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BLの丘
待たせるけれど 3
2012-06-23-Sat  CATEGORY: 待たせるけれど
兄の気持ちも分かるし、目の前で動く人の”生活感”も見えてくる。
進学が全てだと思っていた穂波にとって、力強く働く目の前の姿は、想像していた学歴を誇示するものと全く違っていた。
だからこそ、『働く』意味をはっきりと知らせられる。
決して楽なものではないこと。
立場は変わっても、『働きながら』自分と弟の嘉穂を育ててくれたのかと思うと、目頭が熱くなった。
決して辛いことも、弱音も吐かなかった兄に対して、やはりはやく働いてやるべきだろうと思う。
「俺…、こういうの、ちゃんと学びたい…」
「専門学校っていうのがあるよ。大学じゃないけどさ」
朝の早い時間、父と一緒に粉を捏ねて、オープンへと向かう後ろ姿に穂波の燻っていたものが零れる。
穂波が悩んでいるところも押さえてくれる。
“進学”に関して考えがまとまらないこと。
浮羽は自分の経験を穂波に教えてくれた。

本格的に学びたいのであれば…。
技術をもった世界で生きたいと思ったのも確かで、ただ、それを、どう兄に伝えたらいいのか分からなかった穂波でもあった。
机の上に向かうより、ずっと、こうして動いている方が体に馴染んでくる。
それが分かるからこそ、敷かれたレールの上を歩きたくない葛藤が見えた。
浮羽は当たり前のことを、アドバイスをくれる。
「調理する上で必要なことは、試験も通して全部教えてくれる。ホナがどこで働くかは別として、技術を身につけたいっていうホナには適していると思うけどな」
技術を学ぶことを、背を押してくれた。
浮葉やその父に、目指す道は言えなかったけれど、同じ道に進みたいとは伝わっていたようだ。
それが分かるから、将来の行く末はともかく、父親は忙しいなかで様々な事を教えてくれたのだと思う。
学校の時間も知られていたから、「もう行くんじゃねぇのか」とうながされて、しぶしぶ店を後にした。
“きっちり”ということを守ろうとする性格は、ある意味で穂波を育てていた。

恋に落ちた…のはたぶん、出会った時なのだと思う。
一緒にいればいるほど、優しさを知ったし、どこかで崩れそうな張り詰めた雰囲気も感じられた。
それは兄に似た部分なのかもしれないが…。だからこそなのか、気付けるところは多々あった。
あたり一面に気を使おうとするから、少しでも息を吐き出して…と思ってしまう。
小さい体が重いものを持とうとすれば寄り添いたくなる。
接客業である以上、感情を表せないのは当然だが、その芯の通った動きが、余計に穂波を惹きつけるものとなった。

…甘えさせてやりたい…。

夕方、閉店前の店に立ち寄ると、ほとんどの商品が売れていて、残っているものは僅かだった。
「あぁ、ホナ。店じまいしちゃうから、持って帰っていいよ」
いつもは見られるお父さんの姿もなく、店を閉めようという動きを見せた浮羽に、いつもと違うものを感じた。
「何かあったの?」
少し悩んだようだが、日々の交流のおかげか、素直に口を割ってくれた。
「父さん、ちょっと具合悪くてさ。先に家に帰らせたの」
「え?」
「あー、大丈夫、大丈夫。どうせゆうべの飲み過ぎの結果だから~」
手をひらひらと振りながら、努めて明るく振舞おうとする姿に、無理を隠す気の強さが見えた。
頼れる存在にはなってくれないのだろうか。…なるわけがない…。年下の自分に対して…。
分かってはいても…。
頼られたい気持ちが湧いた。
浮羽に寄った体が、『無理しないで』と伝えるように、小さな存在を包んでいた。
突然抱きしめられたことに、動揺もあるのかもしれないが、ホッと安堵したのは伝わった人肌の温度があったからだろうか。
肌の温もり…。
いなくなってしまった存在からは感じられないもの。
互いに大事な人、頼りたい人を失ってしまった過去があったから、素直にその温かさを感じられたのかもしれない。
「俺…、浮羽さんを支えていきたい…」
穂波の願望はじっとしていた浮羽の心を揺さぶっていた。


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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-06-23-Sat 11:23 [編集]
相通ずる背景、近しい人によく似た性格と面影
初めは 親しい情を感じていたけれど
いつの間にか それに 「愛+情」が 混じりだして
で、好きになった訳か...

7歳も年下の男、しかも まだ高校生
少しは 世間を知っている浮羽が、すんなりと 穂波の気持ちを受け止めたとは思えませんが。
それでも 自分を止められなかったのは、「愛の力」!?
(*σ´ω`)σ*。+・.+: アナタヲアイシテル♪( 〃..)ポッ

前後になるけど 「待っているよ」を読みに行こうっと!
(*⌒∇⌒*)テヘ♪





そうねえ
コメントちー | URL | 2012-06-24-Sun 06:07 [編集]
さすが、けいったんさん。
良いこと言うねぇ。

きっと、大人のパン屋さんの方がいろいろと葛藤はあったと思います。
でも、穂波は若い分、ガーッとやってバタン、ビリッ、キャッ!みたいな(笑)
擬音にすなっ、コイツ。
だって、想像だもーん。

ホナぁ。幸せにおなり。
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