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BLの丘
ふたり 43 (最終回)
2012-05-25-Fri  CATEGORY: ふたり
ふたりでお揃いで揃えたいものは徐々に増えていく。
旭が作ったお皿も無事送り届けられて、いびつな形でありながらも食卓を飾ってくれるようになった。
「味があっていい」と信楽は褒めてくれるので旭は有頂天になっていく。
世界に一つしかないものを、信楽はとても丁寧に扱ってくれた。
旭の休みに合わせて、信楽も時間を作ってくれた。ふたりして外に出掛けられるのは、たとえ近所のスーパーでも楽しいものになる。

この日は少し離れた郊外のショッピングセンターに出掛けた。
たくさんのショップが並んでいるために視線があらゆる方向に流れていく。
信楽と共に使えるのだと思うだけで想像する頭が活性して、楽しみが増していくのだ。無駄なものかもしれないが、旭が選んだものが家の中に増えていくことは、旭の居場所が増えるものとして、嫌がられなかった。
一緒に見られる、選べる、そして皆に信楽を見せびらかせる状況が、より旭を昂らせてくれる。
イートインコーナーで軽食を分け合って食べたりもした。
外に出る信楽の格好良さは、過去に誰かが述べたように、人目を惹くものになった。
本人はあまり気にしていないようだが、向けられてくる視線の多さに優越感も増す。
信楽が誰を見ているのかも感じられるから、尚更…。旭だけを見てくれていることを肌で感じてますます気が高まる。

あちらこちらと見て歩いていたその時、「あ…」と小さな声が聞こえて立ち止まった。
向けられる視線は幾つもあるが、明らかに故意的な意味を込めた発言だと聞きとることができた。
振り返った先に見えたもの…。
年齢を感じさせない若さをまとった伊吹と、背の高い男は冷静に旭たちふたりをみつめていた。
「伊吹…」
「多賀さん…」
同時に吐き出された相手を確認する言葉を、伊吹は逃げ出すこともなく聞いていた。
旭の中に込み上がるものがあるのも確かだったが、落ち着いた信楽の雰囲気が、感情的になる旭を留めてくれる。

「こんにちは」
真っ先に口を開いたのは伊吹の隣にいた男だった。
「どうも…」
信楽も言葉を返す。伊吹だけに関わらず、この男と信楽が面識があるのだとは、それだけで悟ることができた。
ふわりと微笑んだ信楽は、並んだふたりを見つめ、それから旭に視線を落としてきた。
流れる行動で、現在の”ふたり”の状況を教えているようだ。
伊吹は過去、旭から聞いた話で、それとなく想像できるところもあるのだろう。
信楽から、改めて、はっきりと伊吹に伝えてくれる態度は、尚更旭の心を穏やかにさせてくれた。

「信楽さん…」
何かを言いたそうな伊吹の言葉を、信楽は繋げなかった。
「もう、伊吹が引きずるようなことは何もないよ。新しい道を歩いていく。…伊吹が言いたかったことも、旭が望むことも全部分かっている。…俺に気を使って後ろ向きにはならないで。あの時は、違った意味で、俺たちに必要な時だったんだよ…」
何よりも気にかけていた伊吹を知るからなのか、はっきりと告げる。

本当の気持ちを曝け出すこと。
過去の過ちを後悔ではなく、糧として変えられる強靭な精神力。
黙ってしまう時を過ごしたから、素直になれる貴重さを深く味わう。
「幸せ…なんだ…」
伊吹の問いかけに力強く頷いてくれた信楽がいた。
「あぁ。…伊吹も…」
「うん…」
短いやりとりが繰り広げられて、伊吹の返事と共に背の高い男が伊吹の体を両腕で包んだ。
場所を選ばず、正直に思いを打ち明けてくれる態度は、羨ましい限りである。
落ち着いた信楽がそういった行動に出るかどうかは疑問だが、そこかしこに表れる愛情は旭でも感じられることだ。
見つめてくれる視線があるだけでも、旭は舞い上がりそうになる。
もう、その瞳は伊吹を追わない。

