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BLの丘
待っているよ 13
2012-06-10-Sun  CATEGORY: 待っているよ
改めて向かいあった先に穂波の俯く姿勢があった。
筑穂は雰囲気を取り繕う為にも、お茶を淹れて回る。
「ありがとう」と大野城に素直に喜ばれて、感謝される意味を今更ながらに知った。
パソコンを相手にしてはかけられることのない人付き合いだ。
筑穂の隣で大野城が座卓に肘をついた。
「今日も言ったが、嘘をついてまで物事をやるとは信頼に欠ける。本当にその気があるのなら、正面からぶつかるべきだろう」
穂波と大野城の間では、筑穂を越えて語られた何かがあったとは、推測できること。
隠れてこそこそと動いていた穂波をたしなめていた。
すでに話された内容なのだろうが、ここで口にしたとは筑穂に聞かせる意味もあるのだろう。
「でも兄貴は…」
「俺?」
言いかけた言葉が止まれば、追及もしたくなる。
筑穂の問い詰めようとする発言を大野城が制した。
「進学のことに悩んでいたんですよ。お兄さんは絶対に”大学”を希望していたでしょう。そのこだわりは何?」
自分が希望する通りの人生なんてないのだとは分かってはいても…。
自分が過ごしてきた時と同じ空間を与えてやりたかった思いはある。
筑穂が単純に”大卒”だったから、だけだ。同じ道を…と思っていた。
穂波が、今まで抱えていた悩みを、大野城がいるという安心感からか口を開いた。
「俺、別に大学に行ってもいいと思ってた。兄貴がそれで満足するなら…って。…でも、目の前で働く人の姿見て、一生懸命になる人を見て、学歴ってなんだろうって思った。やることも分からなくて、無駄に金掛けて…。うち、そんな、裕福じゃねぇだろ」
「だから、そのお金はっ」
「じゃあ、その金、嘉穂にまわせよっ。恩着せがましく払ってもらって、わけわかんねぇ大学とか行きたくねぇしっ。だったらやりてぇことに自分で働いてでも金、つかうよっ」
「穂波…」
未来を見据えた姿は、自分が想像していたよりもずっと逞しく育っていたのかもしれない。
何よりも変えたのは、『一生懸命働く人』だったのだろう。
筑穂の背中も見ていて、行く末の違いを、穂波自身感じていたのだろうと思う。
デスクワークよりも体を動かすほうがいいとは、すでに聞いた話だ。
自分とは違っている。同じようにはならない。
はっきりと分かってしまったから、今の決断がある。

大野城が「オフレコで」と口を開いた。
「中には、本人の能力を過信した親もいるんです。絶対に無理だという進学先とか希望されてね。それは、お兄さんがいうような『見栄』なんでしょうけど。津屋崎は目標を持っている。大学にこだわらなく、応援してもらうことはできませんか?」
「でも、まだ、こいつ、高校生でっ」
「高校生だって、意思はあるんですよ」
一人で決断するには早すぎると危惧する筑穂に、考える力はこうやって育つのだと諭された。
いつまでも親離れできない子供ではない。

筑穂は腹を括るしかなかった。言われている全ては理解できる。
いつか、巣立っていく弟たちだとは、もうずっと前に気付いていたことだったけれど…。
穂波の成績もそれとなく知れていたけれど…。
「専門学校はいいよっ、わかったよっ。でも『浮羽』っていうやつはまた別問題っ。てめー、高校生の分際で何、考えてやがるっ」
まだ出会ったことはないけれど、特別な意味があるとは、昼間聞いた『浮羽のため』で知ることができた。
胃袋を鷲掴みにされたのなら、取り返してやろうとは、今日の夕食にも表れていたのだが…。
筑穂の考えと行動は虚しい結果に終わるはめになる。
掴んだのはどうやら大野城だったらしい。
「何…って、卒業したら一緒に住むけど…」
「ってことで、津屋崎の出ていった後、保安員として移り住んできますので」
「はぁぁぁっ?!」
影ながら交わされた約束かと思うものは、筑穂にとって全くもって寝耳に水…。
そして穂波にとっても聞いた台詞ではなかったらしい。
「あぁぁぁっっ?!」
叫び声が家中に響いた。
「なんでテメーがここに来るんだよっ」
「だってお兄さん一人、不安だし。すぐ泣くし。ご飯美味しいし。弟君の教育もあるし」
「いらねー心配してんなーっっ」
激昂する弟と平然と答える教師。筑穂の意見は(述べる隙もなかったけど)無視されている。
それこそ頼りないと公然と言われた筑穂は情けなさに目が潤みかけた。
兄としての尊厳はどこにあるのだろう。

