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BLの丘
待っているよ 22
2012-06-19-Tue  CATEGORY: 待っているよ
「ホナっ!!」
奇声を上げる浮羽の隣で、唇を噛む穂波が「だって…っ」と叩いた手の痛さを味わっていた。
少なくとも、兄にも弟にも手を振りかざしたことなどない。それほど心の優しい子だった。
衝動的な行動だとは本人も充分分かっているのだろう…。
穂波が見せる悔しさは、穂波自身が感じる年上に対しての不甲斐なさなのか、兄に浮羽のことを否定する態度で言わせてしまった苦しみなのか…。
どう言ったら自分たちの関係を納得してもらえるのか分からず、手探りで渡り歩いていること…。
筑穂が頭ごなしに否定してしまったから、穂波にうっぷんが溜まって当然のことでもあった。が…。
穂波の勢いを止めようと抱きついた浮羽に、穂波は力を込めることはしない。
行動を咎める浮羽に言い訳を零す、まだ”少年”の姿があった。
「だって、兄貴が浮羽さんのこと、あんなふうに言うからっ」
「言われて当然だよっ。あたりまえだよっ。ホナっ、自分がどれだけ大事に育てられたか分かってよっ。やっぱりこんなの良くないよっ」
「別れるってことっ?!」
「ホナには、まだ未来がある…」
「浮羽さんっ!!」

二人の間でもあった葛藤が、改めて言葉として流れ出た。
どれだけの時間がかかったのかは分からないが、浮羽も悩んで道を見据えたのだろう。
そして突き付けられた現実。
相手を思うからこそ、突き放す愛情もある。これは、本心ではない、浮羽が抱いた感情。
「未来ってなんだよっ?!」
穂波の声が空気を裂いた。
夢を抱いた若者を、潰そうとするのか…。自分の勝手な願望は、希望を失わせることなのだと、筑穂は漠然と感じていた。

筑穂は胸の内に込み上がるものが抑えきれない。それがなんなのかも、分からずにいる。
大野城が濡れる瞳を隠すように俯かせてくれたが、漏れる声だけは押し留められなかった。
昨日からずっとそうだ…。
早すぎる成長は、筑穂の思考と全く否となるものだった。
身に叩きつけられた力関係も強く感じるのだろうか。
たったひと振りの手で、ねじ伏せられること…。

大野城が静かに声を発する。
「別れさせることを目的に、ここに来ているんじゃない。順序というものがあるだろう。自分がどう生きたいのか、なぜそう思うのか、本人の口を持って理解されないというのなら、俺はいくらだって協力する。だけどおまえがやっていることは何だ?頭ごなしに『大学に行くことを望まれるから』とお兄さんの意見も求めず、会話すらなかった。そんなことで理解もへったくれもないだろう。大人になった気分でいるのかもしれないが、まだまだアマちゃんなんだよ。挙句の果てに暴力かっ?!年配者の意見も聞けないようなら、当然、ここのお父さんの話だって聞けないだろうなっ。おまえはこのお父さんにまで、許されなきゃ手を上げるのかっ?!自分のやり方が納得されない時に、強引に推し進めるのかっ?!」
少なくとも、穂波の歩みたい道を応援するといった態度は、打ち明けた時点から感じていたことなのだと思う。
大野城の人を見る、人の良さは、担任としても顧問としても一番感じられていた穂波のはずだった。
問答無用で事を進めていたのは筑穂のほうなのに、大野城は穂波を諭す言葉だけをもらす。
短気は損気と、こんな場所でも教育することを忘れていない。
なにより、いつでも力になると注ぎこむ声音。