信楽にぎゅっと抱きついた旭を優しく包んでくれた。
あの男のように、自ら行動は起こしてくれないかもしれないけれど、受け止めてくれる体がある。
「本当の姿だよ…。伊吹を離してくれてありがとう…」
伊吹の隣に立つ男の言うことの意味が、旭には分からなかった。
だけど互いに進む道は見える。
過去は、あくまでも”過去”でしかない。
もう戻ることはないのだと改めて知っては安堵の息が零れる。

「お幸せに…」
伊吹が微笑んだ表情に、躊躇いのない信楽の笑みが被さる。
それはかつて、信楽が手紙にしたためて伊吹に送った言葉。

きちんと顔を合わせて、現状をお互いに見せあったことで、燻っていたなにもかもが消え去った。
一時は避け合っていたことなのだが、知ることが多くなるほど分かりあえることも増えるのだろうか。
それぞれに繋ぎとめてくれる人がいて、フラフラすることも許されない。束縛が嬉しいものに変わる。
付き合った月日は埋められないし、まだ知らないことに悔しさもありはするけれど…。

すれ違ったふたりが振り返ることはもうない。
歩き出して、微笑みを向けられて、何もかもが自分のものなのだと満足した。
新しい道に、ふたりで足を踏み出す。
証明してくれた信楽の立場があるから、旭も伊吹に対しての尖った気持ちが消えていく。
まだまだこの先も、色々な付き合いは続くのだろう。
良い関係でいたいとは、信楽だけでなく、旭も思うことだし、伊吹も望むはずだ。
新しいふたりの姿。
迷いもなく進んでいける…。

―完―

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最後までお付き合いくださいましてありがとうございました。
予想外に長くなった気がしなくもないけれど…。
"ふたり"、歩んで行けそうですね~。

いただいたリクエスト(222222様)とアンケートが重なっているもので、どうしようかな…と悩んでいるところです。
(でもアンケート、あと一カ月は受付中だしなぁ…)
次に始まるお話は…。
仲直りできたところで、4名様晩餐会とか開くかなぁ…。(信楽、旭、伊吹、甲賀…ですけど)

どうでもいいけれど、別宅にお風呂シーンを飾ってきました。別宅
失明しない程度に見てくださいね。
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トラックバック0 コメント7
コメント

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お疲れ様でした
コメントちー | URL | 2012-05-25-Fri 14:42 [編集]
終わってしまった。淋しい。
でも、私がこうなると良いなあと思ってた着地点で良かったです(笑)

伊吹と信楽さん。きっと、いつかは良い関係を築けると思います。旭がもう少し大人になればね。
身体はすっかり、大人みたいだけど~←いやん

次回作も楽しみに待ってますね。
あ、続編だっけ?
また、きえさんに叱られる・・・
Re: お疲れ様でした
コメントたつみきえ | URL | 2012-05-25-Fri 16:50 [編集]
ちー様
こんにちは~。

> 終わってしまった。淋しい。
> でも、私がこうなると良いなあと思ってた着地点で良かったです(笑)

終わりました~。
みんなが心に抱えていたわだかまりをぬぐいされたようですね。
伊吹と信楽のことは、最初から気にしていましたから、この終わり方にしたかったです。
そして、旭と信楽の関係を見せつけて、やっぱり同じように伊吹と甲賀もイチャイチャして、過去をふっ切ったのだよ~っっっと。

> 伊吹と信楽さん。きっと、いつかは良い関係を築けると思います。旭がもう少し大人になればね。
> 身体はすっかり、大人みたいだけど~←いやん

体は…ね(笑)
いっぱい信楽に仕込まれておりますから~。
きっと伊吹より上をいっていると思います。

> 次回作も楽しみに待ってますね。
> あ、続編だっけ?
> また、きえさんに叱られる・・・

続編~~~。
あー、どうしましょう。
新作のこととかも色々と考えているんですけれどね~。
書けなかった時には妄想されて満足してください(←なんて他人任せ…汗)
コメントありがとうございました。

ヌォーコメが届いてないぃー!Σ(-◇-;)
コメントけいったん | URL | 2012-05-25-Fri 17:18 [編集]
真夜中(AM2時頃?)の寝る前に書いて 送信したつもりなのに
誰の何所に送ったのでしょうか、私~(T∀T;)ゞ

気を取り直して もう一度
伊吹と信楽の間に漂うギクシャク感は否めないけど
伊吹と甲賀、信楽と旭の絆が もっと深まれば 無くなって行くでしょうね。
しかし 甲賀が、(特に)旭が、強いて会うつもりはないと思ってるのでは?

