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BLの丘
晴れ時々雨、また土砂降り 7
2012-07-29-Sun  CATEGORY: 晴れ時々
納得がいかなくても、この場でこれ以上声を荒げることもできなく、三人、無言のままトイレを出て店内に戻れば、早速というのか、大和がどこかの客に絡まれているのが見えた。
しかも相手は二人がかりだ。
たぶん、ぎこちない一部始終を見られていたのだろう。
恋人のフリはしても、実際はそうではなかったと悟られれば、次の標的にされる。
いつの世でもそんな光景は見られた。
冷静に判断した千城が、「日野、どうする?」と尚治を促した。
心配はしている。
尚治に見限られた今、どんな行動を起こすのか気掛かりだった。
自棄になった時ほど、人は乱れてまともな判断が下せなくなっていく。
ましてや、その一端が自分にあるのだと思えば…。
長流に視線を流すと、クスっと笑われ、また肩を竦められて、「彼を連れて一度ここを出よう」と顎をしゃくられた。
店の中では新たな火種を生みかねないから…だろうか。
また奥の意味も、長流と尚治だから探れたのかもしれない。
…大和とのことを認めてくれていること…。

「この茶番劇のことはちゃんと説明するから」
長流の言葉に背中を押される。
『茶番劇』…。何のことはなく、今の長流と千城のことなのだろう。
心配する価値もなかったような戯言だと教えられる。
物事(大和)の真髄を捉えられなかった尚治が招いた事態に、陰ながら協力していた…ということなのだろうか。

先に二人は会計を済ませて出ていった。
尚治は慌てたように大和に近付き、絡む男を避けた。
驚いていたのは大和のほうだ。
トイレに消えた二人を追い掛けて、でも戻ってきてくれた…。
表情に悦びが浮かぶのを冷酷にも断ち切っていた。
耳元に唇を寄せて囁く。
「誤解するな。またおまえを危険に晒したくないからだよ。ちゃんとした自分の意思を持て」
「だったらっ…!」
「でも俺はダメなんだ。大和だけを見てくれる人は必ずいる。投げやりになって過去のようなことは起きてほしくない。夢や希望が持てたら、必ず人は立ち上がれる。堕ちていくだけの人生がどれだけ苦痛で無意味なものなのか、大和が一番知っているだろ?」
言い聞かせたとしても、その場限りで手を差し伸べてしまったのは確かに尚治だった。
そこに縋られたのも現実の話だった。
迂闊なことをしたのかもしれない。
弱い心を持っている人だと分かるから、…だからこそ、ちゃんと守ってくれる人に巡り合ってほしい。
このように、『一夜』を求めた短絡的なものではなく、本音を預けられる人。どれだけの期間が必要かは分からないが、即物的な存在にならずに、付き合っていける人を探してほしい。
「尚治…」
今にも泣きそうな顔が浮かんだ。
改めて相手の気持ちを知れば、過去に尚治が関わったような体だけを求めた感情ではないのが一目瞭然だった。
だけどこれ以上は甘やかせなかった。

「今の大和をここに残してはいけない。…これが最後だよ。一度店を出よう。その後のことは大和の意思に任せる。またこの店に戻るのでも良し。新しい人生を切り開いていくのでもいい。でも一度ここを出てくれ。…そして、俺とのこと、終わりにしよう…」
自分で言いながら、何て残酷な言葉を吐いているのだろうと冷徹な自分に驚いていた。
昔だったら絶対に言えなかった台詞だ。
もっとも男は最初から問題外だったし、女はただの性欲処理としてしか扱っていなかった。
相手の気持ちを知ろうなんていう考えが欠落していたのかもしれない。
どこまでも割り切った関係を続けてきたからこそ、出会った長流に対しての思いは半端ではないのかもしれない。

