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BLの丘
待っているよ 8
2012-06-06-Wed  CATEGORY: 待っているよ
筑穂は怒りと呆れで思考が全くといえるくらいまわっていなかった。
口がパクパクと幾度か動いたあと、「ほなみぃぃぃぃっっっっ!!!」と今日一番の絶叫がこだまする。
「馬鹿かっ!!どこのどいつだっ、そいつはっ!!いたいけな高校生を誑かして何しようってんだっ?!なんて吹きこまれた?!今頃、うまく手懐けられたって笑われていることにも気付かないのかっ!!」
「兄貴っ!!そんな言い方ないだろっ。浮羽さんのこと、何も知らない癖にっ!!悪口言うなっ!!」
激昂した穂波が徐に筑穂の胸倉を掴んだのを見て、慌てて大野城が「津屋崎っ!」と止め、机を回りこんできた。
穂波の手首を取って引き離し、椅子の上に崩れ落ちる筑穂に、肩に手を置いて「大丈夫ですか?」と声をかけてくる。
少し咳き込むことはあったが、コクコクと頷き視線を上げた。
こんな兄弟喧嘩は初めてだ…。
穂波の力の強さを改めて教えられたのかもしれない。
それよりも穂波の感情の向け方だ。その人を神か何かと崇めているのだろうか。
世の中の何も、まだ知りもしないのに、一人の言うことを信じきるなど…。

「津屋崎、今すぐに決断をくだすのでなくても、もう少し良く考えてから…」
「うるさいっ!!もう、いっぱい考えたっ!!浮羽さんにも相談して、専門学校のこともいっぱい聞いてっ!!……もう、いいよっ!!」
感情的になった人間は人の言うことに耳など貸さず、勢いよく教室を飛び出していく。
「津屋崎っ!!」
「ほな…っ」
「ちょっと行ってきます。ここにいてくださいよっ」
大野城も動きだしながら筑穂に念を押して追いかけていく。
筑穂は机に両肘をつくと、ぐったりと両手で顔を覆った。
どこから考えていいのか全く分からず、頭の中がぐちゃぐちゃだ…。
言われなくてもここから動く気力も体力も消耗し尽くしていた。

突然湧いた進路変更の話。その影に潜む、見知らぬ、穂波に影響を与えた人物。
まだ高校生なのだ…。そう、ひたすら部活を頑張ってきて、自分の満足のために暮らしていた無邪気な高校生のはずなのに、それが”誰かのため”に人生を決める?
人を思いやる気持ちを持つことは確かに大事なことだが、まだもう少しゆとりをもって未来を考えればいいと思っていた矢先に突き付けられたのは、人生の確定事項とも言えそうな選択肢。
何を吹きこまれたのかと、筑穂には恨みの方が大きくなっている。
筑穂が希望していた穂波の今後とは、全く結びつかないものを簡単に受け入れられるはずがなかった。

穂波は筑穂が大学進学を望んでいることを知っていた。だからこそ言い出せなかったのだろう。
筑穂の期待を裏切ることになるから…。
それにしても、何故突然…。
しかも、どこの誰とも分からない人を介しての将来設計など…。
もっと前から、憧れたり夢を持っていたと言うのなら充分納得できる。それこそ喜んで送り出したはずだ。
今は、あまりにも突然のことすぎた。
一度大学を卒業してから、改めて考え直すのではだめなのだろうか。
なによりも、穂波が慕う『浮羽』という人物が気になって仕方がない。
話からするに、個人経営の店なのだと想像する。素人を、ましてやバイトでもない存在を簡単に店に入れられるのだから…。
そして家と学校との通学圏内を考えたら、遠い店ではないはずだ。
正直なところ、筑穂が家事を担ってから、大食漢の弟二人のために、質より量となって食費を浮かせるほうが優先され、時に外食でファミレスを利用していた津屋崎家にとって、店で手作りしている『パン屋』という存在が無縁だった。
その味に惹かれて知った関係なのだろうか…。どのようにして買い求めて…?
少ない小遣いから買ったのか…と思いつつ、おまけでもされて…と考えながら、これではまるで胃袋を掴まれたナントカじゃないか…っ!と、筑穂は自身の不甲斐なさまで思い浮かべてしまった。
成長期の体は常に食物を欲しがる。ましてや運動部にでも所属すれば消費量も半端ないだろう。
筑穂の用意する食事だけでは物足りなかったということか…。せめてもっと小遣いを渡していれば、『買う』だけで過ぎたかもしれない…。(←すっかり餌付けされたと思い込んでいる)

だからといって専門学校への進学まで推奨されたとは納得できるものではない。
勝手かもしれないが、筑穂が抱いていた穂波の未来ではない。
筑穂が店や人間、調べることは簡単だろう。
穂波の兄と分かれば店の出入りを禁止してくれるだろうか。
あとは穂波をどう説得するか…。

筑穂なりにあれこれと思考を巡らせるが、これといって解決案など浮かばない。
飛び出していった穂波の存在も、大人しく筑穂の言い分を聞いてくれるとは思えなかった。
それに、また感情の昂った穂波に近付かれた時に、手を上げられたらひとたまりもないと震えが走る。
一瞬掴まれただけで、全身が凍りつく恐怖心を植え付けてくれた。
『いちいち文句を言うな』という脅しか…。

