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BLの丘
待っているよ 28
2012-06-25-Mon  CATEGORY: 待っているよ
福智の仕事は甘木が手伝ったおかげもあって、スンナリと解決したらしい。
「筑穂~っ、一緒に帰れるから~っ」
更に筑穂の手がけた仕事の手伝いまでしてくれようとする親切さに、ずっと疲れていた福智を思えば、「先に帰って」と促してしまう。
自分の家の事情で、ほとんど仕事にならなかったようなこの数日間の責任は自分で負うものだろう。
筑穂が「残業になる」と弟に向けてメールを発信した先、福智は「分かった!俺、着替え、家に取りに帰るから。そのあと筑穂んちに行く」とクエスチョンマークを浮かべざるを得ない発言に迎えられた。
「え…と…」
思わず黙ってしまう筑穂の脇で、甘木が、「やっと飯塚も癒されるのか~」と意味深な言葉を吐いていた。
筑穂の家庭のせいで、余計な神経をつかわせてしまったとは充分承知しているところだが…。

「着替えって…?」
疑問を浮かべる筑穂に、福智は「だって泊まり込むためには必要だろ」とあっさりと答えてくれる。
『泊まり込む』という言葉に、昨夜の大野城との交わりが思い出されて、急に顔を赤らめた筑穂だった。そのやりとりを見ながら、他の社員が盛大な溜め息をついていた。
すでに察知された一夜だとは、気付いていないのは筑穂くらいなものだろう。
恥ずかしくて口にもできない筑穂なのだが…。
思い返せば、結構さりげなくみんな、ソレの話題を会話の中に取り込んでいたものだ…。
経験がなかった筑穂は、聞くだけに留まっていたけれど。

筑穂が残業で遅くなるとの連絡に、穂波から「香春んちに言っておく」と、返信が来た。
穂波も部活で忙しい。部活にも専念しろと言ったのは筑穂だし、顧問もそのことを理解している。
夕食前の時間まで嘉穂が香春の家で過ごすことは日常のことといっていい。
しかし穂波のその一言は『夕飯は香春の家で、二人して食べる』と言っているようなものだ。
緊急時に預かってもらうことはしばしばあったが、大きくなった今はさすがにそこまで甘えられない。
仮にも調理師を目指そうという人間の吐く言葉か…。

「あぁぁぁぁ、もぅ…、アイツ本気でやる気あるのかよ…」
ボソっと零れた言葉をすぐに福智が拾い上げた。
「筑穂、何?どうしたの?困ったの?」
「いや、そうじゃなくて…。高校生を人の家で面倒見てもらうってどうなんだよ…」
兄のぼやきにやっぱりすぐ福智が食いついた。
「俺っ、家にいてやるからっ。安心して帰ってこいって言っといて。あぁ、じゃあ、速攻帰らなきゃっ」
言葉を返す前に動きだしている。
それから徐に振り返った。
「鍵、貸してっ。やっぱ、出迎えてやらなくちゃなぁ」
ひとりぶつぶつと悦に浸る姿を見て、他人が家にいる方が問題じゃないか…と思うより、協力してくれる福智に感謝しか浮かばなかった。
それも昨日、誰かに甘えた感触のようなものが残っているのだろう。
自分一人で頑張ろう、という意識がどこか削げ落ちていた。
更に浮かんだのは、料理の香りがたつ家に飛び込んできた嘉穂の、嬉しそうだった姿。
そんな家庭でありたい。
「ありがと、福智。俺も早く帰れるようにするから」
一緒に仕事して早く退社できるようにしたらいいのではないか、とか、代わりにやってやったほうがいいんじゃないかとか、他の社員の頭の中には過るものがいっぱいあったが、とりあえず社内の人間関係がぎくしゃくしていないことには安堵もしていた。
そしてやはり、同僚として、福智を励ます声援を胸の内で呟いてしまう。
目に見えない人より、性格も人の良さも見守る温かさも知っている身近な人を応援してしまうのは自然なことだろう。

「津屋崎、あと、何、残ってんの?」
「甘木さんっ、大丈夫です。俺、一人でもできますからっ。甘木さんこそ、昨日福智のことまで手伝って…。自分のことやってくださいよ~」
「そう?まぁ、なんかあったら遠慮なく言えよ。独身一人暮らし、待っている人もいない侘しい人間だからさ~。機械がお友達だよ~」
「すっげー虚しい…」
甘木のぼやきに福智が言葉を残して消えた。このあと嫌味やら何やら言われたくないからだろう。
あちこちから笑いが零れるオフィスの中、筑穂は気分を改めてパソコンに向かう。
家庭の状況が多少乱れたとしても、癒してくれる職場に救われる。
好きな仕事をする…。
穂波が目指すものを反対してはいけないのだと、また筑穂は思うことになった。