それは同時に、筑穂にも染み込んできた言葉でもあった。
『強引に推し進める』…。
自らの思考を穂波に向けた。
間違っているとは言わなくても、諭してくるものがそこにはある。
考え方を変えろとは…、暗に筑穂に向けられた言葉でもあるのだろう。
「あ、ぁぁぁああ…っ…っ」
筑穂は昨日に続いて再び大野城の腕の中で泣いた。
昨日は誰もいない空間だったが、今は弟もおり、またその相手も家族もいる。
恥じらう部分はあっても、大野城の包容力に溜め込んでいた何もかもが削げ落ちていく。
一人の人間として飛び立つ時が来たのだと、筑穂自身、大野城に教えられていた。
一人で育てられなかった、他人から知識をもらった悔しさも混じるのだろうか…。
張り詰めた気持ちが崩壊していく心を受け止められ支えられ、しかし、間違ってはいないと宥められる。
全てを包んでくれる優しさに、童心に返れる安らぎを覚えた。
無防備に泣き喚く姿を晒した時、気丈に振舞ってきた兄の中にあった固執したものがはがれおちていくのをその場の人間全員が感じていた。
弟に向けた愛情の深さ…。
歳が離れていたから…、そして自分だけが親の愛情を感じて成長してしまったのだという後ろめたさ。
努力してきた何もかも、大野城の言葉が、「いつでも頼ってこい」と告げてくる。
懐の大きさに張り詰めていたものはあっけなく吹っ飛んだ。

店主がその場を治めるように口を開いた。
「穂波くんにやる気があるなら、俺が身につけたものはいくらだって教えてやるさ。だがなぁ、俺もこれだけは納得できねぇ。ちゃんと学校卒業して、目指すものを明確に表せてからもう一度うちの敷居を跨げ。それが自分のためであるのか、浮羽のためであるのかは、問わねぇよ。あんたが決めた道だからな。こんな浮羽を認めてくれているんだ…」
少しでも早く筑穂の手を煩わせない存在になりたかったとは、技術を学びたかった日々から悟ることができたのだと思う。
応援してくれる気持ちも漂う。
それでも筑穂の気持ちはないがしろにできなかった。
決して嫌われていないのは、穂波が見せる真面目さなのだろう。
後継ぎウンヌンはともかく、自分の店を継ぎたいと思われることは決して嫌なことではないはずだ。
歳の差のことも問わないのは、筑穂を宥める意味もあるのかもしれない。
「おじさん…」
影ながら認めてもらえているのは、やはり穂波の性格故なのだろう。
店主が勢いよく立ちあがった。

「さぁっ、店じまいだっ。余ったパン、全部持って帰れよっ。閉店時間、とっくに過ぎちまった。まぁ、売れ残りだがなぁ」
それでも感じられる味がある。
そこに穂波が辿り着けるだろうか…。
立ち上がり背を向けて奥へと引っ込んでいく後ろ姿に、そっと眦をこする店主の姿を垣間見た。
まだまだ子供だ…と思っていた姿は、誰しも同じなのだろうか。
大野城の腕の中で、一番ちっぽけなのは自分なのではないかとまた感じて、筑穂は唇を噛んでいた。
それを悟るのか、大野城が「もういいよ…」と静かに筑穂に自分の時間を持つことを促してくれる。
子育ては続くが、次の子育ては自分と共にやろうと…。

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お父さん…。・゚・(ノД`)・゚・。 え、父の日\(゜ロ\)(/ロ゜)/?!
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コメント

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くすん
コメントちー | URL | 2012-06-19-Tue 04:35 [編集]
「隊長。ランキングに更新分が反映されて無かったのに来てみたらありましたっ!兄ちゃん、また泣いちゃったけど大人になれそうです。穂波も兄ちゃんと話し合えそうな気配・・・ぐすっ。
パン屋パパ、良いパパです。
だから、パン屋さんもきっと良い子。
わーん(ToT)
センセー、兄ちゃんと末っ子の子育てするつもりらしいっす。

・・・?え?今ですか?まだ、諦めてなかったんですか?超シークレット隊員のけいったんさんがきえさんと話してましたけど?
上はねー・・・あ!福智が伊吹に捕まりそう!失礼しますっっ!」



