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BLの丘
待っているよ 37
2012-07-04-Wed  CATEGORY: 待っているよ
あの場では仕方がなかったのか…。だけど、本気で筑穂もその弟たちも抱えていく覚悟ができていた大野城だった。
泣かせてくれることに、また寄り添ってきてくれる姿に甘えまくって…、追いかけてきてくれる福智がいなかったら、なし崩しの人間になっていただろうと思う。
福智とはあれこれと言いあえたが、大野城に対しては、言われて素直に納得させられる存在になる。
もちろん、筑穂が甘えすぎて、育児放棄にもなりかねない現実を孕んでいた。
どうしたって、教育の面では、大野城に敵うものなどない。
素直に感情を吐露できるようになったことを、大野城は「良かった」と安堵してくれたくらいだった。
これまで筑穂が溜め過ぎていた現実を知るからこそ、誰かを頼れるとは安定に落ち着くことになるから…と。
その優しすぎる態度に、また瞼が熱くなった。
勝手、奔放に振舞い、大野城に迷惑をかけた行動は、兄弟して変わらなかったことになるのか…。

「福智は…、同じ年で、気が合うのかもしれない。冗談でも愚痴でも何でも言えて…、一緒にいて、休まるっていうか…。こんなこと先生に言うのは悪いことだと思うけど…、昨日の夜、先生とは違うって、気が抜けてしまったんです。同僚だからっていう気の緩みの方が強いのかもしれないけど…。でも先生は…」
「わかってる…」
筑穂の言うことをじっと聞いてくれながら、すでに知ったことのように判断を下していた。
漠然と感じた”一時的”なものを、どんな形でも理解していたことになる。
大野城に求めたものは、ただの”余裕”と”温もり”…。
だからこそ、縋った筑穂に対してとった行動を、どこかで罪悪感を感じていたのではないだろうか。
いざとなったとき、本当の愛情をもって包んでくれたのだろうが、最終的に筑穂の意思に任せるものだった。

去り際、大野城は濡れる眦に、また指を這わせながら静かに口を開いた。
「卒業まであともう少しなんだ。それまで津屋崎を高校生として、生活を全うさせたいとは良く分かっている。不安に思うことや疑問点などあったらいつだって連絡をしてくればいい。担任としても顧問としても、協力は惜しまないから」
たったこの前に起こったはた迷惑な出来事までリセットされた台詞。
悩んだ期間の、色恋沙汰はもちろん含まれなかった。
一人の人間として、一人の保護者として、見方を変えてくれた人…。
筑穂は頭を下げるしかなかった。
「本当にごめんなさい…」
「頭を上げてください。”お兄さん”」
そこから発される言葉に、一時の迷いは消えさり、元の状態へと戻される。
福智へと預けた未来もあるのだろうか。福智の人間性も感じ取ってしまったのだろうか。…人を見ることに長けた人は…。

大野城を見送って、玄関の中に入ると、その場から動かずにいたと分かる福智が立ち尽くしていた。
「筑穂…」
先程は強い言葉を吐いても、いざ二人だけで話されたとしたなら、不安も増すものになるはずだった。
筑穂は俯きながらも、はっきりと声を出す。それが福智に対する”想い”になるのだと分かるから。
「ちゃんと言った…。先生と比べて悪かったことも、福智がいてくれて良かったことも…」
「筑穂…」
ぎゅっと抱きしめられて、その温かな腕に心を寄せてしまう。
その台詞だけで福智は、筑穂がはっきりと判断を下し、自分を選んだという確信を得ていた。
一人の人を傷付けたことは変わらない。だけど感じさせない潔さで筑穂自身の幸せを願ってくれた。
それらは生徒に寄せるものと変わらないのだろう。
懐の大きさを改めて感じさせられる。…でももう、彼に甘えることはないだろうが…。
今はこの、全てを見てくれる腕があるから…。