数時間の残業を終え、家に辿り着く。
いままで嗅ぐことのなかった、家に帰って香ばしい匂い…に、筑穂は少し驚いていた。
誰かに出迎えられるとは、温かな気持ちになれること。
「にぃちゃん、おかえり~」
「兄貴、帰ってくるまで待ってろ…って、…こいつら、何?」
大喜びで出迎えた嘉穂とは対照的に、明らかにブーブーと文句を言う穂波に、『こいつ”ら”?』と疑問が掠めていった。
あまり広いとはいえない台所に、動く大男がふたり。
福智と大野城が、言い争っているのか宥められているのか、噛み合わない会話を繰り広げながら、何やら調理をしていた。

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コメント

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こっそり
コメントちー | URL | 2012-06-25-Mon 04:47 [編集]
いやあ、マジで面白くなってきましたね。フクちゃん、やれば出来る男だったのよね。
パン屋さんのとこで、追い返された時はヘタレかと誤解したけどね。
ごめんね、フクちゃん。

センセーも頑張ってるなあ。
ちょっと、兄ちゃんとイイコトしたからって油断しちゃダメなんだから。

末っ子ちゃん、可愛い~。←言いたいだけ(笑)


トゥルトゥルトゥル♪
トゥルトゥルトゥル♪

「隊長!兄ちゃんの周りが大変です。押しかけ旦那が二人になりました!会社の先輩も怪しいかもー。」
「え?センセーに厳しい?だって、兄ちゃんの弱った所にさあ、つけこんだ気がしませんか?フクちゃん、健気なんだもん。」
「私の歳?隊長、セクハラッ!」



Re: こっそり
コメントたつみきえ | URL | 2012-06-25-Mon 07:39 [編集]
ちー様
おはようございます。

> いやあ、マジで面白くなってきましたね。フクちゃん、やれば出来る男だったのよね。
> パン屋さんのとこで、追い返された時はヘタレかと誤解したけどね。
> ごめんね、フクちゃん。

フクちゃんは筑穂のことを第一に考えて身を引いたんだと思います。その場では。
「決して負けたわけではないっヽ(`Д´)ノウワァァン!!」byフク
先生とは違った視点で、お仕事も私生活も、今まで温かい目で見守ってきてくれたフクちゃんなんです。

> センセーも頑張ってるなあ。
> ちょっと、兄ちゃんとイイコトしたからって油断しちゃダメなんだから。

ちょっと、ね(笑)
もうすっかり筑穂は自分の手に落ちたと思っているでしょう。
追っ払ったこともあったし。

> 末っ子ちゃん、可愛い~。←言いたいだけ(笑)
>
>
> トゥルトゥルトゥル♪
> トゥルトゥルトゥル♪
>
> 「隊長!兄ちゃんの周りが大変です。押しかけ旦那が二人になりました!会社の先輩も怪しいかもー。」
> 「え?センセーに厳しい?だって、兄ちゃんの弱った所にさあ、つけこんだ気がしませんか?フクちゃん、健気なんだもん。」
> 「私の歳?隊長、セクハラッ!」

隊長が訴えられてる(笑)
お歳はむやみやたらに聞いてはいけませんよ~。
ちー隊員はやっぱりセンセーの攻め方が気に入らなかったご様子ですね。
あの展開では仕方ないですけれど。
コメントありがとうございました。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-06-25-Mon 09:25 [編集]
一歩リードの急先鋒の大野城と 遅れを取ったが長年に築いて来た関係がある福智
今度の対決は、”料理”だぁ~♪
さぁ 筑穂の胃袋を掴むのは!?( ^o^)ρ (^0^ ) ハイ! アーンシテ!

トゥルトゥルトゥル♪
『セクハラって!ただ仲良くなろうと思っただけのなのに・・・』
「隊長、女性は幾つになっても お嬢さんなんですから♪」
『はぁ~!儂に ”みの〇んた”になれって言うのかぁー!』
「「「隊長~~!」」」」

私だって ”お嬢さん”って言われたい←by掃除腐
フキフキ雑巾ガケ(;。。)o_...byebye☆ 
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-06-25-Mon 13:01 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 一歩リードの急先鋒の大野城と 遅れを取ったが長年に築いて来た関係がある福智
> 今度の対決は、”料理”だぁ~♪
> さぁ 筑穂の胃袋を掴むのは!?( ^o^)ρ (^0^ ) ハイ! アーンシテ!

まだまだ勝負は決まらない模様。
大野城先生、ちょっとフライング気味でしたけれどね。
追いかける福智です。
そんな簡単に諦められる、今まで積み重ねたものじゃないのよ~。

> トゥルトゥルトゥル♪
> 『セクハラって!ただ仲良くなろうと思っただけのなのに・・・』
> 「隊長、女性は幾つになっても お嬢さんなんですから♪」
> 『はぁ~!儂に ”みの〇んた”になれって言うのかぁー!』
> 「「「隊長~~!」」」」
>
> 私だって ”お嬢さん”って言われたい←by掃除腐
> フキフキ雑巾ガケ(;。。)o_...byebye☆ 

「「「隊長~っ、"きみま○"でもいいのでは~っ」」」
『掃除腐が泣かないかな…』

~掃除生活○○年、褒められて○年 本日も"お嬢さん"と呼ばれ いつも雑巾がお友達~
コメントありがとうございました。
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