「ほら」
隣にいた大野城の手が、今日二度目の眦を撫でる仕草を見せる。
弟の前の恥ずかしさを通り越し…。
年上という頼りがいのある安心感に、弟を失った空白が満たされていくような錯覚に陥った。
頑張ってきたその全てを汲んでくれるような人に、また家族のみんなを受け入れてくれる温かさに、出会った喜びが湧いた。
「じゃれついてんじゃねーよっ」
もれなく、座布団も飛んで来たけど…。

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コメント

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アワアワ
コメントちー | URL | 2012-06-10-Sun 02:16 [編集]
センセー、仕事が早いよ。
穂波の代わりに一緒に住む?

えー、何なの?
しかも、兄ちゃんほだされとる。
そうか、同棲から始まる恋なのか。

兄ちゃん、いつ堕ちるかなあ?
No title
コメントけいったん | URL | 2012-06-10-Sun 10:01 [編集]
大野城と穂波
このこの~( * ̄▽ ̄)σ" ツンツン
秘密裏で どんな取り引きをしたんだぁ~あぁ~!?

結構 似てるのかもね、穂波と大野城って・・・策士のとこが~♪(oゝД・)b
って事は、まだ見ぬ「浮羽」は、筑穂とよく似たタイプか!
穂波、君って ブラコン?(笑)
おぉ!(* '∀'人)...byebye☆
Re: アワアワ
コメントたつみきえ | URL | 2012-06-10-Sun 11:26 [編集]
ちー様
こんにちは~。

> センセー、仕事が早いよ。
> 穂波の代わりに一緒に住む?
>
> えー、何なの?
> しかも、兄ちゃんほだされとる。
> そうか、同棲から始まる恋なのか。
>
> 兄ちゃん、いつ堕ちるかなあ?

大野城が言ったのがどこまで本気なんだか…。
でも穂波のケツを叩いているのは確かでしょう。
兄ちゃんに甘えていないで自立しろって。
まぁ、まだね。穂波が卒業するまでには時間がありますし。
今日の突発的な出来事に、大野城も便乗したんですかねぇ。
驚きはいっぺんに与えてしまった方がいい…トカナントカ…。
筑穂を泣かせて、穂波の問題も解決して、嘉穂の宿題も見て、しっかり入りこんできましたね~。
さぁ、兄ちゃんの反応は?!
コメントありがとうございました。

Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-06-10-Sun 11:39 [編集]
けいったん様
こんにちは~。

> 大野城と穂波
> このこの~( * ̄▽ ̄)σ" ツンツン
> 秘密裏で どんな取り引きをしたんだぁ~あぁ~!?

「お兄さんは先生が説得しておいてやるから」と昼間言ってましたしね~。
そして家まで押し掛けてきて、しっかり仕事をしましたよ。
穂波も満足~の結果に、まさかの爆弾発言。

> 結構 似てるのかもね、穂波と大野城って・・・策士のとこが~♪(oゝД・)b
> って事は、まだ見ぬ「浮羽」は、筑穂とよく似たタイプか!
> 穂波、君って ブラコン?(笑)
> おぉ!(* '∀'人)...byebye☆

似てるかもしれませんね~。
ちょっと強引で気の強いところとか。
育ててもらっている恩もあるのでしょうが、頑張っている筑穂を穂波も良く知っていますからね~。
「兄ちゃんは俺が守る」みたいな気持も持っているんでしょうか(笑)
あ、嘉穂のこともね。
穂波も努力家なんですけどね。
ってなると、穂波の理想は"頑張っている人"なのかもしれません。
当然筑穂に似たタイプ?!
まぁ、年上好みでしょう。
あぁ、それをブラコンというのね(笑)
コメントありがとうございました。
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