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BLの丘
待っているよ 6
2012-06-04-Mon  CATEGORY: 待っているよ
穂波の行方が知れたのはすぐのことだった。
本人が登校したのである。
それこそ、筑穂が今にも会社を出ようかとしていた矢先。
携帯電話を握り締めていた筑穂は、ワンコールも鳴り終わらないうちに相手と繋がった。
かけてきてくれたのは大野城だった。
『単なる遅刻かもしれない』と言った大野城が、そのとおりだったと、落ち着き払った口調で語りだす。

『すみません、お騒がせしました。あの後すぐにやってきまして…』
謝罪をのべるとは…。いらぬ心配をかけた、という思いが大野城の中にあるのだろうか。
いや、迷惑をかけているのは、あきらかにこちらのほうだ。黙ってフラリと消え、本来のやるべき学業をまっとうしないなど…。
冷静に対応してくれる大野城のゆったりさに、少しばかりの憤りを感じる。
「そんなっ。それより、穂波と話ができますか?」
回りくどい社交辞令など、今交わしていたくはない。
何が起こったのか本人の口から聞きだしたい筑穂である。
大野城はすでに聞いたのだろうか。
『えぇ。……ほら…』
きっと授業に出ることなく、隔離されているのだとは、何となしに悟ることができた。
遅刻した理由を、さらに筑穂から聞いた話とは食い違うことを、何も問い質さず授業に向かわせるほどいい加減に処理する教師ではない。
僅かに電話の向こうでやりとりをする声が聞こえた。穂波は抵抗しているようであるが、説得されたのか、しぶしぶといった感じで出てくる。
『もしも…』
「バカヤローッ!!!どこで何してやがった――っ?!」
もちろん怒りはあるが、声が聞けて安堵したのも確かだった。
そこがまだオフィスだということも忘れて、筑穂の絶叫が響き渡る。
その声に、最悪の事態は免れたのかと、周りの人間もホッと胸を撫で下ろしていた。
『あー…、後で話すよ…』
後ろめたそうな声は、問題解決を後回しにしようとしているのか。
誤魔化されそうな気がする筑穂は、第三者がいる前でじっくり話を聞いてやろうと心に決めた。
「後で、だぁっ!?ふざけんなっ!今から学校に行ってやるから首洗って待ってろっ!」
『はぁっ?!何言ってんの。兄貴仕事だろ?』
筑穂の大声は大野城にも聞こえているのか、はっきりとした声で『お兄さん、来られるのか?』と問いがかかっている。
問題を起こした生徒、と捉えれば、保護者を呼びたいのは山々だろう。
ためらいを持たれたのは筑穂の若さのせいか…。
こんなところでも筑穂の精神状態を気遣われていることをなんとなしに知る。
頼りない"保護者"ではいたくなかった。
「おまえのせいで、今から帰るところだったんだよっ!!」
“穂波行方不明事件”が、筑穂にどれだけの心労を与えたのか、現実を悟ったようだった。
穂波は何も語らず、電話は大野城に代わられた。
短いやりとりをして、筑穂は周りのみんなに挨拶をし、オフィスを出る。
福智が「気をつけろよ」と最後に声をかけてくれて、ようやく笑みを浮かべることができた。

タクシーを飛ばし、30分もかからずに学校に辿り着くと、事務室にいた人が生徒指導室まで案内をしてくれた。
廊下を歩き、あちこちから授業の行われている声が聞こえてくると、必要外で呼び出された現状に情けなさが込み上がってくる。
両親がいないから…と世間から後ろ指をさされないように育ててきたつもりなのに、まさか自分がこんな形で学校訪問することになろうとは…。
教室から少し離れた場所だった。
「失礼します」
筑穂が声をかけると中から扉が引かれた。
明らかに上を向かなければ視線を合わせることのできない、筋肉質の男が出迎えてくれる。
以前見かけた時よりもだいぶ髪が切られ、清々しい印象に変わっていた。ポロシャツにノータックパンツを合わせた軽装は動きやすさを追求しているからだろうか。
厳しい中にも穏やかさのある眼差しは相変わらずだ。
「お忙しい中、すみませんでした」
「こちらこそ、穂波がご迷惑をおかけして…」
あまり広い部屋ではない。中に通されると、ミーティングテーブルのような長机があり、穂波が不機嫌そうに座っていた。
その姿を目に入れては、筑穂がつかみかかる。
「穂波っ、おまえな~っ!!」
勢い余って頬を平手で打つと、「何すんだよっ!!」と逆に体を取られそうになり、穂波の手が上がった。
立ち位置はともかく、今の体格や体力は筑穂に勝ち目などないと明らかに伝えている。歳が離れているせいもあったが、取っ組み合いの兄弟喧嘩なんてしたことがなく、運動部で鍛えられた力は計り知れない。
喧嘩腰になる穂波に、自分で手を上げておきながら凄味に怯む筑穂が脅えた。
「津屋崎っ、やめろっ!!お兄さんも落ち着いてください」
穂波の動きよりも早く、背後から両腕で抱えられて引き離された筑穂は、大野城の腕の中にすっぽりと収まってしまった。
穂波の元気な姿に安心したからか、ここまで呼ばれた情けなさからか、兄にまで殴りかかってこようとする態度に悲しさが浮かんだのか、詰まっていた気持ちがぶわりとこみあがって目頭が熱くなった。
それとも咄嗟に守られ、冷静に状況を判断してくれる人に甘えたくなるからか…。
一度密着した体はすぐに離れたが、覗きこんだその一瞬で潤む瞳を見つけられてしまう。
慌てて反らしたが、フッと吐息がはかれ、スッと大野城の親指が、筑穂の眦を撫でた。
「お兄さんがどれだけ心配したか理解しろ」
先程上げた制止する声よりもずっと静かに言葉を発する。大野城の動きに穂波も筑穂の感情がいかなるものであるのか改めて知ったらしく、黙りそっぽを向いてしまった。
何を言わずとも筑穂の気持ちを汲み取ってくれるのは、さすが教師と言うべきか。
気を張って生きてきた人生の心がますます折れそうになる。
兄として、弟の前で涙を見せたのは、初めてかもしれない…。

