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BLの丘
待っているよ 29
2012-06-26-Tue  CATEGORY: 待っているよ
兄弟の会話に、筑穂が帰宅したのだと気付いた大野城と福智が振り返った。
「筑穂、おかえり」
「お疲れ~。甘木さん、手伝ってくれたの?」
「筑穂に仕事押し付けて先に帰ってくる薄情なヤツか」
「部活、さっさと切り上げたって聞いたけど?ちゃんと仕事しろよ」
途切れない言い争いが続く。穂波の盛大な溜め息を聞いても、どうやらずっとこの調子だったらしい。
しかし、福智はともかく、大野城まで家にいるとは思わなかった。
「先生、すみません。穂波が心配かけるようなこと、また言ったんですか?」
「勝手についてきやがったんだよっ」
「筑穂がどう過ごせたか、話を聞こうと思って」
精神的にショックを受けることが立て続けにあり、しかも昨夜大野城に甘えまくった後となっては、心配は筑穂に対してだろうか。
生徒でもないのに、見つめてくれる包容力が伺える。
それに申し訳なさが募っていく。
「ごめんなさい…。あ、俺なら、もう大丈夫ですから…」
「そうそう。筑穂のことは今日一日、俺がちゃーんと見ていたんだから。しっかり仕事もしてたし」
「筑穂は無理するところがあるから」
大野城が、元気になって良かったというように、頭上をポンポンと撫でて、穂波が「いーから、メシにしろっ」と怒鳴り声を上げる。
その態度に呆れながらも、空腹の苛立ちがあるのだろうと、また嘉穂のことも思って、筑穂も慌てて準備にとりかかった。
待たせたのは自分でもある。
ふたり、どう協力したのかは分からないが、かなりの種類のおかずができていて、滅多にない出来事に、嘉穂など、今度は何が起こったのか…といった感じだ。

「津屋崎、ほら、運べ」
人数が増えれば往復の回数も増える。
大野城の呼びかけに、そこは状況を理解できるのか穂波は大人しく動き出す。
これ以上の待ち時間を持ちたくないこともあるのだろう。あとは指導力か…。
久し振りに食卓がにぎやかだった。こんな光景は親がいた時以来だろう。
五名での食事だなんて…。
その華やかさに、忘れていた喜びが筑穂の心に込み上がってくる。
今日、美味しい匂いが、自分を迎えてくれたこともあるのだろう。
座卓に並んで座って、その光景に鼻の奥がツンとした。
僅かな仕草すら見逃さなかったのか、隣に座った大野城がふわりと笑みを浮かべ、指先が眦に伸びてくる。
「筑穂はやっぱり情緒不安定だな」
また瞳を潤ませてしまったのか…。
即座に反対隣に座った福智が「筑穂?」と大野城の手を弾き飛ばして肩に腕を回してきた。
「筑穂ってば、俺の美味そうに見えるメシに感動してくれたの?もう毎日でも作ってやるし、仕事も家のことも何でも協力するからっ」
堂々と弟たちの前で宣言してくれるのもどうかと思うが…。
筑穂は慌ててその腕から逃れようとした。
冗談を交えて気分を軽くさせてくれようとする配慮は、やはり福智の人柄だった。
「ふ、福智っ、だいじょ…っ、大丈夫だから。…うん、ありがと。会社の人にも感謝してるし…」
「何でも言えよ。筑穂のそばにいつでもいてやるから」
「もう…。ごはん、食べちゃおうよ…」
皆に向かってどう受け止められるものなのかと焦りもあって、筑穂は自ら箸を手にした。
目の前ですでに穂波と嘉穂は茶碗を持ちかきこんでいたし、こちらの話題はどうでもいいことなのか。嘉穂はともかく穂波は気付いているところもありそうだが、そこは黙ってくれている。
それは、日々苦労をかけている…という後ろめたさに聞こえてしまったのではないかと、そちらの心配もした。
穂波が就職を急ぐ理由はすでに耳にしていたから…。

福智が大皿からおかずを取り分けてくれる。
「筑穂っ、これ、俺が作った麻婆豆腐だから、いっぱい食べて」
「素を混ぜただけじゃないか。こっちの野菜炒めは栄養バランスもいいぞ」
無くならないうちに、と大野城も素早く箸を動かしている。
「センセーっ、ご飯食べたら、また宿題、見てね」
「あぁ、もちろん」
「嘉穂っ。宿題っていうのは自分でやるものなのっ」
「センコー面ひっさげて、いつまでものさばっているなよ」
「穂波っ!!」
すっかり飼い馴らした(?)嘉穂に向かって、にっこりと微笑む大野城に、居心地の悪さを感じる穂波が口を荒げる。
それぞれ、胸に抱くものは何なのか…。
だけどその賑やかさが、とても心地良いものとなって筑穂をホッとさせてくれた。

夕食のあと、大野城は嘉穂の宿題を手早く片付けると、自宅に仕事を残しているから、と帰っていった。
教員、学校で執り行う仕事だけではなく、課題作りや資料集めと、時間外でも忙しいらしい。
この二日、我が家の事情に巻き込んだ過去があるだけに、これ以上の特別視は躊躇われるところだ。
「先生、本当にありがとうございました」
「いつでも頼ってって言っただろ。気負いっぱなしだと歪ができる」
玄関口で大野城に頭を下げれば、また大きな手が伸びてくる。
「先生っ、忙しいんだろっ。さっさと帰れよっ」
「ふ、福智…」
すっかり犬猿の仲になっているふたりを宥め、「おやすみなさい」と声をかける。
『帰る』と聞いた時、少しの生活の差を感じたのは筑穂だった。
包容力があったとしても、ずっとそばにいてくれる存在ではないのだと改めて知らされた気分だった。

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コメント

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あれあれ?
コメントちー | URL | 2012-06-26-Tue 05:04 [編集]
たくさんで食べるとご飯て美味しいよね。兄ちゃん、良かったね←なのか?

