FC2ブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
待っているよ 14
2012-06-11-Mon  CATEGORY: 待っているよ
突然湧いた、穂波の「同居します」宣言に、筑穂は断固反対の異を唱えた。
「学生身分で何言っているんだ。専門学校、無事卒業してから考えることだろ。家から通えないわけじゃないし」
ましてや筑穂の知らない相手である。そう簡単に、ハイどうぞなどと返事ができるわけがない。
穂波は少し膨れたように「だってさ…」と言うにとどまり、言葉は濁された。
もちろん考えがあっての発言なのだろうが、あまりにも今日一日であり過ぎた筑穂にはまだ早い話としてしか捉えられなかった。
大野城がすべてをまとめてくれる。
「おいおい話合っていけばいい。今日は朝から振りまわされて、お兄さんも疲労困憊だろう」
…本当だ…。
嘘がバレたことは穂波の中でも後ろめたさがあるのか、それ以上声を荒げることもなかった。
一つの問題が解決しては気も抜けてくる。
とはいえ、大野城のいる前で、大の字になって転がることもできなかった。
筑穂は一呼吸おいては、大野城に頭を下げた。
「先生も…。わざわざすみませんでした…」
「いえいえ。これも仕事ですからね。お兄さんの美味しいご飯が食べられたのは、役得でしたよ」
「媚び、売ってんなよっ」
「穂波っ」
どこまで本気かはともかく、努力したものを褒められるのは嬉しいものだ。
戦場のような食卓に、褒め言葉などほとんどない日常だった。
もちろん感謝はされていたのだろうが。

筑穂は「嘉穂、迎えに行かなきゃ…」と立ち上がりかける。
続いて大野城も腰を上げた。
「じゃあそこまで」
大野城の帰る方向が鞍手家のあるほうとは限らない。だけど雰囲気には、穂波を除いて筑穂と話をしたいというのが表れていた。
筑穂と大野城が連れだって玄関を出ていくのを、進路が決まって安堵したような穂波が見送っていた。
冗談を交え、明るかった空気が、ふたりきりになった途端、少し重く感じられた。
街灯が照らす中、歩むはずだった脚はふたりとも止まった。
「筑穂くん…」
初めて呼ばれた名前に、筑穂はどうしたのかと、ドキンとする。
並んで立ち、顔を上げて背の高い教師を見上げると、優しい眼差しが浮かべられていた。
「何でも溜め込むのは良くない。弟のために、と必死になる努力は結構だけれど、無理しすぎていない?自分で全て抱え込もうとしなくても、津屋崎のようにきちんと自分の考えを持って成長している子はいる。兄弟にも甘えて見せるのは悪いことじゃない。それがまた、あいつらを成長させるんだ」
「せんせ…」
「昼間の泣いているあなたは子供みたいで可愛かったけどね」
「そんな…」
あまり思い出したくない出来事を振り返られて、筑穂は顔から火が出るくらい照れくさかった。
『子供みたい』と言われたことも、未熟者と評価されているように捉えてしまう。
大野城の手のひらがさりげなく伸びてきて、額から髪を梳いた。
大きな手のひらだ…。
「誰かを可愛いと思うのは久しぶりだった。小憎らしい連中ばかり見ているからね」
真剣に話をしているかと思えば、口角をあげたりもする。でもやはり真面目な態度であるのも確か…。
「それに、支えになってやりたいと思ったのも、ね。どこまでも無茶をしそうで心配になる」
注がれる眼差しは、強靭な精神を持った者を語っていた。
気にかけられるのは、単なる、生徒の保護者だからなのだろうか。穂波の延長でしかないのだろうか。
穂波が卒業してしまえば接点などなくなる。それまでの間だけでも、ぐずぐずに崩れたら、その先の自分はどうなってしまうのだろう。
親を失ってから気丈に振舞うことが筑穂を支えた全てだ。
確かにあの泣いていた時間、何もかもを晒してホッとしてしまったけれど…。あの安堵感はこの体と抱擁力からくるものなのだろう。
溺れてしまいそうな恐怖感が湧いた。
「それって…?」

手に力がこめられて、コツンと筑穂の額が大野城の胸に当たった。
誰かに寄り添うなんて、いつぶりだろうか。
一人で頑張ってきた努力を、この人は全て認めてくれる…。
「もちろん、そのままの意味。弟の世話に自分の幸せを犠牲にするんじゃなくて、俺と一緒に育てていく道を考えてもいいんじゃないかな。今の気持ちのまま、嘉穂君の成長を待って、同じように大学卒業させるんだって思って過ごした時、筑穂くん、幾つになるの?」
「でも、せんせ…」
生徒を見守るのとはまた違った話になる。
順調にいっても、あと10年。個人的な苦労を大野城に委ねるのは心苦しさも浮かんでくる。
そのことを大野城は悟ってしまったらしい。
「そういうところが心配になるっていうの。一人で抱え過ぎるから」
「でも、せんせ…」
同じ言葉を繰り返すだけの筑穂に、クスリと笑みが届けられる。
「ふたりきりでいる時に、『先生』はやめよう」
額に温かな唇が触れ、決して勢いや冗談で軽口をたたいているのではなく、真剣な気持ちが伝わってくる。
あまりにも急展開な話だったけれど、このまま縋っていたい思いは筑穂の中に芽生えていた。