時間が遅れたにしても、香春の家に迎えに行けば、意外な言葉に出迎えられた。
玄関先に現れた若づくりな母親に、同行した福智は絶句していたが…。
「ちくちゃん、ごめんね。嘉穂くん、寝ちゃったのよ~」
「え?!」
「はしゃぎすぎて、疲れちゃったみたい。香春の部屋で宿題するように言っておいたのにね~。気付いたら並んで寝ていたわ」
「じゃ、じゃあ、起こして…」
「でも、香春が起きちゃうじゃない。それに起きた時に嘉穂くんいないと不機嫌になるしぃ」
どうしても泊めたい親心(?)に反論ができなくなる。
確かに大人しく起きる嘉穂ではないことは、筑穂が良く知る。
「すみませんっ。本当にすみませんっ」
ひたすら頭を下げる筑穂に対して、話題を避けるように、「それで?」と促された。
そこは年上のカンでもある。何を言いに来たのか悟ったようだ。
視線を向けられて、喜々としたのは福智だ。
「はいっ。今度っから津屋崎家で同居することになりました『飯塚福智』です。筑穂の同僚なんで仕事の面ではまたご迷惑をおかけするところもあるかと思いますが…」
「あらまっ。お兄ちゃんが増えたの?!」
その喜びがどこに繋がるのかは分からないが…。
「お仕事、大変ならいつでも言って。嘉穂くんを預かることはいつでも構わないから~」
「あー、いえ…、穂波もいるので…」
「穂波くんだって、受験勉強で大変でしょう」
「是非、お願いしますっ」
「ふくち~」
筑穂を気遣うのか、嘉穂と香春の交流を気にするのか…。
どちらでもいいが、筑穂の発言を無視する二人に、知らずと絆が生まれていることに、また驚かされた。
頑なになる筑穂では築けない気安い関係に、自然と馴染んでいく福智こそ、一人暮らしを続けていた人間とは思えなかった。
もちろん香春の母親の気遣いもあるのは分かるのだが…。
「お母さん、幾つになられるんですか~?すっげー、若いっ。本当に中学生の子持ち?!」
冷汗を零すことをさらりと言ってくれる。お世辞かどうかはともかく…。
ナンパしてるんじゃねーぞ…と内心でぼやいてしまう。
それに対して「まぁ~っ。そぅねぇ、ちくちゃんとは五歳しか変わらないし~」とさりげなく実年齢を晒してくれた。
つまりのところ、香春の保護者…でありながら、筑穂の姉とも言いたいらしい…。
歳の差が離れた津屋崎家では、人の年齢というものが、どこか欠損しているのかもしれなかった。
福智はそれを聞いて余計に目をむいていた。
これから育てる息子(?)より、歳の近い近所の両親…。
でも世の中こんな繋がりがあるのかもしれない。
定まった人生などないのだと…。

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コメント

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んまあっ!
コメントちー | URL | 2012-07-04-Wed 05:01 [編集]
センセー、良い人だね。
でも、仕方ないよー。フクちゃんには勝てないから(笑)

しかし、センセーが脇役だったか。
意外だったなあ。
私には嬉しい誤算♪


トゥルトゥルトゥル♪
トゥルトゥルトゥル♪

「もしもーしっ。先輩?あのねー、かわらちゃんのママってばまだ、30ちょいだってー。若いねー。早くに結婚したらしいですよ。流行りのおめでた婚かなあ?兄ちゃん達、いよいよな感じですけど♪ホナがまだ・・・パン屋さんに泊まるかなあ?はあ。はえ。そうねえ、そうねえ、隊長のハニーちゃんてさあ・・・もしもし、先輩!どうしたの?先輩、先輩?」


電話が、切れた┐('~`;)┌
Re: んまあっ!
コメントたつみきえ | URL | 2012-07-04-Wed 07:12 [編集]
ちー様
おはようございます。

> センセー、良い人だね。
> でも、仕方ないよー。フクちゃんには勝てないから(笑)

良い人です。
みんな分かっていたんですね。
フクちゃんの勝利♪

> しかし、センセーが脇役だったか。
> 意外だったなあ。
> 私には嬉しい誤算♪

ヽ(゚∀゚)ノ意外な展開に~♪
喜んでもらえてうれしいです。

> トゥルトゥルトゥル♪
> トゥルトゥルトゥル♪
>
> 「もしもーしっ。先輩?あのねー、かわらちゃんのママってばまだ、30ちょいだってー。若いねー。早くに結婚したらしいですよ。流行りのおめでた婚かなあ?兄ちゃん達、いよいよな感じですけど♪ホナがまだ・・・パン屋さんに泊まるかなあ?はあ。はえ。そうねえ、そうねえ、隊長のハニーちゃんてさあ・・・もしもし、先輩!どうしたの?先輩、先輩?」
>
>
> 電話が、切れた┐('~`;)┌