センフクコンビは、アピール合戦。
料理の腕前は、ドッコイドッコイ?
フクちゃん、私も麻婆豆腐食べたい!
(兄ちゃん専用かいっ)


トゥルトゥルトゥル♪
トゥルトゥルトゥル♪

「隊長?お嬢様って呼んで下さるって聞きましたけど←こら
ありがとうごじゃいまぁす。

で、ですね?兄ちゃん、淋しがりでいつも傍にいてくれる人が良いみたいです。
福智、チャンスですよ。
え?チャンス・・・まさか、福智まで兄ちゃんに?福智の監視を強化します!
隊長、早くお嬢様って~。」
「わかってますよ、怒鳴らなくても。冗談ですってば。掃除腐(エリート隊員)さんによろしく~♪」
Re: あれあれ?
コメントたつみきえ | URL | 2012-06-26-Tue 07:38 [編集]
ちー様
おはようございます。

> たくさんで食べるとご飯て美味しいよね。兄ちゃん、良かったね←なのか?

人数が多いと会話も増えるしね。
弟たちに淋しい思いもさせなくて済んだし、良かったね…なんでしょうか。
この際、パン屋さんも一緒にここで住んでしまえ~(←)

> センフクコンビは、アピール合戦。
> 料理の腕前は、ドッコイドッコイ?
> フクちゃん、私も麻婆豆腐食べたい!
> (兄ちゃん専用かいっ)

筑穂に対してアピールはしても弟に対しては…。
つか、勝手に食べているからどうでもいいのか。
なんでも美味しいお年頃ですしね。

> トゥルトゥルトゥル♪
> トゥルトゥルトゥル♪
>
> 「隊長?お嬢様って呼んで下さるって聞きましたけど←こら
> ありがとうごじゃいまぁす。
>
> で、ですね?兄ちゃん、淋しがりでいつも傍にいてくれる人が良いみたいです。
> 福智、チャンスですよ。
> え?チャンス・・・まさか、福智まで兄ちゃんに?福智の監視を強化します!
> 隊長、早くお嬢様って~。」
> 「わかってますよ、怒鳴らなくても。冗談ですってば。掃除腐(エリート隊員)さんによろしく~♪」

みんな いつまでも(いくつになっても)『お嬢様』ヽ(゚∀゚)ノ

お兄ちゃん、何か気づき始めましたね。
ふたり並んでくらべちゃった時、違いがあるのだと…。
甘えることを知ったお兄ちゃん、そのぬくぬくをどの頻度で味わいたいのでしょうか。
コメントありがとうございました。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-06-26-Tue 09:10 [編集]
筑穂への大野城の余裕の言動は、何所から来るのでしょうね。
やはり 筑穂と あの事があったから!?
福智も そんな大野城と 雰囲気が変わった筑穂を見せつけられたから 余計に焦ってしまうんだろうなぁ~
でも 今晩は 大野城は帰るらしい。
って事で フクちゃん、チャンス到来かーー!(oゝД・)b

『お・おじょ・お嬢・お嬢さ・お嬢さんっ!』
「隊長、そんな怒鳴り声で言っては・・・」
『練習だっ! 本番は 上手く言うぞっ!』
「もう一人のお嬢さんを相手に練習すれば いいのでは?」
( ´。`)スゥーーー(*`Д´) <<お嬢さんーーб(´・ε・`:)私かい?...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-06-26-Tue 12:08 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 筑穂への大野城の余裕の言動は、何所から来るのでしょうね。
> やはり 筑穂と あの事があったから!?
> 福智も そんな大野城と 雰囲気が変わった筑穂を見せつけられたから 余計に焦ってしまうんだろうなぁ~
> でも 今晩は 大野城は帰るらしい。
> って事で フクちゃん、チャンス到来かーー!(oゝД・)b

アノ事は大野城の中で大きいのでしょう。
筑穂から寄りそっていっちゃったしね。
まだ一晩しかたっていないしね。
大野城テンティ、大人の威力(?)発揮しているのでしょうか。
自信を見せることで、更に福智を威圧する…(←)

> 『お・おじょ・お嬢・お嬢さ・お嬢さんっ!』
> 「隊長、そんな怒鳴り声で言っては・・・」
> 『練習だっ! 本番は 上手く言うぞっ!』
> 「もう一人のお嬢さんを相手に練習すれば いいのでは?」
> ( ´。`)スゥーーー(*`Д´) <<お嬢さんーーб(´・ε・`:)私かい?...byebye☆

「隊長、そんな大声で~っ」
『だって耳が遠…ぃ…カモ…』
「「「たいちょーっっっ、お嬢さんに向かって~~~っ」」」

コメントありがとうございました。

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