「高良(たから)っていう名前、知ってた?」
知らないと分かっていながら悪戯をしかける少年のような表情を見せる。
弱みをまた一つ握った、といったところだろうか。
小さく首を横に振った筑穂に、それでも嫌味を投げかけるような態度には出なかった。
傾きかけた気持ちを引き戻す力が筑穂にはなかった。
一日で疲れ切ってしまって、その隙間にうまく入り込んできた人…。
「ついでに歳は34歳です。脂のり過ぎ?一応日々運動は欠かさず、鍛えているつもりなんだけどなぁ。同い年の他のサラリーマンに比べたら、見た目だけでもお買い得だと思うよ」
しっかり自分を売り込むことを忘れないのは自信の表れでもあるのだろう。
自分より年上の、人を見守ることに長けた人は筑穂の心をしっかりと掴んでいた。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ 
ポチってしていただけると嬉しいです(///∇//)
関連記事
トラックバック0 コメント4
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
えー、
コメントちー | URL | 2012-06-11-Mon 00:21 [編集]
なにさ、センセー、アピりすぎなんだけどー。
弱ってる兄ちゃんは、そりゃ可愛いだろうよ、センセー。

兄ちゃん、スッカリセンセーに傾いちゃったしさぁ。
つまんね!←波乱好き(笑)
センセー、兄ちゃんを幸せにしないと怒るからね!←これからだって(笑)

隊長!兄ちゃんの相手はセンセーみたいです。
Re: えー、
コメントたつみきえ | URL | 2012-06-11-Mon 07:23 [編集]
ちー様
おはようございます。

> なにさ、センセー、アピりすぎなんだけどー。
> 弱ってる兄ちゃんは、そりゃ可愛いだろうよ、センセー。

弱い所につけいっていきましたね~。
しっかり売り込んでいるし。
穂波みたいな生意気な連中ばっかり相手にしているから、筑穂の魅力に堕ちたか(笑)

> 兄ちゃん、スッカリセンセーに傾いちゃったしさぁ。
> つまんね!←波乱好き(笑)
> センセー、兄ちゃんを幸せにしないと怒るからね!←これからだって(笑)
>
> 隊長!兄ちゃんの相手はセンセーみたいです。

つまんない結果でしたか(笑)
しっかりした先生でしょうから、家族全員大事にしてくれると思います。
穂波としては担任がそのまま家に押し掛けてくるんだから複雑な気持ちだろうけど。
どこまでも説教されてそうだしね~。
コメントありがとうございました。

ちーさん♪(⌒0⌒ゞ ラジャ・・・って、復活!?
コメントけいったん | URL | 2012-06-11-Mon 11:15 [編集]
「隊長ー!」
『何だ?今は 活動中止だが?』
「今、シークレット部隊隊員のちーさんから 筑穂の相手の報告が!」
『ほぅ~それって誰だ?』
「次男の穂波の担任の大野城ではないかと!」
『急募で入った あの隊員か!中々 いい働きをする いい人材が入隊してくれ 儂も嬉しいぞっ♪』
「「「はいっ♪」」」」
『それに引き換え もう一人の新隊員は、営業ばかりしやがって 嘆かわしい・・・』
「「「我々も 勧められるまま 保険に入ったであります!」」」
『お・お・お前たちもかぁ~~!?』
「「「隊長も・・・」」」

筑穂に甘え頼られる存在になりそうな大野城
彼って 以前から 筑穂に好意を?
穂波は、薄々知ってたのかもね~
ダイジョーブ!d(`・ω・´(pдq`。)ゝアマエテイイノ?...byebye☆


Re: ちーさん♪(⌒0⌒ゞ ラジャ・・・って、復活!?
コメントたつみきえ | URL | 2012-06-11-Mon 16:20 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 「隊長ー!」
> 『何だ?今は 活動中止だが?』
> 「今、シークレット部隊隊員のちーさんから 筑穂の相手の報告が!」
> 『ほぅ~それって誰だ?』
> 「次男の穂波の担任の大野城ではないかと!」
> 『急募で入った あの隊員か!中々 いい働きをする いい人材が入隊してくれ 儂も嬉しいぞっ♪』
> 「「「はいっ♪」」」」
> 『それに引き換え もう一人の新隊員は、営業ばかりしやがって 嘆かわしい・・・』
> 「「「我々も 勧められるまま 保険に入ったであります!」」」
> 『お・お・お前たちもかぁ~~!?』
> 「「「隊長も・・・」」」

お~っ、隊長が、隊員が、保険に入ってる~~~(笑)
そうか~、営業活動ばかりしているのか~。
是非とも優秀な隊員を見習ってほしいものです。
「壁|-゚) ソォーッ…(…ふ~ん、相手が判明したのか。お互いのためを思っても保障の見直しは大事だよなぁ)」
『Σ(゚Д゚;)オイッ、今そこに人影が見えなかったか?!』
「Ξ('-'*)ノ ササッ」
「「「←(・_・┐)))チェック中(((┌・_・)→ 隊長、誰もおりませんが…」」」
『そうか、気のせいか…』

> 筑穂に甘え頼られる存在になりそうな大野城
> 彼って 以前から 筑穂に好意を?
> 穂波は、薄々知ってたのかもね~
> ダイジョーブ!d(`・ω・´(pдq`。)ゝアマエテイイノ?...byebye☆

ずっと担任やってましたからね。
大野城が気にかけるところはあったんじゃないでしょうか。
どこまで穂波が気づいていたかは分かりませんけど、今回ダシに使われたのは分かったかも。
速攻で行動を起こした担任だもんね。
さあ、次はどう動くでしょうか。
コメントありがとうございました。

トラックバック
TB*URL
<< 2019/08 >>
S M T W T F S
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31


Copyright © 2019 BLの丘. all rights reserved.