私の好みは、旭より伊吹が好きだな
このちょっと癖のある所が 堪らんですわ~♪

仲良く晩餐会!?
σ(・ω・*)んと…どうなんだろう...それって...
今はまだ 気まずいかも?
きえ様、完結お疲れ様です。┏○ペコ
ゆっくりと休養なさって 次回の新作品?続編?リク作品?アンケ作品?にお会いしましょう♪
(〃⌒ー⌒〃)ノ゛゛゛゛~~~~~byebye☆ 
あー、わかる!
コメントちー | URL | 2012-05-25-Fri 19:57 [編集]
きえさんのお返事の前にごめんなさい。m(__)m

けいったんさん、コメント消えちゃうのよ!
私、何回もあるの~。
なんででしょうね。不思議なんですのよ。

きえさん、ごめんなさい。割り込みしちゃいました。
横レス、ごめんなさい┏○ペコ
コメントけいったん | URL | 2012-05-25-Fri 20:34 [編集]
ちーさんも 経験ありなの!?
( ゚∀゚)人(゚∀゚ )ナカマー♪
  
送信した後に確認すれば いいんだけどね!
それが よく忘れちゃうんだよね~(*⌒∇⌒*)テヘ♪
Re: ヌォーコメが届いてないぃー!Σ(-◇-;)
コメントたつみきえ | URL | 2012-05-25-Fri 20:42 [編集]

けいったん様~
こんばんは~。

こちらでもコメが消えたとか。・゚・(ノД`)・゚・。

> 真夜中(AM2時頃?)の寝る前に書いて 送信したつもりなのに
> 誰の何所に送ったのでしょうか、私~(T∀T;)ゞ
>
> 気を取り直して もう一度
> 伊吹と信楽の間に漂うギクシャク感は否めないけど
> 伊吹と甲賀、信楽と旭の絆が もっと深まれば 無くなって行くでしょうね。
> しかし 甲賀が、(特に)旭が、強いて会うつもりはないと思ってるのでは?
>

すみません、もう一度書いていただきました~。
うーん、まだ早いかなぁ。
晩餐は…。
旭がなにより、まだ割りきれていないでしょうね。
他の人たちはOKでももっともっとラブリーな関係になれたと自信が持てるまでは、伊吹には会いたくない旭でしょうなぁ。

> 私の好みは、旭より伊吹が好きだな
> このちょっと癖のある所が 堪らんですわ~♪
>
> 仲良く晩餐会!?
> σ(・ω・*)んと…どうなんだろう...それって...
> 今はまだ 気まずいかも?
> きえ様、完結お疲れ様です。┏○ペコ
> ゆっくりと休養なさって 次回の新作品?続編?リク作品?アンケ作品?にお会いしましょう♪
> (〃⌒ー⌒〃)ノ゛゛゛゛~~~~~byebye☆ 

伊吹カプーを気に入ってくださったようで嬉しいです。
我が家にしては珍しいタイプ(伊吹に限らず旭もですが)でした~。
えー、今後の進み具合は考えものですが。
確かにまだ晩餐は早いよね…。それか強引にもっていくか…。
次の更新、少し考えます。
コメントありがとうございました。
Re: あー、わかる!
コメントたつみきえ | URL | 2012-05-25-Fri 20:47 [編集]
ちー様
こんばんは。

消えきえ(きえですから~)同盟(そんな同盟いらないって話ですけどね)にすっかりおはまりのご様子~。

> きえさんのお返事の前にごめんなさい。m(__)m
>
> けいったんさん、コメント消えちゃうのよ!
> 私、何回もあるの~。
> なんででしょうね。不思議なんですのよ。
>
> きえさん、ごめんなさい。割り込みしちゃいました。

いえ~。きえちゃったことが本当に悲しいです。
皆様、何を書かれていたのかしらね~。
えーと、ぜひ、コピー取っておいて貼り付けとかして見せびらかしてね(←オイ)
消えてもめげずに皆様、いっぱいかきこんでくださいね~。
コメントは嬉しです~。
いつもありがとうございます~。
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