持つ由利を見ては、問われた社員のほうが焦りを浮かべたくらいだった。

「あ…と、本荘…は…、えーと…」
「い、いいです。僕から電話するから…」
あからさまな動揺を見せつけられては、くっつくことのなかったふたりの存在に、今朝の噂といい、社員のみんなが興味を向けているのが分かる。
自然と寄り添ってしまう人間、これまで故意的に避けられたのは、全ては甘える由利を一人立ちさせようとした由良の策でもあったのか…。

由利が携帯電話を取り出した時、いいタイミングで由良が戻ってきた。
「ユーリ?」
少し驚いた顔で、慌てて近寄ってくる。
「あ、由良…」
顔を見ただけでホッとしてしまうのだからまだ依存度は高いのだろう。
事務室の前、廊下で突然始まってしまったやりとりに、寝ぼけていた連中の脳が一斉に動き出した感があった。
凝視…とはまさにこのことだろう。
「どうしたの?高畠さんたち、もう戻ったよ」
「うん…」
由利のはっきりしない態度、由良はすぐさま感づいてくれる。
雄和に預けた心があることも…。
淋しがる気持ちも全部認めて理解して、尚も由利を支えてくれようとしてくれる。
ただそれは、”主”から”影”に変わったと判断出来た上で…。

「由良…」
縋りつきたい気持ちを無理に隠したら、「もう…」とぎゅっと腕に包んでくれた。
何を望まれているのかなんて、全部お見通しなのだ…。
この瞬間、こみ上がるものは押さえられなくなる。
「ゆらぁ…」
「言ったじゃん。俺はユーリから離れないよ。何か勘違いしている?」
優しい言葉が胸に染み込んでくる。
“いつでも戻って来い”…。
でもそれは、由良の幸せを遮るものになってしまうんだと由利は自分を奮い立たせた。
だから強がりの言葉も零れた。
「知ってる…。分かっているよ…。だから、由良も…」
“好きに生きてほしい”と、その願いは口にしなくても伝わっていく。
由利のために、ずっと耐えさせていたものがあったのかと…。
「ユーリ、好きだよ…。大好きだよ…」
由利に負担をかけないための言葉。
由良が自分の意思で由利のそばにいたのだと、どこまでも守ってくれる。
耳元で囁かれたその声は、絶対に他の人には届いていないだろう。
雰囲気だけで悟られること。
涙を零した由利に、由良は安心させるための、今日二度目のくちづけを落とした。
人前でも何も関係ない。
“ありのまま”の自分たちなのだ…。
こうして自分たちは生きてきた。

『最後だよ』…。
体を重ねた時に言われた言葉の意味をはっきりと理解できる。
離れた次の瞬間から、委ねた者はもう変わり、新しい人生を歩むように導かれていた。
何もかもを知っていた人に、感謝の気持ちを向けてあげるべきなのだろう。

「ユーリ。もう仕事の時間だよ」
離れた唇の先で囁かれる。
「うん…」
何を言葉にしなくても分かる。
背中を見送ってくれる姿。そのタイミングを、由良は間違わない。
更にどこまでも見ていてくれると、そばにいてくれる。
単純に接触するだけだと思っていた二人の雰囲気の影に、慟哭のようなものがあると何人の人間が気付けただろうか。
見た目に惑わされるもの。
当たり前だが、その日一日、事情を知らない人たちから、ありとあらゆる情報が錯綜したのは言うまでもない。

企画室は再び悩ましい情報に翻弄された。
高畠が「チュー、禁止っ」と喚き立てる。
湯田中が「新しい企画より、”本荘企画”で何か作れるんじゃないの?」と”くっついたイメージ”を早速思い浮かべていた。
でも…”二色ボールペン”とかもうすでに存在しているし…と、由利は新しいものがないと否定する。
文具メーカーの想像力は果てしない。

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アンケート、間もなく1000票、ありがとうございます。
8月いっぱいで由利由良を終わらせたいと思います(←かなり疑問形)ので、その後になにか…。
ダントツ一位みこっちゃんなので、みこっちゃんの10歳離れた兄弟話でもいいですかねぇ???
あぁ、あと、忘れていたような伊佐と津和野のセンセイコンビもありましたね。(読者様すごいです)
恋愛話になるのか??????という疑問は…さておき…(←オイ)
栗本センセは譲原一筋なんだけど、優しすぎて患者さんに言い寄られて、アッチのお手伝いもしてあげたことがあったのかないのか…(むかーしむかーし)
皆様のご意見に刺激されて、カラッポ頭は、勝手に伸びていく雑草のごとく、養分を吸い取って成長しております。

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-08-24-Fri 12:33 [編集]
雄和と別れて すぐ由良を恋しがって会いに行っちゃうのか~由利は。

由良は兄弟なんだから まして 魂を分け合った双子なんだから 心配しなくても 絶対に離れないよ!

由利には、まだ覚悟がないからなぁ~
甘えたちゃんで 困ったちゃん由利、まぁ そこが可愛いのだけどね♪
その手を離さないでね(((*・ω・)-oo-(*・ω・)...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-08-24-Fri 17:50 [編集]
けいったん様
こんにちは。
何故かうちのパソコンも絶不調の中におります…。・゚・(ノД`)・゚・。
過去データが読めない…。

> 雄和と別れて すぐ由良を恋しがって会いに行っちゃうのか~由利は。
>
> 由良は兄弟なんだから まして 魂を分け合った双子なんだから 心配しなくても 絶対に離れないよ!

そうなんですけれど、いざってなったときの覚悟ができていないんですよ~。
まだ雄和にも同じように預けられる気持ちを持っていないしね。
こんな可愛い弟をもって、由良も大変だねぇ(←)
恋人の方が大変かも…。

> 由利には、まだ覚悟がないからなぁ~
> 甘えたちゃんで 困ったちゃん由利、まぁ そこが可愛いのだけどね♪
> その手を離さないでね(((*・ω・)-oo-(*・ω・)...byebye☆

ゆっくりじっくり色々と馴染ませて教えていくことでしょう。
誰が…とは言いませんが。
その手を離された時には….・゜゜・(/□\*)・゜゜・ウワーーーーン
ヨシヨシヾ(- -;)
がんばれ、ユーリ由良♪
コメントありがとうございました。
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