理解してくれたのだろうか。
涙目を見せながら大和は立ちあがった。
店の外に出ると、多少の距離をとって長流と千城が佇んでいた。
そこには店内で見せたような色香も親密さもない。
あまりにも雰囲気を変えたふたりに、大和の目が見開かれた。
「あなたたちは…」
一時は心配した仲だったのかもしれないけれど…。
長流が肩を竦める。
「ごめんね。ショウが心配で追ってきちゃった…っていうところかな。ショウはもともとノンケだから、君みたいな想いの、そういう事情、ものすごく疎いんだよ。うちのお店で見た時も、呼び止めたのに全く意に介していないし。鈍感屋さんだからさ、それなりに気になるじゃない」
「素直に嫉妬したと言っておくものだろう」
「千城みたいにデレデレにはなれないんですっ」
「変なプライド、持ちやがって。おかげでいいとばっちりだ」
サバサバと話す関係は、決して睦まじい仲にはならないことを表している。
案の定…とでもいうべきか…。
尚治も、正直胸を撫で下ろしているところがあった。やはりこの二人は、このままなのだ…。
それにしても、『鈍感』…って。
今まで、飲み込みがいいだとか気がまわるだとか、褒めてくれていたのは誰だったっけ…。
もっとも男の感情に関して、ましてや自分に向けられるものなど分野外なのだから、反論する言葉も出ないが…。

千城が口を開いた。
「人生、晴れている日ばかりではない。涙という雨に浸り、自分を潤し読み説いて、新たな芽を作って、育てればいい。その間の努力は晴れた時に必ず実る」
威圧的な態度でありながら優しさが見えるのは、自分の恋人が同じ人生をたどっているからだろうか。
英人のことを決して口にはせず、しっかりとした言葉で物事を告げていけるのは、経験値の違いなのか…。
それからまた余計なことに、「まぁ、今回のこいつらの場合、突然襲った土砂降りの騒動だったけれどな」と皮肉が漏れた。
考える間すら取らせず、意思の疎通も取れず…と言ったところか。
長流はプライドが邪魔し、尚治は気の回し方が足りなかった。
長流がはっきりとあの場で告げてくれていたなら、こんなふうに大和と二人の時間を持つこともなかったはずだ。
「それ言ったら、千城なんか、いつも台風かハリケーンじゃないっ」
神戸が自棄になって叫ぶ。
これまでこうむった被害はいかなるものなのか…。
言い合う二人に苦笑が漏れたが…。
端で聞いていた大和が、『良い関係』というものに気付いて黙っていた。
この場にいる誰もが、パートナーとする人間が男性だと理解できたのだろう。
そして充実している人生を送っていること。
『幸せ』の意味を感じてくれたらいい。

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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-07-29-Sun 11:09 [編集]
そうだよ~大和
英人が 千城と巡り会ったように
ノンケの尚治が、長流を好きになったように

大和だけを愛し、大和も その人しか いらない...
そんな存在の人が きっと現れるから!

それまでは、自暴自棄にならないで 自分磨きをしてれば いいよ♪

きえ様ぁ~~
こちらは、夜は27~28度だし 朝の9時過ぎには31度なの!
節電だけど もう体の限界ーー!
エアコンONは、許されるよね?
エアコン]~~~ (´∀`。)。o○ヤッパ、コレダニィィ...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-07-29-Sun 15:34 [編集]
けいったん様
こんにちは~。

> そうだよ~大和
> 英人が 千城と巡り会ったように
> ノンケの尚治が、長流を好きになったように
>
> 大和だけを愛し、大和も その人しか いらない...
> そんな存在の人が きっと現れるから!
>
> それまでは、自暴自棄にならないで 自分磨きをしてれば いいよ♪

いつかどこかで、きっととっても良い出会いがあると信じましょう。
だって尚治が守ってくれた良い子なんだもん。
その恩も忘れちゃだめだよ。
みんなに教えられたことを糧にしながら、自分磨きをしたら、今よりすんばらしぃ人物になって、安っぽく見られなくなるから~。
相手は選り好み~♪

> きえ様ぁ~~
> こちらは、夜は27~28度だし 朝の9時過ぎには31度なの!
> 節電だけど もう体の限界ーー!
> エアコンONは、許されるよね?
> エアコン]~~~ (´∀`。)。o○ヤッパ、コレダニィィ...byebye☆

エアコン、オッケーですよ。
でないと、倒れちゃいますよ。
こちらも連日37度38度越えです。
朝7時頃に29度とか言われると、「えぇぇぇ~?!」って引きますよね。
どうかお体大事にされてください。
コメントありがとうございました。

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