もうほとんど姉弟となっていますね。
香春のママ、若かった~。
なので筑穂も頼りやすいのかもしれません。
相変わらず一日が長くてすみません。
筑穂と福智、どうなるのでしょうか。
コメントありがとうございました。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-07-04-Wed 14:50 [編集]
筑穂の言葉に耳を傾ける その真摯な態度を取る大野城は、さすが教師!
色々と思う事、言いたい事はあるでしょうが、筑穂が幸せならと、我慢してくれたんだね~
それに チャンスが永遠に消えた訳ではないし~(▼皿▼)ニパッ

フクちゃんと香春ママと意気投合!
これで 晴れて鞍手家(香春の苗字だよ♪皆、覚えてた?)公認ですね♪

[あっもしもし~、今ねぇ、ちくちゃんが来てね。ペチャクチャペチャクチャ...福智くんと...ペチャクチャペチャクチャ...]
「香春ママ隊員も優秀ではあるが、お喋り長いのがな~」
「そうだよな~。ちー隊員も優秀だけど、趣味に走る癖があるし。伊吹は、すぐ営業するし。」
[それでね...ペチャクチャペチャクチャ...もしも~し!ちょっと聞いてるの!?]
「ピー♪お掛けになってる電話は、ただ今 混線中です。ピー♪」
「先輩、( ≧▽≦)b Good Job!」

香春くんの苗字を忘れて 伊吹の資料をちょっと見せて貰ったの~♪
便利だけど 知ってはいけない極秘資料が!
掃除腐は見た!|柱| ̄ー ̄)ニヤリッ...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-07-04-Wed 15:17 [編集]
けいったん様
ご一緒しました~こんにちは~。

> 筑穂の言葉に耳を傾ける その真摯な態度を取る大野城は、さすが教師!
> 色々と思う事、言いたい事はあるでしょうが、筑穂が幸せならと、我慢してくれたんだね~
> それに チャンスが永遠に消えた訳ではないし~(▼皿▼)ニパッ

筑穂の幸せを願って…(え?チャンスはまだまだ???)
大野城、素晴らしい先生ですね。
嫌々っていう態度の穂波も信頼を置いているのはそんなところがあるからでしょう。
(家庭の中に入れたくはなかったようですけど)

> フクちゃんと香春ママと意気投合!
> これで 晴れて鞍手家(香春の苗字だよ♪皆、覚えてた?)公認ですね♪

名前で書いちゃうから苗字って忘れますよね。
私も読み返します(苦)
もうこれでなんでも言い合える仲♪になりましたね。

> [あっもしもし~、今ねぇ、ちくちゃんが来てね。ペチャクチャペチャクチャ...福智くんと...ペチャクチャペチャクチャ...]
> 「香春ママ隊員も優秀ではあるが、お喋り長いのがな~」
> 「そうだよな~。ちー隊員も優秀だけど、趣味に走る癖があるし。伊吹は、すぐ営業するし。」
> [それでね...ペチャクチャペチャクチャ...もしも~し!ちょっと聞いてるの!?]
> 「ピー♪お掛けになってる電話は、ただ今 混線中です。ピー♪」
> 「先輩、( ≧▽≦)b Good Job!」
>
> 香春くんの苗字を忘れて 伊吹の資料をちょっと見せて貰ったの~♪
> 便利だけど 知ってはいけない極秘資料が!
> 掃除腐は見た!|柱| ̄ー ̄)ニヤリッ...byebye☆

絶対に香春ママと伊吹は気が合いそうです。
近所の情報、しっかり握りこんでいそう…。
そして一日の大半を"会話"で終わらせる…(仕事してんのか、おまえ~ヽ(`Д´)ノウワァァン!!)。
先輩、とうとう電話は…(爆) ( ≧▽≦)b Good Job
(これはちー隊員対策も?!)
家政腐。どこまで見ているんだろう|柱(゚▽,゜)ジー
コメントありがとうございました。
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