どれくらい経っただろう。30分だったのか一時間だったのか…。
うつ伏せていた筑穂は、ドアが開かれる音でハッと顔を上げた。
「お待たせしました」
そこに居たのは大野城一人だけだ。うっすらと額に汗が浮かんでいるようだが、現役高校生と走りまわった結果なのか…。
「穂波…は…?」
ひとつ大きな深呼吸をしてから、大野城は先程まで座っていた席に戻らず、少しの間を空けて隣に座った。
横向きになり片肘を机について、頭を拳に乗せる。まっすぐに筑穂の瞳を見てきた。
こんなふうに崩れた姿を見るのも初めてで、また探られるような視線も初めてで、突然の変化に、こちらにも驚かされた。
大野城も疲れた結果なのだろうか…。
「津屋崎は授業に戻しました。とりあえず俺の方からお兄さんに話をすると言いきかせてきましたが…。…こう言っては失礼ですが、頭ごなしに否定すると逆上する年頃なんですよ」
大野城はこの場のとりなしを無事終えたようだった。
教育現場にいる人間の強みか、先程の筑穂の言動を咎められる。
多くの人間に触れあうわけでもなく、それどころか機械ばかりを相手にしていた筑穂には人間関係は難解なものとも言えるのかもしれない。
それに加えて、人生経験のなさ。
大野城からみたら、子供の部類に入れられたっておかしくない。説教したくなるくらいの存在なのではないか…。
それでもがんばってきた…。”頭ごなしに否定”と言うなら、今までの筑穂の頑張りすら否定されているようで、落ち込み、悲しくなった。
筑穂の行動も考えも、大野城から否定されているように感じられる。

誰が自分の努力を認めてくれるのだろう…。

悔しいとは違う。完全な情けなさと喪失感。自分になにができるのだろうか…。
他人から見られたなら…。
堪え切れない感情が涙となって溢れた。
潤んだ…、その程度のものではない。大粒の涙が頬を伝わり、スラックスや床の上に落ちる。
気負ってきた何もかもが、弾けた。
だけど、穂波のように感情的になって相手にぶつかることができなかったのは、"兄"としての威厳か…。

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先生、泣かせちゃ…アタフタ ヘ( ̄□ ̄;)ノ ヽ(; ̄□ ̄)ヘ アタフタ
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コメント

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兄ちゃん!
コメントちー | URL | 2012-06-06-Wed 00:24 [編集]
あーん、泣かないでぇ。
兄ちゃんは、悪くないよ。
誰も兄ちゃんを否定してないし、責めてないからあ。
兄ちゃん、誰かにヨシヨシされたいねえ。うん、してもらって?
センセー・・・?

隊長!私、シークレット部隊にぴったりの人物知ってます。
しかも、怪しまれません。
ただ、ただですね?
もれなく、営業されます。そっちも優秀です。
感想コメか ショートコントか?(^ー^; )"~サア?
コメントけいったん | URL | 2012-06-06-Wed 01:38 [編集]
-とある園にて-
「あれ? この急募って?」
「シークレット部隊だって 面白そう~♪」
「僕、シークレット部隊隊員になる!」
「...かっこいい...」
「誰だ!こんな所に 広告を貼ったのわぁー!゛(`ヘ´#) 」

「│窓|・ω・`:)b 貼る所を間違ったか!?」by隊員A

ちーさん推薦の方、きっと 面談そっちのけで 隊長は 営業されちゃうでしょうね(笑)

穂波の言い分を聞く余裕もない程 動揺して、筑穂
突然だもんね...一生懸命に育てて来ただけに 期待も大きかったんだし!
兄弟 仲良く過ごして欲しいなぁ~( ´-ェ-` )シュン...byebye☆
Re: 兄ちゃん!
コメントたつみきえ | URL | 2012-06-06-Wed 06:58 [編集]
ちー様
おはようございます。

> あーん、泣かないでぇ。
> 兄ちゃんは、悪くないよ。
> 誰も兄ちゃんを否定してないし、責めてないからあ。
> 兄ちゃん、誰かにヨシヨシされたいねえ。うん、してもらって?
> センセー・・・?

お兄ちゃん、背負っていたものが大きかったんですよね。
いろいろ重なって自分を責めちゃっていますが。
誰かにヨシヨシしてもらいましょう。

> 隊長!私、シークレット部隊にぴったりの人物知ってます。
> しかも、怪しまれません。
> ただ、ただですね?
> もれなく、営業されます。そっちも優秀です。

もれなく営業(爆)
怪しまれずに動き回るでしょうけれどねぇ。
聞き取り調査とかにも適していそうですが。
人付き合い、いいですからね~。
さぁ、どうなるでしょうか。
コメントありがとうございました。

Re: 感想コメか ショートコントか?(^ー^; )"~サア?
コメントたつみきえ | URL | 2012-06-06-Wed 07:12 [編集]
けいったん様
おはようございます。

> -とある園にて-
> 「あれ? この急募って?」
> 「シークレット部隊だって 面白そう~♪」
> 「僕、シークレット部隊隊員になる!」
> 「...かっこいい...」
> 「誰だ!こんな所に 広告を貼ったのわぁー!゛(`ヘ´#) 」
>
> 「│窓|・ω・`:)b 貼る所を間違ったか!?」by隊員A

隊員Aさん、貼る場所間違えてますね~。
興味本位で飛び付かれそうです。
おもいっきり、足を引っ張ってくれることでしょう。
でも特徴をとらえていて、面白い(o´艸`o)

> ちーさん推薦の方、きっと 面談そっちのけで 隊長は 営業されちゃうでしょうね(笑)
>
> 穂波の言い分を聞く余裕もない程 動揺して、筑穂
> 突然だもんね...一生懸命に育てて来ただけに 期待も大きかったんだし!
> 兄弟 仲良く過ごして欲しいなぁ~( ´-ェ-` )シュン...byebye☆

兄弟喧嘩勃発しちゃいましたが…。
お互いの言い分、冷静になって聞かないとね。
お兄ちゃん、その余裕なくしちゃったけど。
なにもかもが、いきなり~やってきちゃって、落ち着く間がない筑穂です。
パニック継続中。
ここいらでホッと一息つきましょうか。
コメントありがとうございました。

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