FC2ブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
想いを確かめて 4
2012-07-17-Tue  CATEGORY: 想いを確かめて
過去の仕打ちを考慮しても、この場で母の墓について感謝の言葉を発することができたのは、英人に愛されている余裕と実感があったからだろう。
父を赦した時のような感情はもちろんありはしないが、たったそれだけが、唯一情を向けられることだった。
世間を知らなかった英人は、あの時祖父母の手助けがなかったら、母を供養してやることなどできずにいたはずだ。
自分がいかに世間知らずの未熟な考えと行動を取っていたのかは、千城に出会って気付かされることとなった。
蔑んでいた母から、愛情を向けられていた真実も…。
ずっと音信のなかった暮田家が何故最後の情けをかけてくれたのか…。
確かめたい思いもあるのかもしれないが、英人は自ら浮かびあがった疑問を排除した。
今は千城がいてくれる…。榛名家がある…。
聞いたところで、英人の過去も未来も変わるものではない。
どうでもいいことのように思えたのだ。

祖母を見送り、三人はまた墓前の前に立った。
湯沢が長居をするのはいつものことだ。
「次はいつ来られるかな…」とポツリと呟く。
英人は母親似である。どこが似ているのかと自分とは体格の違う父親を見上げながら、一つの提案を口にした。
「父さん…、骨を…少し持って行かない?」
「えっ?」
まさかの発言に目を見開いて英人を見返してくる。
捨てたと思われていた息子に、墓参りをさせてもらえるだけでも幸せだと感じていた。
調べられる能力を持っていながら、探そうともしなかった。亡くなった人に対しても、残された人に対しても、失礼極まりない態度だったはずだ。
それはもちろん、妻と交わした約束があったから…と言い訳をしたとしても…。

「俺、ここのお墓を今からどうこうしようとは考えていない。でも父さんにはきちんとしたお墓を持ってもらいたいと思っている。でもそれ、たぶん日本じゃないでしょ。その時、持っている分だけでも一緒に埋めてあげるから…」
「だが朝子は…」
「一番愛してくれたのは父さんだと思う。一人にされてボタンのかけ違いになっちゃったけれど、いつまでも一人は、母さんも淋しいんじゃないかな。もう一回愛してあげてよ。そばにいたら、母さんも心変わりするんじゃない?」
最後はちょっとした冗談も含まれていたけれど…。
改めて過ぎし日を振り返れば、母も淋しかったのだと思う。
ただ”意地”が邪魔をして、父に本音を晒せなかった…。
英人が同じ道を歩んだように…。同じ生活を通過してきてしまったから気付くこともある。
父親がかかさずこうして墓参りをしてくれることも、後悔より愛情の深さが残っているからだと感じることができる。
「英人…」
湯沢が顔を歪めて泣きそうな表情を見せた。
あえて暗い雰囲気にならないようにと気を使って英人が笑顔を浮かべた。
「でも再婚したいときは遠慮なくしちゃってよ。まだ若いんだからさ」
「それは…ないな…。生涯朝子を愛すると誓った言葉に嘘はない。これからもずっと愛し続けるよ」
「と…さん…」

こうまで惹かれあったふたりが、何故不幸な道を歩んでしまったのだろう。
今になってそんな疑問をぶつけたところで何も変わらないのだから、父親の言葉を信じて、母親を預けたいと再び思う。
父親の想いを確かめられたことは、英人にとっても嬉しいことだった。
その気持ちは千城も同じだと言うように、英人の頭を胸に引き寄せた。
二人を視界に入れては湯沢も微笑んだ。
「…そうだな…。もらっていこうか…」
一人でいることの淋しさを痛感させてしまっただろうか。

一緒の墓に入るか?と聞かなかったのは英人なりの配慮でもあった。
あくまでも『暮田家』が用意してくれたところだ。そこに父親が入るとは思えないし、プライドを持っていないとも考えられない。
そしてせっかく用意してもらったという気持ちも、”一応”英人の中にあった。
だから最初に、ここは残す、と伝えた。
意味は充分通じているはずだ。湯沢の答えに、英人も少しだけ胸のつかえが取れた気がした。

長年日本に来たことがなかった湯沢は、見て回りたいところが多いらしい。
フランスで出会った時のように、休暇に旅行することはあっても、これまでは故意的に日本は避けられた場所だった。
英人と千城に気を使うところもあるのだろう。
言い訳なのかどうなのかは分からないが、旅先を言われては送り出すしかない。
今は新聞記者とはいっても、もともとはカメラマンで写真は生活の一部になっている。
風景でも人物でも、撮りたいものはたくさんあるのだと悟った。

「帰りにはまた寄るから」
帰国する前に顔を見に来ると言われて納得する。
旅先での偶然の出会いは時に驚く出来事を生みだす。
今回は…、それぞれの本音が零れたことになるのだろうか…。
抱きしめられた千城からも、自分を愛してくれる愛情の深さを教えられた。
守るべきものは、どんなことがあっても…。


にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ 
ポチってしていただけると嬉しいです。
終わりにしようかと思ったけれど…。爆弾が飛んでそうなので…。
それに千城と英人…というより、英人とパパになっているような…(汗)

関連記事
トラックバック0 コメント4
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-07-17-Tue 06:59 [編集]
拍手コメk様
おはようございます。

>千城とのラヴな絡みも欲しいなぁ。ウン。

(-_-;)で、ですよね…ぇ…。
あいつらからえっちを取ったら何も残らない…(?)
じゃあ、今までは序章ってことで…(え?!…ウソウソ)
コメントありがとうございました。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-07-17-Tue 08:42 [編集]
英人は、英人のままでいればいい
千城に全てを委ねて 寄り添って

祖母との別れは、分かっていても やはり心に蟠りを残すものでしょうが、
また いつか いつか 時を経た後に 変わって行くかもしれないし...

今日も 一日暑くなりそうですね。
やはり 一家に一人 (英人が側に居ない時の♪)千城が欲しい!
だけど 身も凍る涼しさは OK!だけど、立ち直れない程 心も凍っちゃいそうだからなぁ~
フリ-ズ!~~{{{{{(0_0:)ノ}}}}}~~カキンコキン!...byebye☆
管理人のみ閲覧できます
コメント | | 2012-07-17-Tue 09:53 [編集]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-07-17-Tue 10:40 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 英人は、英人のままでいればいい
> 千城に全てを委ねて 寄り添って
>
> 祖母との別れは、分かっていても やはり心に蟠りを残すものでしょうが、
> また いつか いつか 時を経た後に 変わって行くかもしれないし...

時の経過とともに何か、変わるものもあるでしょうね。
今は千城がそばにいてくれるから、英人もありのままの自分を晒していけると思います。
嫌なものはいや、好きなものは好き…って。

> 今日も 一日暑くなりそうですね。
> やはり 一家に一人 (英人が側に居ない時の♪)千城が欲しい!
> だけど 身も凍る涼しさは OK!だけど、立ち直れない程 心も凍っちゃいそうだからなぁ~
> フリ-ズ!~~{{{{{(0_0:)ノ}}}}}~~カキンコキン!...byebye☆

今日もあちぃです。
体温並みか体温より高いか…。
甘々千城だとね…、かえってウザくて邪魔になるけれど。
そう、心も凍っちゃうようなことは遠慮願いたい。
ではこの炎天下の中、お出掛けしてきまーす。
コメントありがとうございました。
トラックバック
TB*URL
<< 2019/08 >>
S M T W T F S
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31


Copyright © 2019 BLの丘. all rights reserved.