Re: くすん
コメントたつみきえ | URL | 2012-06-19-Tue 09:50 [編集]
ちー様
こんにちは。
粗大ゴミが…健康診断のため、家にいる…。・゚・(ノД‘)・゚・。(いや、いいことなんだけどさ…)

> 「隊長。ランキングに更新分が反映されて無かったのに来てみたらありましたっ!兄ちゃん、また泣いちゃったけど大人になれそうです。穂波も兄ちゃんと話し合えそうな気配・・・ぐすっ。
> パン屋パパ、良いパパです。
> だから、パン屋さんもきっと良い子。
> わーん(ToT)
> センセー、兄ちゃんと末っ子の子育てするつもりらしいっす。
>
> ・・・?え?今ですか?まだ、諦めてなかったんですか?超シークレット隊員のけいったんさんがきえさんと話してましたけど?
> 上はねー・・・あ!福智が伊吹に捕まりそう!失礼しますっっ!」

ランキングに載らないのは何か都合があるんだろうと、いたしかたないと諦めているところですが。
まぁ、来てくださった方がみつけてくれればいいかなぁと…。
兄ちゃん、また泣きました。
その姿見て、弟もお父さんも筑穂の抱えてきたものを感じるのでしょうね。
浮羽も穂波を受け取る意味を知ってほしいところです。
あのお父さんがいれば、筑穂も安心できるのでは…(←浮羽、無視?!いや、そんなことないけど…)
お父さんが良ければ息子も良い子。
先生は…。とりあえず、宿題で弟を洗脳(?!)したからなぁ。

福智「そうか、弟か…」(←なんか、狙いを…)
コメントありがとうございました。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-06-19-Tue 17:29 [編集]
人目も憚らず 大声で泣く兄を見て どう思う どう感じる、穂波?
いつも 自分の事より 弟2人の事ばかりに気を掛けている兄に手を出すなんて~(´;ェ;`)

愛されているから 何をしても許されると、思ってんじゃねぇぞぉーー!
穂波が浮羽を思う半分でも 筑穂を思って 兄の気持ちを考えてみなさい!
と、大変 怒ってるよ~私は!ムッ!(#`Д´σ)オメーニダョ!!!

「隊長!ただ今 台風接近中で あります!」
『基地は 大丈夫だろうか...』
「「「何しろ 築十数年ですもんね...」」」
@台風@ ヽ`、ヽ(つ∀゚;)っ─<ヽ`、ヽ 傘が…byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-06-20-Wed 07:06 [編集]
けいったん様
おはようございます。

> 人目も憚らず 大声で泣く兄を見て どう思う どう感じる、穂波?
> いつも 自分の事より 弟2人の事ばかりに気を掛けている兄に手を出すなんて~(´;ェ;`)
>
> 愛されているから 何をしても許されると、思ってんじゃねぇぞぉーー!
> 穂波が浮羽を思う半分でも 筑穂を思って 兄の気持ちを考えてみなさい!
> と、大変 怒ってるよ~私は!ムッ!(#`Д´σ)オメーニダョ!!!

お兄ちゃんの気持ちをもっと考えてあげないと…。
自分のことで精一杯になっちゃったのかもしれないれどさ。
それでも穂波の言い分はちゃんと聞いてくれたのにね。
手をあげるのはいけないことです。
先生もすごく怒ってることでしょう。

> 「隊長!ただ今 台風接近中で あります!」
> 『基地は 大丈夫だろうか...』
> 「「「何しろ 築十数年ですもんね...」」」
> @台風@ ヽ`、ヽ(つ∀゚;)っ─<ヽ`、ヽ 傘が…byebye☆

「隊長、台風、大丈夫でしたか~?」
『基地の確認ε=┏(; ̄  ̄)┛』
「まぁ、保険入ってるし~」
コメントありがとうございました。

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