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BLの丘
想いを確かめて 3
2012-07-16-Mon  CATEGORY: 想いを確かめて
「孫なのに…っ」
悔しそうに吐き出される祖母の声に、千城が嘲笑うように口角を上げた。
「『孫』…ですか…。今更そう呼ばれるのですか?娘の骨すら、汚らわしいと受け入れられなかったのでしょう? この場でこちらから”お願い”をさせていただきます。英人を『孫』と呼ぶことはやめていただきたい。誇称されては当家が迷惑です。吹聴されるようなことがありましたら、然るべき手段を取らせていただきます。世間体を気にかけるのは私共も同じ。一族の名に、親族も見捨てる暮田家と縁があるなどの、恥の上塗りはしたくありませんので」
千城の発言は、同情の余地などないといった感じだ。
抑揚のない声が響いた。余計に冷静に物事を判断し結論を出す千城の能力を思う。

改めて教えられた英人の現在の生活、立場を逡巡し、祖母は瞠目して声を失った。
英人は『榛名』の人間になっているのだ。
もともと英人に絶縁しろと言ってきたのは、暮田の人間である。
それを今更、『榛名』という名を得たからと、復縁したいと言うほうがおかしな話だった。
暗に、掌を返したように、英人に近づいてくることが、意地汚く生きる”恥”だと含ませている。
“見栄”を守るのなら、そのような態度にでるな、と。
千城の言いたいことの意味が分からない祖母ではなかったようだ。
祖母は理解したように、小さく頷くにとどまった。
どのみち、『榛名』を敵に回して生きていける世界でもない。

千城は先手を打っていたのだ。
いくら付き合いがないとはいっても、いつか何かの時に知られる可能性は高い。
改めて祖母に移籍の話をしたのは、後々の面倒事を無くすためだった。
こちらから告げることで確かな”要望”に変わる。
英人が受けた同じやり方で、英人との縁を正式に切らせた。

「私からも…」
湯沢が唐突に口を開き、床に両手をついて頭を下げた。
こうして顔を合わせた現在、思うものがあるのだろう。
「…と、…さん…」
「英人のことを、…また千城くんのことを嫌がらず、黙って見守ってください。私は朝子を…、彼女を『愛している』と言葉だけで終わらせてしまった。だけど彼らは、筆舌しがたいくらいのもっと深いものを持っている。お互いを思う気持ちは、私達が想像する以上のものがあります。このまま、何の弊害もなく、幸せになってほしい。自分たちが身を引くことでその幸せが守られるのであれば、そうしてやりたいんです。ご理解ください」
英人の過去にも未来にも口を出さないようにと、湯沢にも希望された形だ。
『孫』と思うのは心の中だけに留めてほしい…と。
事実、湯沢も『父親』と名乗ることはない。
誰よりも英人の幸せを望んでいるからこそ。
認められない関係の苦しさは、駆け落ち同然だった父こそが、理解できているのだろうか。

厳しい言葉を投げつけた千城も、英人を優しい瞳で見つめる。
先程までの威圧感を発していた人物と同一とは思えない慈しみが漂っていた。
「英人の人生を全て受け入れる覚悟はできています。何もご心配されませんように」
軽く一礼したのは、最低限の挨拶なのだろう。
そしてこれをもって、この出会いも話題も終焉を迎えるのだと。

英人は一つも言葉を発せず、事のなりゆきを見ていた。
今更愛情もないのは当然のことなのかもしれない。
母の墓だけは設けてもらった。知らなかったが、時々、こうして訪れてくれていたことも、初めて見た。
それは『娘』を愛していた証拠でもあるのだろう。もっと早く知れたなら、抱く感情は違っていただろうか。
だが与えられた現実が厳しかったことは覆せるものではない。
『無縁仏』という存在が、冷たさを生む。
父の湯沢は、それでも『墓を用意してくれたのだ…』と噛みしめるものがあったようだが…。
自分の不甲斐なさを承知しているからこその感謝なのだろう。

「英人…」
祖母の囁きに視線を合わせる。
これこそが、今生の別れだと感じた。
もう出会うことはないと思ったのは以前にも感じたことだったけれど…。
これはまた改めたものである。
もう関わることはない。
たぶん千城が、榛名家がそれを許しはしないだろう。
それでいいと、英人も過去と同じ感情を抱いている。
本当の意味で関係を断ち切ることが、双方にとって最善の方法なのかもしれない。
金品の授受は不要な感情を生みだすのだろうから。
『榛名』と名乗った時の、祖母の反応のように。

「幸せに…」
祖母から発された言葉は、娘に言えなかったものなのだろうか。
本当はそう言って送り出してやりたかったのではないか。
何が阻んだのかは、今では分かることではない。

