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BLの丘
ふたり 42
2012-05-24-Thu  CATEGORY: ふたり
この日信楽が連れていってくれたところは、焼き物の工房だった。
もちろん売られている品もあるのだが、奥には土やロクロなどが揃えられ、自分で作れる場所もある。
「旭、少し時間がかかってしまうから、何か作っていていいよ」
この場所ですら、取材の一つなのだと気付く。
最後の取材は旭に飽きさせることもない配慮がとられていた。
信楽のことをすでに知ったような店員が、信楽と他の社員を残して旭を促してくる。力仕事に慣れたような、恰幅の良い男は信楽よりも幾つか若いくらいだろうか。当たり前だが旭より年上だ。
Tシャツの袖を捲り上げて「作りたいものがある?」と親しみを込めた口調で話しかけられた。
そばには見本となるものなのか、形の出来上がった品が並んでいた。茶碗やカップ、皿など色々なものがある。
好きなものにチャレンジしろということなのだろうか。
ふたりで使うものはふたりで見て選びたかったが、自分で作ったものを信楽に使ってもらうのも悪くはないだろう。
「お皿がいいっ」
堅苦しさを思わせない雰囲気に旭も溶け込んでいく。
対人に慣れた接客は培ってきたものがあるからなのだろう。旭も初対面の人間に躊躇するようなことはなく、すぐ親しんだ。
いつも信楽が作ってくれる料理を盛ってもらえる様子を思い浮かべては表情が緩む。

ロクロの前に座る。旭の背後にまわった彼は、同じように座って背を抱き、一緒に土を捏ね始めた。
「平べったいのがいいのかな。縁を盛り上げる?」
色々と希望を聞きながら、旭の目指すものに近付けてくれた。
同じものはできないけれど、似たものをふたつ作って並べられるのは喜びだ。
一つ目が出来上がると要領を覚えたように、二つ目の制作に取り掛かっていた。
旭は夢中になって、時間が過ぎるのも、周りに何があるのかも忘れていた。
少しずつ訂正したり、アドバイスをくれた店員の吐息が首筋にかかってくる。
背後にいたことは承知していたし、”近さ”は分かっていたけれど…。
ふっと振り返った勢いで、唇がそばにいた彼のものと触れあった。
「あっ…」
すぐ離れはしたが、触れた感触は余韻として残った。
突然のことは、彼も驚いたようだったが、この場において騒ぎ立てるようなこともない。
嫌がられてもいない。
咄嗟の反応に、逆に宥められるような仕草に出られる。
隠そうとする態度だ。信楽と旭の関係を知るからこそ、騒ぎ立てたくないのは理解できることでもある。
「しっ」
秘密を共有する姿勢に旭も口を閉じた。
汚れた手が重なり合って続きを促される。
先程まで抵抗のなかった、たかが”手の触れあい”が意味を持ったものにおもえてくる。
イケナイことをした気持ちは、当たり前ながら旭を占領した。
隠し事など、できないのだ…。

ソワソワとした気分で二作品目も作り終えた。
緊張したせいか、心が乱れたせいか、先程の作品とは違うのだと、旭ですら分かるくらいの差がある。
あとは窯で焼いて、後日送ってくれるらしい。
背後から囲まれた旭はすぐさま立ち上がれる姿勢でなかった。
「初めてなの?上手だね」
単なる褒め言葉なのだろうが、作品の出来を上に評価されるのは気を悪くはしない。
一人、制作に夢中になっていたが、手洗いを済ませる頃には信楽が戻ってきた。
「お皿を作ったんだって?」
経過を誰かに聞いたのだろう。確認を求められて旭は頷いたが、そのぎこちなさに何やら気付かれてしまったようだ。
「旭?」
更に問われることは、旭の隠し事を見破っている。
「何があったのかな」
強制力はないけれど、引きだす力を持つ信楽に、黙ることなどできない旭だ。
隠そうとしてくれた店員には悪いが…。

ほんのちょっとだけ唇を触れあわせてしまったことを正直に伝えれば、そのことに戸惑いを覚えた旭に、ふわりとした笑みが届く。
「隠し事ができない旭に安心するよ」
信楽は旭を片手で抱き、こめかみに唇を落とした。
心配することはないと思わせる旭の態度に、信楽も気持ちがほぐれるようだった。
怒られるかと思ったが、それくらいのことでは動揺もしないらしい。
嫉妬の一つもしてもらいたいところだが…。

信楽と共に見て回って、お揃いのご飯茶碗を購入した。
紫と青の模様が入った陶器は清々しさを見せてくれる。
「これに旭の作ってくれたお皿が加われば、料理の作りがいもあるっていうものだね」
ニコニコと笑ってくれた信楽に甘えるわけではないが、期待するものは大きい。
お皿を見るたびに触れあったナニカを思い出しそうだが、許してくれる信楽の存在を再確認できそうだ。
こうやって常に守られて、許されていくのだろう。
だからといって、踏み外すようなことはしない自信があるが。

伊吹とは違う…。
まだここでも、比べる相手が浮かんだ。

信楽が買ってくれた食器が…、ふたりを繋いでくれるものになると信じる。

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終わんないっ(汗)
次回には…。
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コメント

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うふ
コメントちー | URL | 2012-05-24-Thu 03:42 [編集]
終わらなかった♪ちょっとドキドキして、飛んできましたよ。

旭、まだまだ伊吹が気になるのか。
まあ、伊吹はシミみたいなもんだから薄くはなっても消えないの。
仕方がない無いよね?
伊吹は、信楽さんの特別だったけど、今は旭がそこにいるわよ。自信持って。


旭にチューした人。
わざと?それに焼き物体験てバッグハグされてやるんですか?
旭が可愛いからでしょ?

旭、お仕置きだな(笑)
Re: うふ
コメントたつみきえ | URL | 2012-05-24-Thu 07:08 [編集]
ちー様
おはようございます。

> 終わらなかった♪ちょっとドキドキして、飛んできましたよ。

終わりませんでした~。
私のいつものパターンですね(´∀`;)

> 旭、まだまだ伊吹が気になるのか。
> まあ、伊吹はシミみたいなもんだから薄くはなっても消えないの。
> 仕方がない無いよね?
> 伊吹は、信楽さんの特別だったけど、今は旭がそこにいるわよ。自信持って。

表現がうまいですね~。
シミですか(笑)
うん、今は旭がいますからね。
新しいシミを作っていけばいいわ。
塗り替えてしまえ~。

> 旭にチューした人。
> わざと?それに焼き物体験てバッグハグされてやるんですか?
> 旭が可愛いからでしょ?
>
> 旭、お仕置きだな(笑)

振り返ったのは旭ですからね。
チューはたまたまなんでしょうが。
わざと密着はしていたのかもしれませんが、不思議とも思わずされるがままになっていた無垢な旭です。
焼き物体験ってどんな姿勢でやるものなんでしょうね(笑)
信楽は許してくれているよですが…。お仕置き(/ー\*) (←)
コメントありがとうございました。

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