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コメント

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に、兄ちゃん・・・
コメントちー | URL | 2012-06-04-Mon 04:56 [編集]
穂波、学校来たね。
良かった、良かった。

しかし、兄ちゃん。
殴るとは予想外でした。
でも、それだけ心配したんだからね。
穂波が悪い。
わかってるとは思うけど。

兄ちゃんのお相手は、センセー?
まだわからない・・・
Re: に、兄ちゃん・・・
コメントたつみきえ | URL | 2012-06-04-Mon 07:27 [編集]
ちー様
おはようございます。

> 穂波、学校来たね。
> 良かった、良かった。

えぇ、無事でしたよ。
このあと真相解明です。

> しかし、兄ちゃん。
> 殴るとは予想外でした。
> でも、それだけ心配したんだからね。
> 穂波が悪い。
> わかってるとは思うけど。

いろんなモヤモヤがあふれましたね。
"保護者"としてのプライドも出たのでしょうか。
自分がしっかりしなきゃ~って。
すごーく心配したんですよ、お兄ちゃんは。
パニックになるくらい。
その時の姿を見せてあげたいくらいだわ。
穂波、反省しましょうね。

> 兄ちゃんのお相手は、センセー?
> まだわからない・・・

まぁまぁ、そんなに慌てないでヾ(- -;)
順番にいろいろ出てきますから~(笑)
コメントありがとうございました。


続き~♪
コメントけいったん | URL | 2012-06-04-Mon 09:56 [編集]
「隊長!穂波が無事に登校したとの報告が!」
『おぉ~それは、ひと安心・・・で、理由は?』
「それが言わなくて・・・」
『生意気に黙秘権かぁー!』
「「「はぁー...」」」
と、まだまだ シークレット部隊は、解散しませんよ~!(笑)

穂波は愚かな子じゃないから 色々と考えての訳ありの事でしょうけど。
筑穂に心配掛けさせ、学業をを疎かにするのは、如何なものかな?

筑穂にとっては、幾つになっても 可愛い弟の穂波
亡くなった両親の代わりに一生懸命に育ててくれてる筑穂兄の事を 今一度 考えてみなさい。
まずは、言わなきゃならない言葉があるでしょ!
「心配かけて ごめんなさい」
はい 言ってみて~m9(`・ω・´;)君ダョ!...byebye☆
Re: 続き~♪
コメントたつみきえ | URL | 2012-06-04-Mon 12:40 [編集]
けいったん様
こんにちは~。

> 「隊長!穂波が無事に登校したとの報告が!」
> 『おぉ~それは、ひと安心・・・で、理由は?』
> 「それが言わなくて・・・」
> 『生意気に黙秘権かぁー!』
> 「「「はぁー...」」」
> と、まだまだ シークレット部隊は、解散しませんよ~!(笑)

解散しないでくださーいっ。
是非明日もよろしくおねがいします~(笑 寸(珍)劇大好き♡(/ー\*))
まぁ、一安心したことは確かです。
部隊も一杯飲んで休憩しておきましょう。

> 穂波は愚かな子じゃないから 色々と考えての訳ありの事でしょうけど。
> 筑穂に心配掛けさせ、学業をを疎かにするのは、如何なものかな?
>
> 筑穂にとっては、幾つになっても 可愛い弟の穂波
> 亡くなった両親の代わりに一生懸命に育ててくれてる筑穂兄の事を 今一度 考えてみなさい。
> まずは、言わなきゃならない言葉があるでしょ!
> 「心配かけて ごめんなさい」
> はい 言ってみて~m9(`・ω・´;)君ダョ!...byebye☆

黙秘している穂波ですけれど、お兄ちゃんと担任に囲まれてどこまで黙れるですかね~。
つか、話しましょう。
ちゃんと状況は分かっている子のはずです。
お兄ちゃんの苦労もね。
考えなしでおバカなことはしないよね~。
さてその真相は如何に?!
お兄ちゃんになんていうのかなぁ。
コメントありがとうございました。


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