榛名というものがどれだけ大きな影響力を及ぼすのかは、世間を知る人間だからこそ感じるものがあるのだろう。
千城が提示した条件を飲めば、榛名からのバッシングはなくなり、暮田家も守られるものになる。
守りたいものは家系なのか、地元なのか…見栄なのか…。
世間体などは、本音を隠すものとなって辛酸を舐めたはずだ。それが今後も続く。
過ぎ去った日々がそれらを語っていた。

湯沢は頭を上げなかった。
必ず幸せにする、と誓ったことを実行できなかった後ろめたさと、英人を見守ってくれる態度への感謝なのか…。
英人は一言だけ返事をした。

「母さんのお墓、ありがとう…」

もしかしたらまたこうした偶然で出会うかもしれない。
だけどその可能性はものすごく低いことのような気がした。
母の墓は、英人と共に『榛名』に渡ったのだ。

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コメント

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泣いた、泣けた、。゚( ´pω・`。)゚。
コメントけいったん | URL | 2012-07-16-Mon 00:26 [編集]
何所で 歯車が狂って行ったのか
過去を振り返っても 答えは見出せない

ただ 
辿り着いた その先が、幸せであればいい
祖母が、母が、父が、千城が、そして 英人が願うもの

誰でも 幸せになりたいと、誰もが 幸せにならなくては・・・
(☆^ω^(★^ω^【*☆*―ぁなたと出会えて幸せ―*☆*】^ω^★)^ω^☆)...byebye☆


キッパリ
コメントちー | URL | 2012-07-16-Mon 05:13 [編集]
これで、英人は本当に「榛名」の人間になったのかな。
おばあちゃん、英人がどんだけ苦労してきたかわかってるかな?わかってないよね、きっと。

これから先は悲しい事が少ないと良いね。
でも、千城さんがいるから。
悲しみは半分に、幸せは二倍に。
よくみんなが言うようになっていく・・・
いや、なってるもんね。

Re: 泣いた、泣けた、。゚( ´pω・`。)゚。
コメントたつみきえ | URL | 2012-07-16-Mon 07:10 [編集]
けいったん様
おはようございます。
泣かせてしまいましたか…?

> 何所で 歯車が狂って行ったのか
> 過去を振り返っても 答えは見出せない

なにかがあったんでしょうね。
それは歴史的なものも絡んでくるんでしょうか。
田舎に行くほど近所付き合いとか深くなっていくものだし。

> ただ 
> 辿り着いた その先が、幸せであればいい
> 祖母が、母が、父が、千城が、そして 英人が願うもの
>
> 誰でも 幸せになりたいと、誰もが 幸せにならなくては・・・
> (☆^ω^(★^ω^【*☆*―ぁなたと出会えて幸せ―*☆*】^ω^★)^ω^☆)...byebye☆

みんなが幸せになってくれれば一番いいですよね。
ここで気づけたこともあって、変わっていってくれたら、それもまた幸せになれる事ではないでしょうか。
コメントありがとうございました。
Re: キッパリ
コメントたつみきえ | URL | 2012-07-16-Mon 07:25 [編集]
ちー様
おはようございます。
千城、容赦なしでビシバシ言うね~。

> これで、英人は本当に「榛名」の人間になったのかな。
> おばあちゃん、英人がどんだけ苦労してきたかわかってるかな?わかってないよね、きっと。

英人は何があっても千城が手放さないと思います。
…ので、榛名の人間です(`・ω・´)ノ
おばあちゃんは最低限の生活くらい送れていた(成人してたしね)くらいに考えていたのではないでしょうか。
大学まで出た身だったし…。

> これから先は悲しい事が少ないと良いね。
> でも、千城さんがいるから。
> 悲しみは半分に、幸せは二倍に。
> よくみんなが言うようになっていく・・・
> いや、なってるもんね。

いろいろなしがらみが一つずつなくなって、心身ともに幸せになっていけると思います。
ふたりで、みんなで、いっぱい悩んだりしながら明るい未来に向かっていただきたいです。
英人、頼れる人がそばにいるんだから。
コメントありがとうございました。
No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-07-16-Mon 10:20 [編集]
拍手コメち様
こんにちは~。
またご来店いただきましてありがとうございます~。

>今までのお話読ませてもらって、英人は千城の前だとまるで子猫ちゃん♪ってイメージを受けたんですよ。だから、かわいい英人を希望したんです♪よろしくお願いします☆

ハイ、確かに仔猫ですね。すぐゴロゴロと丸まっちゃって~みたいな。
ヨタヨタ歩いては障害物にぶつかっているような、目の離せないような子。
皆様の脳内でどのようにか変換してください(←)
コメントありがとうございました。
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